縦組みにおける半角文字の方向―MS-DOSの一太郎と松

縦組みにおける半角文字の扱いについて、今回は、MS-DOSの一太郎と松を調べてみました。

手近にあるPC-9801が動かないので、エプソンのPC98互換機(PC-486 NOTE AU)を動かして、一太郎dash、松Ver.5をインストールして動かしてみました。一太郎と松はMS-DOSの時代にもっとも人気があったワープロソフトです。一太郎dashはノートパソコン向けに軽量化したタイプ。松Ver.5はシリーズの最後の方の製品です。

両方とも縦組み文書を作るときは、横書きで編集します。そして、印刷するときにプリンタの印刷方向と用紙の方向、および文字の向きを調整して縦組みを実現します。現在は画面上で縦組みのまま編集することができますが、当時のパソコンソフトではそうした編集操作はできませんでした。

また当時のパソコンのプリンタはページを1ページずつ取り扱う方式(ページプリンタ)ではなくて、一行ずつプリントする方式であったことも忘れることができません。

今回、プリンタは既になく、紙に印刷できないので、印刷プレビューの画面で文字がどうなるかを見てみました。

1.一太郎dash

一太郎dashの印刷プレビュー画面は次の写真です。横組では用紙上辺は画面の上辺にあたりますが、縦組みでは用紙上辺が画面の左辺になります。

縦組み文書であっても編集時は横書きで編集しますので、漢字も半角英数も文字が画面に対して正立の状態です。

そして、印刷時に漢字を左に90度回転して、用紙の上辺に対して文字の上辺が対応するようになります。一方、半角英数は回転せずに画面に対して正立のままです。結果的に、漢字に対しては右に90度回転した状態となります。

2.松ver.5

松Ver.5の印刷プレビュー画面は次の写真です。横組みでも縦組みでも画面の上辺が用紙の上辺になります。

縦組み文書であっても、横書きで編集しますので編集時は漢字も半角英数も文字が画面に対して正立の状態です。編集時の行は横方向で文字は左から右に進みます。

そして、印刷プレビューでは漢字は正立、半角英数は右に90度回転して横倒しです。行が縦になり、文字が上から下に進みます。

3.漢字と半角英数で方向が違う理由は?

一太郎も松も縦組み文書を印刷した結果は、用紙の向き(用紙上を上)に対して漢字は正立し、半角英数は右に90度回転します。

漢字が正方形なのに、半角英数は幅が1/2幅なので、漢字に対して90度寝かせるように出力することで、行の長さが横書きのときと同じになるからでしょう。

この方法は、先日のワープロ専用機ではNECの文豪と同じやり方です[*1]。

MS-DOSの時代には、文字を半角と全角のセルに表示する技術が基本になっており、文字の字形を自由自在に変形して表示することは難しかったのです。この文字の表示・印刷の技術上の制約上のために半角英数を横倒しにしたのではないだろうかと思います。

なぜ、このような設計になったかは開発担当者に確認する必要がありますが、おそらくすでにその設計理由を確定するのはできないように思います。弊社に「新松」の開発者が数名是移籍していますが、彼らに聞いても、「もう忘れてしまった。」という回答が帰ってくるのみです。

[*1] 縦組みにおける半角文字の扱い―ワープロ専用機はまったくばらばら