ところが、縦組みするときにラテンアルファベットやアラビア数字(以下、総称して「英数字」といいます)を正立させるか横倒しさせるかを決めるのは厄介です。
ラテンアルファベット
日本語の中には、ラテンアルファベットを使うことができます。例えば、A氏、NHK、ISOといった文字列の中のアルファベットは記号であり、縦組みでは一字一字正立させなければなりません。しかし、同じラテンアルファベットでも縦組みする日本語の文章の中に”International Standard Organization”というような文字列があるとき、これを一文字づつ正立して縦に並べますと大変読みにくいものとなります。従って、縦組みの中では文字列全体を右に90度回転して行に収めます(「日本語組版処理の要件」2.3.2 縦組と横組の主な相違点のb-1-ii)。これは1文字毎にみますと右に90度回転、つまり横倒ししているように見えます。
このようにラテンアルファベットはその使われ方によって、正立したり横倒しになったりします。つまり、縦組み中のラテンアルファベットは文字単位で方向を決定することができません。
アラビア数字
日本語文章中のアラビア数字についても同様です。アラビア数字の使われ方は多様です。まず、第1章、図1・1など章・節番号、箇条書きの1.など項目番号に使います。このとき1桁のアラビア数字は縦組みでは正立させたいでしょう。では、第10章、図1-10、10項のときはどうしたら良いでしょうか。さらに大きな桁数の数値や数式の中ではどうしたら良いでしょうか。
縦組みでは数字は漢字で表すというのは一つの方法ですが、しかし、大きな桁数の数字を漢字で表すと読みにくくなりますし、数式は漢字で表すことはできません。つまり大きな桁数の数字や数式中などでは横倒しのアラビア数字を使うことになるでしょう。
そうしますと、アラビア数字についても正立と横倒しを許容せざるを得ないことになります。
記号類
なお、日本語文脈と英文文脈・数式などの文脈の両方に使われる記号類についても同じように両方を許容しなければならないものがあると思われますが、議論の論点を絞るためにここでは割愛します。
本書の課題
このように日本語では横組みと縦組みでは文字の方向等の扱いを替える文字があり、その中で、英数字の取り扱いは大変厄介です。本書では縦組みにおける英数字の扱いを中心に検討します。