有料メルマガ フォローアップ フリーミアムに関する有償化1%論

2012年夏に有料メルマガが増えているということで、有料メルマガの状況を少し調べ、EPUBの可能性の検討、有料メルマガに関するセミナーを行ないました。資料[1]~[4]

最近、有料メルマガ撤退の話がいくつかでていますので整理しておきます。

  • 「有料メルマガをやめました 我が動員とマネタイズ敗北宣言」常見 陽平、アゴラ、2013年5月3日、URL:http://agora-web.jp/archives/1533347.html
    1年半ほど継続した有料メルマガ「常見陽平の愛と怒りのシゴト論 普通のあなたのひとつ上の働き方」(月2回刊、月額525円)を止めるという宣言。「売上が月1万円を超えることはほぼなかった。」とのこと。
  • 「『有料メルマガをやめました』宣言、その後 ウェブ進化にはこういうぶっちゃけ話が大事である」常見 陽平、常見陽平公式サイト、2013年5月5日、URL:http://www.yo-hey.com/archives/54477445.html
    ここにちょっと面白いデータが出ています。無料メルマガは継続しており、3609通送信し、3441通配達だそうです。で有料メルマガは最後は36人だったそうです。
  • 「有料メルマガは儲からない:名だたる著者が死屍累々な理由を考える」Hayato Ikeda、ブロゴスブログ、 2014年01月19日、URL:http://blogos.com/article/78218/
    内容は、題名どおりで有料メルマガは儲からないという話です。実際のデータが出ていて、この時点で、『「イケハヤマガジン」の有料読者は約80人。80人×378円なので、毎月30,240円の売上』だそうです。
    後ろに、成功するための条件を挙げていますが、あまり現実的ではありません。

これに関しては、以前にセミナーの講師もしていただいた、メルマガ評論家の渡辺文重氏の有料メルマガ批評に載った、
「休刊・廃刊メルマガ特集」を自分で紹介する
が面白い。

ところで、ひとつだけ、ノウハウといってはなんですが、私は経験に基づく仮説として、「有償版は無償版の1%」というフリーミアムに関する有償化1%論を立てています。「常見陽平氏の無償メルマガ3600通に対して、有償メルマガ36通(最後の段階)」は大雑把には、この「フリーミアムに関する有償化1%論」にぴったり当てはまっています。

[1] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(1)メルマガ配信の変遷
[2] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(2)メルマガの配信形式
[3] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(3)メルマガビジネスの将来
[4] 有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー 講演メモ

メルマガEPUB変換機能(アルファ版)の利用方法

CAS-UBでは、8月上旬より、メルマガをEPUBに変換する機能を追加する予定です。

現在、CAS-UBユーザーの方は、クラウド上でアルファ版機能をお試しいただくことができます。ここで使い方について簡単に説明します。

なお、正式サービス開始時にはメニュー(利用方法)が変更になることがありますのでご了承ください。

自分で作成したメルマガであれば、この機能を使って制作したEPUB3は自由にお使いいただくことができます。(自分以外の作者のメルマガを変換した場合は、私的利用を超える利用は著作権者の許諾が必要です。)

1.メルマガEPUB変換機能の選択

CAS-UBにログインすると、ユーザー毎のホーム画面を表示します。メルマガ変換機能を使うにはホーム画面上でメルマガEPUB変換のボタンをクリックします。

2.メルマガ変換機能のメニュー

次の画面がメルマガ変換機能のメニューです。この画面で「*」がついている項目を入力します。

メルマガ種別は、現在、次の4つあります。メルマガは作者によって書き方ルールが異なるため、作者毎のルールを選択してください。

・メルマガK 
・メルマガH
・メルマガT
・メルマガU

ちなみに、この4つの種別は次の4つの有料メルマガの書き方に対応します。但し、作者が書き方を変えてしまうと、うまく変換できなくなりますので、ご注意ください。現在のところ、次の4種類のメルマガ以外を正しく変換することはできません。

・メルマガK :小寺信良の「金曜ランチボックス」(「夜間飛行」より配信)
・メルマガH :『堀江貴文のブログでは言えない話』
・メルマガT :津田大介の「メディアの現場」
・メルマガU :内田樹メールマガジン 大人の条件(「夜間飛行」より配信)

「マグマグ」より配信されているメルマガは、ファイルが分割されていますが、分割されたファイルはヘッダーとフッターを削除して、ひとつのファイルにまとめてからお試しください。

入力すべき項目をすべて入力してから、一番下の「メルマガをEPUBに変換」のボタンを押すと、変換が始まります。

変換には30秒~1分程度の時間がかかります。

3.EPUB3ダウンロード

変換が完了すると次の画面になります。ブラウザのダウンロード機能を使ってEPUBをダウンロードすることができます。

4.メルマガ変換ルール

CAS-UBのメルマガEPUB変換では、上の2項の説明にもありますように、メルマガの種別毎に変換ルールを用意しなければなりません。サービス利用してみたいというメルマガ作者の方は、メルマガ変換ルール作成についてご相談ください。

○(7/30追記)「メルマガEPUB変換の4つのテンプレート(サンプル兼解説)とEPUB変換結果」にメルマガ種別のサンプルを用意しました。

■参考資料
7月11日のセミナーでのプレゼン資料PDF

■CASオンラインショップでCAS-UBのユーザー登録することで、誰でも30日間だけ無償でご利用いただくことができます。
CAS-UB評価ライセンス

有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー 講演メモ

7月11日に秋葉原UDXで開催した「有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー」[*1]を開催しました。
以下、渡辺文重氏の講演に関する簡単なメモです。

1.携帯情報サイトとメルマガ
1)月100円~1000円でテキスト(文字)情報を売るビジネスとしては、携帯公式サイトの例がある。携帯公式サイトの市場規模は文字ものだけでも1000億円程度はあったのではないだろうか?
2)携帯公式サイトとメルマガの共通点は、主な売り物が文字情報であることのほかに、初月無料、1ヶ月無料が標準であることと、解約率が低いことがある。
3)相違点としては次のことがある。
①携帯情報サイトは、ドコモ、AU、ソフトバンクなどのキャリアのプロモーションが非常に有効であった。また、公式サイトであるというお墨付きがあり、暇なときにみるものなのでサイトの使いやすさが重要、イベントなどの際は速報性が重要といった特徴がある。但し、プロモーションに関しては、スマホの時代になってからはパソコンと同じように検索エンジンが重要な役割を占めるようになった。
②これに対しメルマガは、自由競争であり、短い時間に有益な情報を得るため、つまり、時間の短縮のために読むものではないだろうか。キュレーター需要といっても良い。

2.ライター40歳の壁問題と有料メルマガ
有料メルマガは中堅ライターの40歳の壁問題への対応策としても位置づけできるかもしれない。Webサイトの運営経験から判断して、Webページは有名ライターが書いても若手ライターが書いてもページビューは同じなので、中堅ライターには仕事を依頼しづらい。つまり40歳超えのライターは自分で自分の活路を見出す必要があるが、有料メルマガがその一つになるかもしれない。

3.有料メルマガの価格モデルと代表的なもの紹介
1)メルマガの価格は、月額105円~1000円まであり、値段をつけるのは難しい。
月額105円では「黒田勇樹が働かずに生きていくためのメルマガ「黒田運送(便)」」があるが、読者は約200人で月収1万円程度である。
「井沢元彦の書かずにはいられない」は、月額525円だが記事は多くのメルマガの中ではもっとも短い。
「おすぎです!~映画って素晴らしい~」は、フォーマット化が上手。形を作るという点では一番のお奨め。奇抜なコーナーはなくて決められたものをまず出すというやり方である。月額420円帯はお奨め。
月額630円の価格帯は、ほぼ毎日発行の「J3+(メルマ)」、「津田大介の「メディアの現場」」などの化け物メルマガがあって、勝負しにくい価格帯である。


もっとも短い?「井沢元彦の書かずにはいられない」

2)有料メルマガの料金設定は、情報量と値段の設定から。ちょうど清涼飲料水(缶ジュース)くらいの単価を想定するといいのではないか。

渡辺氏の「メルマガ=ドリンク料金説[*2]」はなかなかユニークでした。このほか、渡辺氏の関連Tweetをリンクしておきます。([*3]~[*6])

[*1]有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー
[*2]https://twitter.com/sammy_sammy/status/223230221707509763
[*3]https://twitter.com/sammy_sammy/status/223229973287280641
[*4]https://twitter.com/sammy_sammy/status/223230088894885889
[*5]https://twitter.com/sammy_sammy/status/223230128656883713
[*6]https://twitter.com/sammy_sammy/status/223230181521883136

メルマガを縦組みのEPUB3やPDFに自動変換する方法の検討

UTR#50の仕様のことを何回も書いていますが、CAS-UBでこのことを取り上げる理由の一つとして、横書きで書いたメルマガを縦組みのEPUB3やPDFによる電子書籍で読むことができるようにしたい、という狙いがあります。

CAS-UBでは、メルマガをEPUBに変換するサービスを計画していますが、いまのところ横組みについての目処をつけた段階です。その後の段階として縦組みはもちろん考えているのですが、縦組みにするには一段階高いハードルがあります。

そう、「文字の方向」です。ほとんどのメルマガでは、英数字と記号が頻繁に出てきます。その英数字と記号の文字コードはほとんどが、Unicodeの基本ラテンブロック(ASCII)範囲のコードになっています。そして、現在、多くのEPUBReaderは、基本ラテンブロックの文字を横倒しにしています。このためメルマガ中の英数字が全部横倒しになってしまいます。これではとても読めません。

ということで、横倒しの文字の方向を調整するのが次のハードルとなります。処理方法として①1文字ずつ正立、②数字は2文字ペアで縦中横、③文字列全体を横倒し、とするとして、この処理を行なうべき箇所がどの位あるかをカウントしてみます。

現在のメルマガの最高峰とも言える『津田大介の「メディアの現場」』(Vol.36、2012年6月30日発行)を題材にして、その中から数ページを取り上げて、①~③の発生頻度を見てみましょう。

CAS-UBでEPUB変換して縦組スタイルシートを適用したものをAdobe Digital Editions 1.8.1で表示して、①にしたら良い箇所を緑で、②にしたら良い箇所を橙で、③にしたら良い箇所を水色の枠で囲ってしめしてみました。

1.「今週のニュースピックアップ」の中の1ページ

このページは、①7箇所、②4箇所、③なしとなります。

2.津田大介クロニクルの中の1ページ

このページは、①8箇所、②1箇所、③4箇所となります。

3.今週の原発情報クリッピングの1ページ

このページは、①7箇所、②7箇所、③5箇所となります。

4.奥の細道の1ページ

このページは、①9箇所、②10箇所、③1箇所となります。

●以上の4ページだけでみますと、

①英数字を1文字ずつ正立させると良い箇所:31箇所
②数字をペアで縦中横にすると良い箇所:22箇所
③英数字を文字列全体として横倒しすると良い箇所:10箇所

となります。

いままでに様々な縦組み書籍の文字の方向を調べて、このブログで結果を報告してきました。それと凡そ同じ傾向を示しています。

数字については横倒しすると良い箇所はほとんどなくほぼ正立が望ましくなります。特に縦中横にすると良い箇所が非常に頻繁に出てくるのが特徴です。

『津田大介の「メディアの現場」』は、URLが頻出します。この例でもURLが4箇所ありますが、それを除くと通常に書かれた日本語文章で英数字を横倒しすべき箇所は少ないことが分かります。

さて、いま、手作業で方向指定方針を示したのですが、これを自動的に判別して最適なマークアップをすることができるとメルマガの縦組みEPUB、縦組み書籍化が自動的に実現できることになります。

英数字がデフォルト正立であれば、このマークアップ数は半減しますが、プログラムで処理するなら作業負荷はどっちでもそれほど変わりません。

メルマガEPUB版をiBooksで読んでみると・・・

以前にCAS-UBにメルマガをEPUBにするインポート機能をつけていることを書きました。

今日はその続きですが、メルマガをEPUBにしたものをiBooks(新しいiPad)で表示してどうしたら読みやすくなるかを考えて見ます。

材料としては次の2種類のメルマガを使わせていただきました。

1.小寺信良の「金曜ランチボックス」 2012年6月15日 Vol.030 「夜間飛行」から配信のもの
2.津田大介の「メディアの現場」 2012年6月13日 Vol.36 「夜間飛行」から配信のもの

「夜間飛行」はメルマガをテキスト形式の他にEPUB形式でも配信しています。「金曜ランチボックス」は「夜間飛行」のシステムで自動的にEPUB形式に変換しているようですが、「メディアの現場」は、津田大介氏の事務所(ネオローグ)が独自にEPUB形式にしてから、それを配信しているようです。

そこで、現在、それぞれのメルマガで配信されているEPUB版(オリジナル版と略記)と、CAS-UBでEPUB形式に変換したもの(本文ゴシック、本文明朝)2種類とを比較してみました。なお、CAS-UBのスタイルシートは現在開発中のアルファ版ですので、正式提供時は変更になることがあります。(スタイルシートは、本日現在クラウドから指定できません)。

1.小寺信良の「金曜ランチボックス」の場合
a) オリジナル版

b) CAS-UB本文ゴシック

c) CAS-UB本文明朝

2.津田大介の「メディアの現場」の場合
a) オリジナル版

b) CAS-UB本文ゴシック

c) CAS-UB本文明朝

3.備考

2種類のメルマガEPUB版についてそれぞれ1画面だけ紹介しました。少し特徴を挙げます。

1)iBookは、特に指定しないと本文がかな漢字はゴシック体、英数字がプロポーショナルの明朝系フォントになります。オリジナル版はそのような表示になっています。

印刷の場合はこういう使い方はしないのではないかと思いますが、URLのような長い英数字列が頻繁に出てくる場合、これでも良いかという気がします。

2)CAS-UB本文ゴシック版は、見出しも本文もゴシック体を有効になるように指定しています。

本文の行送りが少し狭いような印象があります。また、メルマガを自動的にEPUBにするとURLがそのまま見えてしまいますので、URLの表示に工夫が必要なように思います。

3)CAS-UB本文明朝版は、見出しはゴシック、本文が明朝体に指定しています。

新しいiPad位の解像度になりますと、本文を明朝にしても十分読むことができるように思います。ただ、ちょっと画面が白すぎるのが気になりますね。

さて、読者の皆様はこの3種類でどれが一番読みやすいと感じますか。いかがでしょうか。コメントをいただけるとありがたいです。

《注意》現在、CSSスタイルシートは開発中のため実際のサービスで提供されるものは変更になると思います。ご了承ください。

メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(3)メルマガビジネスの将来

『堀江貴文のブログでは言えない話』の成功により、有料メルマガのブームが始まったのですが、それでは将来はどうなるのでしょうか。

日経ビジネス2012年6月25日号の「敗軍の将、兵を語る」は「ホリエモンの獄中手記」です。その記事の最後の方に次のような文章があります:

しかし、「有料メルマガ」というメディアは大きな可能性があるかもしれません。将来は、テレビや新聞、雑誌に置き換わっていくものだと期待し、発信を続けていきます。

・有料メルマガが堀江氏の予見通り大きなメディアに成長するのでしょうか?
・そのためには何が必要なのでしょうか?

このことについて多方面から勉強してみたいと考えて、有料メルマガライターまたは制作者を対象にして、「ビジネスモデルとしての有料メルマガを考える」セミナーを開催することにしました。本セミナーでは、メルマガ評論家の渡辺文重氏をゲストにお招きして、最近の有料メルマガの動きや未来についてお話をいただきます。

また、私は、EPUBがその一つの鍵になるのではないかと考えています。そして、アンテナハウスでは、メルマガを自動でEPUB3に変換するサービスを近く開始します。本セミナーではその狙いや内容についても紹介します。

●本セミナーの概要

テーマ 有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー
~ビジネスモデルとしての有料メルマガを考える~
開催日時 2012年7月11日(水)18時30分~20時45分(受付開始18時00分)
主な内容 ・渡辺 文重氏講演「有料メルマガの未来」(45分)
・アンテナハウスのメルマガからEPUB3への変換サービスの趣旨とサービス内容説明(40分)
・質疑応答(15分)
会場 東京・秋葉原UDXビル8F ネットカンファレンス会議室B
定員 40名
参加費用 一般5,250円(消費税込み)。但し、有料メルマガ・ライターまたは制作者は発行しているメルマガを示していただいた場合、無料となります。
主催 アンテナハウス株式会社
セミナー事務局 株式会社エクスイズム
お申し込み 次のセミナー事務局の申し込みフォームでお申し込みください。
セミナー事務局申し込み先(エクスイズムのWebページにジャンプします)

メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(2)メルマガの配信形式

前回はメルマガ配信スタンドの動向、有料メルマガの増加、著者個人によるメルマガ配信の可能性、などについて考えてみました。

今回は、メルマガの配信形式として、EPUBが普及するかどうかを考えて見ます。

やはり、最初に過去の歴史をさかのぼって見ます。まず、電子メールはこれまではテキスト形式が主流でHTMLメールが副次的に使われてきました。しかし、日本ではHTMLメールはあまり普及していません。米国などではHTMLメールがもっと普及していると耳にします。

「マグマグ」のベストセラーメールの配信形式をみてもHTMLメールは少ないことから、メルマガ配信形式としてのHTMLメールもあまり普及していないと言えるようです。

1. HTMLメールが普及しなかった理由

HTML形式にすることで、テキスト形式に比べて次のようなメリットがあります。

(1) 見出しなどにレイアウトをつけたり、背景をつけたり、フォントサイズ指定、フォントファミリー指定などのレイアウト指定が可能
(2) 画像をページの中に埋め込むことでいままでコンテンツの充実が図れる
(3) 表の表現ができる

こうしてみますと、表現力という点では、HTMLメールがよさそうに見えます。

しかし、HTMLメールには次のような問題点があります。

(1) HTMLメールに対応したメール閲読ソフトが必要。
(2) HTMLメールでは、スクリプトを埋め込むことができるのでこれを悪用したウイルスが可能になるという問題があり、最初の頃にかなりネガティブキャンペーンが行なわれた。
(3) テキストだけと比べて、表などのレイアウトを指定するには、プラスアルファの作業が必要になる。
(4) さらにレイアウトセンスが問われる。一人で執筆能力とレイアウト能力を兼ね備えた著者は少ない。
(5) 画像を含めることが可能になるので、それを生かすためには、テキスト能力に加えて写真やイラストなどの画像を準備することが必要になる。

有料メルマガの場合は、お客さまでもある読者に向かってウイルスを送信する著者はいないでしょうし、(1)、(2)はあまり問題にならないでしょう。

(3)~(5)からは、HTMLメールの可能性を生かすには、著者の方に文章を書くことに加えて、熱意・スキル、スキルが足りない場合にはそれを補う体制作りが必要になることがわかります。

2. EPUB版メルマガの登場

前々回(CAS-UBにメルマガインポート機能(アルファ版)を追加)
に紹介しましたが、2011年10月に津田大介さんのメルマガをEPUBに無償変換するサービスが登場したことがTwitter上で話題になりました。

その後、『津田大介の「メディアの現場」』は既にEPUB版のテキストメールとの同時配信を開始しています。また、「夜間飛行」はテキストメールとEPUBメールの同時配信を行なっています。

さらに、インプレスはEPUB版のみのメルマガを配信開始しています。このようにEPUBがメルマガの形式として採用される動きが出ています。

3. EPUB版メルマガの将来を考える

今後、これらの動きはどこまで進むのでしょうか?

・有料メルマガの間に爆発的に普及するか、
・HTMLメールと同じように、一部の著者の採用するところでとどまるのでしょうか?

EPUB版メルマガは表現力という点ではHTMLメールと類似しています。つまりHTMLメールの長所を引き継ぐことになります。

さらに、HTMLメールに無い、EPUB版メルマガの特徴として第一にパッケージ化があります。パッケージ化によって出版物としての形態を整えることができ、電子書店の店頭に並べることが可能になります。つまり流通ルートを増やせる可能性がある、ということになります。

一方で、HTMLメールが普及しなかった理由の(1)~(5)は、HTMLメールとEPUBメルマガの違いは、閲読環境のメールソフトをEPUBリーダやスマホ・タブレット環境に置き換えて考えると、EPUB版メルマガにもそのままあてはまってしまうようです。

ですので、EPUBメルマガが普及するためには、次の要件が整う必要があるのでしょう。

・まず閲読環境の普及が必須です。
・次にEPUB版メルマガの制作体制を整えること。

■■7月11日「有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー」を開催します。

メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(1)メルマガ配信の変遷

現在は、週刊有料メルマガ『堀江貴文のブログでは言えない話』が発行数1万を超える成功を収めたのをきっかけとするメルマガブームの最中です。

ここでは有料メルマガ配信の未来を考えるために、これまでのメルマガ配信の歴史を少し見てみます。ざっと調べてみた範囲ですので、間違いが多いと思いますが、お気づきの点を指摘いただけると嬉しいです。

1. 初期のメルマガ配信スタンド

昔からのメルマガ配信スタンドでは、「まぐまぐ」が有名です。1997年にスタートした老舗です。
http://www.mag2.com/

「マグマグ」より少し遅れてNiftyも1998年7月にメルマガ配信サービス(Macky!)を開始しました。こちらは、その後、いくつかの変遷を経て終了になっています。このほかに、1990年代終わりから2000年代初めには、メルマ、メルマガ天国、パブジン、カブライト、E-Magazineなどの多数のメルマガ配信サービスがあったようです。

例えば次の記事:電子メールマガジンの作り方:インターネットウオッチ
http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/m_mag/

しかし、上に掲載したメルマガ配信スタンドは2012年現在ではすべて活動を停止しています。
こうした初期のメルマガ配信スタンドは、「まぐまぐ」を除いて運営のための収入を確保するビジネスモデルが確立できなかったのではないかと思います。

おそらく初期のメルマガ配信スタンドは広告モデルであったため、読者を多数確保しなければならず、大きなスタンドしか広告収入を確保できなかったのだろうと推測します。なぜ、「まぐまぐ」が生き残り、他は生き残ることができなかったのかはもう少し詳しく調べてみる必要があります。

2. 有料メルマガの登場

初期のメルマガ配信スタンドは、その殆どが無料メルマガの配信だったと見られます。「まぐまぐ」が有料メルマガの配信を始めたのは、2001年の秋となっています。

○まぐまぐ、有料メールマガジン配信「まぐまぐプレミアム」開始
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0731/magpre.htm

週刊有料メルマガ『堀江貴文のブログでは言えない話』はこの有料メルマガの延長上にあります。

3. 有料メルマガ専門配信スタンドの登場

「まぐまぐ」は、無料メルマガからスタートして有料メルマガもサービスするようになったのですが、2010年頃から、有料メルマガを主体とするメルマガ配信スタンドが登場しています。これは新しい動きと言えます。

各メルマガスタンドがブランド・イメージ確立のためか、著者をかなり厳選してメルマガ発行に取り組んでいるようです。このためメルマガ配信スタンド毎にみますと、タイトル数がまだ2桁の前半です。

こうした新しいスタンドは著者をセレクトするという点で「まぐまぐ」とは一線を画しています。プロに近い著者に限定することでコンテンツのレベルを確保し、読者が安心して購読できることになります。その一方で、有料メルマガを配信したい多くの著者にとっては敷居の高い存在となります。

こういったメルマガ配信スタンドが今後どうなるか、その行方には目を離せません。

●「夜間飛行」
http://yakan-hiko.com/
ひよこファイターmusic合同会社
2008年設立
17人の著者の有料メルマガを配信

●「タグマ!」
http://www.targma.jp/
株式会社メディア・ヴァーグ
2011年4月設立

●「BLOGOSメルマガ」
http://magazine.livedoor.com/
ライブドアの有料メルマガサービス
24誌を配信

●「ビジスパ」
http://biz-spice.jp/public/
株式会社ビジスパ

●「フーミー」
http://foomii.com/magazines/
株式会社foomii
2010年6月~
42タイトル

●「イズメディアモール」
https://mall.ismedia.jp/?gclid=CMmt4-e227ACFUdKpgodcg2R0Q
2011/12/16 :イズメディア・モール オープン
イズメディア・モールにメルマガのセレクトショップがオープンしました。

4. 出版社によるメルマガ配信への動き

もうひとつ眼を離すことができないのは、大手の出版社によるメルマガ配信開始の動きです。

4.1 サイゾウ
サイゾウメールマガジン
http://www.cyzo.com/2011/06/post_7638.html
PC、携帯、スマートフォン向け/HTML形式

4.2 インプレス
MAGon
http://magon.impress.co.jp/
メール添付でEPUBを配信
2012年3月1日

4.3 講談社
講談社から初の有料メルマガ!第一弾は古賀茂明氏 
『現代ビジネス』( http://gendai.ismedia.jp /編集長・瀬尾傑)は、2012年1月12日、有料メールマガジンの発行を始めました。講談社が有料メールマガジンを発行するのは初めてです。

4.4 文芸春秋
Number 有料メルマガ
http://number.bunshun.jp/list/vianumber
2011年3月開始
4タイトル

5. 著者自身の有料メルマガ配信

著者自身がメールマガジンを配信する方法の基本は、(1) スタンドアロンの専用メール配信ソフトを使って配信する方法です。これは通常のメールクライアントの延長になります。(2) さらに著者がメール専用サーバを立ててメールを配信する方法があります。(1)、(2)は専用のシステムですが、別の方法として、(3)共有インターネットのメール配信サービス(メルマガ配信Webサービス)があります。

配信サービスの方はWebサービス化によって、利用への敷居は今後さらに下がると見込まれます。

もう一つ、メルマガ配信スタンドの利用と著者自身の配信するときの相違点は、決済サービスがあります。決済サービスについては、個人の著者が顧客のクレジットカード情報を取得するのは敷居が高いのですが、現在は、PayPalのような仕組みで小額決済を簡単にできるようになってきています。

この方式による有料メルマガ発行がどの程度行なわれているかは簡単には調べることはできません。発行者が点在し、メルマガの読者に対してワン・ツー・ワン(ピンポイント)で配信する活動が、社会全体でどの程度の行なわれているかを補足するにはしっかりと設計した統計的な調査が必要となります。

しかし、配信と決済の敷居が下がっていることを考慮すると、著者自身によるメルマガ配信が増えているのではないかと推測できます。

6. まとめ

メルマガは日本独自のサービスといわれていますが、1990年代後半に最初のメルマガ配信スタンドである「まぐまぐ」が登場して15年を経過しました。当初は無料メルマガ中心でした。

しかし、堀江貴文氏が有料メルマガで成功を見せたことによって、メルマガ配信サービス業界が全体として新しいステージに入っている、と言えます。

この有料メルマガ配信の新ステージにおいてEPUBがどのような役割を果たすのでしょうか。これについては、また後日検討してみたいと思います。

■7月11日「有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー」を開催します。

CAS-UBにメルマガインポート機能(アルファ版)を追加

半年ほど前、Twitterで、津田大介さんのメルマガをEPUBに変換するサービスの話が話題になっていました。

これは、Masahiko OHKUBO(@mah_jp)さんという方が開発して、2011年10月22日から運用しているものです。

http://remoteroom.jp/mail2epub/

5月22日のJEPAのセミナーで、その後、津田大介さんの事務所ネオローグが独自にEPUB変換を行なうようになったという報告がありました。

http://www.neo-logue.com/mailmag/index.html

Twitter上で、話題になったときから、大変関心をもって見守っていたのですが、JEPAのセミナーは大変に刺激的なものでした。早速、弊社のエンジニアに頼んで、同じような機能をCAS-UBに用意しました。

CAS-UBのドラフトの画面のテキストインポート機能にメルマガをインポートする機能(アルファ版)を追加しています。インポートファイルの形式をクリックすると次の画面になります。

ここに4種類のメニューは、次の4つのメルマガに対応します。

・メルマガH:マグマグから配信されている「堀江貴文のブログでは言えない話」
・メルマガK:「夜間飛行」から配信されている小寺信良の「金曜ランチボックス」
・メルマガT:「夜間飛行」から配信されている『津田大介の「メディアの現場」』
・メルマガU:「夜間飛行」から配信されている「内田樹メールマガジン 大人の条件」

実はメルマガをEPUBに変換するサービスの大きな問題は、メルマガ一つ一つに、専用の変換メニューを用意しなければならないことです。プログラムそのものは難しくないのですが、一定のルールに従って書いてもらえないと綺麗な変換ができないのですね。で、ルールは各著者によって違いますので、個別対応が必要になります。

メルマガ用EPUB3スタイルシートは、現在、開発中です。とりあえずは、既存のスタイルシートを少し直して、「標準メルマガEPUB3(アルファ版)」を用意してありますので、関心をお持ちのかたはお試しになってみてください。

但し、現在、綺麗に変換できるメルマガとしては、上記の4種類(と同じ雛形で書いたメルマガ)だけで、それ以外は満足のいく変換にはなりません。

なお、上の4種類はいずれも既にEPUB形式で配信されていますが、CAS-UBのEPUB自動変換はそれらのものよりも多少は良いと思います。

新しいスタイルシートやビジネスモデルを含めて「国際電子出版EXPO」にてご案内の予定です。

また、7月11日夕方、秋葉原にて「ビジネスモデルとしての有料メルマガを考える」というテーマでセミナーを予定しています。

ご期待ください。