縦組みにおける章・節・項番号、図表番号、箇条書き番号の付け方について珍しい例

縦組みで、章・節・項番号、図表番号、箇条書き番号などに、アラビア数字とラテンアルファベット(英数字)を使う時、章・節・項番号の区切り文字に何を使うかは悩ましい。

中点・半角中点を使うのが無難だが、全角(em)ダッシュ・半角(en)ダッシュを使う時も多い。章・節・項などの番号が漢字なら良いのだが、アラビア数字を使うと、アラビア数字の形と区切り文字の位置・形の関係でなんとなくバランスが悪く感じる。

番号付箇条書きで番号の後ろに区切り文字を付けるときはさらに悩ましい、と日ごろ思っていた。ところが、昨日次のような使い方を見つけた。

次の写真は『新版 大学生のためのレポート・論文術』(小笠原 喜康、講談社現代新書、2009年11月20日発行)の目次である。

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図1 目次

縦組みの本で章・節・項番号をこのような区切り方をしている本は珍しい。

本書を読むと、章・節・項の区切り方について次のような説明がある。

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図2 章・節・項の番号の表記法(本文p.164)

本書の内容は「以下、すべてA4・横書きを前提に進める」(p.17)としており、横書きの論文の書き方に関するものである。上の図は横書き論文における章・節・項番号の付け方の説明を縦組みで行なっているわけだ。

そして、本書は横書きで書いた原稿を、忠実に縦組みにしているようだ。つまり、次の図の右のようにWordで書いた原稿を縦組みするために、アラビア数字とピリオドを全角形に変換してそのまま組版したのだろう。

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図3 半角系から全角形への変換

著者は(横書きでは)「アルファベットや数字は、すべて半角にする」(p.26)としている。図2の説明は、もともと横書きで半角形で書かれた説明だろう。しかし、本書は、本文縦組みで説明するために、文字を全角形として表しているのである。「アルファベットや数字は、すべて半角とする」という規則と矛盾しているとも言える。

全角ピリオドを区切り文字に使うのは、原稿に忠実ではある。しかし、一方で、縦組みと横組みでは一部の文字の字形を変えるという組版の規則もある。本書でも縦書きアラビア数字中の小数点は中点であらわしている。

このほか、本書では、番号付き箇条書きの箇条番号(ラベル)をアラビア数字やラテンアルファベットの小文字を使っている箇所があるが、ラベルを同じように全角形にして、全角ピリオドを付加している。ラベルを漢字にすると多少見栄えが良いが、ラベルに全角形のアラビア数字やアルファベットを使って全角ピリオドを付けるとあまり体裁が良いとは感じない。これは慣れの問題かもしれないが。

本書の内容は横書きの論文に関するものであり、内容的にアルファベットやアラビア数字が多い。さらに記号類が頻発する。原稿も恐らく横書きで書かれている。書籍にするときに、かなり無理して縦組みにしているようだ。そのために書記方法が不統一になっている箇所も多々見受けられる。こういう体裁のあまり良くない本が学生さんの間で一般化するとあまり嬉しくない。

本書に限らず、学生向けの論文の書き方の本は多数ある。その多くは、内容からは横書きがふさわしいのに縦書きになっている。『理科系の作文技術』という有名な本は横書きになっているし、横書きでは売れないということもないだろう。無理に縦組みにするのはそろそろやめたらどうかと思うのだが。