「超・文章法」にみる縦組みの英数字・記号類の方向

日本語の縦組みにおける英数字と記号の方向を調べています。さて、今回は、「超・文章法」(野口 悠紀雄著)を調べてみます。本当は、この分野で一番の「理科系の作文技術」を調査したいのですが、残念ながら、これは横組みです。

本書は原則縦組みですが、ところどころに挿入されたコラムのページが1ページ丸ごと横組みになっています。また、最後の索引が横組みです。以下の調査では、横組みページを除外します。

■特徴
数字は一九九三年などの年号、一五〇〇字などの数量をはじめとして原則漢字ですので伝統的組版といえますが、英単語が多数あります。それも最初の方は、日本語書名の次の()内に原題を記しているような形式ですが、後ろに方では英文が主()内に日本語などと逆転しています。いづれにしても欧文が多数出てくるのが本書の特徴です。

■ラテンアルファベット
ラテンアルファベットの正立用法は、「Aさん」、「重力乗数g」、のような記号としての使用、頭字語、「(A)」のような箇条番号、「A・ピアーズ」のような名前の頭文字、「日本人はlとrの区別が」など多彩です。一方、横倒しは、IEEE 802.3とURLの表記を除くとすべて欧文の文節または単語です。

なお、vsが縦中横です。

■数字
数字は上述のように漢数字が主ですが、章番号、節番号、箇条書きの項番号、パート2などの順序数がアラビア数字です。また、A4のような慣用句もアラビア数字です。漢数字中心の伝統的なスタイルなので縦中横は比較的少なくなります。

アラビア数字は正立が主ですが、参考文献である欧文書籍の発行年、外国人の生年など欧文文脈中では横倒し。また、IEEE 802.3とか6×1024 といった表記が横倒しです。

■記号類
記号類は和文中の記号は他の書籍とそれほど変わらず、種類は比較的少ないですが、欧文中の記号の種類が比較的多いです。

正立:
?!%のほか、ⅠⅡなどローマ数字が正立です。′[U+2032]

縦中横:
A′[U+2032, エイ・プライム]

横倒し(右90度回転):
和文中:「」()『』–[U+2013]——[2倍ダッシュが横倒し]=【】…:;〈〉
欧文・URL中:'[U+0027]“”[引用符],.:;/-&

■データ
以下では、1文字ずつ正立する英数字を全角文字コードで表しています。[]内は注、[*]は後注です。

1.ラテンアルファベット
1.1 1文字ずつ正立(例)
Aさん、A新聞、SF作家、A地点、R2–D2、C–3PO、重力乗数g、距離(d)、速さ(v)、A4一枚、PTA会議、A・ピアース、ITは、A・B・ミグダル、OS、(A)[()はそれぞれ右90度回転]、QED、DAVプロトコル、WECプロトコル、DVDプレイヤー、GM(ゼネラル・モータース)、日本人はlとrの区別が、LIBOR、ITM、OTM

1.2 縦中横
日常vs旅、善vs悪

1.3 横倒し(例)
『夜来る』(原題 Nightfall)、「旅の仲間」(The Fellowship of the Ring )、ジョセフ・キャンベル(Joseph Champbell, 1904–87)、善悪や正邪を逆転させる(Fair is foul, and foul is fair)、hidden agendaというのがある(……)[()内に説明文]、ポーリンの冒険(The Perils of Pauline)、悪いことのクライマックス(bottom)であり、良いことのクライマックス(zenith)だ、All’s Well Thats Ends Well(『終わりよければすべてよし』)、Minimax(最大値の最小)、Maxmin(最小値の最大)、鞍点 saddle point といわれる、『若草物語』(Little Women)、『小公子』(Little Lord FauntLeroy)、『母を訪ねて三千里(愛の学校)』(Cuore)、『岩窟王』(Comte de Monte-Cristo)、The Lord of the Ringsを「ロード・オフ・ザ・リング」として、モットー(motto)、If the stars should appear one night in a thousand years…(もし星が千年に一度しか現れないのであれば)、Ralph Waldo Emerson, Nature, 1836.、全文は、http://www.ecotopia.org/about/nature/naturrel.html、John Wood Campbell, Jr., 1910-17、Rhoda Thomas Tripp, The International Thesaurus of Quotations, Harper & Row (1970) [書名はイタリック]、Bartlett’s Familiar Quotations [イタリック]、電子図書館PROJECT BARTLEBY、例えば「love」と、The Left-Handed Dictionary [イタリック]、J. M. and M. J. Cohen, Dictionary of Quotations, Penguin, 1960 [書名はイタリック、このほかにも、参考文献は欧文が多いが残りは省略。]、“Roman Holiday”、英語ではthatを用いて、英語ではclause)、英語ではphrase)、IEEE 802.3、Quantity(量)、Comparative(比較)、 adv(副詞)[p.207]、very、gas、

2.アラビア数字
2.1 正立(例)
第1章、1[節番号]、Ⅱ–1、[1]、『「超」整理法3』、1[箇条書き項目番号]、(1)[1が正立、(と)は1の上下にて右90度回転]、図2–1、桃太郎パート2、A4

2.2 縦中横
11ページ

2.3 横倒し
ジョセフ・キャンベル(Joseph Champbell, 1904–87)、6×1024 [数字全体]、IEEE 802.3

3.記号
2.1 正立
?、!、Ⅰ、Ⅱ–1[–を除く]、九〇%[%記号]

2.2 縦中横
A′[p.212、エイ・プライム]

2.3 横倒し(右90度回転)
「、」、(、)、『、』、Ⅱ–1[–が横倒し]、(1)——内容面の[()と2倍ダッシュが横倒し]、内容別に分類する方法=正しい、【、】、第二楽章は……[3点リーダ]、[地球の重さ×g][p.106]、All’s Well Thats Ends Well [U+0027 アポストロフが横倒し]、“Aritheuso rose from a couch of snows in the Aquasaromian Mountains” [p.142 引用符が横倒し]、Ralph Waldo Emerson, Nature, 1836. [p.147]、http://www.ecotopia.org/about/nature/naturrel.html、John Wood Campbell, Jr., 1910-17、:の記号を認める[p.168]、そして;記号が使われて、:(コロン)、と;(セミコロン)、(,)(;)(:)(.)の順で区切る力が強い[p.202]、〈、〉[p.202]、Roget’s Thesaurus [p.207]、曖昧の〈が〉、記号(′)はプライムと[p.212]

■書籍情報
書名:「超・文章法」
著者:野口 悠紀雄著
発行元:中央公論社 中公新書
発行年月:2010年10月10日第10版
ISBN:4-12-101662-9

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「縦組みにおける英数字正立論」0.4版発行。第1章、第2章を全面改訂しました。

この数ヶ月の調査結果と、Twitterなどでの議論を踏まえて、「縦組みにおける英数字正立論」を改訂して0.4版としました。

修正箇所: 第1章、第2章は全面改訂。第5章は入れ替え(旧第5章の内容は、新第2章に反映していますが文章は全部書き換え)

第1章は序論に近いので、重要性は低いですが、第2章に結論を持ってきました。

2.1 日本語縦組みの3つの方式

日本語の縦組みの典型には、新聞方式、伝統的方式、現代方式の3種類があること。その例と特徴を示しています。

2.2 欧字の和字扱い・和欧混植・縦中横

日本語の縦組みにおける英数字の扱いの特徴は欧字の和字扱い・和欧混植・縦中横の3項目にあること。3項目の説明を示し、新聞方式、伝統的方式、現代方式との関係を示しています。

特に欧字の和字扱いと和欧混植は、英数字に対する相反する取り扱いです。英数字の文字コード側からみてこの取り扱いを決定する方法がないこと、これについて記述した標準仕様が従来存在しなかったことが、UTR#50議論の混迷の原因と思います。

2.3 マークアップの必要性

日本語の縦組みを指定するには、マークアップが必須であること、その理由を示しています。

2.4 SVOをデフォルトとするマークアップの薦め

MVOをデフォルトとするマークアップとSVOをデフォルトとするマークアップの方法について比較検討します。
その結果として、SVOをデフォルトとするマークアップの方が優れていることを示します。

●PDF版とEPUB3版を作成して、こちらから配布中です。

http://www.cas-ub.com/project/index.html#Free

ぜひご高覧、ご意見を賜りたく存じます。よろしくお願いします。

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