ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズから見る、書籍出版とWebマーケティングの難しさの類似性

CAS電子出版では、現在、「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ」[1]を次々とリリースしています。

この編集方針は、既に別途紹介しています。一番詳しいのはこちらです:CAS-UBによる本の制作工程の実例: 「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」編集・制作作業(上)

今日は、本シリーズに書かれている石田社長の話を読んだり、自分自身の経験をもとにして、特に本の出版についてWebマーケティングの視点から考えてみたいと思います。

出版は歴史が長く、さまざまな形態の出版が行われてきました。

紙に印刷した本の出版流通の方式は大雑把には次のように分けられるでしょう。
①取次を通して書店の店頭に並ぶ(間接販売)、②読者への直販・直接配達方式、③職場・学校など職域での販売

日本の書籍の販売が、現在どのような割合になっているかは調べていませんが、日頃のニュースから感じているところは、取次を通して書店の店頭に並ぶという流通方式は苦しくなっているようです。②の読者への直販方式で、オンラインストア方式、もちろんアマゾンが中心でしょう、のシェアが増えているためと思います。職場や学校などの職域販売はどうなっているのでしょうか? これは分かりません。

新しい出版としては、④Kindle/EPUBなどによる電子出版、それから⑤流通によるプリントオンデマンド出版の三つの形式の出版方式があります。流通によるプリントオンデマンド出版は電子出版よりも新しいコンセプトです。詳しくはこちらをご覧ください:流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)。そこで書きましたように④と⑤はほとんど兄弟と言えます。

アマゾンは、現在、⑤流通によるプリントオンデマンド出版に力を入れているようです。印刷した本の扱いと比べると、書籍を在庫する倉庫や在庫管理が不要になり、またピッキングもほとんど不要になるなど、③の方式はアマゾンにとっては非常に大きなメリットがあります。また、コストについて考えますと、プリントと製本の設備の稼働率を高め、大量に生産し、減価償却を速められるかが勝負でしょう。減価償却を速めることで技術革新によるコストダウンより速く享受できるようになりますので、一旦、アマゾンでの仕組みが回り始めると競争相手がコスト面で立ち向かうのが難しくなるでしょう。

話が横道にそれましたが、現在は、①の取次経由の書店での販売に対して、(②+④+⑤)という形態の、Webを使った新しい流通が伸びているという転換期と言えます。

この両者を対比すると、「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」の中で繰り返し語られている、リアル店舗とEコマースの相違と似ています。次のような点です。

・リアル店舗には商圏がある。しかし、Eコマースには商圏がなく、日本全国の同業者が競争相手になってしまう。強者の世界となりがち。
・リアル店舗は、通りがかりの人が見つけてくれる(リアルビジネスは立地が重要)。しかし、Eコマースは(見えないので)店を開いても通りがかりの人に気が付いてもらえない。
・ネットショップを開店しても、アクセスがない、思ったほど売れない。

Eコマースの難しさは、結局「とおりがかりで見かけて」発見してもらえないということにあるようです。一方、検索で見つけてもらうには検索エンジンの検索結果で上位に位置されないとアクセスしてもらえない、ということに集約されます。結局、どうやって発見してもらうか? ということがEコマース成功への第一関門です。売上管理、流通、在庫管理とかはすべて売れてからの話ですから。

ひとつひとつの本とEコマースのお店を同列には比較しにくいとは思いますが、電子書籍やプリントオンデマンドなどの新しい出版方式の難しさって、Eコマースの難しさと似ているように思います。

[1] ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ