Adobe Digital Editions 3.0がリリースされました。しかし、EPUB3.0の目次は依然としてサポートされていません。

昨日(1月23日)Adobe Digital Editions 3.0(ADE3.0)がリリースされたというニュースが流れました。

日本語のADEのダウンロードページ(http://www.adobe.com/jp/products/digital-editions/download.html)ではまだ2.0ダウンロードになっています(24日7時)。しかし、英語のダウンロードページ(http://www.adobe.com/products/digital-editions/download.html)では3.0になっています。

ということで早速、ダウンロードして、さっと眺めてみました。

私的には、一番期待していたのは、ナビゲーション用のパネルに表示する目次の変更です。ADE2.0ではEPUB2.0時代のNCX方式の目次のままです。EPUB3.0の仕様では、標準目次はナビゲーション(nav要素epub:type=”toc”の下のツリー)で表す方式に変更になり、主要EPUBリーダーはほとんどNAV方式をサポートするようになりました。しかし、ADE2.0は、NAVで目次を表現する方式はサポートしていません。

ADE3.0でNAV方式に切り替わることを期待したのですが、しかし、残念ながら依然としてNAV目次はサポートしていません。

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図1 論理目次にナビゲーション方式のみのEPUBでは、目次パネルがブランクのまま

EPUB3ではNCX方式の目次は近々使われなくなるだろうと予想していました。そこでCAS-UBはV2.2正式版にする際に、EPUB3.0生成設定のNCX目次のチェックをOFFに変更してしまいました。しかし、ADE3.0ではそうならなかったということです。

そこで、お手数ですが、CAS-UBで生成したEPUB3.0ファイルをADE3.0で表示・利用される場合は、CAS-UBのEPUB3生成「一般」設定で、EPUB2と互換の目次を出すようにチェックを入れていただく必要があります。

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図2 EPUB3生成の「一般」設定で、「EPUB2と互換の目次」の項

このチェックボックスは。デフォルトではチェック:OFFになっていますので、チェックを入れてONとして、設定の「保存」をしてください。

その設定でEPUB3を生成します、すると、次のようにナビゲーションのパネルに目次が表示されるようになります。

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図3 論理目次をEPUB2と互換の目次も出力したEPUB

ADE3.0では表示精度については、縦書きを中心に若干の改良をおこなったとのとです[1]
・数式(MathML)のサポートは行なわれていません。
・SVGはサポートしています。SVGのサポートは、2.0と3.0であまり変わっていないようです。

[1]ADE3.0 features.html

「EPUBリーダー比較調査」(暫定版)を公開しました。内容に関してコメントを集めています。

 6月末より調査していましたが、2013年夏の時点における一般ユーザ-向けEPUBリーダーの比較調査の結果がまとまりました。

 とりいそぎ、下記にα版として公開致します。取り上げたEPUBリーダーの選定あるいは評価の結果についてのコメントをいただければと存じます。

■調査レポート

ダウンロード場所URL

「EPUBリーダー比較調査レポート(α版)―汎用EPUBリーダー15種類を対象とする機能比較を中心に―」(α版)

調査レポートは7月31日に完成版として公開しました。その後、8月15日に誤りを修正しています。8月15日版(PDF版、EPUB版)を、上記のURLよりダウンロードしていただくことができます。

■調査の背景

 今後、電子書籍というキーワードの中で、EPUBは間違いなく主流になるフォーマットであり、EPUBの普及次第で電子化の進捗が決まってくる時代になると予測される。EPUBファイルはパッケージ型であり単独で流通する。EPUBファイルを閲読するには自分の機器で使うことができるEPUBリーダー(EPUBビューアということもある)が必須である。EPUBは公開されたフォーマットなので、誰でもリーダーを開発することができ、様々なリーダーが提供されている。

 このように大きな役割を担うのがEPUBリーダーの存在であり、これらのアプリの出来次第でEPUBの普及も決まってくるわけである。EPUB文書の作成スキルの向上と、リーダーの完成度の向上は表裏一体であり、どちらが欠けても、市場は膨らんで行かないものと考えられる。

 EPUBリーダーには、①電子書店がその書店で販売したものを読むために提供している電子書店に専属のものと②一般に配布されるEPUBファイルを読むためのものがある。本調査では、②の一般ユーザーが自分で作成したEPUBを表示・閲覧できるEPUBリーダーを対象としている。

EPUB Reader の調査と比較作業を手伝っていただける方を募集します

弊社ではEPUBリーダについての情報を整理してまとめる作業を予定しています。それに関して、作業を行っていただける方を探しています。

関心をお持ちの方は、次の各作業要領をご確認いただいたうえで、7項記載の連絡先までご連絡ください。

1.作業の目的

・EPUBリーダに関する報告書の作成

○資料の用途(予定)
・WebなどにてEPUBリーダの紹介
・資料のEPUB版の配布・頒布(未定)
・EPUBマニュアル研究会などでも使用予定。

2.対象EPUBリーダ

・一般ユーザーが自分で作成したEPUBを表示・閲覧できるEPUBリーダ
(書店で購入したEPUB専用あるいは特定企業内専用のもので一般ユーザーが使えないものは除外します。)
・iOS、Androidのタブレットを中心としますが、それに限定しません。
(スマホを含める可能性があります。相談によります。但し、専用読書端末は除外します。)

3.作業項目

(1) iOS、Androidを中心に、一般ユーザーが入手可能なEPUBリーダの一覧表を作ります。
(2) (1) 項に取り上げたEPUBリーダについて簡単な機能比較を行ないます。
(3) (1) 項の中から推奨する5種類程度をピックアップして表示性能の評価を行ない結果をまとめます。
(4) 結果を簡単なレポートにまとめます。なお、レポート作成にはCAS-UBを使っていただきます。

4.契約条件

(1) アンテナハウスの規定に従って対価をお支払いします。
(2) 成果物の著作権等一切の権利は対価の支払いをもってアンテナハウスに移転するものとします。
(3) 成果物の作成において、第三者の著作権等の権利を侵害してはいけません。
(4) 端末については作業担当者が用意することを原則とします。

5.作業日程(予定)

(1) 選考または及び詳細打ち合わせ 6月18日~20日の間
(2) 発注予定日 6月21日(金)
(3) 作業期間 6月24日~7月7日(月)AM10:00 (報告書完成) 

6.応募要項

(1) 資格 
  個人・グループ・団体を問いません。
 ・作業を適切に実行できること
 ・虚偽の報告をしないこと
 ・期限を守ることができること

(2) 応募期限
  6月17日 18:00

(3) 発注を決定する前に、費用の見積もりを提出いただき6月18日に選考のための打ち合わせを行ないます。

なお、過去に行なった類似作業の一部は下記に公開されています。
EPUB Reader の紹介と比較(Android編)

7.連絡先

作業実施担当ご希望の方、また関心をお持ちの方は、次までご連絡ください。

郵便番号:103-0004
東京都中央区東日本橋2丁目1番6号
アンテナハウス株式会社
電子書籍サービス担当
電話:03-5829-9021
電子メール:cas-info@antenna.co.jp

クラウド型EPUB/電子文書リーダ “AH Reader Preview” を公開しました

アンテナハウスは、クラウド型EPUB/電子文書リーダ“AH Reader Preview”を公開しました。AH Readerを使うとEPUBをiPad、iPhone、Android端末やPC画面で読むことができます。お使いいただくには、次のAH Readerについてのページにアクセスして、「AH Reader Preview を使ってみる」をクリック。

○AH Readerについて http://r.cas-ub.com/

次の画面で「読む本を追加」をクリックします。すると次の画面が現れますので、EPUBのファイル名またはURLを指定します。

EPUBを指定して「読む」をクリックするとEPUBの内容を画面に表示します。次はWindowsのPC画面にEPUB表示した画面の例です。

AH Readerは、サーバ側でXML自動組版ソフトAH Formatter[1]のCSS組版機能を使ってEPUBを組版しています。そこで、現在の多くのEPUBリーダよりはかなり高度なページレイアウトを指定した文書を表示することができます。

AH Readerは現在プレビュー版の位置づけですので、今後はCAS-UBを初めとするEPUBソリューションに組み込む形で提供することを予定しています。

関心をお持ちの方は、営業窓口(cas-info@antenna.co.jp)までお問合せください。

[1] AH Formatter

EPUBリーダの数式サポート―iBooks3.0のMathML表示がかなり進化

10月の主要EPUBリーダの新版登場でひとつ注目したいのが数式のサポート強化です。Readiumは3月にMathJaxを使ったMathML表示をサポートしました[1]。

これに対して、iBooksはMathMLの直接レンダリングを強化したようです。

表 メジャーなEPUBリーダのMathJaxサポート

項目 iBooks3.0 (iOS6) Adobe Digita
Editions 2.0
Readium 0.5.3 Kindle Previewer 2.7
(Kindle Paperwhite モード)
MS明朝
MathMLサポート MathML直接描画 未サポート MathJaxによる 未サポート

1.iBooks3.0による表示例

(1) 図1の一番上の数式では最初の()が上下に伸びすぎています。二つ目の数式では「・」が親文字と離れすぎです。この2点を除くと大体使えると思います。

図1 サンプル数式のiBooks3.oによる表示1

(2) 図2についても()が上下に伸びすぎている点を除くと使えると思います。

図2 サンプル数式のiBooks3.oによる表示2

2.ReadiumによるMathMLの表示

ReadiumはMathJaxで数式を表示しています。Readiumによる表示を次に示します。こちらの方はすべての数式が綺麗に表示されています。

図1 サンプル数式のReadiumによる表示1

図2 サンプル数式のReadiumによる表示2

3.総合的にみて

EPUB3.0になって数式MathMLの表示がEPUB3.0リーダの標準機能になりました。まだ、EPUB3.0リーダによる数式表示機能の実装は全体として遅れています。しかし、iBooksが数式のMathML表示をサポートしつつあることが分かります。現状ではまだすべての数式をサポートできていないようですが、このペースですとあと半年もあればMathJax並みになりそうで、かなり期待が持てます。

[1] Readium 0.19 update adds MathML support
[2] 数式のサンプル (CAS-UBで作成したもの)

新しくなったEPUBリーダのテキスト表示を比較してみると・・・

最近、主要なEPUBリーダが相次いで新しくなりました(表1)。

表1 メジャーなEPUBリーダの新バージョン

ベンダー EPUBリーダ 改訂内容
Apple iBooks 3.0 10月24日。iOS6上で縦書きのページネーションが可能となる
Adobe Digital Editions 2.0 9月下旬。ずっとPreview版(1.8)を提供していたものが正式版になる
IDPF Readium 0.5.3 9月29日版
Amazon Kindle Previewer 2.7 10月25日 Paperwhiteがデバイスに追加

そこで、手元のEPUBリーダを最新版に入れ替えて簡単に比較して見ました。表示に使ったのは、先日、プレゼンのために用意した「新版・論文の教室」からピックアップしたデータのEPUB版[1]です。以下の表に気になる点をまとめました(表2)。

1.縦中横の自動解除

もっとも気になるのは、縦中横の自動解除です。iBooks、Readiumは縦中横の幅がおそらく1文字分よりも広くなると縦中横を解除してしまいます。困るのは、縦中横は大抵、ASCIIコード(基本ラテン)のアラビア数字に指定しているため、解除されると2桁のアラビア数字が横倒しになってしまうことです。

○次の図では図の番号をASCIIコードのアラビア数字で表して縦中横を設定。しかし、縦中横が解除されて番号が寝てしまうため、1~9は正立、10~12が横倒しというおかしなことになってしまいます。

図1. iBooks 縦中横解除

章・節という番号付けをしているとき章番号が正立、節番号が横倒しになる可能性があります。このままではiBooksの縦書きでは章番号、節番号、項目番号、図・表番号にアラビア数字を使うことができないのではないかと思います。回避策としては、フォントサイズやレタースペーシングを調整して縦中横の幅を1em内に収めると良いようです[4]。後で試してみよう。

これに対して、Kindle PreviewerやAdobe Digital Editionsは縦中横を解除しません。

2.文字の方向の不統一

(1) 文字の方向の不統一が目立ちます。丸付き数字、ローマ数字、ダブルクオーテーション、ダガー、enダッシュ、emダッシュなどの方向が、iBooks、Adobe Digital Editionsは横倒しなのに、Readium(Windows版)は正立です。なお、Readiumは丸付き数字、ダガーに縦中横を指定すると左90度回転しています。これはWindows版のバグでしょう。

(2) ダブルクオーテーションの扱いは問題です。
a. Readiumは、英文の文脈でもダブルクオーテーションを正立させているため英文表記がおかしくなります。

図2. Readium (IPAexゴシック)

Readium(Windows版)は、「MVOデータではなくWindows APIに依存してて、Wordの縦書きと同様に和文フォントの引用符は正立」[6]、とのことです。そこで、フォントファミリーを「font-family: “Times New Roman”,”@IPAexゴシック”, sans-serif;」に変更しました。この場合、Times New RomanがもっているグリフはTimes New Romanが適用となります。すると、次の図のようにダブルクオーテーションが横倒しになります。ダブルクオーテーションのみではなく、プライムやダガーの方向も変わります。

図3. Readium (Times New Roman, IPAexゴシック)

これで一件落着かというと、今度は別の問題がでます。Times New Romanがもっているグリフが優先的に適用されてしまうため三点リーダ(…)や全角ダッシュ(U+2014)が欧文グリフとなってしまうという副作用があります。

フォントファミリーに依存する方法には次の問題があります。①EPUBへのフォント埋め込みはまだ一般的ではないため、指定したフォントで表示できるかどうかは表示環境依存になります。②フォントがないときgenericフォント(serifなど)で表示することになりますが、genericフォントでは和文と欧文の区別ができません。従って、どういう結果になるか予め予測できません。

b. この4つのEPUBリーダの中では、Kindle Previewerの文字の方向が比較的受け入れやすいのですが、しかし残念ながら、ダブルクオーテーションをダブルミニュートに変換しています。和文文脈であれば問題ないですが、英語の文脈でも変換しているところが問題です。

図4.Kindle Previewer

なお、Kindle Previewerでは、文書全体を英語モード(<html xml:lang="en" …)にするとクオーテーションマークのままになります。文書を英文とみなしているということなのでしょう。

図5.Kindle Previewer (文書全体にxml:lang="en"を指定)

c. iBooksとAdobe Digital Editionsはダブルクオーテーションを横倒しにしています。和文中の英文表記に関しては一番まともです。なお、この二つとも、<span xml:lang="en"> …</span>という言語指定を認識して、フォントと組版を自動的に変更しています。

図6.Adobe Digital Editions

図7.iBooks

表2 文字の表示について比較

項目 iBooks3.0 (iOS6) Adobe Digita
Editions 2.0
Readium 0.5.3 Kindle Previewer 2.7
(Kindle Paperwhite モード)
MS明朝 IPAexゴシック Times New Roman
IPAexゴシック
全角文字コードのコロン(:) 横倒し 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し
全角文字コードのセミコロン(;) 正立 正立 正立 正立 正立 横倒し
ASCIIコードのコロン(:) 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し
ASCIIコードのセミコロン(;) 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し
プライム 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
ローマ数字(ⅰ~ⅲ) 横倒し 横倒し 正立 正立 正立 正立
ローマ数字(Ⅲ) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 正立[2] 正立
丸付き数字(①) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 正立[2] 正立
ダブルコーテーション(“”) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し ダブルミニュート
ダガー(†) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 横倒し 横倒し
enダッシュ(U+2013) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
emダッシュ(U+2014) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
縦中横 解除 解除しない 解除[1] 解除 解除 解除しない
span xml:lang=”en” 有効 有効 無視 無視 無視 無視

(10/31 ReadiumにTimes New Romanを追加したときの結果を追加)。

3.総合的にみて

4つのEPUBリーダの中では、Adobe Digital Editionsがやはり安定感があります。次いでKindle Previewerです。実機を早く試したいものです。

これに対して、iBooksの縦組みは縦中横解除を廃止しないと縦組みは使い物にならないでしょう。Readiumは未完成で、まだ実用にはなりません。

文字の方向の問題は大きな問題です。特に、ダブルクオーテーションとダブルミニュートの問題を解決するには、和文と欧文というコンテキストを明確にして、そして外国語由来のアルファベット数字記号は、欧文では横倒し=MVO、和文では正立=SVO、という二つの字形(グリフ)デフォルトセットを用意し、コンテキスト依存で切り替えるという仕組みを導入することが必須です。現在提案されているUTR#50の考え方では完全に解決することはできないでしょう。先日のセミナーで説明したように日本語の縦組みでは欧字を、①欧文モード=プロポーショナル字形で使い横倒しにする方法と、②欧字の和字扱い、という二つの異なる方法があるのでひとつのデフォルト文字方向で情報交換するのは不可能だからです[5]。

○注
[1] テストデータ テストデータはCAS-UBで作成しました。11/2 データを入れ替え。縦中横指定カ所に背景黄色の指定を追加。なお、本EPUBではReadium以外は、フォントファミリーを指定していませんので各EPUBリーダのデフォルトフォントで表示されることになります。ReadiumについてはSigilでフォントファミリーを変更して表示確認。
「新版・論文の教室」についての紹介:「新版論文の教室」には書籍の縦組みレイアウトパターンと文字の方向パターンの典型例がある
[2] 縦中横指定で左90度回転する。Ⅲは縦中横で回転するが方向は判断できない。
[3] 解除の条件はiBooksと異なる。iBooksで解除されない箇所がReadiumで解除される。その逆もある。
[4] http://www.facebook.com/groups/epubcafe/permalink/294994973939514/
[5] 10月22日「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」の発表予定資料をプレビュー
[6] https://twitter.com/MurakamiShinyu/status/262844455009275904