「米IBMが電子書籍ファイルフォーマットEPUB3を社内文書の1つに正式採用」、というニュースに接して。EPUBの現状と今後を少し考えてみる。

2月14日に「米IBMが電子書籍ファイルフォーマットEPUB3を社内文書の1つに正式採用」(http://hon.jp/news/1.0/0/5244/)というニュースが流れました。

ニュース源は、2/13のIPDFのプレスリリース[1]となっています。IDPFのリリースでは、①IBMは、最近、主要なパッケージ文書形式としてEPUBを採用した。②EPUBを採用したことから学んだことをホワイトペーパーで出すことに合意したとのことです。

プレスリリースには、IBMのMichael D. King氏がコメントを寄せています。Michael D. King氏は、教育事業を担当しているようでIMS Global Learning Consortiumの理事になっています。IMSは、12-13日にソルトレーク・シティで開催されたEDUPUB2[2]の主催者でもあります。

EDUPUB2のアジェンダ[3]を見ると、同じIBM Software GroupのRich Schwerdtfeger氏がAccessibilityのモデレータを担当しています。 

Rich Schwerdtfeger氏は2月14日のブログで、「EPUB Makes Mobile Content Inclusive & Accessible」という記事[4]を書いています。ということで、ニュースの発信源はEDUPUB2の場だろうということはほぼ確定です。

Rich Schwerdtfeger氏によると、IBMは技術マニュアルや製品マニュアルの多くをEPUBで提供しているとのことです。IBMでは、既にこうしたドキュメントのコンテンツをDITAで制作しているので、スムースにEPUBに変換できると述べています。

ドキュメントをEPUBで配信したときの一番の問題点は、EPUBを読むためのEPUBリーダーの欠乏です。EPUB配信の最大のメリットは、モバイル、タブレット、PCなどのマルチデバイス、マルチプラットフォームでドキュメントを読むことにあるはずなのですが、現実には、マルチデバイス・マルチプラットフォームのEPUBリーダーはあまりありません。

ここで、注目されるのは、IBMが同時にReadium Foundation[5]に加盟したというコメントです。調べてみますと、確かにIBMはReadium Foundationのメンバーリストに入っています。これはなかなかに興味深い話です。

といいますのは、Readium SDKはGPLライセンスによるオープンソースで提供されています。従って、ソースを誰でも入手できますので、開発者なら誰でも自分でこれを使って、EPUB Readerを開発し、GPLライセンスで配布できます。

Readium Foundationに参加すると、再許諾ライセンスを含めて自由度の高いソースコードライセンスを得られます。従って、GPLでないライセンスによるEPUBリーダーを作ることが、Readium Foundationに参加する意味=目的となります。

Readium Foundationの入会費は非常に高額ですので、単なる情報収集やお付き合いで入る可能性はあまりないでしょう。つまり、自社開発で商用ライセンスのEPUBReaderを作る計画がないなら、Readium Foundationには入る意味がないということになります。

ここから言えることは、IBMはEPUBReaderを開発したり、EPUBを利用したソリューションを作るなどかなり明確な計画があるのだろう、ということです。

EPUBを、書籍の販売形式としてだけでなく、教育・ビジネスで利用するという観点からは、今後に注目すべきニュースといえます。

[1]IBM standardizing on EPUB to reduce digital barriers and increase mobile support
[2]EDUPUB2 Workshop on Digital Publishing for Education
[3]Draft Agenda
[4]EPUB Makes Mobile Content Inclusive & Accessible
[5]Readium Foundation