EPUB標準化関連活動のアップトゥデイト 2014/1/18

1.EPUB本体

1)ISO標準化
EPUB(EPUB 3.0.1)はISOの技術標準になることが決まっています。
仕様の番号:ISO/IEC DIS 30135-1~7

※2014年11月5日 EPUB3がISO/IEC TS 30135として刊行されました[3]

2)EPUB 3.0.1 IDPF
ISOの標準とするに際してのマイナーな変更を行い、EPUB3.0.1とすることになっています。作業はほとんど終了し、昨年末に、公開レビューが行なわれました。
第1回公開レビュー 2013年11月7日~2013年12月3日
Call for Review – Public Draft of EPUB 3.0.1

コメントを整理した上で、次のステップとして提案仕様に進むことになっています。

変更点のリストを見ますと、実際はかなり変更になっています。ISO標準化の機会を利用して、仕様のかなり大きな拡張が行なわれました。実態としては3.1と呼ぶべきものでしょう。
変更点
主なものだけ紹介します。

①Publication(OPF)
・collection(OPFの最後に0回以上出現)要素が追加になりました。

複数のコンテンツ文書に分散する索引、特殊な可視化を実現するコンテンツ文書のためのもの。collectionには役割(role)を指定しなければなりません。roleの語彙は随時追加されますが、1/18時点では、index(索引)とmanifest(関連コンテンツ文書)、preview(試読版)が定義されています。

・出版物の可視化に関する項(4.4 Publication Rendering)が新しく設けられました。

そして、rendition:flow, rendition:align-x-center属性が追加されました。rendtion:align-x-centerはファイル毎にテキストを上下中央配置(縦組みでは左右中央配置)指定ができます。主に中扉のテキストを中央に配置するのが大変難しいという現在の制作者の悩みを解決する目的で設けられたものです。

また、EPUB3.0仕様確定後の2012/3に追加で策定された固定レイアウト用メタデータ属性が、この出版物の可視化に関する項に統合されました。

②コンテンツ文書
・trigger要素の追加
・仕様で規定していないカスタム属性を許容しました。これによりリーダーの独自拡張が可能になります。
・CSS3より、CSS Text Decoration Module Level3, Selectors Level3 が加わりました。
・CSS3の Writing Modesの文法と値が変わりました。
・oeb-page-head, oeb-page-footが廃止予定となりました。これは、EPUB2からある、ランニング・ヘッダー、ランニング・フッター(日本語書籍の柱に相当)を指定するためのものでした。しかし、実装しているリーダーがないので廃止となりました[1]

③Open Container Format、Media Overlaysなどその他の仕様にも細かい変更が行なわれています。

(参考)日本語訳に変更点のうちrendition:flowの解説があります。(参考)日本語訳

2.EPUBのプロファイル
(1) 公開レビューに進んでいる活動

1)EPUB Index(索引)EPUB Indexes Working Group
第2回公開レビュー 2013年11月7日~2013年12月3日
EPUB Indexes 1.0

2)ハイブリッドレイアウト (Advanced-Hybrid Layout Working Group)
主に固定レイアウトに関するプロファイル仕様として開始されましたが、それ以外の機能を含みつつあります。
2013年12月16日~2014年1月15日まで公開レビュー

EPUB Previews
EPUB Multiple Renditions
EPUB Region-Based Navigation
Magazine Structural Vocabulary

(2) 以下のグループは活動を行なっています。

1)EPUBの辞書と用語集(Dictionaries and Glossaries working group)
EPUB 3 Dictionaries and Glossaries Charter

今後、仕様のドラフトを完成して公開することになる見込みです。

2)Open Annotation (EPUB)
W3Cなどで進んでいる注釈の標準化(Open Annotations)プロジェクトはEPUBに限らず、様々な媒体への注釈のモデルを標準化するものです。これを受けてIDPFでは、2013年11月にEPUBの注釈について検討するワーキング・グループを立ち上げました。このグループは活動が始まったばかりです。

Open Annotation Community Group
Open Annotations in EPUB – Project Overview

(3) これから活動を開始する段階

EPUBの教科書への利用についての標準化活動が始まろうとしています。

1)EDUPUB
IMS Global, IDPF, W3Cがデジタル教科書と学習参考書に関するEPUB3のプロファイル仕様作成に関するワークショップを開催しています。ワークショップで仕様標準化の課題をいろいろ挙げてから作業をスタートすることになるのでしょう。ワークショップの段階で課題に入らないと作業開始からの追加は難しいようです。

第1回 2013年10月29日~30日 ボストンにて
アジェンダプレゼンテーションもあります
EDUPUB Workshop Report

第2回 2014年2月12日~13日(予定)ソルトレークシティ
EDUPUB2 Workshop on Digital Publishing for Education

[1] 個人的感想:これは仕様の拡張の仕方が悪い(CSSのプロパティを独自拡張)のでやむを得ないとは思います。しかし、現在、EPUB3では柱を指定する方法がないため、ボリュームの大きな書籍ではどこを読んでいるのかまったくわかりません。これは大きな欠点だと考えています。
[2] EPUB標準化関連活動のアップトゥデイト 2014/6/15
[3] EPUB3がISO/IEC TS 30135として刊行