昭和前半の縦組み新書版における英数字


縦組みの出版物で英数字がどのように表記されているかについての調査を行なっています。表記方法は、年代、および、ジャンルによって異なると予想しますが、すべてを網羅的にかつ統計的に調査するのはなかなか大変なので、今のところ、かなり行き当たりばったりですが。

今日は、昭和の早期に発行された「国語の変遷」を調べてみます。本書は本文縦組みですが、表紙が横組みです。

かなと漢字は右から左に書いていますが、アラビア数字(71)は左から右です。(17ではなく71であることは、本文のノンブルから分かります。)

さて、英数字ですが次のようになります。

1.ラテンアルファベット

本書でのラテンアルファベットの利用例を図で示します。

図1(p.121)

図2(p.44)

図3(p.161)

このように本書ではラテンアルファベットを次の二通りで用いています。

(1) 音を表す記号としての用途 図1、図2
(2) 英語の単語と記号の用途 図3

音を表す記号として用いるとき、a. 母音は1文字ずつ正立、b. 子音+母音は縦中横、c. 子音が入った「ことば」としての発音(上の図には相当するものがありません)あるいは子音を’,’で区切って並べるとき(図1)文字列を全体として横倒しにしています。

図3を見ますと英語の単語と記号については字数に関わらず、1文字であっても横倒しです。一文字でも横倒しの理由はなんなのでしょうか?

頭字語(YMCA、IWW)は1文字づつ正立です。文脈的には、頭字語も英語とされていますので、正立の基準は英語か日本語かではなくて頭字語か否かになっているように思います。

2.アラビア数字

本書ではアラビア数字は各頁下中央のノンブルのみです。

目次の頁番号、章番号(第一、第二、…)、節番号(一、二、…)、箇条書きの項目番号、年月などの数字はすべて漢数字となっています。

○書籍の情報
書名:「国語の変遷」
著者:金田一京助
出版元:日本放送出版協会
発行:昭和16年12月30日

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