EPUB3.0 では出版物に数式を含めることができるようになりました。そして、EPUBリーダでも徐々に数式を表示できるようになってきました。
数式はMathMLのプレゼンテーションで記述します。簡単なサンプルを作ってEPUBリーダの数式表示機能を確認してみました。
１．MathMLをサポートするEPUBリーダ
(1) iBooks 3.1
(2) Readium 0.9.1 (2013/5/17)
表示例は次のスクリーンショットを参照。
２．MathMLをサポートしていないEPUBリーダ
(1) Adobe Digital Editions 2.0
MathML数式はサポートしていないようです。
(2) KindlePaperwhite
表示例は次のスクリーンショットを参照。
３．MathMLの記述の注意事項
(1) 数式を含むXHTMLファイルにはmath要素に名前空間を指定すること。
例）<math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML">
・名前空間を指定しないと、EPUBチェック3.0ではエラーになります。
Readiumでは名前空間を指定しなくてもMathMLを表示することができます。しかし、iBooksでは名前空間を指定していないMathMLを表示することができません。
(2) OPFファイルには、数式を含むXHTMLファイルを参照するitem要素にはproperties="mathml"を指定すること。
例）<item href="201305211138.xhtml" id="id201305211138" media-type="application/xhtml+xml" properties="mathml"/>
４．MathMLの表示：ブロック数式とインライン数式
(1) 数式にはディスプレイ数式とインライン数式がある。ディプレイ数式には、math要素にdisplay=”block” を指定すること。
(2) ReadiumとiBooksともに、display=”block” を指定するとデフォルトで中央揃えになります。
特にReadiumは、display=”block” の有無で添え字の位置を切り替えています。iBooksは添え字の位置が変わりません。
５．テストデータの説明
テストデータは次からダウンロードできます。
(1) math-test-a.epub
math要素に名前空間を設定していない例を含んでおり、EPUBチェック3.0でエラーになります。
(2) math-test-b.epub
math要素に名前空間を設定していない例を削除しています。EPUBチェック3.0でエラーは報告されません。
CAS-UBは次のバージョンで数式のオーサリングを正式にサポートする予定です。しばらくお待ちください。
だいぶ、できるようになりましたね。一昔前まではtex以外で数式を扱うのがネックでしたが、epubなどもこれで本格普及するでしょう。しかし数式のコピペ対応はまだですか。画像入り文章はEvernoteなどにコピペできるのに数式ができないでは困る。メモの数式入力やコピペや検索も含めて対応して欲しいものです。初代htmlのころから数式対応なども検討されたようですが、20年以上経っても未だにこのレベルとは情けない。表示はしっかりできるみたいですが、iBooksで文章内検索を用いると検索結果を見る限り数式部分表示がKindleと変わらないようで残念です。自然言語の高等検索レベルで表現の違いぐらいは大目にみて数式検索に対応してほしいものです。これはリーダー側の問題ですが。
著作権切れやオリジナルの専門書や論文もTeXpdfではなく、epubで頒布される時代がきました。寺田寅彦や高木貞治のような著作権切れの大物もエッセイではなく数式入りの専門書や論文などもこれでどんどん公表すれば、理系の人への宣伝効果も含めてepub普及に役立つのではないか、とみています。青空文庫の理系版(数式が大量に出てくる文章を無料頒布)が欲しい。ボランティアで、誰かやらないのだろうか。電子書籍の数式表示が酷い(特に未対応のKindleが画像化して埋め込んでいるせいで)という意見はよく見ますがepubでの数式の取り扱いについては知名度が低いので、ここまでできるということを宣伝する必要性があるでしょう。
SSのiPadだとちゃんと見れるみたいですがiPhoneだと、縦長カッコが文字化けして表示不可能で□になります。
しかし、Kindleはいつになったら数式に対応するのだろうか。分数すら表示できず、Amazonはやる気があるのだろうか。