JPO・コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)フォーマット説明会報告


3月23日、15時から17時に日本出版インフラセンター(JPO)が行なった「JPO・コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)フォーマット」(緊デジフォーマット)の説明会に参加しました。この説明会は、電子書籍制作会社、電子書籍販売会社、出版社制作部門担当者向けのものです。標準化委員会の沢辺 均氏よりフォーマットについての説明がありました。

説明の内容は、「出版デジタル化機構」のWebページより公開されている電子書籍制作仕様書 第一次素案に沿ったものでした。

電子書籍制作仕様書 第一次素案

注)説明会場において配布された資料をWebページ(3/23夜時点)と付き合わせたところ改訂された点がありました。右に改訂内容を一覧にしました。「電子書籍制作仕様書 第一次素案」Web公開版(3/20)と配布資料の相違点

以下では、Webページに公開されている仕様と重複する部分もありますが、説明会の内容のメモと会場での質問と回答です。

1.緊デジフォーマットは、緊デジ事業で制作する電子書籍の仕様書であり、同時に出版デジタル機構で制作する電子書籍の仕様書としても使う。(緊デジ事業ではJPOから「中核企業」に電子化を発注することになっており、3月23日に中核企業は株式会社パブリッシングリンクと決定した。)

以下、フォーマットの策定にあたっては次のことを考慮に入れた。

(1) 現実に販売できることを重点とした。ドットブック、XMDFは現実に販売する電子書店が多数ある。EPUB3は現実に作れる環境が整いつつあるが販売している店は少ない。PDFは販売している電子書店が少ないので採用しない。

(2) 技術の変化に耐えること。EPUB3が普及する可能性は高い。そこでEPUB3に簡便に手間をかけずに変換可能なフォーマットであること。フィックス型もそれなりに作る。再度OCRできる。

(3) 低コストでやりたい。

2.説明の段取り
・3月23日、27日に東京で説明会を行い、4月9日に東北でも説明会を行なう。
・説明会で意見が出たら、それを議事録とする。
・4月中には仕様を公開する。

3.電子書籍の制作
・緊デジ事業での制作はパブリッシングリンク(中核企業)が差配する。JPOはパブリッシングリンクに制作を発注する。
・出版デジタル機構は100万タイトルの制作を目指す。
・緊デジフォーマットは出版デジタル機構でも採用する。

4.緊デジフォーマットはA、B2種類で3パターンある。
A:フィックス型電子書籍であり、写真集、漫画型のようなものを対象とする。
B:リフロー型電子書籍である。リフロー型は制作コストの相違からB-1とB-2に分けた。この二つではコストに重大な差がある。
B-1はDTPデータなどのなんらかのデジタルデータがあるもの。
B-2は紙のもの。入力と底本との付け合せを含めて1文字1円を想定している。コストを減らすことができれば大歓迎である。

5.入稿と納入形式説明

A:フィックス型電子書籍
入稿データは紙の本で底本は1冊(可能なら2冊)

納品物は画像データと配信用データ
(1)画像データはすっぴんのものをアーカイブする。
(2)配信用は軽くなるようにする。

画像データはスキャンして作る。スキャン範囲は次の通り。
(a)カバー
・RGBカラーでスキャンし、販売時の書影につかう。
・背もスキャンする。
・折り返しから折り返しまで全部取る。

(b)底本
・グレースケール 600DPI原寸
・見返しの印刷は現場で判断する。
・本文は白でも一気にスキャンする。
・ゴミは飛ばす

アーカイブ用の保存フォルダー
・フォルダー名 20桁のe-コード コミックはe-コードが普及している。

配信用電子書籍仕様
・TIFFから変換する。
・余白に関しては迷っている。iPadなどは天地・小口・のどはビューア側で余白を自動的に取る。
スマホは余白が多いと厳しい。本には断ち落としのページがあるので、余白をギリギリまで落とすと困る。結局、余白のトリミングは頁ごとに判断する必要がある。
・配信形式はEPUB3にしたい。大きな決断である。とはいえ、強い要望があれば、XMDFも可能性がある。
・目次はクリッカブルマップによるリンクをつける。この仕様はコストアップの要因になるので、かなり揺れている。
・画像の長辺は1536ピクセル。7インチタブレット。

クレジットどうするか?
・紙の本の奥付けはスキャンする
・電子書籍のクレジットを追加する

B-1:リフロー型(DTPデータ)
入稿データ
・底本+DTPデータを提供する
・DTPのアプリケーション種類については相談して対処する。写研はどうするか?という相談受けた例もある。
・リフローはEPUB3間に合わないので、ドットブック、XMDFから作る。
・広告は捨てる。(スキャンとの違い。)
・奥付けは写真にする。

写真の権利関係を考慮する必要性を鑑みて、出版社の指示があるときは、写真をはずすことを可能とする。
・ページ幅60%以内の図表は近傍の段落の間におく
・ページ幅60%以上の図表は単独1ページとする
・図表のキャプションはワンセットで画像化する。

JIS第一水準、第二水準の範囲外はあえて画像を差し込む方式をとる。
タグにCIDコードをつける。CIDからUnicodeに変換できる。

交換形式からほぼ自動的にEPUBに変換できる。

校正は出版社が1回する。実際は出版社は校正はかなり苦労していると聞いている。
その理由として、現在のリーダはプリントアウトの機能が消えている。そうするとプリントしての校正ができない。
赤字をいれるときの戻し方ははっきりしていない。
ネットワーク上に出版社専用の書店ができないか、と考えている。
プリントができるようにする。
仮配信サーバからダウンロードして修正する。
中間交換フォーマットに戻って修正する。

B-2:リフロー型(紙:印刷底本からテキスト作成する)
・文字入力を人間がする
・平均10万円以上かかる。
・2回の校正を行なう。
・仮配信サーバからダウンロードして校正するスキームを作る。
・中間交換フォーマットに戻って修正する。
・アーカイブは中間交換フォーマットで行なう。

■質疑応答
1) パブリッシングリンクの出資会社は?
回答)
・ソニー、講談社、大日本、凸版ほか15社である。Webページからはサードプランニングが1社抜けている。
(永井専務理事)

2) 電子書籍の制作の手伝いをしたいが、出版社から制作会社に発注がいくのか。
回答)
・出版社から個々に発注はない。
・今後は電子化事業者への発注業務は、パブリッシングリンクから発注が行く。4月以降の段階で話をするのが一番良いだろう。
・東北の被災地支援がスキームに入っている。安くやるので中国でやる、というのはお断り。何からの形で被災地の復興支援として行ないたい。
(永井専務理事)

3) フィックス型でPDFの選択はなかったのか?
回答)
・PDFといえば透明テキスト付きPDFが多いだろう。しかしPDFの透明テキストを検索する機能は、電子書店のリーダの中では実現できていない。
・PDFは画像をくるんでいるものという理解であり、画像があれば必要に応じていつでもPDFに変換することが簡単にできる。
・効率を考えるとPDFでも良いが、PDFはアドビが主導権をもっているし、政治的に変わるのは望ましくない。
・PDFは売れないものを作るという点で脱落である。
(沢辺氏)

4) タグのつけ方は自由で良いのか?各社のアプローチの相違点はどうするのか?出版デジタル機構の方からサンプルは出てくるのか?
回答)
・中間交換フォーマットはXMDFとドットブックを包含しているので、どちらにもできる。
・そこの世界にこだわるのはやめようよ。という意識である。
・ボイジャーとシャープの両方が実現してきたことを包含していれば良い。
(沢辺氏)

5) フィックス型が中心とのことだが、それなら東北でもできる。東京で開催したのはなぜか?
回答)
・20億円をいきなり東北にもっていったらとまどうだろう。
・東京で出版社が長いお付き合いをしているところをきることはできない。
・東北で請け負ったけれども、翌年ゼロでは困るだろう。
・来年3月までとりあえず伸びた。
(永井専務理事)

6) 発注先の選択について客観性の確保はどうするのか?本ごとにやるのか?評点でやるのか?
回答)
・入札で安いところにお願いするわけではない。
・1万円でかかるものが1万2千円でもよい。
・事業の趣旨を生かして、多少値段が高くても良いのでという中核企業の公募をかけた。
(永井専務理事)

5) 現在、出版社の依頼で印刷用データを作ったりしている。出版社がスキームを通して、当社に出すように指名できるか?
回答)
・6万タイトルを電子化スムーズにやるには馴染みの企業に頼むのが良いが、それだと本来の趣旨である東北にお金が回らない。
・ジャンル別に優先順位をつけるかもしれない。
・16時の段階で仮申請175社 42,000タイトル。
・175社の中に大手の出版社は入っていない。だから間違いなく6万タイトルは超える。そうなると優先順位をつけざるを得ないだろう。これから計画を立てる。段取りを決めないといけない。
・期限は2013年3月末まで期間延長された。5月以降実施する。
(永井専務理事)

6) アーカイブファイルは誰が管理するのか?
回答)
・出版デジタル機構が代行したものはできるだけ速い機会に販売する。
(沢辺氏)

7) DTPデータから、固定レイアウトのEPUB3を制作しても良いですか?
回答)
・主流になるとは思わないが、制作してもよい。
(沢辺氏)

8) リフロー型電子書籍においては、レイアウトの再現性についての仕様がないですが、どの程度まで要求しますか?
回答) 
・小画像の配置を「近傍の段落の間」と言っているくらいでレイアウト再現性はあまり問わない。(沢辺氏)
・補足すると、再現性を要求する場合は出版社が自分で負担することになるだろう。
(永井専務理事)

9) 固定レイアウトのEPUB3はいろいろな作り方があり、今回の第一次素案だけではどうしたら良いかわからないですが。
回答)
これについては、今後仕様をつめて公開する。(沢辺氏)

■免責事項のお願い
このメモは個人的に理解した内容をまとめたものです。できるだけ正確を期したつもりですが、聞き違いや理解の間違いを含んでいる可能性があります。メモに記載された情報の利用はご自身の責任において判断されるようにお願いします。メモの内容が間違っていたことに関する責任は負うことができません。

JPO・コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)フォーマット説明会報告” への2件のコメント

  1. ピンバック: JPO・コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)フォーマット説明会報告 | 電子書籍、電子出版のCAS-UBブログ | WordBuff.in

  2. さっそく比較されたのですね、凄い!
    出版デジタル機構のサイトは今後更新されていくのでしょう。勿論そうすればサイトの公開情報が最新ということになりますね。
    → http://www.shuppan-d.info/

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