「ぎりぎり合格への論文マニュアル」にみる英数字と記号の方向


「ぎりぎり合格への論文マニュアル」(山内 志朗、平凡社新書)は英数字の使い方は一般的ですが、記号の使い方に特徴があります。特に「記号の使用法」という節を設けて、論文の中での記号の使い方を比較的詳しく説明しています。

1.ラテンアルファベット
ラテンアルファベットの使い方は一般的です。

(1)全角形・正立
・JIS、DTP、などの頭字語、MS-DOSのようなハイフンを含む固有名詞は全角形・正立です。
・(a)、(b)のような箇条書きでは全角形・正立
・A4、B5のような慣用区は全角形・正立

(2)横倒し
・英語、ラテン語、フランス語などの単語
・ページ番号(p.)、行数(l.)などの略記用記号
・欧文参考文献(著者、題名、発行所など)

2.数字
・本書は伝統的組版に属し[1]。和文中では数字は漢数字が原則です。フォントのサイズについても、九ポイント、十二ポイントなど漢数字です。先日の「新版論文の教室」も伝統的組版ですがフォントサイズはアラビア数字の正立形です。従って、本書は伝統的組版でも右翼に属すると言えます。
・それでも、[1]など番号箇条書き、「だんご3兄弟」(p.24)のような固有名詞とA4、B5のような慣用句ではアラビア数字が正立で使われています。
・引用文献、参考文献などの文脈ではアラビア数字を横倒しで使っています。

3.記号類
記号の種類と方向については「JIS X4051で規定する縦組み時の字形と現実の書籍で使われている文字の向きの比較考証」[2]に使ったPDFデータを改訂してアップしました:記号類の方向調査表(9/23)

本書では記号がいろいろ珍しい使い方がなされています。

1) 「:」、「;」、「,」が正立ででてきます。これらは記号の字形の紹介の意図と思います。
2) 一方、本文の中では「:」は横倒しで使われています。「:」については「本来欧文用の記号で横組み日本語に転用されるようになったもの」(p.94)という説明があります。縦組みの本書でも使っているのは、少々、矛盾するような印象を受けます。
3) 句読点の列挙で 「.」「,」「、」「。」が左右中央に表示されています。これは良識なんでしょうが、読点の位置が中央に揃っていません。
4) 番号箇条の番号に漢字を使って、区切り記号に「.」を使っています(p74)。「.」が右側になっています。これは正しいと思いますが、位置の調整はどうしたのでしょうか?
5) 波ダッシュに正立と横倒しの両方の例が紹介されています(p.108)。
6) ハイフンは「基本的に横書き向きだが、最近は縦書き日本語でも二つの概念の密接な連関を示す場合に用いられる。この辺の使用法ははっきりしない。」(p.110)とありますが、本書では、Ⅲ‐ⅵにハイフンを使っているように見えます。

こうしてみますと、コロン、セミコロン、カンマ、ピリオド、引用符などを含めて、欧文から由来した記号は、まず日本語の横書きに導入され、さらに縦書きに持ち込まれることになるという道筋をたどるため、使い方がとても難しくなることがわかります。こうした文字の用法が確立するまでにまだかなりの年月がかかるのではないでしょうか。

4.書籍の情報
書名:「ぎりぎり合格への論文マニュアル」
著者:山内 志朗
発行所:平凡社新書
発行年:2001年9月初版発行
ISBN:978-4-582-85103-8


[1] 伝統的組版については「英数字正立論」(http://www.cas-ub.com/project/index.html#Free)を参照してください。
[2] JIS X4051で規定する縦組み時の字形と現実の書籍で使われている文字の向きの比較考証

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