本の形を考える―段落と段落のスタイルを考える(草稿)(4月5日)[1]で次のように書きました。
英語の文章では先頭の段落は字下げせず、次の段落以降を字下げすることが多い
英語のスタイルの本で先頭段落の字下げについて明記している本は少ないようですが、”New Hart’s Rule”[2]には次のように記述されています。
章、節、項の見出しに続くテキストの最初の行は左マージンまでフルに配置され、パラグラフのインデントはない。続く各パラグラフの最初の行は通常インデントされる。(p.15)
このパラグラフ・スタイルを自動組版でできるだけ簡単に実現するには、先頭の段落とはなにかをプログラムで処理できるように規定する必要があります。そのために実際の本ではどうなっているかを調べてみました。
次に挙げる例は、”Making News at the New York Times”[3]の一部分です。
この本では、章、節の見出しに続く第1段落は字下げなし、第2段落以降は字下げするという標準的な段落スタイルで組版されています。
図1 章のタイトルの直後の段落は字下げしない例(p.150)
本書はニューヨークタイムズの編集現場でのフィールド調査の報告で、記者に対するインタビューの引用箇所が多数あります。引用箇所の多くでは引用の直後の段落で字下げしていません。つまり直後の段落を第1段落として扱っているわけです。
しかし、さらに調べますと、引用の直後の段落で字下げしている箇所も見つかります。
こうしてみますと、引用直後の段落を第1段落として扱うか、続きの段落として扱うかは文脈依存になるようです。
MLA Handbook[4]を見ても、引用文のブロックの直後の段落を継続段落(先頭行字下げ)とするか、最初の段落(先頭行を字下げしない)とするかは、文脈依存になっています。
実際の本では、段落と段落の間に、図、数式、引用、箇条書き、(プログラム)コードなどのブロックが入ることが多いのですが、それらのブロック直後の段落で字下げするかどうかを画一的なルールで処理するのは難しいようです。
[1] 本の形を考える―段落と段落のスタイルを考える(草稿)
[2] “New Hart’s Rule” Oxford University Press 2005
[3] Nikki Usher “Making News at the New York Times” The University of Michigan Press, 2014
[4] “MLA Handbook for Writers of Research Papers. Seventh Edition” The Modern Language Association of America, 2009 MLA Handbookは、学部レベルのレポート執筆要綱のガイドなので本文の記述ではなく、印刷された本のレイアウトを見ています。