縦組みにおける英数字正立論10―現在の問題点


しかし、英数字の方向の使い分けを全角文字正立、半角文字横倒しという方法に頼るのは問題が多くあり、中には解決が困難な問題もあります。

第一に、著者が原稿を書くときに横組みにするか縦組みにするかを予め決めなければなりません。そして縦組みでは、文字を入力するときに文字を立てるか、寝かすかを意識して原稿を用意しなければなりません。ところが、原稿を書くツールの多くは横組みが基本になっています。例えば、横組みのテキストエディタでは、縦組みを意識して文字が立つか寝るかを想像しながら文字を入力・編集することになります。出版社の編集部ではおそらくそのようなガイドを作っているはずです。

第二に、電子書籍で読者が縦組みにするか横組みにするかを決定できるとすると、著者や編集者の意図とは異なる組方向で表示される可能性があります。

第三に、昔のような固定幅のフォントだけの時代であれば、全角文字と半角文字を見た目で容易に区別できたのですが、最近のフォントは全角文字と半角文字を見た目には区別しにくくなってきています。一般の著者は、全角文字と半角文字を意識していないことが多いので、全角文字と半角文字の使い分けが混乱しがちですが、編集者や制作者がそれを見分けるのが難しくなります。

第四に、一冊の書籍の中に縦組みと横組みが混在するときに困ります。縦組みの書籍でも多くの場合、図表は正立しますので図表のキャプションは横組みになります。さらに、図表によっては、横組みの説明文がつきます。そうしますと、図表の番号のアラビア数字はキャプションでは半角文字を使うことになりますが、縦組みの本文ではアラビア数字を正立させるために全角文字を使うことになります。図表のキャプションにラテンアルファベットが入った場合も同様な問題が生じます。このように、まったく同じ内容を全角文字で表したり、半角文字で表したりという使い分けが必要となります。

第五に、章番号、節番号、箇条書き、図表番号は、1桁だけでなく2桁も頻繁に出てきます。アラビア数字を正立させるために数字を全角文字で表すとしますと、1桁のときは良いのですが2桁になると縦に並んでしまいます。縦中横で表すためには半角文字にしなければなりません(図:アラビア数字参照)。

図:アラビア数字

左は図番号全角数字だけで表した場合。右は半角数字で表して縦中横を適用した場合。(CAS-UBで制作した「魔性のプレゼンテーション」の図一覧の一部)

これはラテンアルファベットについても同様です。ISOという文字は3文字なので正立させるため全角文字で表すとします。しかし、NDL–OPAC(国立国会図書館蔵書検索・申込システム)のような名称を横倒しにするため半角文字で表すというような使い分けが必要となります。

このように、縦組み時のラテンアルファベットとアラビア数字の向きを全角文字と半角文字の使い分けだけで制御するというのは大きな混乱を引き起こします。

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