今日は、縦組みのパソコン雑誌における英数字の使われ方を調べてみました。対象としたのは、日経BP社発行の「日経PC21」2012年3月号です。この雑誌は、ビジネスマンがパソコンを使うためのハウツー情報誌ですので技術とビジネスの接点に位置しています。ハウツーの図版が多いのが特徴です。図版の部分にキャプションと説明文が多くありますが横組みと縦組みが混在しているのも誌面の特徴です。
肝心の英数字の使い方ですが、サンプルとして誌面の一部を紹介します。
(「日経PC21」2012年3月号、66頁の一部)
このようにラテンアルファベットは正立、アラビア数字も正立が基本です。先頭(9頁)から33頁までの記事の中の縦書きになっている部分の方向を確認してみました。
1.ラテンアルファベットは103箇所でてきますが、そのうち102箇所が正立、1箇所だけ横倒しです。
主なパターンを見ます。次のパターンはすべて正立です。
(1)1文字 36箇所。例:Gメール、アクセスA
(2)小文字で始まる単語 27箇所。例:iPad、iPhone、iCloud、iTunes、iPad
(3)“OECD”のように1字1字読む単語:25箇所。例:NTT、USB、HDD、URL、IE、PDF、OK、PFU、SD、ID
(4)先頭文字が大文字,以下が小文字の単語:7箇所。例:Gmail、From、SugarSync、Web、ScanSnap
(5)“NATO”のように単語のように読む:2箇所。例:LAN、NAS
(6)その他 例:Sign In、Free Download、Wi-Fi
横倒しは1箇所だけ:@gmail.com
2.アラビア数字
アラビア数字は、正立で1文字ずつ書くか、2桁までは縦中横で正立です。横倒しはありません。
(1)1文字づつ正立 118箇所。図の番号が55箇所、数値が25箇所です。例:100Kbps、2年契約、2台、1つ、1テラ、2ギガ、1冊、4種類など。
(2)2文字の縦中横 100箇所。図の番号が多く93回です。
「日経PC21」はラテンアルファベットやアラビア数字を原則正立で表記しています。正立の範囲がかなり広いように感じます。但し、すべて正立というわけではなくて「コマンドとかメニュー名は横倒しで表記することもある」とのことです。
これは新聞方式とでもいうやりかたですね。新聞は専用の英数フォントなのでバランスがとれます。
「日経PC21」は、かなり長いラテンアルファベット文字列も直立のままで表しています。「ProLite X2377 HDS-B」とか、「MediaImpression」とか、「Milbeaut Mobile」などの製品名も、アルファベット数字全部正立表記です。新聞方式でしょうかね?編集長に聞いたところでは、全社統一ということではないということでしたが。
1段の文字数を少なくしてしまったので、ハイホネーションなどは破綻することをいいことに、縦で一文字独立の組版を押し通したのが日本の新聞だと思います。英数は縦方向のプロポーショナル組版の属性がもともと無いので、フォントの作り直しとか約物に関する独自の取り決めが必要になります。
そんな英数フォントを使ってラテ欄は横組みをするという奇妙なことも起こっています。
他にも週刊アスキーがそうですよね。1990年代後半、「パソコンはむずかしい」という先入観に抗するように生まれた初心者を狙った雑誌が、手っ取り早く非理科系イメージを前面に出すために縦書きを採用したものと思います。そうした雑誌の一つでしばらく仕事をしていましたが、回転させる長い欧語をめぐっては再三編集部とやり合って苦痛でした。彼等は読みやすさなど考えておらず、フォーマットを墨守する意識しかなかったのですから。
小笠原さんのおっしゃるように、同じ方法をとる新聞は専用フォントを開発しましたが(たしか読売が早かった記憶が)、パソコン雑誌にそのような能力も意識もあるはずはなく、今に至るというわけです。そうした「実態」が規格に反映されるのは、当時の現場知る者の一人としてとても辛い思いがします。
ラテンアルファベットと数字程度であれば、専用フォントを作るのはそれほどの負担ではないと思います。結局のところ、見やすくするつもりがあまりなかったということじゃないですか?そもそも見やすいか見にくいかといえば、ラテンアルファベットを寝かせても読みにくいでしょう。
英語を縦書きの中に入れるという発想自体が間違っているので、英語を多く使うのであれば、横組をするべきだと思います。
いっそのこと、中国のように縦書きを廃止したらどうでしょうかね。特に技術系の書籍や専門書を縦書きする必要はないでしょう。
入門者向けのPC雑誌は、ちょうど、文芸と技術の中間に位置するので、矛盾が目立ちますね。
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