アクセシビリティとは(草稿)


アクセシビリティとは
国際連合(国連)の障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)では、アクセシビリティとは障害者にとっての施設やサービスの利用しやすさのことである。日本では年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できること、すなわち情報アクセシビリティと同義に使うことが多い。さらに、情報アクセシビリティの中でも特にウェブアクセシビリティが重視されている。

障害者権利条約
国連の障害者権利条約は2006年に成立したが、日本では国会での批准を経て効力が発揮したのは、2014年2月19日である。障害者権利条約の第9条はアクセシビリティ(英文)の見出しがあり、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、①建物、道路、輸送機関その他の屋内及び屋外の施設(学校、住居、医療施設及び職場を含む。)、②情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に係るサービスを含む。)を簡単に利用できるようにすることとしている。

障害者基本法と障害者差別解消法
日本では、障害者権利条約批准のための国内法整備として、障害者基本法の改正(2011年)と障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が制定(2013年)された。日本の国内法とそれに基づく施策では、施設やサービスの利用しやすさ、あるいは障害者の社会参加の障壁の解消にバリアフリーという言葉を充てている。障害者基本計画には、情報アクセシビリティという項目がある。そこでは、「障害者が円滑に情報を取得・利用し,意思表示やコミュニケーションを行うことができるように,情報通信における情報アクセシビリティの向上,情報提供の充実,コミュニケーション支援の充実等,情報の利用におけるアクセシビリティの向上」を推進するとしている。このように、日本では情報アクセシビリティに力点をおいており、障害者権利条約と用語のずれがある。これは歴史的なものであろう。

情報アクセシビリティの向上
第三次障害者基本計画(2013年度~2017年度)で情報アクセシビリティの向上に向けて次の取り組みが行われている。
(1)情報通信における情報アクセシビリティの向上
○障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画,開発及び提供を促進する。
○日本工業規格等標準化を進めるとともに,国際規格提案を行う。また,各府省における情報通信機器等の調達は,情報アクセシビリティの観点に配慮して実施する。
○国立研究機関等において障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進する。
○障害者に対するIT相談等を実施する障害者 ITサポートセンターの設置の促進等
(2)情報提供の充実等
○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく放送事業者への制作費助成,「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により,字幕放送(CM番組を含む),解説放送,手話放送等の普及。
○聴覚障害者に対して,字幕(手話)付き映像ライブラリー等の制作及び貸出し,手話通訳者や要約筆記者の派遣,相談等を行う聴覚障害者情報提供施設の整備を促進する。
○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく助成等により,民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し,テレビや電話等の通信・放送サービスへのアクセスの改善を図る。
○電子出版は,視覚障害や学習障害等により紙の出版物の読書に困難を抱える障害者の出版物の利用の拡大に資すると期待されることから,アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに,教育における活用を図る。
○日本銀行券が,障害者等全ての人にとってより使いやすいものとなるよう,五千円券の改良,携帯電話に搭載可能な券種識別アプリの開発・提供等を実施し,券種の識別性向上を図る。
○ 心身障害者用低料第三種郵便を検討する。
(3)意思疎通支援の充実
○手話通訳者,要約筆記者,盲ろう者向け通訳・介助員等の養成研修等により人材の育成・確保を図り、また派遣,設置等による支援を行う。
○情報やコミュニケーションに関する支援機器の開発促進と,障害者に対する給付,利用の支援等を行う。
○意思疎通に困難を抱える人を支援するための絵記号等の普及及び利用の促進を図る。
(4)行政情報のバリアフリー化
○利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに,地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。
○災害発生時に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう,障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。
○政見放送への手話通訳・字幕の付与,点字又は音声による候補者情報の提供等,障害特性に応じた選挙等に関する情報の提供に努める。
○知的障害者等にも分かりやすい情報の提供に努める。

ウェブアクセシビリティ
ウェブコンテンツのアクセシビリティについては、Web技術の標準化を行なう団体であるW3C (World Wide Web Consortium) よりWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0が勧告されている。これに基づき、日本国内では「高齢者・障害者等配慮設計指針 −情報通信における機器・ソフトウェア・サービス − 第3部 ウェブコンテンツ」(JIS X 8341-3)が制定されている。WCAG 2.0/JIS X 8341-3は、HTML、CSS、PDFで作成する情報コンテンツを、アクセシブルにするために守るべき項目が提示されている。

[1] 著作権法とアクセシビリティ
[2] アクセシビリティという言葉がどのように使われているか
[3] PDFのアクセシビリティ。ワンソースマルチユースのもう一つの応用。
[4] EPUB3.0のアクセシビリティを高めるためのガイドライン

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA値として計算に合う値を入力してください。 *