著作権法とアクセシビリティ(草稿)


以前に書いたアクセシビリティとは(草稿)は、まだ十分にカバーできていない範囲があるようです。原稿提出を(勝手に)延期して、もう少し調べています。

その一つは、著作権法です。著作権法は、書かれたテキストだけではなく、音楽のようにもっぱら聞くだけの著作物、映画や演劇のような見て聞く著作物、プログラム著作物など幅広い著作物をカバーしています。

まず、印刷などで出版されている著作物を読むことができない(プリントディスアビリティ)人々向けには、著作権法第37条の例外規定があります。そこでは、①点字の作成と送信ができ、②政令で認められた者は文字を音声にするなど必要な方式で複製して公衆通信を行うことができます(第37条3項)。

また、聴覚で認識する方式で発表されているものについては、聴覚障害者向けに、著作権法第37条の2での例外規定で、政令で認められた者は音声のテキスト化や複製、貸出を行えます。

政令で認められた者には、障害者向け福祉施設・団体などの他、大学図書館、国会図書館、図書館法・学校図書館法などで定める図書館が該当します。

第37条および第37条の2に定める例外規定は、いずれも著作権者や著作権者の許可を受けたものが行っていないときに限ります。そこで、出版元が制作・販売を開始したときや、障害者向けに制作したものを一般に販売するときには別途取り決めが必要になります。

著作権法は日本の国内法ですが、国際的な利用を推進するために、2013年にマラケシュ条約が制定されています。マラケシュ条約は、2016年1月現在では発効していませんが、批准する国が増えていますので遠からず発効するでしょう。

第二の追加ポイントですが、プリントディスアビリティな人々向けの情報提供の仕組みとしては、点字システムが古くから使われていますが、近年はデジタル録音方式(音声DAISY)の利用が増えています。さらに、画面上で読み上げている箇所をハイライト表示するなど、音声・画像・テキストを同期できるマルチメディアDAISYの普及が始まっています。マルチメディアDAISYは、現在、日本国内ではDAISY2仕様によるものが多いようです。

DAISY4仕様は制作のために使うものとなり、配布形式はEPUB3と統合されました。EPUB3出版物には印刷物を読むことに困難な人にとってアクセシブルでないものも多く含まれますが、配布形式としてEPUB3を採用することで、アクセシブルな出版物の総数が増えることが期待されています。

[1] アクセシビリティとは(草稿)
[2] アクセシビリティという言葉がどのように使われているか
[3] PDFのアクセシビリティ。ワンソースマルチユースのもう一つの応用。
[4] EPUB3.0のアクセシビリティを高めるためのガイドライン

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