『専門家のための「本を書こう!」入門』


『専門家のための「本を書こう!」入門』(山内俊介著、遠見書房、2013年12月20日発行、四六判、145頁、1200円+税)[1]

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心と社会の学術書・専門書出版社の編集者による専門家向けの本の書き方に関するハウツー本である。この本の執筆の動機は「自分の会社に企画の持ち込みが増えないかなあ」ということのようなので、本書が想定する読者は潜在的な執筆者である。

つまり本書の想定する対象者は、専門家である著者(執筆者)。翻訳本を出したい訳者。共同執筆で本を作りたい人向け。プロのライターや作家ではなく、アマチュアの作家でもない。

2009年6月に発行のPDF版を紙版にしたものとのことである。同社のちらしを見るとPDF版は電子書籍のみ96頁1,000円となっている。PDF版をかなり加筆しているようだ。デジタルファーストの実践である。

本というのはひとつのパッケージであり、作るには結構時間とスキルを要する。専門職のライターでないが、その道の専門家といえる人たちが、そのパッケージをいかにしてつくりだすか? ということがこの本の主題である。

原稿の揃え方の観点で章立てをしている。

第1章、第2章 書き溜めた論文をまとめて本にする方法を説明
第3章 レジュメや講演・授業などのテープ音源があるとこ
第5章 教科書を作りたい
第6章 何人かで書きたい編集もの

のように分類して、かなり実務的な章を並べているのが、この本の特徴だ。全体的に本にするための原稿をどうやって用意するか、という点に力点がある。
特に、専門家対象なので過去に書き溜めた学術論文を整理して本にする方法を説明しているところが特徴である。

本書で強調されているのは、本を書くのは孤独でつらく、結構しんどい作業だということである。プロのライターや作家とは違って、自由になる時間が少ない専門家にとって、それなりのボリュームで内容をまとめる作業は大変なのだ。つまり本の価値はそんな風に思想や知識を絞り出し凝縮するところにあるといえるだろう。

「ですます」調で書かれており、ところどころ、ふまじめとも言えそうなかなり砕けたフレーズが出てくるところに身近さを感じる。

全体として本の頁数を原稿用紙の枚数を基準に計算しているところは、70年代から遅くても80年代の発想のように感じる。たぶん、90年代になったら原稿用紙に向かって原稿を書く人はいなくなっているのではないだろうか? 原稿を書くためのツールが進歩したのに、原稿のボリュームを測る尺度が旧来のままになっているアンバランスが面白い。

[1] 紙版にはノンブルがない。アマゾンの紹介文を見ると単行本(ソフトカバー): 145ページとなっている。

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