英語、ラテン語の辞書にみる「ページ」の語源、使用例

『オックスフォード英単語由来大辞典』[1]には「ページ」という言葉の由来が次のように説明されています。

・pageは16世紀後半から
・pages of a book「本のページ」の意味のページは、ラテン語のpãginaから派生したフランス語による。pãginaの元になっているのは、pangere(留める)である。
・pagination「ページつけ」「ページ数」はpaginate(本にページつけをする)という行為の名詞形として19世紀半ばに現われた。ラテン語pãginaから派生したフランス語paginerによる。

ということですので、英語のpageという言葉の歴史は比較的新しいようです。『紙二千年の歴史』[2]によると紙がイギリスに伝わったのは1494年(同書p.61)とあり、『紙の世界史』[3]では、イギリスの初めての印刷業者はウィリアム・キャクストンが1476年にウエストミンスターに開いた印刷工房、初めての製紙工場は1495年とあります(同書p.254)。

そうしますと、15世紀後半に紙と印刷がイギリスに伝わってから英語のpageという言葉が生まれるまで100年ほど掛かっていることになります。紙や印刷はヨーロッパからイギリスに伝わったものですので、「ページ」がラテン語からフランス語へ、そして英語へと伝わったのはわかります。

『古典ラテン語辞典』[4]では、pãginaの意味は次のようになっています。

1.紙(パピルス)の1枚、1頁
2.頁の内容、書きもの、文書、誌、作品

古典ラテン語ではパピルスの髄を並べて紙を作ったことから留めるという言葉からページという言葉が派生したようです。

『新編 英和活用大辞典』[5]には、英語のpageの用例が大量に出ています。ページという言葉は、単に紙の1ぺージという意味だけではなく、歴史の1ぺージというような、比喩的な意味にも使われています。本書は1995年発行ですので、当然、インターネットのWebページに関連する使い方は一つも出てきません。

『三省堂 英語イディオム・句動詞大辞典』[6]では、pageの使い方として、

・page up/page downとして「コンピュータで次/前のページを出す」

とあります。2011年ですので、もうインターネットがかなり普及している時代ですが、まだ、1画面を1ページと見立てた説明になっています。

でも、この説明は英語の元の意味(使い方)と違うような気もします。つまり英語のpage upは縦につながっている巻物全体を1ぺージとして、巻物を上にスクロールする意味なのに、page upを次の「ページを出す」としてしまうと、いかにもページが区切られているように受け取られてしまいませんか?

現在、ページというとWebページという意味で使うことが増えていますが、英語の(紙の)辞書でWebページを説明しているものをまだ見かけていません(Webの辞書における説明は初回のブログにあります。)。次回、図書館で探してみましょう。

[1]『オックスフォード英単語由来大辞典』(グリニス・チャントレル編、株式会社柊風舎、2015年12月25日発行)
[2]『紙二千年の歴史』(ニコラス・A・バスベインズ著、原書房、2016年5月30日発行)
[3]『紙の世界史』(マーク・カーランスキー著、川副 智子訳、徳間書店、2016年11月発行)
[4]『古典ラテン語辞典 改訂増補版』(國原 吉之助著、大学書院、2016年12月30日発行)
[5]『新編 英和活用大辞典』(市川 繁治郎他編、研究社、1995年発行)
[6]『三省堂 英語イディオム・句動詞大辞典』(安藤 貞雄編集、三省堂、2011年7月10日発行)

★ページに関連する過去ブログ記事の一覧
[1] ページってどういう意味? 紙のページ、Webページ (memo)
[2] ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて
[3] Kindle Unlimited問題とKENPの関係について(続き)
[4] Amazonでは本のページの数え方が三つある。Kindle Unlimitedは第三のKENPで著者への支払いが行われ、KENP相場が基準になる。
[5] ページっていったい、どういう意味なんだろう? ――Webページ
[6] ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係、「ページ」と「頁」の関係、ブラウザと電子書籍の未来

★「ページ」についてまとめたWebページ
本のかたちを考える ― その2ページって何?「ページ」と本のかたちとの関係