PODで『XSL-FOの基礎』の出版を準備中です。

今回の電子出版ブームは2010年に始まりました。

2010年にEPUB3.0の標準化のお手伝いをさせていただいたとき、これからはEPUBと紙のハイブリッドの出版の時代になる、と予想してクラウドで書籍を制作編集するWebサービス「CAS-UB」の開発を始めました。

その後、御承知の通り、EPUB3.0は既に電子書籍のデファクト形式となりました。
一方で、このところ、プリントオンデマンドで本を売るという仕組みが注目を集め、また実際に使えるようになってまいりました。

そして一部で、電子書籍と紙による同時出版の実践が始まっています。大よそ、5年前の予想通りの進展です。

CAS-UBの方もまだ完成とは言えませんが、なんとかPDFとEPUBを同時に作ることができるようになりました。

プリントオンデマンドは、商業出版では採算に合わないような少部数の出版物や、普及啓もう出版で使われるのではないかと考えております。そこで、その実践として、この度、昔「XSL-School」で使用していましたテキストを刷新してPODで販売することを計画しました。

このテキストは、2001年~2002年にXSL Formatterの草創の時代に作成したものです。とりあえず、昔のものをCAS-UBに移して、PDFとEPUBとして作成してみました。

『XSL-FOの基礎』 EPUB 0.62版
『XSL-FOの基礎』 PDF 0.62版

[4/12追記] 一般配布を終了しました。
4月12日版以降は、Formatter Clubの会員のみ配布いたします。
AH Formatter:Formatter Clubについて

なにしろ、10数年前の資料を元にしておりますので、いろいろ不備もございます。これをPODで販売に値する内容にするには、まだいろいろ手を懸けなければならないところが多くあります。

皆様のご批判をいただきたいと存じます。また、こんな風にしたら良いというご要望もいただければと存じます。
ご意見、ご要望は cas-info@antenna.co.jpまでいただければ幸いです。

また、昔の資料をPODとEPUBで出すのにどのような作業を行ったかを後日整理していきたいと思います。

よろしくお願い致します。

[4/4] 更新しました。
EPUB、PDFを0.60版⇒0.62版
XSL-FO V1.1の機能(しおり、索引)を追加し、第1章~第3章をかなり書き直しました。

[4/12] 一般配布を終了しました。

『PDFインフラストラクチャ解説』 出版記念特別講演会の資料公開

去る2月16日に市ヶ谷健保会館で開催しました『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念 特別講演会の資料一式のご案内です。

1.スライドの内容とビデオ

第一部 だれでも本を出版できるPOD出版時代を迎えて
~『PDFインフラストラクチャ解説』の制作過程~
アンテナハウス代表取締役社長/小林 徳滋
PDF規格化の動向
第二部 ~ 印刷関連(TC130)を中心として~
画像電子学会フェロー/松木 眞 氏
PDF/Xなどの派生規格やISO32000の最新動向について解説します。

『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念特別講演会の資料公開

2.寄稿記事
第一部のテーマのうち、ワンソースマルチユースでプリントオンデマンド本を作ることについてもう少し整理してまとめました。テキストをマガジン航に寄稿しました。

本のワンソースマルチユース制作〜その理論・実践・未来

★参考資料
[1] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?
[2] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい
[3] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (3) 電子テキストは印刷ではなく、音声の暗喩と見る方が良い
[4] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (4) 『PDFインフラストラクチャ解説』の実践例より
[5] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (5) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売
[6] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (6) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (6) 紙のページと電子の画面の違い

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたいの最後で「ページという概念の紙と電子(画面)での違いは、本質的です。」と書きました。

今日は、紙のページと電子の画面の違いについて考えてみます。

相違点1.紙の判型と電子の画面で寸法の考え方が違う

紙の本には判型(物理的なサイズをもつ)があり、判型の上に版面(本文をレイアウトする領域、基本版面)があります。紙では絶対寸法で表される大きさをもつ版面が必然であり、紙の制約条件とも言えます。版面の上に配置されるオブジェクトも絶対寸法をもち、一旦印刷されると拡大、縮小ができません。

電子では画面の大きさがあります、画面の大きさも物理的な制約なのですが、画面の上に配置されるオブジェクト(テキスト、図版、表など)は、絶対的な寸法を持ちません。拡大、縮小が自由です。

相違点2.裏表

紙には裏表があります。電子には裏表がありません。

本で裏表を考えて配置されるものに、扉があります。
扉の表に印刷される内容と裏に印刷される内容は役割が違います。例えば、本のタイトルを印刷するのは扉の表であり、扉の裏面ではありません。

電子の画面には裏表がありません。あるのは表示の順番だけです。

例えば、紙の本で書名扉の裏を空白ページにするのは珍しくありません。しかし、画面で空白のページを配置してもあまり意味がないように思います。

また、ページ番号は紙では奇数が表、偶数が裏になります。横組でも縦組でも奇数ページの方が表になり、開始位置として重要度が高くなります。偶数ページは裏になり、続きという意味合いになります。

相違点3.製本と見開き

紙の本は両面に印刷した紙を製本して作ります。すると、見開きページができます。

見開きのページは、片面に印刷して、片方を綴じたレポートのような印刷・製本では存在しません。従って、印刷・製本の仕方によるものです。

電子の画面で見開きのような表示はできますが、紙の本の見開きとは本質的な相違があります。

これを理解しやすい例として、縦組における脚注の配置を示します。
脚注をページ毎に示すと、次の画面のようになります。電子の画面でみるときは1画面=1ページ毎脚注を示すべきでしょう。
20160306
図1 1ページ毎に脚注を配置(注[1]

しかし、縦組の紙の本では、脚注を1ページ毎に配置するのはあまり行われません。次のように見開きの左ページに脚注を置くのが一般的です。
20160306d
図2 見開き毎に脚注を配置(注[2]

相違点4.ページを読み進める(開く、表示する)方向

製本した紙の本は紙のページを開く(捲る)操作と読み進める操作が分れています。画面ではページを順番に表示します。

この相違が一番問題になるのは、たとえば、本文が縦組で、索引が横組で、これが一冊の本として製本されているときです。

紙では本文は、本文の先頭ページから順に2ぺージづつ紙を捲りながら、右から左に読み進めていきます。索引を読む時は、索引の先頭頁を開いて、そこから左から右に読み進めます。

同じことは電子は実現するのは難しいと思います。

本文が縦組で、索引が横組のPDFを作成し、PDFをAdobe readerを使ってWindows PCのウインドウ上で表示してみます。PDF表示ではPDFファイルの中に物理的に登録されているページ順に表示するだけです。結果として索引のページは後ろのページから逆順に表示してしまいます。索引の先頭ページにしおりを設定してジャンプはできますが、そこから読み進めるには逆順にページを表示します。

Adobe Readerでは紙を捲るのと同じ操作は実現できていないようです。

[1] 『PDFインフラストラクチャ解説』をCAS-UBで縦組でPDF化。脚注をページ単位に配置するオプションを選択。
[2] 『PDFインフラストラクチャ解説』をCAS-UBで縦組でPDF化。脚注を奇数ページに配置するオプションを選択。
[3] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?
[4] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい
[5] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (3) 電子テキストは印刷ではなく、音声の暗喩と見る方が良い
[6] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (4) 『PDFインフラストラクチャ解説』の実践例より
[7] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (5) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売