「横書き登場」と縦書きと横書きのゆくえ

「横書き登場」(屋名池 誠著、岩波新書、2003年初版発行)は、日本語の印刷物に横書きが登場してから、現在に至るまでの軌跡を豊富な調査と図版をもとにして丁寧に解説している。

日本語は、現在、縦書き・横書きという2つの書字方向を許す世界でもまれな言語である。その理由は、日本語を表記するのに使う漢字、ひらがな、カタカナという3種類の文字が形態素・音節文字で一字がカバーする範囲が広いこと(p.66)、漢字・ひらがな・カタカナの多くは字形が正方形であって文字を縦方向にも横方向にも続けて書くことができる特性をもっているからである。

それに対して、西欧から入ってきた言語はもともと横方向だけにしか書かれない。これは①ラテン文字が正方形でないというデザインの特性、②ラテン文字は音素に対応する、すなわち語を表すのに多くの文字を使い、文字列をひとつのまとまった形として読み取るという方式になっているためである(p.66)。このため西欧の言語を縦書きするには横転横書きをする必要がある。

日本語は江戸時代までは縦書き専用であった。日本が西欧の文化・技術を取り入れた幕末から明治にかけての時代は、日本語の書字についても混沌の時代になったのは必然である。

さて著者は、明治から戦後までの日本語の書字方向について、次のように整理している。

1. 日本語の横書きが登場したのは江戸幕府が開国したころ。最初は右から左へ書き進めるものであった。右横書きは縦組みの行が進む方向と書き進める方向が同じなのでわかり易かった。
2. 明治初期の辞書は欧字を左横書き、和字を横転縦書きして欧語と日本語の共存を図った。横転縦書きでは、欧語は左から右へ。日本語を左90度回転して縦書きする。横転縦書きは大正13年まで見られる。
3. 左横書きは明治4年の英和辞書で初めて登場した。欧字との共存のためである。また、左横書きは、楽譜、数学、簿記(数字)などに用いられた。こうした左横書きは西欧の文物を本格的に学んだ人、すなわち一部のインテリ向けでハイカラ・西洋文明受け入れ派という印象がある。これに対して、右横書きは切符、地図など民衆向けの用途であった。これは縦組みの行進行方向と文字の読む方向が一致しており、一般人にわかりやすく、また書籍の製本もしやすかったため。
4. 右横書きは、縦書きの印刷物の中で、右横書きを見出し、記事のリード、キャプションなどに使う、縦書き(右横書き併用)のスタイルとしても使われた。これに対して左横書きは専用で使われた。
5. 大正になると、縦書きの印刷物の中で、左横書きを見出し、記事のリード、キャプションなどに使う、縦書き(左横書き併用)のスタイルも使われるようになった。
6. 昭和の戦前は、①縦書き(右横書き併用)のスタイル、②縦書き(左横書き併用)のスタイル、③左横書き専用の3つのスタイルが並存した。但し、左横書きは西欧文化を受け入れる印象があり、右翼政治家などの攻撃を受けることがあった。しかし、効率という面で左横書きを採用しようという動きもあった。
7. 戦後は、一気に、①左横書きが増え、また、②縦書き(左横書き併用)のスタイルと二つがつかわれるようになった。
8. 今後は、左横書き(縦書き併用)に収斂していくのではないだろうか。

■感想
現在では縦組みは、新聞、雑誌、書籍の一部などの印刷出版物の世界のみで見かけるものとなり、出版関連の専門家や趣味の世界で使われるものとなっている。

実用・効率を重んじるビジネス文書などではほとんど使われないし、Webや電子メールはすべて横書きである。

そういう意味では、確かに、既に社会全体としては左横書き(縦書き併用)の時代になっている。日本語の書字方法は西欧文化との遭遇で大幅に変化した。左横書きが定着した明治から戦後までの変化が第一段階とすると、インターネット技術と遭遇している現在は第二段階と言える。現在、Webでは縦書きはほとんど用いられていないし、あまり必要性も語られない。従って、第二段階が、このまま推移すると、縦書きが消滅する方向で収斂する可能性も大きいだろう。

100年~200年単位でみると出版でも縦書きを使う文化が生き残るか、そして縦書きを使い続けるにはどうしたら良いかを考えさせられる。

■書籍の情報
書名:「横書き登場」
著者:屋名池 誠
発行所:岩波新書
発行年:2003年11月初版1刷発行
ISBN:4-00-430863-1

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縦組み書籍における記号の方向に関する予備調査の結果

「英数字正立論―SVO を基本とするコンテンツマークアップの方法」(8/7版)[*1]において縦組みにおける英数字の方向に関する基本的な考え方を示しましたので、その完成に向けて、縦組みにおける記号の向きの取り扱いを考え始めました。

まず、現状を予備的に調査してみました。詳しくは「データ」の箇所をご覧いただきたいのですが、UTR#50(第5案)におけるSVOの値の中で表1の記号は実態とだいぶかけ離れているようです。

今回は書籍の中で出現するか否かだけを調べたのですが、出現頻度も含めた本格的な実態調査が必要なように思います。
(どうしましょうか)。

■表1 SVOの値を見直すべきではないかと思われる記号

・U+003D、U+FF1D =(等号)
・U+FF5E 全角~ 但し、Wave dashは問題ない
・U+2026 横3点リーダ 但し、Unicodeには縦の3点リーダが別に登録されています。この使い分けはどうするのでしょうか?
・U+2192 右向き矢印
・他には、不等号、÷記号が怪しいと思います。

■データ
・本ブログで英数字の方向を取り上げてきた書籍を対象として記号類の方向を調べました。
・対象としたのは、縦組みの和文コンテキスト中における記号類の方向です。
・和文と欧文の境界上の記号(引用符が多い)は対象に含めます。

次のタイプの文字列は和文には分類しません。この中の記号は除外します。
a. ラテン文字など欧文の文字で表記した英語や諸外国の単語などの中の記号類 (文字列全体が右90度回転しているので)
b. 横倒し数値列、横倒し数式の中の記号類 (文字列全体が右90度回転しているので)
c. 縦中横の中の記号類 (横組みなので)

例 a.John Wood Campbell, Jr., 1910-17 のような文字列の中の、「,」「.」「-」を除外
  b.Z=14 のような数式が横倒しのとき「=」を除外
  c. L’ (Lプライム)が縦中横のとき「´」を除外

[結果]

[*1]「英数字正立論」

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メールマガジンのEPUB変換例

お盆休みが終わり、ビジネス再稼動。ということで、昨日、CAS-UB関連のニュース・メルマガを発信いたしました。

今回は、メルマガEPUB変換サービスを開始しましたので、テキスト・メルマガのみではなくて、メルマガのEPUB版も作成しました。現状の、メルマガとEPUBの配信方式の違いは、メルマガがプッシュ配信なのに対して、EPUBはダウンロード方式になることです。将来はプッシュ配信によるEPUBメルマガも普及することと思いますが。

1.元のメルマガはテキスト190行。印刷しますとA4で3枚と少しあります。次のような感じです。テキスト形式の場合は、行間などの設定が適正になりにくいため読みにくくなります。

・1ページ目

・2ページ目

・3ページ目

・4ページ目

◎もとのテキストファイルは次からダウンロードできます。
メルマガテキスト(変換前)

2.このメルマガを、CAS-UBのメルマガ変換を使って簡単な操作でEPUBにすることができます。

◎メルマガ変換結果は次のページからダウンロードできます。
http://www.cas-ub.com/samples/ahnews20120821.epub

例としてiBooksで表示したところの画面スナップショットを示します。
EPUBではCSSで行間の設定を行なうことができますので、テキストよりも読みやすくなります。

また、今後はEPUB形式のメルマガを書店の流通に乗せることもできるようになるだろうと予想します。

CAS-UBの試用ライセンスでもメルマガEPUB変換をお試しいただくことができます。関心をお持ちの方はぜひお試しください。

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「超・文章法」にみる縦組みの英数字・記号類の方向

日本語の縦組みにおける英数字と記号の方向を調べています。さて、今回は、「超・文章法」(野口 悠紀雄著)を調べてみます。本当は、この分野で一番の「理科系の作文技術」を調査したいのですが、残念ながら、これは横組みです。

本書は原則縦組みですが、ところどころに挿入されたコラムのページが1ページ丸ごと横組みになっています。また、最後の索引が横組みです。以下の調査では、横組みページを除外します。

■特徴
数字は一九九三年などの年号、一五〇〇字などの数量をはじめとして原則漢字ですので伝統的組版といえますが、英単語が多数あります。それも最初の方は、日本語書名の次の()内に原題を記しているような形式ですが、後ろに方では英文が主()内に日本語などと逆転しています。いづれにしても欧文が多数出てくるのが本書の特徴です。

■ラテンアルファベット
ラテンアルファベットの正立用法は、「Aさん」、「重力乗数g」、のような記号としての使用、頭字語、「(A)」のような箇条番号、「A・ピアーズ」のような名前の頭文字、「日本人はlとrの区別が」など多彩です。一方、横倒しは、IEEE 802.3とURLの表記を除くとすべて欧文の文節または単語です。

なお、vsが縦中横です。

■数字
数字は上述のように漢数字が主ですが、章番号、節番号、箇条書きの項番号、パート2などの順序数がアラビア数字です。また、A4のような慣用句もアラビア数字です。漢数字中心の伝統的なスタイルなので縦中横は比較的少なくなります。

アラビア数字は正立が主ですが、参考文献である欧文書籍の発行年、外国人の生年など欧文文脈中では横倒し。また、IEEE 802.3とか6×1024 といった表記が横倒しです。

■記号類
記号類は和文中の記号は他の書籍とそれほど変わらず、種類は比較的少ないですが、欧文中の記号の種類が比較的多いです。

正立:
?!%のほか、ⅠⅡなどローマ数字が正立です。′[U+2032]

縦中横:
A′[U+2032, エイ・プライム]

横倒し(右90度回転):
和文中:「」()『』–[U+2013]——[2倍ダッシュが横倒し]=【】…:;〈〉
欧文・URL中:'[U+0027]“”[引用符],.:;/-&

■データ
以下では、1文字ずつ正立する英数字を全角文字コードで表しています。[]内は注、[*]は後注です。

1.ラテンアルファベット
1.1 1文字ずつ正立(例)
Aさん、A新聞、SF作家、A地点、R2–D2、C–3PO、重力乗数g、距離(d)、速さ(v)、A4一枚、PTA会議、A・ピアース、ITは、A・B・ミグダル、OS、(A)[()はそれぞれ右90度回転]、QED、DAVプロトコル、WECプロトコル、DVDプレイヤー、GM(ゼネラル・モータース)、日本人はlとrの区別が、LIBOR、ITM、OTM

1.2 縦中横
日常vs旅、善vs悪

1.3 横倒し(例)
『夜来る』(原題 Nightfall)、「旅の仲間」(The Fellowship of the Ring )、ジョセフ・キャンベル(Joseph Champbell, 1904–87)、善悪や正邪を逆転させる(Fair is foul, and foul is fair)、hidden agendaというのがある(……)[()内に説明文]、ポーリンの冒険(The Perils of Pauline)、悪いことのクライマックス(bottom)であり、良いことのクライマックス(zenith)だ、All’s Well Thats Ends Well(『終わりよければすべてよし』)、Minimax(最大値の最小)、Maxmin(最小値の最大)、鞍点 saddle point といわれる、『若草物語』(Little Women)、『小公子』(Little Lord FauntLeroy)、『母を訪ねて三千里(愛の学校)』(Cuore)、『岩窟王』(Comte de Monte-Cristo)、The Lord of the Ringsを「ロード・オフ・ザ・リング」として、モットー(motto)、If the stars should appear one night in a thousand years…(もし星が千年に一度しか現れないのであれば)、Ralph Waldo Emerson, Nature, 1836.、全文は、http://www.ecotopia.org/about/nature/naturrel.html、John Wood Campbell, Jr., 1910-17、Rhoda Thomas Tripp, The International Thesaurus of Quotations, Harper & Row (1970) [書名はイタリック]、Bartlett’s Familiar Quotations [イタリック]、電子図書館PROJECT BARTLEBY、例えば「love」と、The Left-Handed Dictionary [イタリック]、J. M. and M. J. Cohen, Dictionary of Quotations, Penguin, 1960 [書名はイタリック、このほかにも、参考文献は欧文が多いが残りは省略。]、“Roman Holiday”、英語ではthatを用いて、英語ではclause)、英語ではphrase)、IEEE 802.3、Quantity(量)、Comparative(比較)、 adv(副詞)[p.207]、very、gas、

2.アラビア数字
2.1 正立(例)
第1章、1[節番号]、Ⅱ–1、[1]、『「超」整理法3』、1[箇条書き項目番号]、(1)[1が正立、(と)は1の上下にて右90度回転]、図2–1、桃太郎パート2、A4

2.2 縦中横
11ページ

2.3 横倒し
ジョセフ・キャンベル(Joseph Champbell, 1904–87)、6×1024 [数字全体]、IEEE 802.3

3.記号
2.1 正立
?、!、Ⅰ、Ⅱ–1[–を除く]、九〇%[%記号]

2.2 縦中横
A′[p.212、エイ・プライム]

2.3 横倒し(右90度回転)
「、」、(、)、『、』、Ⅱ–1[–が横倒し]、(1)——内容面の[()と2倍ダッシュが横倒し]、内容別に分類する方法=正しい、【、】、第二楽章は……[3点リーダ]、[地球の重さ×g][p.106]、All’s Well Thats Ends Well [U+0027 アポストロフが横倒し]、“Aritheuso rose from a couch of snows in the Aquasaromian Mountains” [p.142 引用符が横倒し]、Ralph Waldo Emerson, Nature, 1836. [p.147]、http://www.ecotopia.org/about/nature/naturrel.html、John Wood Campbell, Jr., 1910-17、:の記号を認める[p.168]、そして;記号が使われて、:(コロン)、と;(セミコロン)、(,)(;)(:)(.)の順で区切る力が強い[p.202]、〈、〉[p.202]、Roget’s Thesaurus [p.207]、曖昧の〈が〉、記号(′)はプライムと[p.212]

■書籍情報
書名:「超・文章法」
著者:野口 悠紀雄著
発行元:中央公論社 中公新書
発行年月:2010年10月10日第10版
ISBN:4-12-101662-9

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「スマートフォン、ビジネス活用向けノウハウ」セミナー(無料)を開催します

iPhone、iPadによってもたらされたモバイル環境は「どこでもオフィス」を可能とした。対面でのプレゼンテーションで使うのは当然であるが、今注目したいのは、IDPF(International Digital Publishing Forum)で制定されたEPUB3だ。EPUB3 は電子出版の仕様であるが、この技術を、必要なときに現場ですぐ見る業務マニュアルや操作マニュアル、保守マニュアルに応用する動きが出てきた。一方、基幹業務の端末としてのスマートフォンの活用も定着してきた。
 そこで、これらを実現するための「確かな技術やノウハウ」を提供するセミナーを開催したい。

■開催日時

日時 9月24日(月)13:30~17:00(受付開始:13:00)
参加費 無料
会場 TKP神田ビジネスセンター H301号室(200名会場)
主催 アンテナハウス株式会社
後援 ソフトバンクモバイル株式会社
株式会社ソフトウェア・パートナー
協賛 日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社
司会進行 片貝システム研究所 片貝孝夫

■セミナータイムテーブル

時間 内容 講演者(敬称略)
13:30 ご挨拶 片貝システム研究所 片貝 孝夫
13:40 電子出版 EPUB作成サービスCAS-UBの紹介 アンテナハウス株式会社 代表取締役 小林 徳滋
14:15 スマートマニュアルの時代
マニュアルのEPUB化
片貝システム研究所研究員 木村 修三
14:50 サーバとスマートフォン同期/非同期連携
MicroWebServerによるさまざまな応用事例紹介
株式会社ソフトウェア・パートナー
システムソリューション部
次長 天井 誠一
15:20 休憩
15:30 基幹業務の端末としてのスマートフォン利用
リッチクライアントBiz/Browser活用事例
アクシスソフト株式会社
16:00 iPhone,iPadが拓くビジネスプレゼンテーション ソフトバンクモバイル株式会社
ビジネス推進統括部首席エヴァンジェリスト
中山 五輪男
16:45 ご挨拶、個別質疑応答 各社、各位

■お申込み

セミナーへのお申込みは、下記リンクにて受け付けております。奮ってご参加ください!

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「本づくりの常識・非常識」にみる縦組みの英数字・記号類の方向

日本語の縦組みにおける英数字の方向を調べています。最近は、記号の方向も調べ始めました。さて、今回は、「本づくりの常識・非常識」(野村 保惠著)を調べてみます。

本書は原則縦組みですが、本文の第六章 組版ルール(横組)が章全体横組みという珍しい本です。また、後付の付録、参考文献、索引が横組みです。

数字は章番号、節番号をはじめ、九組、一冊、二〇〇〇年(平成十二)年十二月、印刷標準字体一〇二二字のように原則漢数字となっています[*1]。また、例えば二ミリ、五〇メートルのように単位をカタカナに展開しています[*2]。但し、専門書の特性上、専門用語を中心にラテンアルファベットがかなり沢山出てきます。例えば、「JIS規格」を「ジス規格」とは書きにくいでしょう。こうしてみますと、全体としては、伝統的組版の類型に属すると言って良いでしょう。

■特徴
本書では記号がかなり使われていてその方向が多様です。記号類が多数出現する専門的な原稿はDTPのようなWYSIWYGツールを使うのであれば良いですが、テキスト系のツールでマークアップして方向を指定するのは煩雑になる可能性があります。

■ラテンアルファベットは、大文字の頭字語は1文字ずつ正立、小文字の頭字語は正立(dpi)と横倒し(lpi)混在です。なお、WYSIWYGは正立と横倒しの両方出現します。しかし、英単語はすべて横倒しです。

■数字は上述のように漢数字が中心ですが、慣用句・固有名詞などではアラビア数字が使われており、縦中横もあります。但し、ページ番号、パーセント値など慣用句でないのにアラビア数字が使われている箇所があります。アラビア数字は縦組みの和文中ではすべて正立または縦中横です。

■記号類
記号類の中には説明の都合上、一部、本来の向きとは異なる向きで使われているものがありそうなので、注意が必要です。

正立:
©%†“”;:>—-–‐△
①②③④(箇条書き項目番号)

横倒し:
()「」『』—‐→:〈〉[]=…/÷

■データ
以下では、1文字ずつ正立する英数字を全角文字コードで表しています。[]内は注、[*]は後注です。

1.ラテンアルファベット
1.1 1文字ずつ正立(例)
B6、A5、JIS、FD・MO、DTP、aとd・o、bとf [p.26]、欧文のI・lの区別 [p.28]、小文字のaからzまでを並べた長さ[p.36]、MO(Magneto Optical Disk)[p.48、(内は横倒し)]、六〇〇dpi、WYSIWYG[p.147][*5]、CTF(Computer To Film)[p.158、()内は横倒し]、PS版(Pre-Sensitized plate)[p.161、()内は横倒し]、ページ記述言語(PDL、Page Description Language)[p.175、Page Description Languageは横倒し]

1.2 縦中横
なし

1.3 横倒し
copyright、x-height、a–z length (小文字のaからzまでを並べた長さ)[p.36、()内は1文字ずつ正立]、TeX、対話処理(WYSIWYG、What You See IS What You Get、)[p.50、横倒し欧文の区切りに、が使われている]、Rectos have odd numbers, versos even. (p. 144) [p. 51、オックスフォードルールの引用]、word間のword space [p.74]、Adobe AcrobatがPDF変換[PDFは正立]、言語はinkです。、lpi(lines per inchi)[p.167、全文字横倒し]、defact standard(事実上の標準)、長巻印刷(web)、tight back、hollow back、flexible backの訳語です。[p.200]、comprehensive layoutの略で

2.アラビア数字
2.1 正立(例)
B6、A5、第2版、JIS X 0208 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合、2004JIS、第3四半期、数字の1、6,7,8,9[p.35]、6—7ページ[p.87]、5%

2.2 縦中横
第22期国語審議会、78JIS、83JIS、90JIS、97JIS、97・11・22、18ポイント、10%の網[%は正立]、35ミリフィルム、135型[p.168]

2.3 横倒し
(p.144)[p.51、欧文の原著ページ参照]

3.記号
2.1 正立
©表示、何%[p.56[*1]]、例えば*、†など[p. 63]、“、”、;、:[以上p.82、[*2]]、小さく「>」を入れる[p.136、校正記号としての利用の説明]、一、ー、—、-、–、‐[p.140、イチ、オンビキ、全角ダーシュ、マイナス、ニ分ダーシュ、ハイフン。[*4]]、△で数字を囲みます、

①、②、③、④[p.62、箇条書き項目番号]が随所で使われています。

2.2 横倒し(右90度回転)
一‐一、(、)、「、」、『、』、10646‐1、「—」(全角ダーシュ)CD‐R、入力—編集(組版)—校正、入力機→編集機、四五—六十%[p.56、%は正立]、JIS X 4051:2004、〈、〉、[、]、[p.84、[*3]]、1ポイント=〇・三五二八ミリ、年月日……校了[p.143]、一二g/m2[p.180、単位は全体が横倒し、2は上付き]、ページ数÷全紙1枚で…[p.189、[*6]]、ラシャ紙:ラシャ紙、査定価格=一冊当たり生産原価÷〇・四で算出[p.232、[*7]]

[+記号は頻繁に現れるが、見掛けでは正立とも横倒しともいえない。]

■書籍情報
書名:「本づくりの常識・非常識」【第二版】
著者:野村 保惠
発行元:印刷学会出版部
発行年月:2007年9月25日第2版第1刷発行
ISBN:978-4-87085-189-4

[*1] 漢数字が原則のようだが、アラビア数字もかなり使われている。その多くはJIS規格番号などの固有名詞であったり、6ポイント、第3四半期のような慣用句であるが、しかし、10%などの数値もあり、完全に統一されているとはいえない。
[*2] パーセントは%のままでカタナカに展開していない。また、メートルもmになっている箇所がある[p.96]。しかし、センチメートル、キログラムはカタカナ表記している[p.194]ので、完全に統一されているとはいえない。
[*3] p.84

[*4] ここは記号の説明なので正立させているようだ。
[*5] WYSIWYGは正立と横倒しの両方があり不統一。
[*6] p.189ではブロック数式全体を横倒ししている。

[*7] p.232ではブロック数式全体を正立させている。

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縦組み経済書にみる英数字と記号の方向―伝統的組版の本

昨日、「円のゆくえを問い直す」(片桐 剛士著、ちくま新書)の話をしましたが、今日は、「さっさと不況を終わらせろ」(ポール・クルーグマン著、山形 浩生訳、早川書房)を検討します。この2つの書籍の組み方は、「円のゆくえを問い直す」が現代組版なのに対して「さっさと不況を終わらせろ」は、伝統的組版の典型です。がちがちの伝統組版と言っても良いくらいです。

■特徴
・外国人名は、映画の名前、団体名などカタカナ表記。頭字語は最初に正式名称と()内の頭字語で表記する
・数字 年号、月などが漢字表記。単位は%ではなくパーセントと表記。
・ページ番号は縦中横表記が原則ですが、一一ページ[p.165]に漢字になっている箇所もあります。不統一です。

■訳者解説を除けば、ラテンアルファベットの横倒しによる欧文表記は1箇所もありません。つまり本文のラテンアルファベットはすべて和字扱いの頭字語または名前の頭文字です。但し、1箇所だけ「VS.」の3文字を縦中横で表記しています。

■本文数字はほとんど漢数字です。訳者解説を除くと横倒しのアラビア数字はありません。章番号、図番号、箇条書きの項番号などはアラビア数字で正立しています。

縦中横が時々あり、2桁の章番号、図番号が縦中横です。また、3桁のページ番号が縦中横になっていたり、訳者解説には3.1のような3文字が縦中横です。

本書では縦中横は他の書籍と比べて少ないのですが、3文字の縦中横を使っているのが本書の特徴です。

■記号は他の書籍と比較すると少なくなっています。
・正立: ?&!
・横倒し(右90度回転): ――「」():『』~=…‐〔〕!.〈〉“”,-/@
 なお、次の記号は欧文文脈にて横倒し:!.“”,-/@

■■データ(ラテンアルファベット正立以外は代表的なもののみ)
1.ラテンアルファベット
1.1 1文字ずつ正立
国内総生産(GDP)、連邦準備制度理事会(FRB)、これはU6と呼ばれる[p.21]、ATM、世論調査NPO、議会予算局(CBO)、国際通貨基金(IMF)、資産担保証券(ABS)、債務担保証券(CDO)、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)、AAA格付け、AIG、J・P・モルガン、連邦預金保険公社(FDIC)、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、ロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)、CEOたちは、トマス・H・リー・パートナーズ社、THLは、金融巨人UBS、H・L・メンケン、ウイリアム・F・バックリー、あるいはCAPM(読み方はキャップM)、MIT、不動産担保証券(MBS)、スタンダード&プアーズ(S&P)、BNPパリバ、不良資産救済プログラム(TARP)、アメリカ回復再投資法(ARRA)、コマーシャルペーパー(CP)、消費者物価指数(CPI)、労働統計局(BLS)、欧州中央銀行(ECB)、EU諸国、欧州経済共同体(EEC)、GIPSI諸国(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリア)、経済協力開発機構(OECD)、国際決済銀行(BIS)、ITブーム、テレビSF、住宅借り換え促進プログラム(HARP)、ジョージ・W・ブッシュ、N・グレゴリー・マンキュー

○訳者解説
pdf、XX政策、IS-LMモデル

1.2 縦中横
刺激策増加VS.緊縮[p.254、VS.の3文字が縦中横]

1.3 横倒し
本文中にはない

○訳者解説
原書の書名・発行社:Paul Krugman End This Depression Now! (W. W. Norton, 2012)
論文名の紹介:Gauti B. Eggertsson and Paul Krugman “Debt, Deleveraging, and Liquidity Trap: A Fisher – Minsky – Koo Approach” (New York: Federal Reserve Bank of New york, 2010) ほか、

2.アラビア数字
2.1 正立
目次の章番号[本文の章扉は横組みなの非該当]、第2章、図7-1、1、2、3、[箇条書き項目番号]

2.2 縦中横
60ミニッツ[p.16]、105ページ[3文字の縦中横]、176ページ[同]、205ページ[同]、図10-1、第12章、300ページ

○訳者解説
3.1、3.2、3.3 [3文字縦中横]

2.3 横倒し
本文中にはない

○訳者解説
原書の発行年、8th ed., [版数]、pp.137-38

3.記号
2.1 正立
?、セービングス&ローン、!

2.2 横倒し(右90度回転)
○本文
――(2倍ダッシュが多い)、「、」、(、)、状況だ:「回復も[コロンの使用が多い[*1]]、
『、』、二〇~二五パーセント、グラス=スティーガル法、ガーン=セント・ジャーメイン法[p.88]、指名するのは……委員会が[p.111]、図7‐1、〔邦題:『国家は破綻する』〕[p.169]、

○訳者解説
原書の書名中の!、“、”、(、)など(ラテンアルファベットの項参照)、『クルーグマン教授の〈ニッポン〉経済入門』〔春秋社、二〇〇三〕、IS-LM、論文名の紹介
サポートページURL:http://cruel.org/…
訳者アドレス:@

注の合印としての※[p.218,p.219]。

[*1]「:」が多く使われているのは本書特徴です。しかし、必ずしも統一されていません。例えば、p.165には「論点は三つ。(改行)箇条書き3項目」という表現があります。一方、まったく同じようなパターンがp.176にあり、「以下を指す:(改行)箇条書き6項目」と表現されており、不統一です。日本語文書中には「:」はそぐわないように感じるのですが。

■書籍情報
書名:「さっさと不況を終わらせろ」
著者:ポール・クルーグマン著、山形 浩生訳
発行元:早川書房
発行年月:2012年8月10日3版発行
ISBN:978-4-15-209312-7

縦組み経済書にみる英数字と記号の方向―記号は回転が多い

「円のゆくえを問い直す」(片桐 剛士著、ちくま新書)は新書版ですが、非常に内容豊富な書籍です。経済書ですので、年号や数字が頻出します。また、海外の機関名等の略称である頭字語もさまざまなものが出てきます。

これらの英数字の扱いについては、特に数字がアラビア数字であり、ラテン文字が多いという点で『英数字正立論』[*1]0.40版で分類した類型によれば「現代組版」に属すると言えます。

英数字については、既に何冊もとりあげましたが、大よそそれらと同じです。いくつかの特徴を述べますと、為替レート、あるいは小数点付の数字について、76.63円を76が縦中横、63は1文字ずつ正立のように表示しています。どうも数字の縦中横は10進法の10の位と1の位を表記するための専用の表記として使っているようです。

日本人の英文著者名表記でItoだけ正立、Hondaは横倒しは不統一です。恐らく間違いと思います。

今回から、記号類も取り上げますが、記号類は次のようになります。

■和文中での記号表記
正立:/%&?†
右90度回転:【】「」()=-~→・・・:><―-÷〈〉『』

なお、+×のような90度回転しても形が変わらないものもあります。

■後注、参考文献の欧文表記の中の記号がありますが、省略します。

■データ(代表的なもののみ)
1.ラテンアルファベット
1.1 1文字ずつ正立する
FRB、QE3(量的緩和第3弾)、7ヶ国(G7)、WEBROZNA、コアCPI、MC+CD[1文字ずつ正立]、Ito(1992)[Itoを1文字ずつ正立、()は右90度回転、1992は1文字ずつ正立]、FOMC

1.2 横倒しする
Honda et al.(2007)、Williams(2011)[p.202, Honda et al. とWilliams は横倒し、()は右90度回転、2007、2011は1文字ずつ正立]
その他、後注[p.271-]のURL、外国人著者による英文参考文献に多数。

2.アラビア数字
2.1 正立する
2011年、第1章、6つのポイント、76.63円[76は縦中横、63は1文字ずつ正立。為替レートすべてこの形式]、①[丸付きアラビア数字]、4兆5129億円[1文字ずつ正立]、0.005ドル[p.46、1文字ずつ正立]、16.88%[16が縦中横、88%は1文字ずつ正立]

2.2 縦中横
10月31日、23.8%[23が縦中横、.は中黒、8と%は1文字ずつ正立]、1ドル=77円81銭[p.53、77, 81 がともに縦中横]、(1)式から(4)式[3文字で縦中横、但し、注の合い印は()を数字の上下につけている]
No.609/April 2011[p.273, /を正立にし、それ以外の英数をすべて横倒し]

2.3 横倒し
参考文献[p.275-]の外国人著者による英文参考文献、日本語文献の英文名の年数、巻数、号番号。

3.記号
3.1 正立する記号
ドル/円レート、%、M&A[M,&,A 3文字が一つずつ正立]、?、†[小見出しの目印記号として]

3.2 横倒し(右90度回転する記号)
【目次】、「、」、(、)、1ドル=75円32銭[=が右90度回転]、図表1-1[‐が右90度回転]、1ドル=76.63円~77.06円[=と~は右90度回転、63、06は1文字ずつ正立。アラビア数字の項を参照]、15%→32%[p.018。→が右90度回転し下向き矢印となる。15と32縦中横]、ウオン・・・・・・[3点リーダが右90度回転]、例:ドル/円レート[:が右90度回転, /は正立]、外国の名目金利>自国の名目金利[>が右90度回転]、外国の名目金利<自国の名目金利[<が右90度回転]、経済安定化政策→財政政策、金融政策[→が右90度回転]、国際金融のトリレンマ――3つの[――は右90度回転]、Nマイナス1(N-1)[P.109、-が右90度回転]、交易条件÷実質実効為替レート[p.154、÷が右90度回転]、〈論点1〉[ヤマカッコは右90度回転、1は正立]、『平成23年版経済白書』[『』はそれぞれ右90度回転、23は縦中横] 参考文献[p.275-]の外国人著者による英文参考文献の年数を囲む括弧、“”引用符、,、.、07-08[範囲]。 ■書籍情報 書名:「円のゆくえを問い直す――実証的・歴史的にみた日本経済」 著者:片桐 剛士 発行元:ちくま新書 発行年月:2012年7月20日第二刷 ISBN:978-4-480-06663-3 [*1]「英数字正立論」http://www.cas-ub.com/project/index.html

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メルマガEPUB変換機能を正式サービスに追加しました

8月10日より、CAS-UBの正式サービスに「メルマガEPUB変換」を追加します。

メルマガEPUB変換は、一定の規則で書いたメールマガジン(メルマガ)のテキストファイルをアップロードすると、規則に従ってEPUB3に自動変換するサービスです。

極簡単な操作で読み易いEPUBを作成できます。
メルマガをEPUBにすることで次のようなメリットがあります。

1. 目次を設定して、目次の項目をクリックすることで記事本文の見出しへジャンプできるようになります。
2. 大見出を設定することで、記事の先頭を見つけやすくなります。
3. メルマガのテキスト本文を読みやすくなります。
3.1 メルマガは1行毎に強制改行されているため行幅を小さくすると文章が行の途中でちぎれてしまいます。CAS-UBではEPUBにする際に段落内のテキストを結合しますので、画面の幅で改行するようになり、小さな端末画面などで読みやすくなります。
3.2 文字の大きさや1画面の文字数をEPUBリーダで変更できるようになりますので読みやすくなります。

メルマガには目次や本文の記事区切りと記事の大見出しがあります。さらに各記事の本文は記号などで見出しの飾りや目印をつけています。EPUBに自動変換するには、これらが一定の規則にしたがって書かれている必要があります。

○変換元のメルマガテキスト

メルマガEPUB変換では、規則的に書かれた飾りや目印を使ってEPUBの見出しなどに変換します。

○変換でできたEPUBをiBooksで表示

飾りや目印のつけ方をテンプレート化して「メルマガ種別」として用意しています。現在、用意している出来合いのメルマガ種別は4種類ですが、正式ユーザーの方には1種類までは無料でメルマガのテンプレートを用意します。ご希望の方は、cas-info@antenna.co.jp まで、ご相談ください。

より詳しいサービス内容やテンプレート・変換サンプルについては、次の記事をご参照ください。

メルマガ変換紹介Webページ

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なぜ、「英数字正立論」が必要なのか?

昨日、「縦組みにおける英数字正立論」第0.40版を公開して、久しぶりにfacebookで紹介したところ、「著者、出版社にとって具体的にどのようなメリット、デメリットがあるか」を説明して欲しいというコメントがありました。

「縦組みにおける英数字正立論」はこちらから配布しています。→CAS-UBで制作した無償配布の出版物

考えて見ますと、「縦組みにおける英数字正立論」はMVOとの対比のことを強調しすぎていて、一般の方にはわかり難くなっているようです。そこで、次に「縦組みにおける英数字正立論」の必要性を少し説明します。

現在、日本語テキスト中のラテンアルファベットとアラビア数字(まとめて英数字と言います)を縦組みで表示するとリーダーによって文字の向きがばらばらになります。これを典型的に示しているのは次の二つの画像です。

●例1:青空文庫のさまざまなリーダによるラテンアルファベット混じりテキストの表示([*1])

●例2:青空文庫のさまざまなリーダによるアラビア数字混じりテキストの表示([*2])

上の2つの画像で見るとおり、日本語のテキストを縦組みで表示したとき英数字の方向はばらばらです。このようになってしまうのは、テキスト(この場合、英数字)を画面に表示するときの方向についての標準的な仕様が存在しないためです。従って、青空文庫のリーダの表示はどれも間違いとは言えません。

一方、市販の新聞や書籍では英数字の方向は概ねきちんと統一されています。
詳細に見ますと、新聞と書籍は異なります。また書籍には、伝統方式と現代方式があることは、「縦組みにおける英数字正立論」に書きました。但し、書籍により、iPhone、Twitterとか、CSN&Yのような文字列は立てたり寝かしたりと方向がばらばらです。さらに、1冊の書籍でも統一されていないこともあります。ですから、あくまで概ね統一ということですが。

では、上に述べた、青空文庫と市販書籍の落差がなぜ生じるのでしょうか?

それは、市販の書籍は編集者・制作者が介在して文字の方向を整理しているからです。また、制作者はDTPソフトを使って簡単に文字の画面上の向き(字形)を変更できます。そして出来上がった版面をPDF化すると、PDFは紙と同じで2次元座標がきちんと指定されますので、文字の方向が変わることはありません。つまり、印刷物では制作者に文字の方向決定が委ねられており、制作者の熟練によって文字の方向が統一されているのです。

現在、Webの縦書きの標準化が進んでいます。この先、数年で縦書きの標準化が完成し、Webブラウザで縦組みが自由にできるようになります。いままではWebやブログでは縦書きが少なかったのですが、今後は、Web、ブログで縦書きが増えると予想されます。

Web、ブログ、EPUB(Webと同じ方法)、ではテキスト文字列を配布します。テキスト文字列は文字コードで表したもの(符号化文字と言います)なのですが、符号化文字の仕様(JIS、Unicode)には英数字の方向については規定がありません[*3]。そこで何も指定しないときWebなどの縦組み表示は例1のようにばらばらになるでしょう。

そこで文字の向きに関して、何らかの標準が必要なことがわかります。この標準を決めようというのが、UnicodeのUTR#50という仕様案です。UTR#50では、MVO方式とSVO方式の二つの方式案があります。

現在、MVO方式が優勢ですが、MVO方式の中では文字毎に方向を決めようとしているため、意見が割れていてなかなか妥協点に達しません。

SVO方式は少数派でしたが、最近、だんだんと賛同者が増えてきているようです。

私の意見は、SVOをベースにするほうが良いということであり、「縦組みにおける英数字正立論」はそれを日本語組版の仕様や実際の書籍を調査して証明しようとしているものです。なぜSVOの方が優れているかは、本論を読んでいただきたいのですが。

[*1]原典は、twitter @POKEPEEK2011氏によるもので次に公開されています。
https://twitter.com/#!/POKEPEEK2011/media/slideshow?url=http%3A%2F%2Ftwitpic.com%2Fa180ys

[*2]原典は、twitter @POKEPEEK2011氏によるもので次に公開されています。
https://twitter.com/#!/POKEPEEK2011/media/slideshow?url=http%3A%2F%2Ftwitpic.com%2F9yvsif

[*3]JIS X0213では括弧類などについて縦書き字形が提示されています。しかし、英数字の縦書き字形というものはありません。UnicodeのEast Asian Width(EAW)という参考資料には英数字の方向について説明があります。但し、EAWは参考資料であり、また、内容的に不適切な説明が多いと思います。詳細はUAX#11 East Asian Width の紹介

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