本のかたちを考える:PDFからプリントオンデマンドで本を作る。2015年版は『暗号舞踏人の謎』

今週は、7月1日からいよいよ国際電子出版EXPOです([1]を参照)。

毎年、展示見本用としてCAS-UBで制作したPDFからプリントオンデマンドの本を作っています。

今年は、縦組の機能強化をテーマにしていますので、シャーロックホームズの『暗号舞踏人の謎』(踊る人形というタイトルの方が有名かもしれません)を本にしてみました。

1.PODサービスで作成した紙の本

判型は新書サイズ。文字の大きさは9ポイントで行間を6ポイントに設定。1行42文字、1頁16行にしてみましたところ、表紙別で58頁です。本の構造はシンプルで、PDFを作るのはとても簡単でした。青空文庫のテキストファイルと画像を使って約1日の作業でできました。

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問題としては青空文庫のままですと2倍ダッシュの間が空いてしまいます。青空文庫のテキストはダッシュに「ホリゾンタルバー」(U+2015)を使っていますが、IPAex明朝ではホリゾンタルバーを二つ使うと間が空いてしまうためです。そこで、「ホリゾンタルバー」を「全角ダッシュ」(U+2015)に置換しました([2]を参照)。

2.画像の配置例

画像の配置の見本として、いくつか独自イラストを用意して、ページの中に配置してみました。
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3.ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込む

『暗号舞踏人の謎』の肝は人形のかたちで表した暗号文です。ファンの手で、人形のかたちをアウトラインフォント化した「GL-DancingMen font」が提供されています。CAS-UB V2.3からユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込めるようになりました([3]を参照)。次の図はGL-DancingMen fontを利用した頁の見本です。
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本書は電子出版EXPOに出展致しますので、お手にとってご覧いただければと思います。

なお、PDF、EPUB、mobi版はこちらからダウンロードしていただくことができます。

[1] 電子出版EXPO出展のご案内
[2] CAS-UBの使い方:PDFで2倍ダッシュを繋げるには、全角ダッシュ(U+2014)を使いましょう。
[3] ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込むためのCAS-UBの操作方法

CAS-UBの使い方:PDFとEPUBにユーザーがアップロードしたフォントを埋め込む

国際電子出版EXPOでの展示見本用に、青空文庫のシャーロックホームズ・シリーズ『暗号舞踏人の謎』をPOD本にしています。

『暗号舞踏人の謎』(青空文庫)

折角PODで本にするのに間違いがあってはいけないと考え、内容をチェックしてみました。なんと暗号文の画像に間違いがあるのを見つけてしまいました。

下の2か所はNEVERと言う単語ですが、Rの文字が間違っています。
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正しくは次でなければなりません。
fig45340_04

そんなことをfacebookに書いたところ、この絵文字はアウトラインフォントがあることを教えていただきました。

GL-DancingMen font

おお! これは良い。さすがに人気長寿作品だけのことはあります。

CAS-UBは、ユーザー独自のフォントをアップロードして、PDFとEPUBに埋め込むことができます。フォント埋め込みを使えば、特殊な文字の形をEPUBやPDFで表示できます。

暗号文を画像で表す代わりにフォントを使うとどうなるか早速試してみました。フォント埋め込みの使い方は次の通りです。

まず、CAS-UBの「フォント」メニューでGL-DancingMen fontフォントをアップロードします。
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CAS-UBはフォントにクラス名を割り当てます。このフォントのクラス名は「font-GL-Dancingmen」です。
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編集画面で、タイトルと本文のテキストにフォント・クラスを指定します。次のようにマークアップします。
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この暗号文では単語の区切りは人形の旗で表します。font-GL-Dancingmenは旗を持った人形を大文字に割り当てています。

【説明】
CAS記法(簡易マークアップ)で[[[:font-GL-Dancingmen テキスト]]]とマークアップしますと、<span class=”font-GL-Dancingmen”>テキスト</span>となります。

「内容表示」でプレビューしてみます。
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PDFを生成します。フォントが埋め込まれて暗号文がフォントで表示されます。
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EPUBを生成します。EPUBにもフォントが埋め込まれますので、Adobe Digital Editionsでも暗号文が正しく表示されます。
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CAS-UBの使い方:PDFで2倍ダッシュを繋げるには、全角ダッシュ(U+2014)を使いましょう。

1.困った!
CAS-UBで出版物からPDFを生成したとき、2倍ダッシュが繋がらず、次のようになってしまいました。

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2.原因
このテキストは、青空文庫「暗号舞踏人の謎」の一部ですが、2倍ダッシュがホリゾンタルバー(U+2015)で表わされていました。

CAS-UBのPDFでは、デフォルトで本文のフォントはIPAex明朝です。

IPAex明朝ではホリゾンタルバー(U+2015)を2個連続しますと、間が空いてしまいます。

ホリゾンタルバーではなく、全角ダッシュ(U+2014)2つにすると繋がります。

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3.解決策
CAS-UBの編集メニューの「置換」でホリゾンタルバーを全角ダッシュに全部置換します。

4.説明
2倍ダッシュ(——)は発言の間合いなどでよく使われますが、テキストを入力する時は一つのダッシュ文字(—)を2文字入力するのが一般的です。

ダッシュとして使える文字は幾つかありますが画面に表示したり印刷するとき、全角ダッシュか罫線文字だと二つの文字がつながります。罫線文字は意味合いが違いますので、この場合は、全角ダッシュが良いでしょう。

(1) ソース

=本文ノーマル

・全角ダッシュ U+2014: —— 全角

・ホリゾンタルバー U+2015: ―― 全角

・罫線文字 U+2500: ── 全角

(2) PDF(縦組)

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第 19 回 国際電子出版 EXPO への出展ご案内

いよいよ来週は、国際電子出版EXPOです。

弊社は、例年通り地味なブースですが、今年も出展します。

・ CAS-UB :プリントオンデマンド用 PDF 出力機能を強化!昨年とは全く異なる出来栄えです。
・ AH Formatter :世界 50 ヶ国語の組版実績を持つアンテナハウス主力の多言語対応自動組版エンジン。
・ その他

国際電子出版 EXPOご来場の節は、ぜひ、弊社ブースにお立ち寄りいただければと存じます。

【第 19 回 国際電子出版 EXPO 概要】
 日程 : 2015年07月01日(水)~ 2015年07月04日(土)
 時間 : 10:00 ~ 18:00
 会場 : 東京ビッグサイト 西ホール(ブース:8-1)
 詳細 URL : http://www.ebooks-expo.jp/

毎年、サンプルの本をPDFで作ってご覧いただいていますが、今年はCAS-UBで縦組PDF作成機能の強化に力を入れていますので、縦組の小説をPDF化し、プリントオンデマンドで本にしてご覧いただこうと考えております。

ご期待ください。

本のかたちを考える:目次の扉・目次開始処理を考える

日本語(紙)書籍では目次の始め方には、次の3通りがあります。

1.目次専用の扉(目次扉)をおき、その裏(偶数頁)から目次の内容を開始する
2.目次扉をおかずに改丁して目次を始める
3.目次扉をおかずに改頁して目次を始める

手元の書籍106冊について目次の開始の仕方を調べてみたところ次の表のようになりました。

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表 目次の開始処理

縦組の本では半数近くの本に目次専用の扉があることが分ります。(数少ないですが)横組の本では目次専用の扉は置かれません。

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図 本扉(共紙)の次に目次扉を置いた例

改丁開始と改頁開始は拮抗しています。但し、目次の直前に「まえがき」などがあり、その内容が偶数頁で終了しているときは、(3)改頁して目次を始めると、奇数頁始まりになりますので、見かけ上は(2)改丁して目次を始めるときと同じになります。(2)と(3)の区別はできあがった書籍を見ただけでは判別できないことに注意してください。

目次扉を置くメリットは?

縦組の本で目次扉を置きその裏から目次の内容を始めると、目次が見開きになり、視認性・一覧性が高いというメリットがあります。横組では見開きにでも行の進む方向と頁の進行方向が逆なので視認性が高くなるとは言えないかもしれません。そのあたりに縦組のとき目次扉を置くことが多い理由だろうと思います[1]

目次を改丁してはじめることにもメリットがあると思います。

本の表紙や本扉は必ず奇数頁にあり、偶数頁は裏となります。そこで自然に紙を捲ると視線は最初に奇数頁に行くと予想します。

特に目次について考えますと、目次は本の最初の方にあります。従って、本を机の上の置いて目次を開いた状態では奇数頁に重心があり眼と平行になります。一方、偶数頁は丸くなり浮いた状態になります。従って、奇数頁の方が読み易いし、注目されやすいはずです。

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図 本扉(共紙)の次に改丁して目次を置いた例

なお、英語の本では、一般論として奇数頁の方が重要な頁とされており[2]、献辞は原則として奇数頁に置きます。

[1] 但し、目次の直前の内容が奇数頁で終わっていれば、目次専用の扉を置かなくても、目次の内容は見開きになりますので、目次扉を置く理由の説明は見開きにするためというだけでは足りないかもしれません。
[2] 例えば、New Harts’s Rulesでは、“The recto is regarded as more important of the two pages of a spread….”とあります。