オンデマンドブックストアでのPOD本の販売のこと

弊社では、昨年末からオンデマンドブックストア経由での本の販売を始めました。まだまだ実験的あるいは探索的要素が強いのですが。

2015年末に出版した2冊『【新装版】DITA CCMS 調査レポート 2013』、『ビジネスを強化する リーディング・プレゼンテーションの技法』は、以前に出していた本のリメイク版です。

今年になってからはブランドニューのタイトルを三つ出版しました。

2016年1月には本ブログでも既に紹介しました『PDFインフラストラクチャ解説』を、5月は『XSL-FOの基礎 – XMLを組版するためのレイアウト仕様』、『スタイルシート開発の基礎』の2冊を出しました。これらは、自社で使っている仕様や技術を普及促進することが狙いです。

PODによって本を作る、ということ自体は以前から、少し行っていました。PODで作った本をアマゾンのe託にて販売もしていました。

そうしたPOD本の自主製作・販売と比べて、オンデマンドブックストアでの販売では、版元がPDFを納品してストアが本を注文によって製作します。例えば、アマゾンe託でPOD本を販売しようとしますと、本の在庫を自分で持ち、アマゾンの倉庫まで納品する必要があります。しかし、アマゾンPODではPDFを用意して渡すだけです。

オンデマンドブックストアでの販売は5タイトルになりました。

現在(5月26日10時)、確認できているところでは、

『【新装版】DITA CCMS 調査レポート 2013』、『ビジネスを強化する リーディング・プレゼンテーションの技法』、『PDFインフラストラクチャ解説』は、三省堂オンデマンド、アマゾン、ウェブの書斎(楽天)、hontoで販売されています。

『XSL-FOの基礎 – XMLを組版するためのレイアウト仕様』は(5月13日配信)、三省堂オンデマンド、アマゾン、ウェブの書斎(楽天)で販売されています。hontoは未発売です。

『スタイルシート開発の基礎』(5月16日配信)はアマゾンのみで発売済み。三省堂オンデマンド、ウェブの書斎(楽天)、hontoは未発売です。

『XSL-FOの基礎 – XMLを組版するためのレイアウト仕様』は三省堂が一番速かったのですが、どうも本のリストの更新のタイミングの関係だったようです。アマゾンでは『XSL-FOの基礎 – XMLを組版するためのレイアウト仕様』、『スタイルシート開発の基礎』の2冊が24日に同時に発売になりました。

amazon0524

24日夜9時に確認して即注文しましたところ、25日の15時30分に製本された本が届きました。驚きのスピード感です。実施に手に取ってみますと、こうした技術書は、EPUB/KindleよりPDFが良い、さらにPDFより紙が良い、と実感します。

[1]『XSL-FOの基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様』POD出版顛末記
[2]『PDFインフラストラクチャ解説』
[3]『XSL-FOの基礎 – XMLを組版するためのレイアウト仕様』、『スタイルシート開発の基礎』

『XSL-FOの基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様』POD出版顛末記

『XSL-FOの基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様』のプリントオンデマンド(POD)による紙版が発売になりました。5月13日にPOD取次よりストアに配信されたのですが、本日、確認しましたところ、三省堂オンデマンド(神田本店のオンデマンド本コーナー)で発売となっていました。三省堂は19日付けですから6日後で発売です。既に10日を経過したのですが、アマゾンとか、ウェブの書斎、hontoウェブストアではまだ発売になっていません。

POD20160523
三省堂オンデマンド オンデマンド和書(その他出版社)の項

早速、三省堂に電話しましたところ、1冊30分かかるということでした。そこで3冊注文して夕方帰り道に立ち寄って入手しました。次の写真です。

IMG_0883

IMG_0886

『XSL-FOの基礎』の元ネタは、2001年から2002年頃のセミナーのテキストです。XMLが登場したのは1998年、XSL-FOは2001年に最初の仕様(V1.0)が完成しました。弊社では、その頃、XSL Formatterの販促のため、XSL-FOのセミナーを十数回開催しました。それから十数年経過しました。そのうち、セミナーだけでは人が集まらなくなり、ワークショップ(XSL School)形式にしてしばらく行っていました。XSL Schoolはイーエイドの藤島さんがXSL-FO解説を担当されていましたが、残念ながら藤島さんはなくなられてしまいました。そこで、今回はセミナー以外の方法として本の出版を企画しました。

XMLドキュメントはニッチな分野です。XMLドキュメントを組版するのはXMLの中でもニッチです。XSL-FOはそういう意味ではニッチを二乗した分野になります。特に日本国内では商業書籍のテーマとしての成立は望むべくもありません。このため十数年経過しても、まだ日本ではXSL-FOをきちんと解説した書籍は発行されませんでした。世界でも数少なく、英語でも古くからある本が数種類のみで、XSL-FOを解説した新刊本はありません。『Definitive XSL-FO』のKen Holmanさんももはや引退モードです。但し、なぜか、ドイツ語では新しく数冊出ています。さすがにグーテンベルグの国だけあります。

しかし、こうしたニッチな世界でもPODを使えば出版自体は成り立ちそうです。CAS-UBは、もともと、こうした用途を狙っていたものです。ということで、昔のテキストをCAS-UBを使って書籍用PDFとし、POD出版を企画してみました。XSLはV1.1になって新しい機能がいろいろ追加されていることもあり、仕様書と格闘すること2カ月弱かかりましたが、ようやく初版ができあがりました。

ゼロから書けば、少なくとも3か月位はかかるでしょう。そうしますと出版単独で人件費までカバーするのはなかなか難しいと思います。ビジネスとしてうまく回す方法はないものでしょうか? もう少し、いろいろトライしてみたいと考えています。

[1] facebook
[2] XSL-FO の基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様
[3] PODで『XSL-FOの基礎』の出版を準備中です。
[4] 『XSL-FOの基礎』画像制作のこと。Word経由でインポートした画像は印刷品質の劣化が激しいため、第2版ではできるだけSVG形式に変更した件。
[5] 『XSL-FOの基礎 第2版』は全文をWebでも公開。CAS-UBのWeb生成機能でプリントオンデマンド用PDFもWebページもワンタッチで完成。

出版学会ワークショップ「いま、著作物再販問題を考える」を拝聴して

昨日、5月14日は日本出版学会の2016年度総会・春季研究発表会が東京経済大学(国分寺キャンパス)で開催されました。

いろいろ興味深い発表がありましたが、個人的に一番面白かったのが、「いま、再販問題を考える」というワークショップです(いままであまり関心をもっていなかったので新鮮な印象を受けたこともありますが)。

司会の清田次郎氏の説明も理解しやすかったですが、問題提起者の高須次郎氏が用意してくださったペーパーで事態の推移が良く分かりました。

戦後の出版流通制度が、制度疲労を起こしているとはよく耳にすることです。その二つの要素が委託販売と再販制にありそうなことは、うすうすと分っていました。この二つは車の両輪に近いかもしれません。委託販売であっても、一定の範囲内で、書店に消費者向けの価格変更を認めることで、ある程度両輪を別々に回すことができるでしょうけど。既に入札などでは価格を変更しても良いらしいです。弊社でも、バルクで購入するときは一部の版元には交渉して値引きしてもらったり、書店で値引きしてもらうこともあります。

以下は、当日配布された高須氏のペーパーの要約です。

ーーーここからーーー
再販売制の見直しは、1980年に現行制度(定価制、自由価格制、時限再販制)になり、その後1996年に米国政府の申し入れで見直ししようとしたが、反対も多く、1998年に結論を3年先送りしました。その後。2001年に法改正による再販制度の廃止を行わないという公取の結論がでました。2010年には公取側から再販制を廃止する考えはないこと、電子書籍が非再販商品とすることが明らかになりました。

一方で、公取などの見解では、ポイントサービスのポイント還元は、景品ではなく、値引きであるとされています。

一般の書店でのポイントサービスは1%に達しないものですが、アマゾンが10%のポイント(student)を始めました。アマゾンの10%ポイント還元が広まれば、一般の書店はつぶれてしまう、という危機感がかなり共有されているようですが、実際は、一部の版元(有志3社)がアマゾンに対する出荷停止をしているのみだそうです。
ーーーここまでーーー

書籍の流通にかぎらず、価格は販売におけるもっとも重要なファクターですので、再販制で価格を固定してしまうのは、出版社自ら販売努力の一部放棄ではないかとも思うのです。しかし、アマゾンの場合は、そう簡単ではないと思います。

そういえば、アマゾンは、現在POD(プリントオンデマンド)本の40%オフキャンぺーンを行っています。『PDFインフラストラクチャ解説』も定価2,678円(税込)のところ、なんと40%オフの1,607円(税込)で販売されています。40%オフとなりますと、10%どころの騒ぎではないのですが。

技術書典出展のお知らせ

来る6月25日(土)秋葉原の通運会館で、技術書典というイベントがあります。
今回初めての企画ですが、主催者はTechboosterという同好会と達人出版会です。

アンテナハウスもCAS電子出版で参加することにしました。
40サークルを募集で、40以上のサークルが集まったらしく、抽選となり落選したサークルもあったようです。我がサークルはめでたく当選し、2階企業ブロック07番が割り当てられました。

技術書典:https://techbookfest.org/

このイベントが、コミケのように大きく成長すると面白いですが。

ということで、現在、鋭意書籍を準備中です。

■出展予定:
1.『PDFインフラストラクチャ解説』
2.『XSL-FO の基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様』(販売予告)
3.『スタイルシート開発の基礎』(販売予告)

その他、いろいろ思案中です。

なお、なにか出展したいアイデアをお持ちのかたはご相談ください。

よろしくお願いします。