CAS-UB本日のアップデート情報。インポートなどのメニューを変更しました。

CAS-UBの本日の定期メンテナンスで、いくつかのメニューを変更しました。

1.メニュー名称の変更

(1)「ドラフト」メニューの名称を「外部データ入力」に変更しました。さらに
(2)「主原稿」メニューの名称を「内容表示」に変更しました。

2.外部データ入力の機能変更

(1)「外部データ入力」で実行できる外部データのインポート結果の表示を、構成編集画面と同様の形式に変更しました。(従来は、ツリー表示になっていなかったため分割結果の確認ができませんでした。)
(2) 主原稿(出版物生成につかう原稿の置き場所)に直接インポートできるようにして、これを既定値に変更しました。(従来は常に「ドラフト」にインポートでした。)
また、インポート先を 主原稿 にするか ドラフト にするかを選択できるようにしました。何も指定しないとインポート先が主原稿になり、従来と変更になっていますのでご注意ください。

3.その他の変更事項

・PDFインポートで、しおりのあるPDFをインポートしたとき、最初のしおり位置より前にページが存在すると、前ページの内容も最初のしおりがタイトルとなる記事に含めていましたが、別記事に分割して、記事の種類に前書きを設定するようにしました。
・Microsoft Word 2003 XML のインポートで、表に罫線が引かれているときは、表のマークアップを [[[:tbl ]]] で囲むようにしました。
・EPUBなどの生成で、生成結果内のXHTMLファイルの拡張子を、.html から .xhtml に変更しました。
・編集画面の「プレビュー」の名称を「内容表示」に変更。また、内容表示は、ナビゲーションが付いたものに変更しました。
・CAS-UBに新規ユーザー登録した際に、自動的に作成していた cas-tutorial を、作成しないように変更しました。
・「Microsoft Word」 のインポートは、インポートファイルの形式表示を「Microsoft Word 2003 XML」に変更しました。doc、docx文書はWord 2003 以降の「名前をつけて保存」でXML形式で保存してください。doc、docx文書の変換には制限があります。

4.障害修正

いくつかの障害を修正しました。

詳細はこちらのページをご参照ください:http://www.cas-ub.com/support/

書籍の未来そして「CAS-UB」の狙い

3月1日の第22回JEPA EPUBセミナーでの講演要旨[1],[2]
アンテナハウス株式会社 代表取締役 小林 徳滋

■はじめに

 電子書籍元年といわれた2010年以降、EPUBに注目が集まるようになってきました。当社も、この分野で何かサービスが提供できないかと思い、「CAS-UB」というEPUB変換サービスを開始しました。

 以下、書籍の未来について、またCAS-UBの開発の狙いについて、お話したいと思います。

■書籍点数の予測

 プロの書いた紙の書籍の年間発行点数は、戦後、2万点からピークには7万7千点まで増えてきました。現在、7万4千点くらいですので、踊り場を迎えているのかもしれません。
 書店に行くと、新書や文庫本がたくさんあって、点数は多いのですが、売上はだんだん減ってきています。

 一方、電子書籍は、今年度は一気に6万点の制作が行なわれています。2012年と2013年の発行点数は「キンデジ」効果があるでしょう。これは、「コンテンツ緊急電子化事業」のことで、書籍の電子化作業に国が補助金を出す事業です。こうした補助金があるために電子書籍はいま一気に点数が増えています。
 これが2013年の3月末で終ります。
 2014年以降、いったん点数は減って、そこからまた増えていくのではないかと思います。

 電子書籍の場合、今後、個人出版が増えていくのではないかと予想しています。いわゆるプロでない人たちが、本を書くようになるのではないかと思います。

 現在、個人の立場で電子書籍を出版している人は、まだ1000人弱の状況です[3]。しかし、これからはブログを書くように、本を書く人が増えてくるのではないでしょうか。年間10万人くらいの人が著者となって、100万タイトルを出版する…というようなことも起こりうると思います。

 プロとアマが競争する時代がやってくるかもしれません。

■電子書籍の作成手順

 こうした将来に対して、現在の書籍の作成手順はどうなっているのか、今後どうあるべきかについてお話したいと思います。

 現在、ほぼ手順が決まっています。すでにできている本を電子化するときだけでなく、いま作りつつある本についても、ほとんどが同じ手順です。

 最初にパソコンで版下を作ることになります。これは紙の本のデータを作ることでもあります。現在、版下をつくるのはDTPソフトを使うのが普通です。この版下データを元に電子書籍を作っていきます。

 まず、DTPソフトで版下データからEPUB用データを取り出します。それをEPUBの制作ツールを使って編集し直します。こうやってEPUBのデータを作るという方法が普通です。

 紙の本の場合は、著者が素材を用意して、編集者・制作者がそれを元に版下となるデータを作っていくことになります。

 しかし、このDTPで作った版下データをEPUB化するのは、かなり面倒な手順が必要です。そんなに簡単ではありません。

 現在のように、紙と電子書籍を分離させて作る二重制作が成り立つのは、電子化を進めるために、国からの補助金10億円を核とする20億円規模の「キンデジ」事業があるためです。

 今後、紙と電子書籍の二重制作は難しくなるはずです。毎年、国の補助金をお願いするわけにも行かないですから、二重制作はなくしていくしかないと思います。

 いずれ電子書籍タイトル数が、紙の書籍のタイトル数を上回るときがくるはずです。

 そのとき、現在のように紙の書籍を想定して、まずDTPで版下データを作って、それを電子化する手順では対応できなくなります。

 電子書籍先行という枠組みへの変更が求められるようになると思います。

■電子書籍も紙の書籍も自由自在に

 今後のことを考えると、電子書籍だけに対応するとか、紙だけに対応するというのでは不十分ではないかと思います。

 紙も電子も両方に対応できる、必要に応じて使い分けできるような制作方法が必要になると思います。

 CAS-UBは、そのためのサービスです。
 これは新しい仕組みですので、これから作られる新規出版物の制作を対象としています。

 このツールを、プロの編集者・制作者が関与する書籍向けに提供していこうと考えています。

 先ほど個人の著者が10万人になるのではないかと申しましたが、これら個人の方々は無料のツールを使って本にするだろうと思います。

 サービスを提供して対価をいただくには、プロが関与する書籍、あるいは専門的な内容の書籍が作成できるようにしないといけないと考えています。

 索引、参考文献、図表一覧、参照などを自由に作って、それを多用する書籍や、本文に数式や図表を含む書籍にも対応できるようにしたいと思っています。

 現在まだ、これらに対応したEPUBリーダーはできていません。しかし、もっと高度化したリーダーがでてくるはずです。

 こうした専門的な内容に対応できるサービスを提供していきたいと思っています。

■CAS-UBの主な3つの機能

 それでは、CAS-UBが目指しているのはどういうものか、この辺をお話します。

 著者が原稿を書いたり、写真、イラストを用意すること、これらはクリエイティブな仕事ですから、コンピュータで自動化するのは、たぶんできないでしょう。

 しかし、それをCAS-UBに取り込んでいただけたら、EPUBとかKindleとかPDFにするのは、コンピュータを使って自動でやってしまいますよ…ということなのです。

 CAS-UBの主な機能は3つあります。
(1) コンテンツを編集する機能
(2) データ交換の機能
(3) マルチ形式の出版物を作成する機能

 これらの機能がスムーズに使えるようになるためには、いくつか問題があります。
 まずコンテンツ編集をする場合に、一番のネックとなるのが、タグの問題です。

 コンテンツは、最終的にHTMLで表現されます。HTMLの場合、文章に付箋のようにタグをつけて、その中に属性と属性値を指定することになります。<h1 color="red">というような記号をつけていく必要があります。

 コンピュータを使って仕事をしている当社の社員などは、こうしたタグをつけることは全然苦にならないですし、大好きなのですが、そうでない人は、たいてい尻込みしてしまいます。このタグを入力するということがネックになります。

 これをどうしたらいいか、いろいろ検討してみました。この点、簡易マークアップ記法を採用したらいいのではないかと考えました。

 簡易マークアップ記法というのは、テキストにできるだけ少ないキータッチ入力でタグをつけられるようにするものです。こうした手法は、最近あちこちで見られます。このやり方はかなり普及すると思います。

 CAS-UBの場合、CAS記法というものですが、テキストに少しマークアップの記号を入力して、コンテンツを作るという手法をとっています。

 それから、構成編集メニューを用意しております。

 書籍には、表紙があり、はしがき、目次、章、あとがき、参考文献、索引というような構造があります。こうした構成を作るのが構成編集メニューです。

 構成の中で自動的に作れる項目があります。次のようなものです。
 ・目次
 ・図表目次
 ・索引
 ・注釈一覧

 これに加えて、章番号・図表番号も、自動生成できるようになっています。

 著者が作成した素材を取り込むのがデータ交換です。いまWordなどで書いた原稿を取り込むことができます。これについても、新たな開発が必要になってきました。

 Word文書を変換するときに、オートシェイプは変換しなくてもいいと思っていたのですが、ご要望がありました。オートシェイプも自動変換できるように作業を進めています。

 当社は変換一筋にやってきましたので、これはできるようにしないといけません。
 できなかったのではなくて、必要ないと思っていただけですので、変換できるようにいたします。

 それからCAS-UBには、マルチ形式の出版物を作成する機能があります。

 1つのソースから、EPUB、Kindle、PDF、Webページ、HTMLといった複数の形式の文書を作成することができます。

 これは、CAS-UBの最大の売りだと思っています。

■レイアウト

 最後にCAS-UBのレイアウトについて、お話します。

 EPUBのレイアウトについては、レディメイドのCSSスタイルシートを用意しております。
 現在、横組み7種類、縦組み2種類の中から、選択することが可能です。
 まだ縦組の数が少ないのですが、これを増やしていきたいと思っています。

 それから、ユーザーによるカスタマイズができないのですか…という質問をよくいただきますが、もちろん可能です。

 style.cssというファイルを用意していただいて、スタイルシートのところでアップロードしていただくと、最優先でカスタマイズされたレイアウトが有効になります。

 サポートのページをご覧ください。
 http://www.cas-ub.com/howto/support.html[4]

 それから書籍版下用のPDFを生成することもできます。
 縦組み・横組みに対応しております。

 高品質な組版ができるように、レイアウトの機能をさらに向上させていこうと考えています。
 自動組版エンジンのFormatterを、順次バージョンアップしていきたいと思います。

 レイアウトについては、本とPDFとEPUBの比較検討をしています。
 自分でも本を作ってみて、それを見ながら、本とPDFとEPUBを較べています。[5]

 同じ箇所をPDFとEPUBで較べて見ると、PDFの方が文字列がきれいに並んでいますので、見やすい感じがします。
 しかしタブレットで実際に読む場合、EPUBの方が文字が大きくて、読みやすいのではないかと思います。

 一方、索引を見ると、PDFの方は2段組になっているのですが、EPUBはリンクのみで、現状だとややさみしい感じがします。

 紙とPDFとEPUBと、これら三者に同じレイアウトを求める人が多数派であるかもしれません。しかし、それぞれ違うレイアウトの方が良いのではないかと思っています。

 同じPDFデータでも、電子画面上で見るのと紙で見るのとでは違った印象を受けます。
 画面のサイズによっても違ってきますし、それに伴って、余白や行間の取り方、見出しの大きさ等、それぞれに最適なものがあるように思います。

 様々な調節をすることによって、見た印象がかなり違ってきます。

 レイアウトについては、もう少し研究の余地がありそうです。
 より高品質の組版を実現したいと思っています。

 ありがとうございました。

[1]本記事は右の講演記録を元にして作成したものです。JEPA EPUBセミナーのページ
[2]パワーポイントスライド:http://www.cas-ub.com/info/handout/CAS-UB-20130301.pdf
[3]アマゾンKDPのみ。
[4]「CSS レイアウトのカスタマイズガイド」
[5] 『PDFインフラストラクチャ解説』をプリントオンデマンドで本にしてみました。http://blog.cas-ub.com/?p=4242

世界の各地で、本を作るための新しい仕組みが登場している

EPUBやKindleなどの電子書籍による出版が広がることで、書籍を編集・制作する仕組みやツールも変わりつつある。

従来の出版では、印刷・製本した書籍を前提とし、編集と制作は印刷するための版面を作ることを第一目標として進められた。こうした枠組みの中で、編集・制作ツールは印刷とコンピュータ技術の発展に伴い、20世紀の終わりに急速な変化を遂げた。1980年代半ばに登場したDTPは21世紀の初頭に最盛期を迎えている。

一方、やはり20世紀の終わりに登場したWebは、紙ではなくコンピュータの画面上で情報をナビゲートすること主眼を目的として発展してきた。

これまでは、紙の書籍で出版する情報をWeb媒体に出したり、その逆にWebの情報を元に、紙の書籍を出版するには、その中間工程で情報の編集・加工を必要とした。長いことワンソース・マルチユースの重要性が唱えられたが、実際にはそれほど普及してこなかった。これは、印刷とWebの起源と発展過程が完全に別のものであったことが大きな理由である。書籍とWebは水と油であった、といって良い。

しかし、EPUB・Kindleによる出版が普及してきたことで、長い伝統をもつ書籍制作の仕組みに革命が始まりつつある。具体的には、次のような仕組みの提供が始まっている。

1.初級・入門的なもの

ブログで書いた内容を、本来のWebに出すのに加えて、PDFとEPUB・Kindle向けに生成する仕組みは既に数えきれないほど提供されている。こうしたブログサービスは書いた記事を羅列するだけのものになるので、簡単な出版物しかつくることができない。

書籍はWebとは違って、多くの情報を組織化し、一定の枠組みでパッケージした形で読者に提供するものである。そのために前書き、本文(章、節、項)、後書き、参考文献、索引などのグローバルな構造をもつ。しかし、ブログサービスでは、書籍のグローバル構造を表すことができないという限界がある。

2.中級

ブログサービスの上位の仕組みとして、次のようなサービスが始まった。

(1) BookTypehttp://www.sourcefabric.org/en/booktype/ チェコのSourcefabricという情報産業向けの非営利ソフトウエア開発団体が提供しているサービスである。

書籍を共同で編集するツールを提供している。ユーザー企業はツールを自社のサーバにインストールして使うこともできるが、Sourcefabricが提供しているWebサービスを使うこともできる。

Webブラウザで、記事を並び替えたりして、はじめに、セクション、章、節、あとがきといった書籍のグローバル構造を編集することができる。セクションは章の集まりとされている。

編集した結果から、Webページ、PDF、EPUBを生成できる。PDFの生成のための組版エンジンとしてWebKitを使っている。ページレイアウトの指定をCSSで行なう。WebKitはグーグルChromeやアップルのSafariなどのブラウザのレンダリングエンジンであり、まだページ組版エンジンとしては実用的ではない。このため、現状ではあまり高度なページレイアウトは指定できない。WebKitはiBooksなどのEPUBリーダのエンジンとしても使われており、ページ組版の強化も行なわれているので、いずれはWebKitをページ組版エンジンとして使うサービスが増えるだろう。

(2) PressBookhttp://pressbooks.com/ 最近、日本語版が発売されて、電子書籍に関心をもつ人々の間で注目を浴びた「マニフェスト 本の未来」(原題:「Book: A Futurists Manifesto」)を編集した、ヒュー・マクガイアが中心になって進めているプロジェクトである。[1]

WordPressをベースとして、その上に書籍のグローバル構造を編集するアドオンツールを載せている。WordPressには、記事の内容にマークアップする仕組みがあるのでその範囲で記事の内容に箇条書き、引用、挿入、プログラムコードなどの指定ができる。

編集した結果から、標準的な本の形式(印刷用のPDF)、EPUB、MOBI(Kindle)、IDML(InDesign用)、XHTML(Web)、WordPress XMLなどを生成できる。

PDFの生成のための組版エンジンにはPrinceXMLを使っている。[2]

BookTypeやPressBookは書籍を制作するための機能として書籍のグローバル構造を編集する機能を備えている。この点で、ブログの記事を寄せ集めて1冊の本にするサービスよりは高度である。しかし、ざっとみたところ、これらのサービスはXML技術をあまり使っていないようだ。

このためプロフェッショナルな書籍を作ることはできないだろう。このことは「マニフェスト 本の未来」がエッセイを寄せ集めた本であることが如実に示している。

3.XML技術を応用した上級システム

プロフェッショナルな書籍に必要な機能としては、索引がその典型である。索引を作るためには、記事の中に索引をマークアップして、これから索引ページを作り出すとともに、索引語を順番にソートする機能が必要である。こうした機能はXML技術を使わないと実現できない。

(1) CAS-UBは、XML技術を活用することでプロフェッショナルな書籍を制作することを狙っている。

(2) O’Reillyは、AsciiDoc[3]という簡易テキストマークアップ記法を基本とするテキスト編集ツールとDocBook[4]を使って書籍を制作する仕組みを構築している。次の図は、O’Reilly MediaのNellie McKessonが最近発表したスライドの1枚である。


図 O’Reilly MediaのNellie McKesson:TOC, Feb 12, 2013におけるスライドより引用

このように索引などを作成するにはXML技術の活用が必要である。また、CAS-UBとO’Reillyが、XMLを直接タグマークアップするのでなく、簡易テキストマークアップ記法を採用していることも今後のトレンドとして注目したい。

もう一つ重要なことはPDF生成のための強力な組版エンジンである。CAS-UBとO’Reilly Mediaのツールは、組版エンジンとしてアンテナハウスのAH Formatter(V6)[5]を用いている。

つまり、高品質・専門的な書籍を作るツールを実現するには、そのインフラストラクチャとして、①マークアップ、②XML(XSLT)、③強力な組版エンジンが必要なのである。

印刷・製本した書籍を先行して制作して、そこからEPUBのような電子版を2次的に作り出すという、従来の方法に代わる新しい方法として、紙版とEPUB版を同時に作り出す制作システムが動き始めている。こうした新しいシステムが従来の仕組みに代わって主流になる日がいずれやってくるのだろう。

[1]「マニフェスト 本の未来」
[2] PrinceXML なお、無料版のPressBookで実際に本(PDF)を作ってダウンロードして調べると、Princeで作っていることが確かめられる(2013年3月22日時点)。しかし、O’Reillyから販売されている「Book: A Futurists Manifesto」(2012/8制作)のプロパティを見ると制作アプリはWikibook XML(http://www.wikipubilisher.org)になっている。「Book: A Futurists Manifesto」の本文には、本書はPressBookで制作したと記述されているので、少し話が食い違っている。無料のPressBookでは市販レベルの書籍は作れそうもないので、PressBookは市販本と無料版でPDFの制作方法を変えているのかもしれない。それとも、PDFの制作方法が2012年8月から現在までの間に変更になったためなのかもしれない。
[3] AsciiDoc
[4] DocBook
[5] AH Formatter

CAS-UB契約条件を一部変更。企業・団体に5ユーザーを追加。個人ユーザーグループを廃止

CAS-UBの契約条件について一部を変更します。

1.新設契約条件

出版社・企業・諸団体向けサービスに5人一括契約の料金を新設しました。一括10人までは必要ないという場合にお選びいただくことを想定しています。

団体向け料金は一括で契約していただいた場合に、1人ずつ5人分を契約するのに比べて、若干の割引価格を適用させていただくものです。契約条件は1人ずつ契約していただくのと同等です。

2.個人グループ向け料金

個人グループ向け(5人一括契約)は、同好会など会社組織になっていないグループでの利用を想定しています。しかし、企業・団体との契約条件の相違が曖昧で判断が難しいケースが多いため、3月31日末を持ちまして新規受付は廃止させていただきます。なお、既にお持ちのライセンスは残期間中有効です。更新時には出版社・企業・諸団体向けサービスに5人一括に切り替え(金額は初回更新に限り、最初にお申し込み時の個人グループ向け料金を適用)させていただく予定です。

詳細のユーザー料金は次のWebページをご覧ください。

ライセンスの種類と料金

『PDFインフラストラクチャ解説』更新、0.28版にしました。

『PDFインフラストラクチャ解説』の内容を更新して0.28版としました。

前回の0.24版から次の箇所を更新しています。

1)第8章のタイトルを「PDFとデータ交換」に変更し、「8-2 PDFにおける情報表現」、「8-3 タグ付きPDF」の節を追加しました。

2)第3章の「13-3 PDFのアクセシビリティ」の内容を記述しました。

PDF版、EPUB3版を次のページから無料で配布しています。記述の内容が正しいかどうか、また、もっと突っ込んでほしいところがありましたらご意見をいただけると嬉しいです。

CAS電子出版の紹介2016年1月本書を正式発売しましたので、無償配布を終了いたしました。詳細は、下の【広告】をご参照ください。

0.24版にしてから1ヶ月弱の時間が経過しましたが、残念ながら進捗振りが思い通りになっていません。

現在、PDFInterstグループのメンバーを中心に、内容を追加したり、内容をみていただいたり、組版レイアウトの評価をしていただいていますが、まだいただいた意見は反映するにいたっておりません。

次の更新ではもう少しピッチをあげたいと考えています。

ナビゲーション文書と目次の使い分けについて検討する―EPUB3をiBooksで読むとき

EPUB3にはナビゲーション文書が必須である。これはHTML5のnav要素を使って作成し、電子書籍リーダのナビゲーション用のパネルに表示するものである。EPUB2のときはNCX形式で作っていたものの後継であり、論理目次という言い方をすることもある。ここでは、EPUB3のnav形式のファイルを「ナビゲーション文書」という[1]。

一方、本文の見出しを取り出してリストにして並べ、リストの各項目から本文の当該見出しへのリンクを張ったXHTML5文書を作成して、この文書をEPUB3の本文内容文書のひとつとして扱うこともできる。これを「目次文書」という。目次文書はEPUB3リーダからみたら本文の一部であるが、読者からみたら目次の役割を果たす。このようなものを視覚的な目次という言い方もできるかもしれない[2]。

ナビゲーション文書はXHTML5形式であり、書籍本文の文書と同じようにspineに登録すれば、「目次」として使うこともできる。つまりナビゲーション文書は目次文書としても使うことができる。そうではなく、目次文書をナビゲーション文書と別に用意することもできる。

そこで、ナビゲーション文書と目次文書の関係について、次の点について調べてまとめてみた。

1.実際のEPUB電子書籍におけるナビゲーション文書と目次文書の使い分けはどうなっている?
2.ナビゲーション文書を目次文書としても使うとすると、ルビや縦中横などのマークアップやCSS指定は使えるのか?
3.ナビゲーション文書に、ルビや縦中横を指定したとき、EPUBリーダではどのように表示されるか?

1.ナビゲーション文書と目次文書の使い分けの実態は?

ナビゲーション文書と目次文書をどのように使い分けたら良いだろうか? ナビゲーション文書と目次を兼用するのが良いのか、それとも違うものにするのが良いのか。これを考えるため、先日開店したiBookstoreで販売されているEPUB版電子書籍のサンプルをダウンロードして調べてみた。今回調べたのは、リフロー型本文縦書きのフィクションとビジネス/マネーに分類されている25種類の電子書籍である。結果は次の通りとなった。

出版社によってナビゲーション文書と目次文書の使い分けがまったくばらばらになっていることがわかる。

(1) ナビゲーション文書が縦組みの書籍は16種、横組みの書籍は9種。

(2) ナビゲーション文書と目次文書の両方があるもの14種、目次文書がない(ナビゲーション文書のみの)もの11種。

(3) 両方がある14種中で、その項目が同じもの4種、異なるもの10種であった。現状では、ナビゲーション文書を目次文書に兼用しているものがあるとしても少数ということになる。

異なるものはナビゲーション文書は書籍の骨格だけ表現し、目次文書でより詳しい項目を表現している。例えばここで調べた中では講談社の電子書籍はnavでは表紙、目次、奥付けといった本の骨格のみを現しており、目次文書の方に詳しい項目を示している。

(4) ナビゲーション文書から目次文書へのリンクの状況は次の表の通りである。

リンク有 リンク無し
同じ 0 4
異なる 6 4

図1 ナビゲーション文書に目次文書へのリンクがある

ここで問題なのは、次の図のようにナビゲーション文書に骨格だけを表現しているにも関わらず、ナビゲーション文書から目次文書へのリンクがないものが4種類あること。このような文書では、本文の途中を読んでいるとき、別の項目に移動しようとするとまず目次文書を探して、目次文書から他の見出しに移動するなどの順序になるので、移動が面倒になる。これは改善する方が良いだろう。

図2 ナビゲーション文書に目次文書へのリンクがない

2.ナビゲーション文書に許されるマークアップやCSS指定は?

仮にナビゲーション文書を目次文書として兼用で使うことを考えるとき、ナビゲーション文書にルビや縦中横その他の指定をすることができるだろうか?

EPUB3.0の仕様をみるとナビゲーション文書には、本文のXHTML5と比べて使える要素やその出現順序に制約があるが、リンクのアンカー(a)要素の内容にはXHTML5の任意のフレーズ内容を含めることができるので目次で表現したいことはできそうである。

実際に、アンカー(a)要素の内容に、ルビ(<ruby>被ルビ文字<rp>(</rp><rt>よみ</rt><rp>)</rp></ruby>)、縦中横(<span class="tcy">XX</span>)、強調(<strong>***</strong>、<em>***</em>)、圏点(<strong class="emark">強調+圏点</strong>)、画像(<img alt="***" src="images/XXX.jpg"/>)を指定して、EPUBCheck3.0で検証してみたが、特にエラーにはならなかった。

3.ナビゲーション文書と目次文書はリーダでどのように表示されるか?

ナビゲーション文書のアンカーの内容にマークアップしたとき、それがEPUBリーダのナビゲーション用のパネルでどのように扱われるか。ナビゲーション文書に2.項の指定をした文書をiBooks3.1のナビゲーション用パネルで表示した結果と、目次文書として表示した結果を比較すると次の結果となった。

マークアップ iBooks3.1 a
専用目次 本文(spine)
縦書き
縦中横 ×
ルビ
強調(Strong) ×
圏点 ×
斜体(em) ×
イメージ(img) ×

図3 ナビゲーション文書の表示

図4 目次文書の表示

ここではナビゲーション文書と目次文書は同じものである。ナビゲーション文書としてみると縦書きとルビしか有効でないが、目次文書として表示するときは本文扱いになり、マークアップとレイアウト指定がすべて有効になる。

アラビア数字に縦中横を指定すると目次文書では指定どおり縦中横になるが、ナビゲーション文書では縦中横が解除されて1文字ずつ正立している。

ナビゲーション文書では1桁または3桁以上のアラビア数字は1文字ずつ正立するものが多い。しかし、横倒しになるものもあり基準が不明である。なお、これらは目次文書ではすべて横倒しになる。

[1] EPUB3のナビゲーション文書が準拠すべき規則は、2.2 EPUB Navigation Documentsにある。簡単なメモはこちら:EPUB ナビゲーション文書の仕様について メモ
[2] EPUBのナビゲーションを理解しよう

2013年2月のブログ記事をEPUBとKindle(mobi)形式にしました

CAS-UBブログの2013年2月のブログ記事を電子書籍にしました。

電子書籍はサンプルページよりダウンロードしていただくことができます:CAS-UBで作成したPDFとEPUBのサンプルファイル

ブログはWordPressを使っています。2月分の記事をWordPressからエクスポートして、CAS-UBにインポートします。このあたりはこれまでと変わっていません。

先月からの変更点は、Kindleの作成に使うKindleGenがバージョンアップしたことと、iOSのKindleアプリが3.6.2にバージョンアップしたことです。

JEPA 第22回 EPUBセミナーでの「新しい発想の書籍制作ツールCAS-UBのご紹介」スライドなど

3月1日 日本電子出版協会で「マニュアル、ビジネス文書でのEPUB活用」についてのセミナーを行ないました。メインテーマは、BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)の「EPUBマニュアル研究会」の話ですが、研究会は始まったばかりでまだ報告する内容があまりありません。

研究会の話だけでは、与えられた時間枠のセミナーを構成できないために、第二部にCAS-UBについて自由に語る枠を置きました。いつもセミナーでは、時間とテーマが先に与えられて、それにあわせてセミナーの内容を構成するためなかなか自由にCAS-UBについて語ることができません。しかし、今回はかなり自由にテーマを設定して語らせていただきました。

それが却って良かったのか、CAS-UBの基本的考え方を整理してお話しできたように思います。

スライドや映像はepubcafeの次のページに公開されています。

EPUB 第22回 マニュアル、ビジネス文書でのEPUB活用

CAS-UBの映像は3つ目で約40分弱になります。なお、スライドはこちらからもダウンロードしていただくことができます。

「新しい発想の書籍制作ツールCAS-UBのご紹介」(3/1JEPAの第22回EPUBセミナー)