有料メルマガ フォローアップ フリーミアムに関する有償化1%論

2012年夏に有料メルマガが増えているということで、有料メルマガの状況を少し調べ、EPUBの可能性の検討、有料メルマガに関するセミナーを行ないました。資料[1]~[4]

最近、有料メルマガ撤退の話がいくつかでていますので整理しておきます。

  • 「有料メルマガをやめました 我が動員とマネタイズ敗北宣言」常見 陽平、アゴラ、2013年5月3日、URL:http://agora-web.jp/archives/1533347.html
    1年半ほど継続した有料メルマガ「常見陽平の愛と怒りのシゴト論 普通のあなたのひとつ上の働き方」(月2回刊、月額525円)を止めるという宣言。「売上が月1万円を超えることはほぼなかった。」とのこと。
  • 「『有料メルマガをやめました』宣言、その後 ウェブ進化にはこういうぶっちゃけ話が大事である」常見 陽平、常見陽平公式サイト、2013年5月5日、URL:http://www.yo-hey.com/archives/54477445.html
    ここにちょっと面白いデータが出ています。無料メルマガは継続しており、3609通送信し、3441通配達だそうです。で有料メルマガは最後は36人だったそうです。
  • 「有料メルマガは儲からない:名だたる著者が死屍累々な理由を考える」Hayato Ikeda、ブロゴスブログ、 2014年01月19日、URL:http://blogos.com/article/78218/
    内容は、題名どおりで有料メルマガは儲からないという話です。実際のデータが出ていて、この時点で、『「イケハヤマガジン」の有料読者は約80人。80人×378円なので、毎月30,240円の売上』だそうです。
    後ろに、成功するための条件を挙げていますが、あまり現実的ではありません。

これに関しては、以前にセミナーの講師もしていただいた、メルマガ評論家の渡辺文重氏の有料メルマガ批評に載った、
「休刊・廃刊メルマガ特集」を自分で紹介する
が面白い。

ところで、ひとつだけ、ノウハウといってはなんですが、私は経験に基づく仮説として、「有償版は無償版の1%」というフリーミアムに関する有償化1%論を立てています。「常見陽平氏の無償メルマガ3600通に対して、有償メルマガ36通(最後の段階)」は大雑把には、この「フリーミアムに関する有償化1%論」にぴったり当てはまっています。

[1] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(1)メルマガ配信の変遷
[2] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(2)メルマガの配信形式
[3] メルマガ配信の新しいステージとEPUBのインパクトを考える―(3)メルマガビジネスの将来
[4] 有料メルマガライターまたは制作者のためのEPUB作成セミナー 講演メモ

Adobe Digital Editions 3.0がリリースされました。しかし、EPUB3.0の目次は依然としてサポートされていません。

昨日(1月23日)Adobe Digital Editions 3.0(ADE3.0)がリリースされたというニュースが流れました。

日本語のADEのダウンロードページ(http://www.adobe.com/jp/products/digital-editions/download.html)ではまだ2.0ダウンロードになっています(24日7時)。しかし、英語のダウンロードページ(http://www.adobe.com/products/digital-editions/download.html)では3.0になっています。

ということで早速、ダウンロードして、さっと眺めてみました。

私的には、一番期待していたのは、ナビゲーション用のパネルに表示する目次の変更です。ADE2.0ではEPUB2.0時代のNCX方式の目次のままです。EPUB3.0の仕様では、標準目次はナビゲーション(nav要素epub:type=”toc”の下のツリー)で表す方式に変更になり、主要EPUBリーダーはほとんどNAV方式をサポートするようになりました。しかし、ADE2.0は、NAVで目次を表現する方式はサポートしていません。

ADE3.0でNAV方式に切り替わることを期待したのですが、しかし、残念ながら依然としてNAV目次はサポートしていません。

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図1 論理目次にナビゲーション方式のみのEPUBでは、目次パネルがブランクのまま

EPUB3ではNCX方式の目次は近々使われなくなるだろうと予想していました。そこでCAS-UBはV2.2正式版にする際に、EPUB3.0生成設定のNCX目次のチェックをOFFに変更してしまいました。しかし、ADE3.0ではそうならなかったということです。

そこで、お手数ですが、CAS-UBで生成したEPUB3.0ファイルをADE3.0で表示・利用される場合は、CAS-UBのEPUB3生成「一般」設定で、EPUB2と互換の目次を出すようにチェックを入れていただく必要があります。

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図2 EPUB3生成の「一般」設定で、「EPUB2と互換の目次」の項

このチェックボックスは。デフォルトではチェック:OFFになっていますので、チェックを入れてONとして、設定の「保存」をしてください。

その設定でEPUB3を生成します、すると、次のようにナビゲーションのパネルに目次が表示されるようになります。

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図3 論理目次をEPUB2と互換の目次も出力したEPUB

ADE3.0では表示精度については、縦書きを中心に若干の改良をおこなったとのとです[1]
・数式(MathML)のサポートは行なわれていません。
・SVGはサポートしています。SVGのサポートは、2.0と3.0であまり変わっていないようです。

[1]ADE3.0 features.html

EDUPUB ボストン・ワークショップとその後の展開

昨日のブログ[1]で、EPUBPUBの標準活動について紹介しましたが、ボストン・ワークショップの状況についてより詳しく知りたいという要望がありましたので、引き続き調べてみました。

1.ボストン会議の概要

ワークショップに参加したわけではありませんが、公開されている資料を基に簡単にまとめてみました。

(1) テーマ
1) 教育分野における相互運用性
IMS Global Learnig Consortium(IMS)のCEO Rob Abel氏が進行役。e-ラーニングの分野では幾つかの標準とプロトコルがあり、利用者はそれを相互運用しなければならない状態になっています。その状況についての報告とパネルが行なわれました。

2) リッチで対話のできるコンテンツ
IDPFの Executive DirectorであるBill McCoy氏が進行役。Webプラットフォームの適用により、e-bookでリッチなコンテンツの提供が可能となりました。

3) アクセシビリティ
IDPFのCTOであるMarkus Gylling氏が進行役。アクセス可能な教育環境についてをテーマとしています。

4) 制作ワークフロー
Pearsonの Director であるPaul Belfanti氏が進行役。標準ベースのコンテンツ制作・生成・配信の効率や汎用性についてのプレゼンテーションをテーマとしています。

(2) EDUPUB ボストンのレポート

IDPFのWebページには、ボストンで開催された第1回EDUPUBワークショップの総括レポートがあります。そのポイントは次のとおりです。

1)全体の方向性はPearsonのDr. Dan Cooperによるキーノートとクロージング・スピーチで示されました。Cooper氏は構造化編集と組立ツールによる次世代の教育出版、構造とスタイルの分離、中間形式の標準を廃して出力がすぐ出来る標準へ、競争上益がなくまた相互運用性で妥協が必要な配布形式のバリエーションをなくして革新につながるオープンな経済システムへの要求について述べられました。これを速やかに進めるために、PearsonはIDPFにEDUPUBの出力形式に関するプロファイルの草稿を提案するとのことです。

2)W3CのCEOであるJeff Jaffe氏は出版とWebのより完全な統合について紹介しました。

3) EDUPUBのほか、Metrodigi社のWidgetsと、VersaPub社の文書協調についてのEPUBを改良案の提案の告知がありました。

会議の終わりにあたり、共同議長のMarkus Gylling (DAISY/IDPF)とPaul Belfanti (Pearson)より11項目の課題の提示がありました。

11項目の課題

2. ワークショップ後の進展

ワークショップの後の動きとして、3つのワーキング・グループが作業を開始しました。

(1) EDUPUB

EPUBを教育用テキストに利用するためのプロファイルを作成するものです。
現在、IDPFのメンバーを中心にワーキンググループができており、週1回のペースで電話会議を行なっています。

これに関しては、PearsonからEDUPUBのベースラインプロファイル仕様のドラフトが提出されました。
EDUPUB Output Profile Baseline Spec

この仕様案はXHTMLのクラス属性を使って意味とレイアウトを規定しようとしています[2]

(2) QTI、LTI、LRMI

QTI、LTI、LRMIは、それぞれ次の内容ですが、これらEPUBと整合を持たせるものと見られます。

・QTI仕様はIMSが開発した質問、テストデータ、結果レポートの相互運用を可能とするための標準です。
・LTI(学習ツールの相互運用性)は、現在、IMSで仕様の開発が進んでいます。
・LRMI(学習資源のMetadata)とアクセシビリティについて。

EDUPUBとQTIのワーキンググループは、別々に作業を進め、第2回のワークショップの後で整合性の検討を行なうようです。

なお、QTIとEPUBでは、現在、HTMLの要素の使い方に相違があります。例えば、村田真氏の分析によるとEPUBのみで使えてQTI V2.1にはない要素がだいぶあり、またQTIとEPUBではテーブルのモデルが違うなどの内容モデルが違うとのことです。

(参考)
Question and Test Interoperability version 2.1

(3) Widgets

小さな単機能のアプリケーションや部品を共有するプラット・フォームを作ろうということのようです。これについて議論をするためのグループができています。

Metrodigi社が提供したWidgetsを元に、現在、インターネット上のオープン・ソース用レポジトリが用意されています。

IDPF ePub Widget Framework

[1] EPUB標準化関連活動のアップトゥデイト 2014/1/18
[2] クラス属性とCSSを使ってプロファイル仕様を作ろうという考えのようです。これはEPUBの従来の方針とはかなり違うのではないかと思います。

EPUB標準化関連活動のアップトゥデイト 2014/1/18

1.EPUB本体

1)ISO標準化
EPUB(EPUB 3.0.1)はISOの技術標準になることが決まっています。
仕様の番号:ISO/IEC DIS 30135-1~7

※2014年11月5日 EPUB3がISO/IEC TS 30135として刊行されました[3]

2)EPUB 3.0.1 IDPF
ISOの標準とするに際してのマイナーな変更を行い、EPUB3.0.1とすることになっています。作業はほとんど終了し、昨年末に、公開レビューが行なわれました。
第1回公開レビュー 2013年11月7日~2013年12月3日
Call for Review – Public Draft of EPUB 3.0.1

コメントを整理した上で、次のステップとして提案仕様に進むことになっています。

変更点のリストを見ますと、実際はかなり変更になっています。ISO標準化の機会を利用して、仕様のかなり大きな拡張が行なわれました。実態としては3.1と呼ぶべきものでしょう。
変更点
主なものだけ紹介します。

①Publication(OPF)
・collection(OPFの最後に0回以上出現)要素が追加になりました。

複数のコンテンツ文書に分散する索引、特殊な可視化を実現するコンテンツ文書のためのもの。collectionには役割(role)を指定しなければなりません。roleの語彙は随時追加されますが、1/18時点では、index(索引)とmanifest(関連コンテンツ文書)、preview(試読版)が定義されています。

・出版物の可視化に関する項(4.4 Publication Rendering)が新しく設けられました。

そして、rendition:flow, rendition:align-x-center属性が追加されました。rendtion:align-x-centerはファイル毎にテキストを上下中央配置(縦組みでは左右中央配置)指定ができます。主に中扉のテキストを中央に配置するのが大変難しいという現在の制作者の悩みを解決する目的で設けられたものです。

また、EPUB3.0仕様確定後の2012/3に追加で策定された固定レイアウト用メタデータ属性が、この出版物の可視化に関する項に統合されました。

②コンテンツ文書
・trigger要素の追加
・仕様で規定していないカスタム属性を許容しました。これによりリーダーの独自拡張が可能になります。
・CSS3より、CSS Text Decoration Module Level3, Selectors Level3 が加わりました。
・CSS3の Writing Modesの文法と値が変わりました。
・oeb-page-head, oeb-page-footが廃止予定となりました。これは、EPUB2からある、ランニング・ヘッダー、ランニング・フッター(日本語書籍の柱に相当)を指定するためのものでした。しかし、実装しているリーダーがないので廃止となりました[1]

③Open Container Format、Media Overlaysなどその他の仕様にも細かい変更が行なわれています。

(参考)日本語訳に変更点のうちrendition:flowの解説があります。(参考)日本語訳

2.EPUBのプロファイル
(1) 公開レビューに進んでいる活動

1)EPUB Index(索引)EPUB Indexes Working Group
第2回公開レビュー 2013年11月7日~2013年12月3日
EPUB Indexes 1.0

2)ハイブリッドレイアウト (Advanced-Hybrid Layout Working Group)
主に固定レイアウトに関するプロファイル仕様として開始されましたが、それ以外の機能を含みつつあります。
2013年12月16日~2014年1月15日まで公開レビュー

EPUB Previews
EPUB Multiple Renditions
EPUB Region-Based Navigation
Magazine Structural Vocabulary

(2) 以下のグループは活動を行なっています。

1)EPUBの辞書と用語集(Dictionaries and Glossaries working group)
EPUB 3 Dictionaries and Glossaries Charter

今後、仕様のドラフトを完成して公開することになる見込みです。

2)Open Annotation (EPUB)
W3Cなどで進んでいる注釈の標準化(Open Annotations)プロジェクトはEPUBに限らず、様々な媒体への注釈のモデルを標準化するものです。これを受けてIDPFでは、2013年11月にEPUBの注釈について検討するワーキング・グループを立ち上げました。このグループは活動が始まったばかりです。

Open Annotation Community Group
Open Annotations in EPUB – Project Overview

(3) これから活動を開始する段階

EPUBの教科書への利用についての標準化活動が始まろうとしています。

1)EDUPUB
IMS Global, IDPF, W3Cがデジタル教科書と学習参考書に関するEPUB3のプロファイル仕様作成に関するワークショップを開催しています。ワークショップで仕様標準化の課題をいろいろ挙げてから作業をスタートすることになるのでしょう。ワークショップの段階で課題に入らないと作業開始からの追加は難しいようです。

第1回 2013年10月29日~30日 ボストンにて
アジェンダプレゼンテーションもあります
EDUPUB Workshop Report

第2回 2014年2月12日~13日(予定)ソルトレークシティ
EDUPUB2 Workshop on Digital Publishing for Education

[1] 個人的感想:これは仕様の拡張の仕方が悪い(CSSのプロパティを独自拡張)のでやむを得ないとは思います。しかし、現在、EPUB3では柱を指定する方法がないため、ボリュームの大きな書籍ではどこを読んでいるのかまったくわかりません。これは大きな欠点だと考えています。
[2] EPUB標準化関連活動のアップトゥデイト 2014/6/15
[3] EPUB3がISO/IEC TS 30135として刊行

紙と電子書籍の同時発売の実現のための制作課題を整理する

「12月18日JEPAセミナー「電子書籍実務者は見た!」。泥臭い話の中から見える今後の方向」の続きです。

このセミナーの趣旨は、「現在の電子書籍(EPUB)の制作と流通向けのリリースは、紙の制作のワークフローの上に、EPUBの制作のワークフローが載っているので、大変効率が悪い。」そのことについて声を上げるとのことです。

もう一つ現実の問題として、現在、「紙とEPUBの同時発売が求められている」が、EPUBが発売されないか、EPUBの方が遅れがち、ということが切実になっているようです。この二つは必ずしも、同じ問題ではありません。ワークフロー以外に権利者や版元の考え方があるのは周知のことです。

ここでは、とりあえず、紙とEPUBの同時発売をどのように実現するか考えます。紙と電子の同時発売を実現するために解決すべき課題には、EPUB制作のワークフローの効率化と共通の項目が沢山ありそうですから。

さて、紙とEPUB同時発売を実現するための制作方法に関するアプローチには二つあります。

第一は、現在のワークフローを前提にしてEPUBの制作期間を短縮するというアプローチです。

梅屋氏(SBクリエイティブ)の報告では、現在のワークフローはDTPで紙の本を作り、それを底本として電子書籍を作るという方法です。現在は1ヶ月程度かかっているとのお話がありました。

この方法だと紙とEPUBを同時発売するには、EPUBの制作期間(開始から完成までの期間)を少なくとも1週間程度につめていく必要があるでしょう。現在のワークフローを前提にして、これを実現するためには、①DTPで紙の本を作るときにスタイル指定、グリフの指定方法、などDTPの機能の使い方に制約をかけて、②DTPから自動的にEPUBに変換できるようにし、極力自動処理でEPUBを作るということが解決策となります。

DTPの機能に制約をかけるには、DTP制作者のためのガイドラインを完備した上で、制作者を訓練する必要があります。

厄介なのは、現時点では紙の方が表現力が高く、EPUBの表現力は相対的に低いということです。表現力の異なる媒体のレイアウトを同時に指定するにはかなりのノウハウが必要です。場合によっては、紙のレイアウトで多少の妥協をすることも必要だからです。

従って、紙を制作する部門を上流におき、下流にEPUBを作る組織を置く組織作りではだめだということです。ひとつの部署が両方の制作に責任をもつ、つまり、紙の本とEPUBの本を同時に編集・制作するための組織・体制作りが必要です。

第一のアプローチは、堅実であり、版元と制作会社の経営陣がそういう方向を示せば、十分実現可能でしょう。

但し、このアプローチは、紙の本の出版点数の方がEPUBの出版点数よりも多い、という暗黙の前提があります。EPUBの方が出版点数が多い場合や、EPUBしか出さない(電子版のみの)場合は、このアプローチは意味を持ちません。

第二は、ワークフローを変えて、ワンソース・マルチユース方式をとるアプローチです。

第一のアプローチは従来の延長線上にあるのに対して、第二のアプローチは、従来のワークフローをガラッと変える革新となります。従って、第一のアプローチよりも課題は多く、しかも難しくなります。大雑把には次のような課題をあげることができます。

  • ソースとなるテキストをどのように完成するか? (原稿の整理、校正、校閲)
  • マルチユースでは、XHTMLがハブ形式になります。そのXHTMLハブ形式の仕様をどうするか? そして、原稿をどのようにマークアップするか? 原稿の完成とマークアップは、時には並行処理も必要なので厄介です。
  • レイアウトをどうやって、誰が指定するか? レイアウトを変更するには?
    • 特に紙の本のレイアウトをどのように指定するか? DTPに依存しないレイアウト方法を考える。
  • その他、コンテンツの管理方法など

上の2番目の課題、XHTMLをマークアップとオーサリングする方法には次のような選択肢がありそうです。

  • XML エディタやWebページのエディタを使って、人手でXHTMLをコピー&ペーストと範囲指定でタグ付けなどでマークアップする。DTPとは異なる技術的なスキルが必要です。こうしたスキルをもつ人材を社内に配置すると、従来よりコストアップになる可能性が大きくなります。
  • XHTMLを専門の会社に発注して作ることも考えられます。そうすると制作指示をしたり、納品物の検収する体制が必要となります。
  • テキストに簡易マークアップを施し、システムを使ってXHTMLを生成する方法もあります。現在、簡易マークアップに注目が集まっているのは、この一環でしょう。
  • 原稿をWordなどで執筆し完成原稿とした上で、変換によってXHTMLを作り出す。

上の3番目の課題、XHTMLから紙の本を組版する方法についてをもう少し詳しくいうと次のようになります。

XHTMLができているとき、紙の本のレイアウト制作については自動組版が第一候補になります。自動組版の選択肢には、XSL-FO、CSS、TeX、InDesignなどDTPを使う方法があります。自動組版はコンピュータで行なうものですので、社内で行なうにはXHTMLのマークアップと同様、スキルを持つ人材の確保の問題が出てきます。

第二のアプローチをとったとき、大雑把に言えば、従来のように人間のスキル中心の手作りを採用するか、コンピュータ中心の制作システムを採用するかという選択肢があります。そして、どちらを選択するべきかはそれぞれの要件を鑑みて決めることになるのでしょう。

同じような章立て構成、同じようなレイアウトの、型にはまった書籍を多数作るのであればシステムによる処理が有利になります。例えば、文字主体の新書はシステムで制作できます。

一方、ひとつひとつ書籍が章立て構成もレイアウトもまったく異なるのであれば手作りの方が有利になるはずです。一品生産ものを自在に作るためのシステム投資はあまり現実的ではありません。

ちなみにCAS-UBは、第二のアプローチで、かつ、人手は減らしてシステムで解決するという考え方をとっています。→機能の紹介

関連記事
デジタル出版物の制作方法 特にコンテンツの入力・編集の方法について

Android版KoboにEPUBサイドロードするにはインポートで。しかし、ファイル管理ができないのは残念。 ファイルの削除できました。

Android版のKoboアプリは、日本語EPUBの表示精度という面ではかなりよくできています。しかし、アプリの目的がKoboで購入したEPUBを表示するという点を重点としているため、サードパーティの作成したEPUBを表示するのは面倒です。また、残念ながらKoboに読み込んだEPUBファイルの管理はできないようです[1]

1.EPUBをインポートする準備―Koboにログインする必要がある

KoboアプリはGoogle Playストアから無料で配布されていますのでインストールすることは簡単にできます。しかし、Koboアプリをインストールしただけでは、外部のEPUBを読んで表示することはできません。前準備としてKoboにアカウントを登録して、ログインする必要があります(アカウントの作り方は省略)。

(1)インストール直後メニュー(図1)
(2)Koboにログインするとインポートメニューが表示されるようになります(図2)

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図1 インストール直後のメニュー(ログイン)

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図2 ログインすると「本のインポート」のメニューが表示される

2.Dropboxからエクスポートする

次にDropboxにあるEPUBファイルをKoboで読む方法を説明します。

まず、最初にDropboxのEPUBをファイルをAndroidのDownloadフォルダーに保存します。

Dropboxでファイルを選択して、「エクスポート」を選択します。すると図3のメニューが表示されますので、ここで「SDカードに保存」を選択すると、選択したEPUBファイルがDownloadフォルダーに保存されます。

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図3 ファイルをエクスポート

Nexus5はSDカードに対応していません。実際には、EPUBファイルは本体の/strage/emulated/0/Download/ フォルダに保存されます。

3.KoboアプリにEPUBをインポートする

次にKoboアプリでEPUBを読む方法を説明します。

(1)Koboアプリの「ホーム」画面で、上右端のメニューを表示し、「本のインポート」を選択します。(図2)
(2)「本のインポート」を選択すると、「メモリカード内を検索し・・・」というパネルが表示されますので「スタート」を選択します。(図4)
(3)Nexusではメモリカードはありません。Downloadホルダーと内部メモリーのEPUBを検索してリストします<sup>[2]</sup>。(図5)
(4)インポートするファイルを選択して実行します。この一覧でグレーのEPUBはインポート済みのものなので、選択できません。
(5)「本の削除」というパネルが表示されます(図6)。このパネルは紛らわしいですが「はい」を選択してもDownloadフォルダーからは削除されません[3]
(6)インポートが開始されます。(図7)

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図4 本のインポートを選択すると・・・

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図5 内部メモリのEPUBを検索してリスト

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図6 本の削除

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図7 インポートの実行

インポートが完了すると、Koboアプリのホーム画面にインポートしたEPUBの表紙が表示されます。表紙を選択してEPUBを開いて読むことができます。

Koboアプリには、こうしてインポートしたEPUBを削除するメニューがありません。このためEPUBを少しずつ修正して表示確認テストをするなどの用途には少しばかり不便です。

★本の削除(3/17追加)
KoboアプリにインポートしたEPUBファイルをひとつだけ削除するには、次のようにします。

  1. EPUBを開いて「目次」を表示して、画面の右上のボタンにタッチします。
  2. 「本の削除」メニューが出ますので、このメニューを実行すると削除できます。

Screenshot_2014-03-17-10-42-03

【注】
[1] KoboアプリにインポートしたEPUBファイルを、一つだけ選択して削除する操作はできません。どうしても削除するには、「設定」→「その他設定」で「ローカルデータを削除」を選択します。しかし、ローカルデータを削除すると、インポートしたすべてのEPUBファイルが消えてしまいますので、再度、最初からインポートし直しとなります。 2014/3/17 訂正

[2] メモリーカード内のEPUBを検索してリストする際には、DownloadフォルダーのEPUBと、既にインポート済みのEPUBをまとめて表示しています。なお、インポート済みかどうかは、EPUBファイルの内部の識別子(メタデータ)で判定しているようです。このためDownloadフォルダーにある、インポート済みのEPUBと同一の識別子をもつEPUBは、仮にファイル名が異なっていてもグレーになり、選択できません。異なるEPUBファイルとして認識させるにはファイル名を変えるだけではなく、メタデータの識別子を変更する必要があります。CAS-UBでは、識別子は「書誌設定」の版数を変更することで新しくなりますので、修正したEPUBをKoboアプリで読むときは、版数を変更してください。

[3] [2]でメモリ内を検索した時点で、EPUBファイルをDownloadホルダーから、Kobo自身が管理する内部メモリー領域にコピーしているようです。Nexus5では「本を削除」では、内部メモリー領域からの削除のみ行なう動作となっています。

[4] インストール時点では日本語フォントはインストールされていません。Kobo社のWebページから日本語フォントをダウンロードすことができます。

[5] このページの説明は、Koboバージョン 5.2.1184, Android 4.4.2 (Nexus5)での動作に基づいています。Android端末の機種が異なる場合、動作が変わる可能性がありますので、ご注意ください。

Android版EPUBリーダーで「Google Play ブックス」がアツい。 使い易くなり、進化中。

最近、Nexus7、Nexus5というAndroid端末でEPUBを読んでいます。Android用のEPUBリーダーは、ずっとなかなか良いものが見つかっていませんでした。いまのところ、Kobo for AndroidをメインのEPUBリーダーとして使っています。EPUBを簡単に表示する、という点ではGoogle Play ブックスがだいぶ良くなっています。

1.EPUBを開くまでの操作が一元化

以前、11月上旬にAndroid用のEPUBリーダーを評価したときはGoogle Play ブックスでEPUBを読むには、次の手続きが必要で、少し面倒でした。

(1) PCのブラウザでGoogle Playにログインする。(図1)
(2) マイブックスにEPUBをアップロードする。
(3) Android端末でEPUBを読む。(図2)

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図1 Google Playのマイブックス

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図2 Nexus5でマイライブラリーを開く

しかし、12月にAndroid 4.4のアップデートのころに、Google Play ブックスもEPUBを開くインテントに対応しました。DropboxなどからEPUBをダウンロードするとEPUBを開くアプリケーションの一覧にGoogle Play ブックスが加わりました。

(1) DropboxでEPUBファイルを選択してダウンロードすると、アプリの一覧がでる。(図3)
(2) Google Play ブックスを選択するとEPUBがクラウドのマイブックスに再びアップロードされます。(図4)

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図3 DropboxからEPUBをダウンロード

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図4 Nexus5からマイライブラリーにアップロード

アップロードが完了すると、Android端末(Nexus5)のGoolge Play ブックスで読むことができるようになります。PCを使わなくても、Android端末だけでEPUBを読む操作ができるようになり、便利になりました。

2.表示精度は?

前回11月15日に評価したのは3.0.15でした[2]が、いまは3.1.23にアップしています。ざっと、3.0.15の評価結果と、3.1.23での表示を比較してみましたが、差異をみつけることができませんでした。EPUBレンダリングエンジンは変わっていないのだろうと思います。

現時点では、Kobo for Androidと比較すると、まだ、Koboの方が綺麗な組版です。

20140110google
図5 表の表示(Goolge Playbooks)

20140110kobo
図6 表の表示(Kobo for Android)

★参考資料
[1] AndroidのEPUBリーダーではKobo for Androidの表示精度が一番良いと思います。残念ながらKobo for Androidは、Koboで購入した電子書籍(EPUB)を読むのに最適化されているため、自分で作成したEPUBを読むのはちょっと面倒な手続きが必要です。
[2] 『EPUBリーダー比較調査レポート―汎用EPUBリーダー20種類を対象とする機能比較を中心に― 第2版』(次からダウンロードしていただくことができます):http://www.cas-ub.com/project/index.html
[3]「 EPUBリーダーの紹介と比較(Android編)―第2回―」:http://www.antenna.co.jp/epub/reference/reader-android-2nd.html]
[4]OnDeckが Google Play Books を Android の標準EPUBリーダーと認めていない・・・
[5] アンチGが多いせいか見事なまでに無視されているが・・・

『PDFインフラストラクチャ解説』0.37版をリリースしました。Flashの概要を追加しています。

新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

『PDFインフラストラクチャ解説』0.37版を発行しました。
昨年8月に0.36版を発行して以来、しばらくとまっていましたが、久しぶりの更新となります。

今回は、正月にFlashを勉強して、24章PDF代替形式の中の24.3項Flashの内容を書きました。PDFとFlashの比較的近い応用分野は電子ブックです。Flashのアニメーションを使って、ページをめくり動作を表現した電子ブックは、一時かなり流行になりました。電子ブックはちらしやカタログなどの分野が主体ですが、一部では読み物にも使われています。

ちなみに、アンテナハウスも「アウトライナー 速ワザ」という製品でPDFからFlash電子ブックへの変換をサポートしています[1]。Flashというのは商品名なので、SWFというファイル形式という方が適切です。本製品を開発した当時は、SWFファイルの仕様書を利用して再生ソフトを作ることができませんでしたので、ソフトの機能も電子ブック制作のみです。

Flashと言いますと、いまでは旧聞となりましたが、スティーブ・ジョブスがiOSでFlash Playerをサポートしない方針を出して話題になりました。その後の展開を見ますと、後述のように、アドビは、AndroidでのFlash Playerサポートもやめてしまいましたので、スティーブ・ジョブスの考えの方が正しかったようです。

前回Flashの動向について調べたのは、もう5、6年前ですが、Flashの世界はかなり変わっています。第一にSWFフォーマットが完全オープンになって仕様書を使って再生ソフトを作っても良くなったこと。第二にアドビはFlash PlayerからAIRに舵を切ったことです。Android版のFlash PlayerはAndroid 4.0までは正式サポートされていますが、それ以降はなくなりました。さらに、最新のAndroid 4.4では動かないようです。AIRはFlashアプリケーション用としてAndroid, iOSの最新版でも提供されています。

Flashは、アニメーションからスタートしましたが、最近はもっぱら動画配信に使われるようになってきています。また、AIRはスマホ用のゲームの制作配信環境としての利用も促進しているようです。このようにFlashは、徐々にPDFからは遠ざかっていると言ってよいでしょう。

『PDFインフラストラクチャ解説』は、CAS-UBで執筆、PDF版とEPUB3版を同時に無償配布しています。
EPUB3版は、CSSレイアウト・テーマを小さな画面用のテーマに変更しました。

○ダウンロードは: http://www.cas-ub.com/project/index.html#pdfinfla

【追記:2016/1/21】
2016年1月に本書発売となり、無償配布を終了させていただきました。(『PDFインフラストラクチャ解説』POD版とKDP版が揃い踏みとなりました
【追記:ここまで】

[1] 「アウトライナー 速ワザ」
[2] CAS-UB