本のかたちを考える Webページのシリーズ

www.cas-ub.com で、今年から、本を考えるというテーマで、シリーズのWebページを作っています。全体としてのテーマは本の編集・制作・流通にコンピュータを使ってどのような技術革新ができるかということです。本による出版は、デジタル化の波に洗われて、大きな変貌の過程にあります。あと何年あるいか何十年続くか今後の展望が見えないところですが、根本的に考えなければならないところです。本Webページは毎週1回更新しています。個別ページは断片的にはなりますが、全体としてテーマに肉薄できればと期待しています。結論が見えていないのですが、今後の進展にご注目ください。

ブログと違ってWebページの方がやや全体の構成考えてまとめやすいかなと思っています。下に現在までのWebページと概要をご紹介しますので、興味をお持ちの方は覗いてみてやってください。よろしくお願いします。

流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。
プリントオンデマンド(POD)は印刷技術の革新ですが、これを製本システムと合体すると本を自動的に生産するシステムとなります。さらに、こうした仕組を使って本の流通をになう書店やオンラインストアがPODで本を作るようになってきました。本の流通における大きな革新が始まったといえます。PODの場合は、紙が前提になりますので、制作という点では今の延長で、流通の面での革新です。

ワンソース・マルチユース実践の難しさを考える
ワンソース・マルチユースはもう随分長いことスローガンとして使われて手垢がついた言葉となっています。しかし、実際のところ、広く普及するには至っていません。どこに難しさがあるかを考えています。ワンソース・マルチユースは編集という点でも課題があります。

本のかたちを考える―その1
本とはなにか? を大枠で考えました。このHTMLページは抽象的なので、もっと考え直す必要があるかと思っております。

本のかたちを考える―その2 ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係
日本語でのページということばが使われるようになった由来、英語のページの概念を考えてみました。明治時代に洋装本で出版が始まるまで、日本にはページという言葉がなかったと思いますが、その理由も考えてみました。紙でも電子でもページという言葉が使われるのですが、今後はページという言葉の使い方も変わるかもしれません。

本のかたちを考える―その3 主にプリントオンデマンドの本を想定したときの本の大きな構造
主に紙に印刷して製本した本の構造を整理しています。紙に印刷した本の製本の仕方にはいろいろあります。書店で売っている本は流通での取り扱いや、書店での陳列を考えて作られています。PODで作り、オンラインで販売する本はそれと比べるともっと簡素です。POD用の本には少なくとも帯は要らないと思うのですが。

CAS-UBによる本の制作工程の実例:「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」編集・制作作業(上)
CAS電子書籍の「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」の制作実践の報告です。(上)はプロジェクトの狙い、概要、編集の方法を整理しました。

CAS-UBによる本の制作工程の実例:「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」編集・制作作業(中)
続いて(中)では、CAS-UBによる本の中身作り=内容の編集操作を紹介しました。

CAS-UBによる本の制作工程の実例:「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」編集・制作作業(下)出版までの処理
続いて(中)では、CAS-UBによる本の中身作り=内容の編集操作を紹介しました。

参考リンク
デジタル書籍制作Webサービス CAS-UB
「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」

ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ第6弾 『市場の変化を読んでEコマースを突破せよ!~「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代の戦略~』

ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ第6弾『市場の変化を読んでEコマースを突破せよ!~「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代の戦略~』を紹介します。

本書は株式会社ECマーケティング人財育成の石田社長のブログをプリントオンデマンドと電子書籍で本にするシリーズ第6弾です。Eコマース市場の変化や、変化する環境の中で事業を成長させるセオリー、新しいEコマースの話題である海外展開、またセブンイレブンをはじめとする新しいマーケティングの動きであるオムニチャネルなどを主題として取り上げています。

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(アマゾンPOD版の写真)
現在、Kindle版とアマゾンのプリントオンデマンド(紙)版が発売済みです。

本の情報
書名:『市場の変化を読んでEコマースを突破せよ!~「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代の戦略~ 』
シリーズ名:ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則
著者:株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役 石田麻琴
発行元:アンテナハウス株式会社CAS電子出版
発売日:2017年2月

○プリントオンデマンド版
サイズ:A5判 横二段組み
ページ数:168ページ
価格(税込):2,030円
ISBN:978-4-900552-42-5
販売店:アマゾン(amazon.co.jp)

○電子版
価格(税込):1,250円
ISBN:978-4-900552-43-2
販売店:Kindle版(Kindleアンリミテッド対象)

内容のご紹介
インターネットはすべての人の生活に欠かせない存在になってきました。

消費者の型番商品の購買活動ではインターネットを使って価格を事前に調べて比較するようになり、旅行やサービスの利用でも事前に調査して、インターネットで予約するようになっています。こうして、あらゆる事業者はインターネットの影響から逃れることができなくなりました。

それだけではありません。TwitterやFacebook等ユーザーの参加するSNSが普及したことで、インターネットでの炎上によってお店を閉店しなければならない事態も起きています。本書の「第1章 三方よしのマーケティング」では、こうしたインターネット時代のマーケティングのあるべき姿を考えています。

インターネットで直接ビジネスをしているEコマース市場は、この15年間に成長から成熟へと変わりました。著者は、この間にEコマースのストア店長を経験し、Eコマース市場の変化を肌で感じてます。「第4章 ネットショップ店長時代」ではEコマースの爆発的な成長経験を語っています。

その後、著者はECマーケティングのコンサルタントに転進しました。「第5章 Eコマース市場の変化について、改めて振り返ろう」では前半は店長経験、後半はコンサルタント・経営者の視点から変化を語ります。

今後は、オムニチャネル化によって実店舗のとインターネットの顧客データ統合が行われるようになります。「第9章 オムニチャネル」ではオムニチャネル化で実店舗のマーケティングも商品主導から顧客データ主導に変わることを語ります。

本書では、インターネットマーケティングが実店舗のマーケティングとどのように違うか、について繰り返し語られています。インターネットのマーケティングはすべての事業者にとって、企業規模の大小に関わらず活用できるものです。しかし、うまく活用するには違いを理解し、インターネットを使いこなす必要があります。 

本書には、新しいインターネットマーケティングの時代に備えるためのヒントが満載されています。

ページ数をできるだけ減らして、価格を下げるため、2段組みで文字がぎっしり詰まっており、読み応えがあります。インターネットマーケティングにど真剣に取り組む本気の人向けの本です。

目次
はじめに
第1章 三方よしのマーケティング
第2章 市場と競争原理
第3章 事業成長のセオリー
第4章 ネットショップ店長時代
第5章 Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう
第6章 プラットフォームの話
第7章 海外展開
第8章 インターネットの既存事業への活用に一工夫
第9章 オムニチャネル
第10章 あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」
索引

詳細目次
下記は本文のオリジナルブログ一覧です。

第1章 三方よしのマーケティング
「食い逃げされるなら、バイトを雇え」と言いたい。 【no.0099】
ソーシャル時代のマーケティングは「三方よし」がヒント。 【no.0100】
情報社会のビジネスは、「三方よし」でないと成長しない。【no.0309】
デフレーションの時代から、スタグフレーションの時代に。【no.0334】
スーパーのレジ待ち「2番目の方からどうぞ」の話【no.0361】
インターネットで炎上すると、価格が上がる時代です【no.0374】
「バレなきゃOK」は通用しない「三方よし」の時代。最後は内部告発が起きる【no.1086】
マーケティングとは本筋を徹底して突き詰め続けること。【no.0090】

第2章 市場と競争原理
ネットショップの数が何倍になっても、お客様の数は増えない。【no.0094】
「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代を勝ち抜くためのヒント【no.0809】
昔話風、でもない「市場拡大理論」。【no.0234】
改善活動は「市場のペース」より早く行う。まずは「競合他社のペース」を1点でも超えること【no.0564】
「数」で勝負できるなら、「数」で圧倒して市場を攻める【no.0578】
本当の意味で「PDCAサイクル」を回すことができる時代がやってきた!【no.0835】
ネットショップの成功事例は「即失敗事例」!?事例があまり参考にならない理由【no.0829】
信長・秀吉・家康の流れに潜む、セオリーを考えてみた。 【no.0115】
民泊ビジネスとEコマースの共通点。はたして今後の展開は・・?【no.0950】
こうやって、Eコマースの市場は荒れてゆく。前編【no.1090】
こうやって、Eコマースの市場は荒れてゆく。後編【no.1093】

第3章 事業成長のセオリー
個人でのネットショップ運営が有利である唯一のポイントは? 【no.0096】
オーナー経営者の時代が到来する2つの理由。【no.0190】
ネット戦略に選択と判断の「軸」はありますか?【no.0211】
実店舗の存在がEコマースでも有利に働く4つの理由【no.0387】
ブランドと資本力と人財。大規模Eコマース・小規模Eコマースのジレンマ【no.0494】
会社を評価するための最も大事な指標。「年数」ともうひとつは何!?【no.0585】
事業戦略を展開していく上での、本当の「失敗」とは何か・・?【no.0618】
「机上」よりも早く外に出て、「お客様の客観的な反応」をチェックしよう【no.0652】
「できること」ではなく、「勝てること」をやり抜く。【no.0687】
「無駄打ちになる予算」を計画に入れ、新しい市場を探っていく【no.0816】
「お客様を絞る」とは「1番になる」ということ。1番になる理由とは【no.0900】
私のちょっと悔しい経験談をご紹介します【no.0922】
たとえば野球関連アイテムのネットショップをつくるとして・・【no.0936】
年商1億円のネットショップを100店舗立ち上げ、年商100億円の事業をつくる【no.0939】
「他人」が噂をしてくれるまでは、「自分」で叫び続けるしかない【no.0451】
需要が伸び、パッケージ化され、代理店や小売店が売りまくる。そんな成長期【no.0474】
「需要>供給」「需要=供給」「需要<供給」となり、成熟期が訪れる【no.0481】
成長の階段。1つ目をのぼって、2つ目をのぼることの難しさ【no.0522】
すでにある価値に特化するか、新しい価値をビジネスにするか【no.0884】

第4章 ネットショップ店長時代
ネットショップ運営担当者のときの話。【no.0274】
ネットショップ運営者時代、ホントに注文がこなかった‥【no.0283】
忘れもしない運命の売上会議での出来事。【no.0290】
数字の変化には、必ずどこかに「理由」がある。【no.0297】
ネットショップ店長時代、毎日行っていたこと。【no.0304】
注文メールを見続けることで、1日の注文の流れを感じる。【no.0311】
いつもと違うから、「変化」に気づくことができるんです。【no.0317】
ついにYahoo!ショッピングの担当を離れることに・・【no.0341】
アパレルネットショップのバックヤードシステムを構築する【no.0348】
自分が知らないことは、必ず誰かが知っている【no.0355】

第5章 Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。一【no.0752】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。二【no.0754】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。三【no.0757】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。四【no.0758】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。五【no.0759】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。六【no.0760】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。七【no.0761】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。八【no.0764】
Eコマースの市場の変化について、改めて振り返ろう。終【no.0765】

第6章 プラットフォームの話
楽天市場の二重価格問題が、eコマース革命を加速させる!?【no.0063】
お客様の立場からは「Amazonですかね?」ってことになる? 【no.0064】
Yahoo!ショッピングの「ストアクリエイター」を触ってみた。 【no.0143】
「選ばれる」ネットショップになる、パラダイムチェンジ。【no.0067】
楽天市場の料金体系変更についての考え方【no.0353】
「ルール変更」により変更するのは、「施策」ではなく「係数」【no.0359】
「Amazonログイン&ペイメント」のメリットとリスクを一応書いておきます【no.0610】
「楽天スーパービジネスローン エクスプレス」がすごい。市場を変えてくれ!【no.0773】
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、”初”の三つ巴の戦い!?【no.0800】
プライム会員IDが「世界共通のマイナンバー(たとえ)」になる日まで【no.0912】
メルカリが使いやすすぎて驚く。梱包の手間さえなければ・・【no.0967】

第7章 海外展開
「越境EC=海外展開」のヒントはいつも手元にある。前編【no.0785】
「越境EC=海外展開」のヒントはいつも手元にある。後編【no.0786】
「越境EC」トレンドワード化への危惧。海外展開はまず「toB」から。前【no.1025】
「越境EC」トレンドワード化への危惧。海外展開はまず「toB」から。後【no.1026】

第8章 インターネットの既存事業への活用に一工夫
ITシステム会社(SIer)だって、WEBを使えば競争力を高められる【no.0857】
インターネットを活用して、既存事業の成果を上げよう。前編【no.0932】
インターネットを活用して、既存事業の成果を上げよう。中編【no.0933】
インターネットを活用して、既存事業の成果を上げよう。後編【no.0934】
京都の会社はどんな会社でもインターネットを活用しましょう【no.0974】
ホテル、ゴルフ場、美容室は、公式サイトで予約が取れるのか。前【no.1045】
ホテル、ゴルフ場、美容室は、公式サイトで予約が取れるのか。後【no.1046】
インターネットでつかんだニーズを、全体戦略に役立てる。【no.1087】

第9章 オムニチャネル
オムニチャネル時代のデータマーケティング。顧客IDをキーにして、どんなマーケティングを展開するのか。前編 【no.0029】
オムニチャネル時代のデータマーケティング。顧客IDをキーにして、どんなマーケティングを展開するのか。後編 【no.0030】
セブンアンドアイが300万点をEC販売! 【no.0065】
オムニチャネル化の本丸は、顧客データの統合!【no.0071】
「インターネットって全然親切じゃないよね」という金言。【no.0072】
セブンアンドアイのビジネスモデル変化へのメッセージ。【no.0073】
「商品主導」から「顧客主導」のマーケティングへ。【no.0074】
データサイエンティストって本当にいま必要!? 【no.0075】
「ネット選挙って、オムニチャネルと全く同じじゃん」 【no.0125】
顧客データを取ることでマーケティングが活性化する。 【no.0126】
オムニチャネルの第一歩。JR西日本とセブンイレブン、ヤフーとCCC。【no.0306】
サークルKサンクス×楽天スーパーポイント=オムニチャネル【no.0379】
ファミリーマートとサークルKサンクスの経営統合が業界にもたらす影響とは【no.0533】
東京メトロのコンビニがローソンに!オムニチャネルとどう関係が!?【no.0585】
21世紀のビジネス構築「オムニチャネル」とは何か!?序【no.0744】
オムニチャネルの本質をよく理解していて、投資を惜しまない。それがAmazon【no.0793】

第10章 あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その1【no.0985】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その2【no.0988】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その3【no.0989】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その4【no.0990】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その5【no.0991】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その6【no.0992】
あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。解説【no.0995】

[1] ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ
[2] アンテナハウス書籍一覧
[3] ECマーケティング人財育成

ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係、「ページ」と「頁」の関係、ブラウザと電子書籍の未来

英語のPageとは?

西洋の古い図書の形式には、コデックス(冊子状)とスクロール(巻物状)があり、いずれにもページという言葉が適用されています。コデックスのページは現在の洋装本(洋本)のページと似ています。それに対してスクロールは羊皮紙・パピルスのシートをのりで貼ったり、端を糸で縫って左右につなげたもので、そのシートをパネルまたはページというようです(この部分は現在のWikipediaの記事によります。古代にも同じように表現していたかは分かりません)。

Scroll(Wikipedia)
A scroll is usually divided up into pages, which are sometimes separate sheets of papyrus or parchment glued together at the edges, or may be marked divisions of a continuous roll of writing material.

Scroll(聖書)A scroll is usually divided up into panels, which are sometimes separate sheets of papyrus or parchment glued or stitched together at the edges.
Introduction to biblical studies. James E. Smith, Ph.D, 2013

Wikipediaの資料にでているスクロールの写真では、文字はページの上に横書きされており、そのページを左右につなげています。

左右に巻き取る芯があり、横方向にスクロールする巻物の上に横書(行は上から下に進む)の文字を書くので、必然的にページに区切ることになります。ここから、英語のページは、図書の装丁あるいは本のかたちから独立した概念のように見えます。

日本語の「ページ」

『言葉に関する問答集 総集編』(文化庁編集、2015年11月16日版、全国官報販売協同組合発行)のpp. 476~477によるとページが日本で使われ始めた時期については、次のように書かれています。

・ヘボンの『和英語林集成』の初版・再版は「ページ」の見出しがなく、明治19年刊の第三版に至って「PEIJIペイジ」としてある。
・明治22年1月の『言海』の予約募集に「紙数、概算一千ページ」とある。
・新聞広告でも明治21年の書物の広告でページという言葉が使われている。
・明治22年から明治31年刊行の国語辞典の見出しにはページという言葉はない。
・明治41年刊の『ことばの泉 補遺』には見出しに「ぺえじ」とあり、以降、見出しはページになったが、現在まで辞書の見出しにページが出ている。

これから見ますと、ページという言葉は、明治20年過ぎ頃から出版界で使われはじめて、明治40年頃迄に辞書の見出し語になる程度まで一般に普及したようです。

ちなみに、『新しきことばの泉』(小林花眠著、博進館、大正10年)p.1163には次のようにありました。

見出し語:ページ、Page(英)
説明:頁。書籍・帳簿などの紙の片頁。頁刷(ページずり)といふは活版で、棒組み一定框に入れて、頁に刷り得るようにしたもの。頁附(ページづけ)といふは、ページ数を記しつけること。これを丁附ともいふ。

「頁」と「ページ」

『言葉に関する問答集 総集編』には、「ページ」を「頁」と表記することについて、次のように書いてあります。

・『言海』の内容見本明治24年のものには、「洋装大本紙数一千二百五十頁」として、「ページ」が「頁」に変わっている。
・他の書物も明治21年のものは「ページ」が使ってあり、明治23年以降は「頁」が圧倒的に多い。
・昭和21年内閣告示の「当用漢字表」、昭和56年内閣告示の「常用漢字表」には「頁」がない。従って、国語施策に従うときは、「頁」ではなく、「ページ」を使う。
・実際は現在でも書物の広告や内容見本には広く「頁」が使われている。

「頁」という文字をあてた理由は定説がないのですが、葉と中国語の発音が似ていたからという説が「新明解漢和辞典」に紹介されています。

ここから分かることは、ページという概念は、日本では明治の初め頃に洋装本が販売されてから広まったものであり、和本にはページに相当する概念はなかったのだろう、ということです。

以上を整理して、図に表すとこんな感じでしょうか。

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和本にページに相当する概念がなかった(仮説ですが)ことには、二つの理由が考えられます。

(1) 巻物は横スクロールに縦書き(左から右に行が進む)していたので特に区切りが必要なかったこと
(2) 和本では1枚の和紙の片面に木版で刷ったり、あるいは手書きで書いて、それを二つに折って綴じていた。そのため洋装本のように紙をシートとして裏表を使うという発想がなかった。

現在の話に戻りますと、現在Webブラウザはページに区切る機能は弱いようです。これは、横書き文書を縦スクロールで表示するときは、行の進行方向とスクロールする方向が同じなので、ページに区切る必要性が小さいためでしょう。日本に昔はページの概念がなかった(仮説ですが)のと似ていませんか?

ところで、現在、ブラウザで縦組みができるようになりつつあります[1]。現在、ブラウザの縦組は横スクロールです。ブラウザで縦組みし、縦スクロールしようとすると、次の図のようにページに区切ることが必須となります。

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CSSレベル3にはページドメディアという仕様案があります[2]。これはまだドラフトです。電子書籍(リフロー型EPUB)のページ区切りは、それぞれのEPUBリーダーの独自実装であり標準化されていません。

今後は、ブラウザや電子書籍でのページをもっと考えて行く必要がありそうです。

【参考】
次の写真は、古本屋で1冊200円で購入した和本(奥付には、安政4年(1857年)となっています)をバラした1枚の和紙の表と裏です。

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和紙は薄いので文字が裏まで透けてしまいます。しかし、160年前の和紙が虫に食われているところを除けばあまり劣化していないのは驚きです。

『和本のすすめ』(中野三敏、岩波新書、2011年)によると江戸の本では、この1枚を「丁」というそうです。右は丁のオ、左は丁のウと言い、一ノオ、一ノウという風に数えていくそうです。従って、江戸の冊子本ではページという概念はなかったと言えるでしょう。

[1] CSS Writing Modes Level 3 W3C Candidate Recommendation, 15 December 2015
[2] CSS Paged Media Module Level 3 W3C Working Draft 14 March 2013

★本ブログの内容をもう少し整理して、次のWebページとしましたので、ぜひご一読ください。
本のかたちを考える ― その2 ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係

★ページに関連する過去記事の一覧
[1] ページってどういう意味? 紙のページ、Webページ (memo)
[2] ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて
[3] Kindle Unlimited問題とKENPの関係について(続き)
[4] Amazonでは本のページの数え方が三つある。Kindle Unlimitedは第三のKENPで著者への支払いが行われ、KENP相場が基準になる。
[5] ページっていったい、どういう意味なんだろう? ――Webページ

ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズから見る、書籍出版とWebマーケティングの難しさの類似性

CAS電子出版では、現在、「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ」[1]を次々とリリースしています。

この編集方針は、既に別途紹介しています。一番詳しいのはこちらです:CAS-UBによる本の制作工程の実例: 「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」編集・制作作業(上)

今日は、本シリーズに書かれている石田社長の話を読んだり、自分自身の経験をもとにして、特に本の出版についてWebマーケティングの視点から考えてみたいと思います。

出版は歴史が長く、さまざまな形態の出版が行われてきました。

紙に印刷した本の出版流通の方式は大雑把には次のように分けられるでしょう。
①取次を通して書店の店頭に並ぶ(間接販売)、②読者への直販・直接配達方式、③職場・学校など職域での販売

日本の書籍の販売が、現在どのような割合になっているかは調べていませんが、日頃のニュースから感じているところは、取次を通して書店の店頭に並ぶという流通方式は苦しくなっているようです。②の読者への直販方式で、オンラインストア方式、もちろんアマゾンが中心でしょう、のシェアが増えているためと思います。職場や学校などの職域販売はどうなっているのでしょうか? これは分かりません。

新しい出版としては、④Kindle/EPUBなどによる電子出版、それから⑤流通によるプリントオンデマンド出版の三つの形式の出版方式があります。流通によるプリントオンデマンド出版は電子出版よりも新しいコンセプトです。詳しくはこちらをご覧ください:流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)。そこで書きましたように④と⑤はほとんど兄弟と言えます。

アマゾンは、現在、⑤流通によるプリントオンデマンド出版に力を入れているようです。印刷した本の扱いと比べると、書籍を在庫する倉庫や在庫管理が不要になり、またピッキングもほとんど不要になるなど、③の方式はアマゾンにとっては非常に大きなメリットがあります。また、コストについて考えますと、プリントと製本の設備の稼働率を高め、大量に生産し、減価償却を速められるかが勝負でしょう。減価償却を速めることで技術革新によるコストダウンより速く享受できるようになりますので、一旦、アマゾンでの仕組みが回り始めると競争相手がコスト面で立ち向かうのが難しくなるでしょう。

話が横道にそれましたが、現在は、①の取次経由の書店での販売に対して、(②+④+⑤)という形態の、Webを使った新しい流通が伸びているという転換期と言えます。

この両者を対比すると、「ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」の中で繰り返し語られている、リアル店舗とEコマースの相違と似ています。次のような点です。

・リアル店舗には商圏がある。しかし、Eコマースには商圏がなく、日本全国の同業者が競争相手になってしまう。強者の世界となりがち。
・リアル店舗は、通りがかりの人が見つけてくれる(リアルビジネスは立地が重要)。しかし、Eコマースは(見えないので)店を開いても通りがかりの人に気が付いてもらえない。
・ネットショップを開店しても、アクセスがない、思ったほど売れない。

Eコマースの難しさは、結局「とおりがかりで見かけて」発見してもらえないということにあるようです。一方、検索で見つけてもらうには検索エンジンの検索結果で上位に位置されないとアクセスしてもらえない、ということに集約されます。結局、どうやって発見してもらうか? ということがEコマース成功への第一関門です。売上管理、流通、在庫管理とかはすべて売れてからの話ですから。

ひとつひとつの本とEコマースのお店を同列には比較しにくいとは思いますが、電子書籍やプリントオンデマンドなどの新しい出版方式の難しさって、Eコマースの難しさと似ているように思います。

[1] ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ

ページっていったい、どういう意味なんだろう? ――Webページ

個人的にはずっと長いことページという言葉を紙と連想して使ってきました。もう一方で、ここ20年くらいはWebページという言葉もかなり頻繁に使っています。そうしますと、この二つのページはかなりかけ離れたもののように感じるのですが、ページっていったいどういう意味でしょうか? 

Webの発明者Tim Berners Leeの本[1]によりますと、WorldWideWebプログラムを初めてCERNの限定されたNeXTユーザーにリリースしたのが、1991年3月なのだそうです。そうしますと、Webページという言葉は1991年より前にはなかったはずです。

Webページという言葉を初めて使ったのが誰かは分かりませんが。とりあえず、上記の本でpageに関する文章を拾ってみました。

これらを見ますと、まず、HTMLのソースコードはWebページではないようです。HTMLはページとして整形する方法を記述しているもので、Webページとはブラウザなどでワープロのように可視化した状態を指すようです。

…Hyper Text Markup Language (HTML) I had written, which describes how to format pages containing hyper text links.(p.29)

The browser would decode URIs, and let me read, write, or edit Web pages in HTML. (p.29)

… users could bookmark any place and return to it, and could make links into any place from another document. This would give a feeling of persistence, of an ongoing existence, to each page.(p.37)

I never intended HTML source code (the stuff with the angle bracket) to be seen by users. A browser/editor would let a user simply view or edit the language of a page of hypertext, as if he were using a word processor. (p.42)

[1] 『Weaving the WEB』(Tim Berners Lee, Harper, 1999-2000)

★本ブログの内容をもう少し整理して、次のWebページとしましたので、ぜひご一読ください。
本のかたちを考える ― その2 ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係

★ページに関連するブログ記事の一覧
[1] ページってどういう意味? 紙のページ、Webページ (memo)
[2] ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて
[3] Kindle Unlimited問題とKENPの関係について(続き)
[4] Amazonでは本のページの数え方が三つある。Kindle Unlimitedは第三のKENPで著者への支払いが行われ、KENP相場が基準になる。
[5] ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係、「ページ」と「頁」の関係、ブラウザと電子書籍の未来