新しくなったEPUBリーダのテキスト表示を比較してみると・・・

最近、主要なEPUBリーダが相次いで新しくなりました(表1)。

表1 メジャーなEPUBリーダの新バージョン

ベンダー EPUBリーダ 改訂内容
Apple iBooks 3.0 10月24日。iOS6上で縦書きのページネーションが可能となる
Adobe Digital Editions 2.0 9月下旬。ずっとPreview版(1.8)を提供していたものが正式版になる
IDPF Readium 0.5.3 9月29日版
Amazon Kindle Previewer 2.7 10月25日 Paperwhiteがデバイスに追加

そこで、手元のEPUBリーダを最新版に入れ替えて簡単に比較して見ました。表示に使ったのは、先日、プレゼンのために用意した「新版・論文の教室」からピックアップしたデータのEPUB版[1]です。以下の表に気になる点をまとめました(表2)。

1.縦中横の自動解除

もっとも気になるのは、縦中横の自動解除です。iBooks、Readiumは縦中横の幅がおそらく1文字分よりも広くなると縦中横を解除してしまいます。困るのは、縦中横は大抵、ASCIIコード(基本ラテン)のアラビア数字に指定しているため、解除されると2桁のアラビア数字が横倒しになってしまうことです。

○次の図では図の番号をASCIIコードのアラビア数字で表して縦中横を設定。しかし、縦中横が解除されて番号が寝てしまうため、1~9は正立、10~12が横倒しというおかしなことになってしまいます。

図1. iBooks 縦中横解除

章・節という番号付けをしているとき章番号が正立、節番号が横倒しになる可能性があります。このままではiBooksの縦書きでは章番号、節番号、項目番号、図・表番号にアラビア数字を使うことができないのではないかと思います。回避策としては、フォントサイズやレタースペーシングを調整して縦中横の幅を1em内に収めると良いようです[4]。後で試してみよう。

これに対して、Kindle PreviewerやAdobe Digital Editionsは縦中横を解除しません。

2.文字の方向の不統一

(1) 文字の方向の不統一が目立ちます。丸付き数字、ローマ数字、ダブルクオーテーション、ダガー、enダッシュ、emダッシュなどの方向が、iBooks、Adobe Digital Editionsは横倒しなのに、Readium(Windows版)は正立です。なお、Readiumは丸付き数字、ダガーに縦中横を指定すると左90度回転しています。これはWindows版のバグでしょう。

(2) ダブルクオーテーションの扱いは問題です。
a. Readiumは、英文の文脈でもダブルクオーテーションを正立させているため英文表記がおかしくなります。

図2. Readium (IPAexゴシック)

Readium(Windows版)は、「MVOデータではなくWindows APIに依存してて、Wordの縦書きと同様に和文フォントの引用符は正立」[6]、とのことです。そこで、フォントファミリーを「font-family: “Times New Roman”,”@IPAexゴシック”, sans-serif;」に変更しました。この場合、Times New RomanがもっているグリフはTimes New Romanが適用となります。すると、次の図のようにダブルクオーテーションが横倒しになります。ダブルクオーテーションのみではなく、プライムやダガーの方向も変わります。

図3. Readium (Times New Roman, IPAexゴシック)

これで一件落着かというと、今度は別の問題がでます。Times New Romanがもっているグリフが優先的に適用されてしまうため三点リーダ(…)や全角ダッシュ(U+2014)が欧文グリフとなってしまうという副作用があります。

フォントファミリーに依存する方法には次の問題があります。①EPUBへのフォント埋め込みはまだ一般的ではないため、指定したフォントで表示できるかどうかは表示環境依存になります。②フォントがないときgenericフォント(serifなど)で表示することになりますが、genericフォントでは和文と欧文の区別ができません。従って、どういう結果になるか予め予測できません。

b. この4つのEPUBリーダの中では、Kindle Previewerの文字の方向が比較的受け入れやすいのですが、しかし残念ながら、ダブルクオーテーションをダブルミニュートに変換しています。和文文脈であれば問題ないですが、英語の文脈でも変換しているところが問題です。

図4.Kindle Previewer

なお、Kindle Previewerでは、文書全体を英語モード(<html xml:lang="en" …)にするとクオーテーションマークのままになります。文書を英文とみなしているということなのでしょう。

図5.Kindle Previewer (文書全体にxml:lang="en"を指定)

c. iBooksとAdobe Digital Editionsはダブルクオーテーションを横倒しにしています。和文中の英文表記に関しては一番まともです。なお、この二つとも、<span xml:lang="en"> …</span>という言語指定を認識して、フォントと組版を自動的に変更しています。

図6.Adobe Digital Editions

図7.iBooks

表2 文字の表示について比較

項目 iBooks3.0 (iOS6) Adobe Digita
Editions 2.0
Readium 0.5.3 Kindle Previewer 2.7
(Kindle Paperwhite モード)
MS明朝 IPAexゴシック Times New Roman
IPAexゴシック
全角文字コードのコロン(:) 横倒し 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し
全角文字コードのセミコロン(;) 正立 正立 正立 正立 正立 横倒し
ASCIIコードのコロン(:) 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し
ASCIIコードのセミコロン(;) 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し 横倒し
プライム 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
ローマ数字(ⅰ~ⅲ) 横倒し 横倒し 正立 正立 正立 正立
ローマ数字(Ⅲ) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 正立[2] 正立
丸付き数字(①) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 正立[2] 正立
ダブルコーテーション(“”) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し ダブルミニュート
ダガー(†) 横倒し 横倒し 正立[2] 正立[2] 横倒し 横倒し
enダッシュ(U+2013) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
emダッシュ(U+2014) 横倒し 横倒し 正立 正立 横倒し 横倒し
縦中横 解除 解除しない 解除[1] 解除 解除 解除しない
span xml:lang=”en” 有効 有効 無視 無視 無視 無視

(10/31 ReadiumにTimes New Romanを追加したときの結果を追加)。

3.総合的にみて

4つのEPUBリーダの中では、Adobe Digital Editionsがやはり安定感があります。次いでKindle Previewerです。実機を早く試したいものです。

これに対して、iBooksの縦組みは縦中横解除を廃止しないと縦組みは使い物にならないでしょう。Readiumは未完成で、まだ実用にはなりません。

文字の方向の問題は大きな問題です。特に、ダブルクオーテーションとダブルミニュートの問題を解決するには、和文と欧文というコンテキストを明確にして、そして外国語由来のアルファベット数字記号は、欧文では横倒し=MVO、和文では正立=SVO、という二つの字形(グリフ)デフォルトセットを用意し、コンテキスト依存で切り替えるという仕組みを導入することが必須です。現在提案されているUTR#50の考え方では完全に解決することはできないでしょう。先日のセミナーで説明したように日本語の縦組みでは欧字を、①欧文モード=プロポーショナル字形で使い横倒しにする方法と、②欧字の和字扱い、という二つの異なる方法があるのでひとつのデフォルト文字方向で情報交換するのは不可能だからです[5]。

○注
[1] テストデータ テストデータはCAS-UBで作成しました。11/2 データを入れ替え。縦中横指定カ所に背景黄色の指定を追加。なお、本EPUBではReadium以外は、フォントファミリーを指定していませんので各EPUBリーダのデフォルトフォントで表示されることになります。ReadiumについてはSigilでフォントファミリーを変更して表示確認。
「新版・論文の教室」についての紹介:「新版論文の教室」には書籍の縦組みレイアウトパターンと文字の方向パターンの典型例がある
[2] 縦中横指定で左90度回転する。Ⅲは縦中横で回転するが方向は判断できない。
[3] 解除の条件はiBooksと異なる。iBooksで解除されない箇所がReadiumで解除される。その逆もある。
[4] http://www.facebook.com/groups/epubcafe/permalink/294994973939514/
[5] 10月22日「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」の発表予定資料をプレビュー
[6] https://twitter.com/MurakamiShinyu/status/262844455009275904

CAS-UB 10月の機能追加リスト

CAS-UBは、毎週木曜日に定期メンテナンスを行なっています。定期メンテナンスでは比較的小さな機能を追加しています[1]。このほか障害の修正も行なっています[2]。

10月中の定期メンテナンスで公開された機能アップ・仕様変更をまとめて次に紹介します。

1.Kindleのmobi形式の生成
・Kindleの生成を暫定公開しました。内部ではKindleのmobi用にカスタマイズしたEPUB3を生成した上で、EPUB3からmobi形式に変換しています。

2.出版物の種類
・「ノート1」は現在、簡単なレポートなど向け、「マニュアル1」はソフトウェア製品マニュアル用です。この二つは暫定公開で、正式サポートまでに仕様変更の可能性があります。
・「ノート1 英語」「マニュアル1 英語」用の、出版物構造図を追加しました。「構成編集」画面で、「出版物の種類を選択」を「ノート1 英語」または「マニュアル1 英語」にしたときに表示されます。
・「ノート1」「ノート1 英語」について、生成の設定項目から索引と奥付の設定を削除しました。(奥付けを使用するときは、出版物の種類を「書籍1」に変更する必要があります。

3.編集機能
・編集画面のマークアップ補助機能に「ルビ」を追加しました。

4.インポート機能
Microsoft Wordのインポート機能で従来はセル結合されている表をCAS記法の表に変換していました。しかし、CAS記法ではセル結合を表現できないため表が崩れます。そこでセル結合されている表をXHTMLの表に変換して<<embed>>[3] 内に配置するようにしました。

5.PDFレイアウト
(1)レイアウト詳細設定
・「全角空白で字下げしている」という設定項目を追加しました。この項目を「はい」に設定すると、段落先頭が全角空白で字下げされているものとみなし、段落先頭の字下げは行いません。(日本語のみ)
・「段落間を1行空ける」という設定項目を追加しました。この項目を「はい」に設定すると、段落間に1行の空きが入ります。

(2)欧文フォント
次の欧文フォント(固定ピッチ(monospace))を追加しました。
 Source Code Pro(フォント)
 Source Sans Pro(フォント)

Source Code Pro、Source Sans Proは、PDF生成設定→フォント設定のmonospace用です。monospaceに設定したフォントは、通常、整形済み(段落はpre、インラインはspan class=”tt”)に適用します。

なお、次のようにクラスをcodeに指定することで、monospaceフォントの設定の如何に関わらず、ブロックまたはインラインの区間にSource Code Proを適用できます。プログラムのソース記述などに便利です。

○ブロックの整形済み
■CAS記法
{{{:code

}}}

■XHTML
<pre class="code">…</pre>

○インライン
■CAS記法
…{{{:code …}}}…

■XHTML
…<span class="tt code">…</span>…

6.EPUB生成
・出版物の種類「ノート1」「ノート1 英語」の、EPUB3 CSSのテーマ「標準メルマガ明朝」を「ノーマル明朝」に、「標準メルマガゴシック」を「ノーマルゴシック」に名称変更しました。
・出版物の種類「書籍1」「書籍1 英語」の EPUB3 CSSのテーマに「ノーマル明朝」、「ノーマルゴシック」の2種類を追加しました。

《注》
[1] 大きな機能追加や変更は次期メジャー・バージョンアップとなります。現在、メジャー・バージョンは2です。並行してバージョン3に向けての開発を行なっています。
[2] 機能追加、障害修正の詳細:リンク
[3] <<embed>>のフルサポートは未公開です。
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Amazon Kindle登場、iBooksが縦書きサポート

いよいよ、Amazonの日本市場での電子書籍事業が始まります。

1.電子書籍リーダKindleが日本でも発売されました。現在、PaperWhite、KindleFireが予約受付中です。
11月下旬より出荷開始のようですが、先ほどPaperWhite(WiFi版)を注文しましたところ、12月2日~4日のお届けとなりました。

2.電子書店KindleStoreは本日(10月25日)より営業開始となっています。

○リンク:KindleStore
当面、購入した本は、Kindleアプリや米国などで購入したKindle(ハード)で読むことになりそうです。

Kindle Storeは、原則mobi入稿のようですが、交渉次第ではEPUB入稿も可能なようです。

3.KDP(Kindle Direct Publishing)が始まりました。

○リンク:KDP

4.iBooks

Amazon ではありませんが、iBooksが昨日よりバージョンアップして縦書きが表示できるようになったとのことです。まだ試していませんが、いままでは縦書きはファイル毎に1ページ目しか表示できない、という情けない状態でしたので、チェックが楽しみです。

米国に遅れること久しいですが、ようやく日本でも電子書籍が本格的に利用できるようになりそうです。

10月22日「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」の発表予定資料をプレビュー

来週、月曜日(10月22日)開催予定のFormatterClubにおける発表「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」の資料を用意しました。資料はまだ変更の可能性がありますが、ご参加いただく方々に事前に検討していただき、ご批判を賜るためにここに、プレビュー版として公開します。

FormatterClub定例会の詳細

○プレゼン資料:パワーポイントで作ったPDF (22日1:40更新。22日13:30再更新。23日22:45細かい誤り訂正。説明文追加。)

○実際の書籍におけるグリフの方向調査結果:グリフの方向調査結果(PDF) (23日1:33公開)

この調査は、縦組み書籍24冊(延べ約5000頁)における記号類の向きを調べたものです。記号については網羅しています。しかし、記号以外はあまり網羅的ではありません。また、和文区間における向きであることに注意してください。(欧文区間=横倒し区間は除外しています。)

○AH Formatter V6.1アルファ版による組版例(PDF)

AH Formatter V6.1では縦組みの文字方向について実装する予定です。これについては、現在、UTR#50とCSS3 Writing Modeで仕様の検討が進んでいますが、以下で紹介する例は、UTR#50とCSS3 Writing Modeでできることとは一致していませんのでご注意ください。

以下の例はあくまで文字方向の指定を議論する目的で公開するものです。文字方向の扱いは今後変更の可能性があります。また、文字の揃え方、空きの取り方などはまだ開発の途上のため評価対象外としてください。問題点のご指摘は歓迎です。できるだけ、今後、製品版までに改善致します。

1. 縦組みにSVO(upright)とMVO(mixed-right)の指定による文字方向切り替えの例

(1) 文字方向指定なし

文字方向の設定をしない(デフォルト)と欧数字が寝てしまうことになります。⇒UTR#50はこの方向に向かっています。これは良くないと思いませんか?

(2) SVO(upright)

文書全体の文字方向をSVO(upright)に指定し、数字2桁を自動縦中横[1]とします。⇒これは概ね新聞組版と同じです。

(3) SVO(upright)+MVO

文書全体の文字方向をSVO(upright)、数字2桁を自動縦中横とし、箇条項目5全体にMVO(mixed-right)を指定します。⇒キリル文字はMVOでは横倒しになります。

箇条項目3には、欧数字[2]の正立と横倒しが混在するため、項目全体にMVOを指定できません。そこで次のように指定します。

(4) SVO(upright)+MVO+sideways

文書全体の文字方向をSVO(upright)、数字2桁を自動縦中横とし、箇条項目5全体にMVO(mixed-right)を指定、箇条項目3の英語範囲にsideways(横倒し)を指定します。⇒概ね、現代の書籍の組版に近くなります。

(5) MVO+SVO

文書全体をMVOとして、箇条項目5全体を日本語フォントで正立としました。これはMicrosoft Wordなどでキリル文字に日本語フォントを指定した状態に近くなります。Windowベースのアプリケーションでは通常キリル文字の方向はフォント依存です。この文字方向は、現在の欧米発ソフトウエアのデファクトのアプローチです。UTR#50でMVOがデフォルトに決まると、いままでのやり方とも少し変わることになります。

2. 縦中横

(1) 縦中横事例データ

実際の書籍(15冊)の中で使われている縦中横のパターン、および数文字の長さの欧数字のレイアウトパターンを収集しました。赤字が縦中横、青字は横倒し、黒は1文字ずつ正立です。

(2) SVO+縦中横+MVO設定

文書全体をSVO、縦中横は強制的に縦中横を設定し、ピンクのセルにMVOを指定します。概ね文字の方向は実際の書籍に近くなります。あとは細かい区間で方向を強制的に変更することになります。

(3) 自動縦中横設定例
a. SVO+自動縦中横

文書全体をSVOと数値2桁を自動縦中横とします。

b. SVO+自動縦中横+MVO設定

文書全体をSVOと数値2桁を自動縦中横とします。ピンクのセルにMVOを指定します。(2)との相違は縦中横を強制指定か自動処理かです。自動縦中横でかなり処理できますが、やはりすべては無理でしょう。

c. MVO+自動縦中横

文書全体をMVOにしてしまうと、自動縦中横はうまくいきません。また、ラテン文字が正立したり、横倒しになったりばらばらになります。文書全体の欧数字を横倒しにしてから、個別に立てていくのは手作業やWYSIWYGでは問題なくても、自動処理には向かないのではないかと思います。

3.実際の書籍テキスト例

『新版論文の教室』には縦組み文字方向のパターンが豊富に出てきます[4]。そこで『新版論文の教室』から一部をピックアップして、本文のデフォルト文字方向を(1) MVO(全角文字使用)、(2) MVO(全角文字を使用不使用)、(3) SVOの3通りに設定したテストデータ[5]を作成しました。PDFは、このテストデータを使ってAH Formatter(V6.0の特別版)で組版した結果です。

テストデータのマークアップ方法、ならびにその結果の知見については、当日ご説明いたします。

[10/21追加]

(1)デフォルト MVO(全角文字使用)(PDF)

ルートにMVO(-ah-text-orientation:mixed-right)を設定します。縦組みで正立する文字を全角文字コード(UnicodeのFullwidth variant)で記述し、横倒しになる文字を基本ラテン文字コードで表します。

(2)デフォルトMVO(全角文字使用せず)(PDF)

ルートにMVO(-ah-text-orientation:mixed-right)を設定します。アルファベットとアラビア数字は基本ラテン文字コードで表します。正立する文字範囲に(-ah-text-orientation:upright)を指定します。

(3)デフォルトSVO(PDF)

ルートにSVO(-ah-text-orientation:upright)を設定します。アルファベットとアラビア数字は基本ラテン文字コードで表します。横倒しする文字範囲に(-ah-text-orientation:sidewaysまたはmixed-right)を指定します。

○注
[1] 自動縦中横は現在、アラビア数字とラテンアルファベットのみ対象でテスト的な実装となります。
[2] ここではラテン(基本・拡張)アルファベット、キリル文字、ギリシャ文字、アラビア数字、ローマ数字。および欧文組版用の括弧・記号類を指します。
[3] XHTMLファイル(ZIP)形式:このXHTMLはAH Formatter V6.1を使わないと正しく組版できません。AH Formatter V6.1プレビュー版については、FormtterClubにてご案内がなされる予定です。
[4] 「新版論文の教室」には書籍の縦組みレイアウトパターンと文字の方向パターンの典型例がある
[5] XHTMLファイル(ZIP)形式:このXHTMLはAH Formatter V6.1を使わないと正しく組版できません。AH Formatter V6.1プレビュー版については、FormtterClubにてご案内がなされる予定です。

FormatterClub開催迫るー縦組みにおける文字の方向について

10月22日のFormatter Club定例会の開催があと10日後に迫りました。FormatterClubはAH Formatterに関心をもつ方々を対象とするコアな登録制クラブなのですが、今回は無理にお願いして、一般参加とし、「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」というちょっと異色のテーマで報告させてもらうことになりました。

UTR#50の件については、この春から土日の大半を使って取り組んできましたが、AH Formatterの次期バージョン(V6.1)に縦組みの文字正立モードを設けてもらって、また自動縦中横機能なども利用可能な形にしたいと考えています。これによって、横組みテキストと縦組みテキストの共通化へむけて前進することができると考えています。

多くの方の、ご参加をお待ちいたします。

○FormatterClub定例会の内容

13:30~ 開会ご挨拶
13:35~ 「インドのおさつで使われているすべての文字の組版を目指す」
「MathMLによる高品質数式処理」
アンテナハウス 村上真雄
14:20~ 質疑応答
14:30~ 「縦組み時の文字の向き―その理論とマークアップ方法」 アンテナハウス 小林徳滋
15:15~ 質疑応答、休憩
15:50~ 「電子文書レイアウトの未来!AHReaderのプレビュー」 アンテナハウス 村上真雄
16:20~ 質疑応答
16:30 閉会

FormatterClubのお申し込み(コクチーズのページ)

縦組み書籍における縦中横の使い方(調査報告)

これまで縦組み書籍の英数字、記号類の方向について調べて本ブログで紹介してきました。前月末から、少し焦点を移して、主に縦中横の使い方を中心に調べています。

縦中横とは、縦組みの行幅に2文字ないし数文字を横組みで収める方式です。最も多いのはアラビア数字2桁の組み合わせです。伝統的な書籍では数字はほとんど漢数字でしたが、最近の縦組みの書籍では、数値や年号に原則として漢数字を使う場合でも、各種の番号にはアラビア数字を使うことが多いので、縦中横の頻度が非常に多くなっています。

いままでに調べた書籍は13冊で総ページ数は3000ページ強になります。中間報告として、いままでにわかったことを簡単に整理してみます。13冊の中で、数字を原則として漢数字としている書籍が9冊、原則アラビア数字が4冊です。すべての書籍が縦中横を使用しており、縦中横が出現しない本はありませんでした。

1.2桁のアラビア数字はほとんどすべて縦中横になります。但し次の例外があります。

(1)数値の小数部は1文字ずつ正立します。たとえば、1ドル=76.25円を縦組みにするとき、「76」は縦中横ですが、「25」は1文字ずつ正立です。数値の少数部が2桁の例は2冊ありましたが、いずれも、1文字ずつ正立させています。この場合、縦中横の整数部は数値の位取り表記といえます。縦中横は数値の位取り表記と解釈できるのでしょうか?なお縦組みでは、「.」は「・」になります。

(2)日付で3.11を縦組みにするとき、「11」を縦中横にしているケースが(1冊)ありました。ところが、2.26事件の26を1文字ずつ正立しているケースも(1冊)あります。おそらく11を「ジュウイチ」と読むときは縦中横、2.26を「ニイテンニイロク」と読むとき1文字ずつ正立と予想しますが、この両方とも各1冊なので、もう少しケースを増やさないとはっきりしたことは言えないでしょう。

2.本文中では、一般には3桁のアラビア数字は1文字ずつ正立です。3桁のアラビア数字を縦中横としている書籍は1冊のみです。なお、目次のページ番号は3桁のアラビア数字も常に縦中横です。

3.数字を原則漢数字としている書籍でも、アラビア数字は珍しくありません。次のような使い方があります。
・章番号、節番号とその参照
・箇条書き項目番号、文中の項目番号、およびその番号参照
・図番号、表番号の参照
・商品名、製品名などの固有名詞(艦艇名、飛行機型名など)
・フォントサイズなど(フォントサイズは漢数字の書籍も多く不統一です)
・ほかの書籍、新聞などのテキスト引用
・慣用句(A4など)
以上のケースで2桁のアラビア数字が使われる場合もすべて縦中横です。

4.括弧類や記号とアラビア数字の組み合わせ
(1)()付のアラビア数字は()を数字の上下に配置するケースが主流です。但し、()を含めて縦中横にしているケースがあります。これはU+2474(⑴)~を使っているのではないかと思います。
(2)記号とアラビア数字の2文字以上の組み合わせを縦中横にした例は少ないですが、「1′を○囲み」(合成文字)、「’04年から」(3文字)が見つかりました。

5.ラテンアルファベットは2文字が連続しても縦中横にするケースは少ないようです。
(1)大文字2文字が連続するとき、1文字ずつ正立が原則です。大文字2文字を組み合わせた縦中横は、今のところ下記の「VS」のみです。
(2)ラテンアルファベット小文字同士の組み合わせは頻度が少ないですが、次のような例があります。
・(bb) ―()は文字の上下、箇条書きの項目番号として使用。
・VS、v.s.、vs、vs. ― 「vs」は異色です。4冊の書籍で4パターンあり、うち2つは「.」と組み合わせですが、すべて縦中横になっています。
・or、if ― orの縦中横がありました。「歴史にifはない」が2つの書籍に出てきましたが、1冊は横倒し、1冊は縦中横です。
・kg、cmなどの単位-これはおそらくUnicodeに1文字で登録されている単位記号でしょう。

6.ラテンアルファベットと記号を組み合わせた縦中横はまれですが、次のようなケースがあります。
・~A(~チルダの全角形とAを組み合わせ) ― ~を否定に使用する例として
・A′(Aプライム)― このパターンは、2冊見かけました。
・i* ― 式中の項目として使用
・(a)、(b) ― これはUnicodeのU+249c~に1文字で登録されているものでしょう。そうでない場合は、()を文字の上下につけるようです。
・“a”を3文字で縦中横にしている例がありました。
・顔文字を縦中横にしている例がありました。この場合、()を含めて5文字以上になります。

7.ラテンアルファベットとアラビア数字の組み合わせは次のようになります。
(1) 一般にはラテンアルファベット1文字とアラビア数字1文字とが連続する場合1文字ずつ正立です。
・A4(用紙サイズ)、8F(フロア)、G8(主要8カ国)などは1文字ずつ正立します。
(2) G10(主要10カ国)、AKB48、BS11(放送)は、アルファベットは1文字ずつ正立ですが、数字は縦中横です。
(3) ラテンアルファベットとアラビア数字を組み合わせて縦中横にするケースは、極めてまれです。
・13冊の中でM2(通貨供給量)のみが見つかりました。

○詳細については、『FormatterClub定例会「文字組版の最先端」』で報告する予定です。

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CASオンラインショップでCAS-UBのユーザー登録することで、誰でも30日間だけ無償でご利用いただくことができます。
CAS-UB評価ライセンス

CAS-UB英語サービスを開始しました。フランクフルト・ブックフェアにて展示します。

CAS-UBは、10月5日より英語版サービス画面を、工事中から利用可能に変更しました。

1.英語版サービスでは、編集・操作などのメニュー・メッセージを英語でご利用いただくことができます。

(1)お使いのブラウザの言語設定を英語を最優先に設定すると、メニューが英語に切り替わります。
(2)すると次のログイン画面がでます。

○ログイン画面

2.ログインするにはユーザー登録が必要です。英語版のユーザー登録は日本語版と同じです。

Webページから30日間の試用ライセンスを登録していただくことができます。

試用登録のページ

3.アンテナハウスはCAS-UBを来週10日から14日開催のフランクフルト・ブックフェアに出展します。

場所はリセラーパートナーのDoctronicのブース内(Hall 4.2 F459)です。Exhibitor:「Antenna House」で検索していただいても場所が表示されます。

○Bookfairのホームページ(October 10-14)
http://www.buchmesse.de/en/fbf/

Hall Plan 全体図

Hall 4.2 F459の場所

フランクフルト・ブックフェアご参加のかたはぜひお立ち寄りください。

CAS-SUPPORTのブログ 9月分をEPUBにまとめました

CAS-SUPPORTのブログの9月分をEPUBにまとめました。

ブログをまとめるには、本当は見出しの付け直し、リンクの設定、レイアウトなどをもう少しきちんと整理しなおすべきと思いますが、やり始めるときりがありません。

ということで、整理の方があまりできていませんが、とりあえず、1パッケージにしたことに意味があると考えて公開しました。

こちらでダウンロードしていただくことができます。

CAS-UBで作成したPDFとEPUBのサンプルファイル
CAS-SUPPORTのブログ9月分