平日に買い、休日に読む? 

アマゾンの電子書店:キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)には、KDPセレクトという設定ができます。

KDPセレクトに設定すると、1冊販売する毎のロイヤリティが高くなります。それだけではなく、さらにプライム会員向けのKindle オーナー ライブラリー(KOL)に登録されます。KOLは、月に1冊本に限り自由に読むことができる本の一つになります。

KDP出版社向けのレポートには、販売部数と読んだページ数が表示されます。

1月16日に発売した『PDFインフラストラクチャ解説』ですが、発売にあたり、KDPセレクトに設定しました。

アマゾンでKDP実績レポートを見ますと、次のようになっています。

2016-01-26

先週中に、13冊販売しました。それとは別に、KOLで190頁強読んでいただきました。

面白いのは、KOLの読書が1月24日日曜日に一番多くなっています。購入いただいた方と、お読みいただいた方は同一人ではないのでしょうが集団としては、平日に購入し、休日に読む、と言えそうです。

出版における情報アークテクチャーの必要性

出版=情報を流通させるということと考えます。出版がすなわち「紙に印刷し、本や雑誌のかたちに製本による流通」を意味していた時代は終わりつつあります。

紙の本や雑誌がなくなるということを主張するつもりはないのですが、いま、情報を広く流通させようとすれば、Web技術(Webページや電子書籍)と印刷技術(PDFや紙の本)という二つの方法を、うまく使いこなす必要があります。これはほとんど説明の必要がない事実でしょう。

しかし、Web技術と印刷技術は全く異なります。この両者をうまく使いこなしている事例もありますが、まだ主流になっていません。雑誌や本の場合は、現在は、DTPで紙に印刷するためのページをつくり、そのデータを基にしてWeb版を作る、という方法が主流です。Web版はWeb制作ツールや簡単なものはブログなどで作ります。電子書籍も別の制作ツールを使うことが多いでしょう。

しかし、このような方法では、効率が悪いのは明らかです。Webと印刷の両方を簡単・効率的に使いこなせない限り、出版は生き残れないでしょう。

ではどうしたら良いでしょうか。

CAS-UBは、そのひとつの解決策を提案するために作りました。2010年から2016年までほぼ5年間かかりましたが、ひとつの成果として本をつくりました。これです。
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5年間の経験に基づいていえることは、異なる二つの技術を使いこなすためには、上流、つまり情報を作るところからきちんと考える必要がある、ということです。

情報やその作り方の仕組みを設計するところから始めなければなりません。
出版における情報の設計、すなわち情報アーキテクチヤーが必要なゆえんです。

『PDFインフラストラクチャ解説』POD版とKDP版が揃い踏みとなりました

『PDFインフラストラクチャ解説』ですが、1月21日にPOD版が発売となり、紙(POD)版+電子(KDP)版が揃いました。

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アマゾン 
POD版の紹介ページ
KDP版の紹介ページ

POD版は1月6日にストアに納品されていますので、発売まで2週間かかっています。どうやら新年営業開始直後で本が溜まっていたために遅れたようです。

KDP版は1月14日に登録したところ、15日に「お客様が提出されたKDPコンテンツを調査させていただいたところ、ウェブ上で無料公開されているコンテンツが含まれていることが判明しました。(略)」の連絡が来ました。どうやら、無料配布版(未完成版)が引っかかったようです。そこで、無料配布版を削除して、再登録し1月16日発売となりました。

このあたりのスピード感は、自動化度の度合ではないかと想像します。本をPODで作るのは完全な自動になっていない(できない)?

■PDF関連情報
流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)

アクセシビリティとは(草稿)

アクセシビリティとは
国際連合(国連)の障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)では、アクセシビリティとは障害者にとっての施設やサービスの利用しやすさのことである。日本では年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できること、すなわち情報アクセシビリティと同義に使うことが多い。さらに、情報アクセシビリティの中でも特にウェブアクセシビリティが重視されている。

障害者権利条約
国連の障害者権利条約は2006年に成立したが、日本では国会での批准を経て効力が発揮したのは、2014年2月19日である。障害者権利条約の第9条はアクセシビリティ(英文)の見出しがあり、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、①建物、道路、輸送機関その他の屋内及び屋外の施設(学校、住居、医療施設及び職場を含む。)、②情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に係るサービスを含む。)を簡単に利用できるようにすることとしている。

障害者基本法と障害者差別解消法
日本では、障害者権利条約批准のための国内法整備として、障害者基本法の改正(2011年)と障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が制定(2013年)された。日本の国内法とそれに基づく施策では、施設やサービスの利用しやすさ、あるいは障害者の社会参加の障壁の解消にバリアフリーという言葉を充てている。障害者基本計画には、情報アクセシビリティという項目がある。そこでは、「障害者が円滑に情報を取得・利用し,意思表示やコミュニケーションを行うことができるように,情報通信における情報アクセシビリティの向上,情報提供の充実,コミュニケーション支援の充実等,情報の利用におけるアクセシビリティの向上」を推進するとしている。このように、日本では情報アクセシビリティに力点をおいており、障害者権利条約と用語のずれがある。これは歴史的なものであろう。

情報アクセシビリティの向上
第三次障害者基本計画(2013年度~2017年度)で情報アクセシビリティの向上に向けて次の取り組みが行われている。
(1)情報通信における情報アクセシビリティの向上
○障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画,開発及び提供を促進する。
○日本工業規格等標準化を進めるとともに,国際規格提案を行う。また,各府省における情報通信機器等の調達は,情報アクセシビリティの観点に配慮して実施する。
○国立研究機関等において障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進する。
○障害者に対するIT相談等を実施する障害者 ITサポートセンターの設置の促進等
(2)情報提供の充実等
○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく放送事業者への制作費助成,「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により,字幕放送(CM番組を含む),解説放送,手話放送等の普及。
○聴覚障害者に対して,字幕(手話)付き映像ライブラリー等の制作及び貸出し,手話通訳者や要約筆記者の派遣,相談等を行う聴覚障害者情報提供施設の整備を促進する。
○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく助成等により,民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し,テレビや電話等の通信・放送サービスへのアクセスの改善を図る。
○電子出版は,視覚障害や学習障害等により紙の出版物の読書に困難を抱える障害者の出版物の利用の拡大に資すると期待されることから,アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに,教育における活用を図る。
○日本銀行券が,障害者等全ての人にとってより使いやすいものとなるよう,五千円券の改良,携帯電話に搭載可能な券種識別アプリの開発・提供等を実施し,券種の識別性向上を図る。
○ 心身障害者用低料第三種郵便を検討する。
(3)意思疎通支援の充実
○手話通訳者,要約筆記者,盲ろう者向け通訳・介助員等の養成研修等により人材の育成・確保を図り、また派遣,設置等による支援を行う。
○情報やコミュニケーションに関する支援機器の開発促進と,障害者に対する給付,利用の支援等を行う。
○意思疎通に困難を抱える人を支援するための絵記号等の普及及び利用の促進を図る。
(4)行政情報のバリアフリー化
○利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに,地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。
○災害発生時に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう,障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。
○政見放送への手話通訳・字幕の付与,点字又は音声による候補者情報の提供等,障害特性に応じた選挙等に関する情報の提供に努める。
○知的障害者等にも分かりやすい情報の提供に努める。

ウェブアクセシビリティ
ウェブコンテンツのアクセシビリティについては、Web技術の標準化を行なう団体であるW3C (World Wide Web Consortium) よりWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0が勧告されている。これに基づき、日本国内では「高齢者・障害者等配慮設計指針 −情報通信における機器・ソフトウェア・サービス − 第3部 ウェブコンテンツ」(JIS X 8341-3)が制定されている。WCAG 2.0/JIS X 8341-3は、HTML、CSS、PDFで作成する情報コンテンツを、アクセシブルにするために守るべき項目が提示されている。

[1] 著作権法とアクセシビリティ
[2] アクセシビリティという言葉がどのように使われているか
[3] PDFのアクセシビリティ。ワンソースマルチユースのもう一つの応用。
[4] EPUB3.0のアクセシビリティを高めるためのガイドライン

解像度とは (草稿)

最終版はこちらに公開されています:解像度とは

デジタル画像は明るさや色の情報を持った画素(ピクセルまたはドット)単位で表現する。解像度は画像をどの位まで詳細に表現できるかを表す用語であるが、いろいろな使い方がある。例えば、スキャナーやプリンターのように、アナログの紙を対象として画像を入出力する機器ではドット密度を解像度という。それに対して、デジタルカメラ、ディスプレイ、デジタル画像ファイルでは、縦×横のピクセル数を解像度という。

アナログ機器の解像度と分解能
望遠鏡では遠くの物体をどの程度まで分解して鮮明に見れるか、という意味で解像度を使い、分解能ともいう。光学式望遠鏡の解像度はレンズの口径に比例する。顕微鏡や銀塩(アナログ)カメラでも、接近した二つの点をどの程度まで区別できるかを分解能または解像度という。

スキャナーやプリンターの解像度
スキャナーやプリンターはインチ当たりの画素数(dpi、ドット・パー・インチ)で解像度を表すのが一般である。スキャナーではdpiが大きいほど詳細に読み取ることができ、プリンターではdpiが大きいほど印字精度が高くなる。スキャナーやプリンターは紙という寸法をもつアナログ媒体を対象にしているため、解像度を望遠鏡や顕微鏡と同じような意味合いで使うのだろう。

デジタルカメラやスマホの解像度
デジタルカメラやスマホは撮像素子(CCDやCMOSなど)の総画素数(縦方向の画素数×横方向の画素数)を解像度という。これらの機器では、レンズなどの光学系や受光してから記録するまでの画像処理によって、分解能に相当する解像度は大幅に異なる。

ディスプレイの解像度
スマホやタブレットを始め、電子書籍端末、パソコンなどのディスプレイは、画面の物理的なピクセル数(縦ピクセル数×横ピクセル数)を画面解像度という。また、画面のインチあたりピクセル数(ppi、ピクセル・パー・インチ)を解像度ということもあるが、ppiは画素密度という方が分かりやすいだろう。

デジタル画像ファイル
スマホで撮影したデジタル画像はJPEGで保存されることが多い。また、デジタル画像の形式としてはPNGやGIFなども普及している。これらのデジタル画像は、横ピクセル数×縦ピクセル数が画像のサイズであり、これを画像解像度という。また、JEPG画像には、画素密度(ppi)を指定できるが、これを解像度ということもある。画素密度は指定されていない画像も多く、アプリケーションがppiを常に参照するとは限らない。ブラウザは画像ファイルのppi値を参照しないようだ。

画像の表示におけるサイズ
デジタル画像はプリンターに出力したり、ディスプレイに表示するときに物理的なサイズが決まる。例えば、横600ピクセル×縦1200ピクセルの画像を600dpiのプリンターに出力すれば、横1インチ(2.54cm)×縦2インチ(5.08cm)の大きさとなる。また、400ppiのタブレットに表示すれば、横1.25インチ(3.17cm)×縦3インチ(7.62cm)のサイズとなる。しかし、スタイルシートなどで版面や表示領域の幅に対して画像の占める幅の比率を指定することも多い。このとき、画像は指定領域にフィットするように拡大・縮小される。

肉眼でみる画像の解像度
画像をプリンタやディスプレイに表示するとき、肉眼の解像度よりもはるかに低い場合は、画像がぼけて見える。逆に、肉眼の解像度よりもはるかに高い解像度で表示しても、肉眼で識別できないので無駄である。従って、肉眼の解像度よりも少し高い解像度で表示するのが効率的である。

肉眼の解像度は視力で表す。視力1.5の場合、5mの距離でランドル氏環というC字型の指標の1mmの幅を識別できる。実際に実験すると明視距離(25cm)では約360dpiまで識別できるそうである。従って、印刷や表示時の画像解像度は360dpiよりも多少大きいのが適切となる。

最新のスマホのディスプレイは400ppiに達している。例えばiPhone6Plusは401ppiである。iPhone6Plusの画面解像度は1,920 x 1,080ピクセルなので、フルスクリーンの画像ファイルであれば1,920 x 1,080ピクセル程度のサイズで作成し、拡大・縮小なしで表示すると効率的だろう。

近日発売!『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念 特別講演会のお知らせ

アンテナハウス株式会社(本社:東京都中央区、資本金:4,000万円、社長:小林 徳滋)は、2016年2月16日16時から、東京市ヶ谷にて『PDFインフラストラクチャ解説』出版を記念した記念講演会を開催いたします。

『PDFインフラストラクチャ解説』は紙に代わって情報化社会を支えるインフラとなったPDFについて、システム開発者などの理解を促進することを目的としています。アンテナハウスのブログで2005年10月から2008年7月にかけて1000日間にわたって連載された「PDF 千夜一夜」の記事に、オリジナルの内容を加えてPDFや関連領域を網羅的にカバーしています。10年以上の歳月にわたって制作され、2016年1月に出版の予定です。

記念講演会では、本書編著者の小林 徳滋より書籍Web制作サービスCAS-UBを使ってPDFを制作し、ブックオンデマンドで本を作り、またAmazonのKindleストアなどで販売するに至った過程と、新しい出版の方法を分かりやすく解説します。

さらに、メインゲストとして、PDFの国際規格ISO32000やPDF/Xなどの派生規格の作成に参加されている画像電子学会フェローの松木眞氏をお招きして、PDFのこれからについてご講演いただきます。

講演会の後、懇親会の開催も予定しています。(詳細は、別途ご案内します)

本講演会は無事終了しました(2016・3・18追記)。
講演会の内容スライド&ビデオ:『PDFインフラストラクチャ解説』 出版記念特別講演会の資料公開 (2016年2月16日 in 市ヶ谷健保会館)

セミナーの概要・タイムテーブル

16:00~16:10 主催者挨拶
16:10~17:00 だれでも本を出版できるPOD出版時代を迎えて
『PDFインフラストラクチャ解説』の制作過程
アンテナハウス代表取締役社長/小林 徳滋
17:00~18:00 ISO32000: PDFの国際規格の現状とこれから(仮題)
画像電子学会フェロー/松木 眞 氏
18:00~18:10 参加者質疑応答
休憩
18:30~20:30 記念懇親会

開催概要・お申し込み

開催日時 2016年2月16日(水)16時00分~18時10分
開催場所 市ヶ谷健保会館 E会議室
住所・アクセス 東京都新宿区市谷仲之町4-39
都営新宿線曙橋駅下車徒歩8分
都営大江戸線牛込柳町駅下車徒歩8分
参加費 講演会のみ:1,000円(税込)
懇親会は講演会にお申込みいただいた方に、別途ご案内致します。
定員 30名(事前予約制)
お申し込み 次のページからお申し込みをお願いします:
http://peatix.com/event/138690

■PDF参考情報
流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)