出版学会ワークショップ「いま、著作物再販問題を考える」を拝聴して

昨日、5月14日は日本出版学会の2016年度総会・春季研究発表会が東京経済大学(国分寺キャンパス)で開催されました。

いろいろ興味深い発表がありましたが、個人的に一番面白かったのが、「いま、再販問題を考える」というワークショップです(いままであまり関心をもっていなかったので新鮮な印象を受けたこともありますが)。

司会の清田次郎氏の説明も理解しやすかったですが、問題提起者の高須次郎氏が用意してくださったペーパーで事態の推移が良く分かりました。

戦後の出版流通制度が、制度疲労を起こしているとはよく耳にすることです。その二つの要素が委託販売と再販制にありそうなことは、うすうすと分っていました。この二つは車の両輪に近いかもしれません。委託販売であっても、一定の範囲内で、書店に消費者向けの価格変更を認めることで、ある程度両輪を別々に回すことができるでしょうけど。既に入札などでは価格を変更しても良いらしいです。弊社でも、バルクで購入するときは一部の版元には交渉して値引きしてもらったり、書店で値引きしてもらうこともあります。

以下は、当日配布された高須氏のペーパーの要約です。

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再販売制の見直しは、1980年に現行制度(定価制、自由価格制、時限再販制)になり、その後1996年に米国政府の申し入れで見直ししようとしたが、反対も多く、1998年に結論を3年先送りしました。その後。2001年に法改正による再販制度の廃止を行わないという公取の結論がでました。2010年には公取側から再販制を廃止する考えはないこと、電子書籍が非再販商品とすることが明らかになりました。

一方で、公取などの見解では、ポイントサービスのポイント還元は、景品ではなく、値引きであるとされています。

一般の書店でのポイントサービスは1%に達しないものですが、アマゾンが10%のポイント(student)を始めました。アマゾンの10%ポイント還元が広まれば、一般の書店はつぶれてしまう、という危機感がかなり共有されているようですが、実際は、一部の版元(有志3社)がアマゾンに対する出荷停止をしているのみだそうです。
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書籍の流通にかぎらず、価格は販売におけるもっとも重要なファクターですので、再販制で価格を固定してしまうのは、出版社自ら販売努力の一部放棄ではないかとも思うのです。しかし、アマゾンの場合は、そう簡単ではないと思います。

そういえば、アマゾンは、現在POD(プリントオンデマンド)本の40%オフキャンぺーンを行っています。『PDFインフラストラクチャ解説』も定価2,678円(税込)のところ、なんと40%オフの1,607円(税込)で販売されています。40%オフとなりますと、10%どころの騒ぎではないのですが。