『鈴木 成一 装丁を語る』(鈴木 成一著、イーストプレス、2010年)
四六判、242頁、2,000円+税
25年間、本の装幀を中心に仕事をしているという鈴木成一さんが自分が手掛けた作品の中から120点ほどを選んで演出の意図を解説した本。
装幀の手法別に表紙の画像と解説文、データを整理している。
構成は次のとおり。
①タイトル文字で伝える
②イラストを使う
③読後の印象から発想する
④本の構造を利用する
⑤著者本人、または関係する品を出す
⑥本文中の素材で構成する
⑦モチーフを形にする
⑧アート作品を併せる
⑨あえて何も使用しない
それぞれに演出の工夫が興味深い解説として語られている。本は極端に多品種少量生産なので、その個性を見出して装幀するわけだが、そこにいろいろな工夫・苦心がある。
鈴木さんのお客さんは第一に編集者なので、編集者の期待に応えるということが一番だそうだが、この言葉は、装幀の本義というよりも、商売を長く続ける秘訣だろう。
では装幀の本義はなんだろうか? 「読者や編集者を驚かせる」(p.4)という言葉も出てくるが、最後に装幀とは「本の個性をいかに表現してあげるか」(p.236)ということとまとめている。
〇感想
鷲尾さんの本[1]には、「本にも衣装」という節があり。装幀は日本独特の本の装い、旅立ちを願う気持ちが込められていると言っている。実に日本的である。いま、装幀はほとんどジャケットを作る仕事になっているように見える。ジャケット以外の装幀もありうるとは思うが。そういえば、昔は本は箱に入っていたが、最近の本で箱に入っているものは珍しい。
今のジャケットは流通形態で本を売るという立場からのもので、流通のしくみと密接に関係していると思う。その目的は主に書店の店頭で本に自己主張させることにあるだろう。プリントオンデマンドで本を作るようになると、ジャケットはどうなるのだろうか? 読者個人としてはジャケットは不要な気もする。いずれ別の装幀が生まれるかもしれない。
[1] 『編集とはどのような仕事なのか』