マークアップとは(草稿)

JEPAの「いまさら聞けない電子書籍のABC ~ebookpedia~」の下書きです。最終版は、JEPAのページをご参照ください。

マークアップ
マークアップとはコンテンツに対して指示マークをつけることである。マークアップの目的はさまざまである。ここでは編集者によるエディトリアル・マークアップ、コンテンツをブラウザで表示するためのHTML(Hyper Text Markup Language)タグによるマークアップ、テキストに簡単な記号でマークアップしてHTMLタグに変換する軽量マークアップ言語を取り上げる。

エディトリアル・マークアップ
編集者が、著者の原稿に、テキストを再入力するための指示、組版作業者に対する指示を記入することをエディトリアル・マークアップという。テキストの挿入、削除、置き換え、入れ替え、終了、分離、句読点の変更、ダッシュとハイフン、大文字化、小文字化、イタリックとボールド、段落のインデント、フラッシュ・ライト/レフト、縦方向の空きなどの指示をプリントされた原稿に記入する。また、見出しを階層化して構造をはっきりさせ、テキストの表示方法を区別する要素―引用、箇条書き、テキストボックス―をマークアップする。指示の仕方には、丸で囲む方法、アンダーラインやキャレットなどの記号を使う方法、例えば章のタイトルを<ct>のようなコードを用いて表現する方法がある。レイアウトに関わるコードに対しては、デザイナーが、別途、レイアウト指示を追加することもある。こうしたマークアップやコード化は分業で仕事をするための便宜的なものであり、一緒に仕事をする編集者、デザイナー、組版制作者の間で合意があれば、その具体的な方法は自由である。

ブラウザでコンテンツを表示するマークアップ
1990年代半ばに登場したWebブラウザは、インターネット上のサーバーに蓄積されたコンテンツを、端末のブラウザで可視化する。インターネットのコンテンツは、HTMLタグでマークアップされている。初期にはHTMLタグでコンテンツのレイアウトも指示したが、だんだんHTMLタグとレイアウトを分離するようになった。現在では、HTMLタグは主に文脈を指定し、レイアウトはCSSで指定する。ブラウザはコンテンツに付与されたHTMLタグとCSSによるレイアウト指定を解釈してコンテンツを可視化する。

HTMLのマークアップ作業
最新のHTML5では、100個以上のタグが規定されている。例えば、文章の大きな区切りをsectionタグで、見出しはh1~h6のランクタグで指定する。タグが複雑なことから、Webページを適切にマークアップするには、HTML専用のオーサリングツールを用いることが多い。しかし、HTMLタグの知識が十分あれば、テキスト編集ソフトを使って手作業でマークアップもできる。

マークアップと可視化の分離
マークアップはコンテンツの文脈やレイアウトを、コンテンツとは別のタグなどにより指定する考え方である。コンテンツに指示をするマークアップ工程と、マークアップされたタグに基づいてコンテンツを組版・可視化する工程が分離している。エディトリアル・マークアップにしても、HTMLタグのマークアップにしてもマークアップ作業と可視化処理は分離している。

コンテンツとレイアウトが渾然一体のWYSIWYG方式
コンテンツの制作では1980年代半ばからWYSIWYG方式(What You See Is What You Get)がマークアップ方式よりも優勢である。WYWIWYGとは画面上で表示されているレイアウトと出力レイアウトが同一という意味である。WYWIWYG方式のワープロやDTPでは、画面上にレイアウトされた状態のテキストを対話的に編集する。コンテンツとレイアウトが渾然一体の状態で編集作業が行われ、レイアウトを整えるためにコンテンツの文脈が無視されがちである。WYSIWYGによる制作作業と、マークアップ作業とはコンテンツ制作に関して、考え方が対立している。

軽量マークアップ言語
プログラムのマニュアルなどをHTMLで作成する開発者は、HTMLオーサリング・ルーツを使わずテキスト・エディタで記述することを好む。しかし、テキスト・エディタでHTMLタグを直接マークアップするのは作業負荷が大きい。そこで、原稿テキストに簡単な記号でマークアップし、プログラムを使ってHTMLタグに変換する方法に人気がある。またWikiでは、ブラウザのフォームで、テキスト入力時に簡単な記号でマークアップし、内蔵のプログラムでHTMLに変換して表示する仕組みが採用されている。こうした方式を軽量マークアップ言語(または、簡易マークアップ言語)という。その代表例としてはMarkdownとMediaWikiを代表とするWiki記法がある。軽量マークアップ言語によるマークアップの利用者は開発者が中心で、WYSIWYGになれた一般ユーザーにはあまり普及していない。

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