英国物理学会出版局(IOP Publishing)は、2013年10月のフランクフルト・ブックフェアでIOP ebooks計画に基づく本の配信を開始した。昨年のブックフェアにおいて、eブック分野の先駆的な出版社であるMorgan & Claypoolとの提携を発表し、その後1年かけて実際の出版計画を作り、本を制作した。
IOP ebooks計画は、eブックを主たる形式としてボーンデジタル方式による出版の可能性を追求する。主な特徴としては、
1)本とジャーナルの記事はIOPサイエンスと呼ぶ一箇所にまとめる。
2)本は章毎に分けて、HTML, PDFとEPUBの形式で出版する。
3)最終の原稿を入手してから4ヶ月で発行する。
4)本の章にはマルチメディアコンテンツを統合できる。
5)電子的な配信を念頭に置き、DRMフリーで配信する。
IOP ebookはExpanding PhysicsとConcise Physicsという2種類のシリーズからなる。Expanding Physicsは先駆的な研究者による、物理学と関係する領域に関する高度な教科書のシリーズ。Concise Physicsは、急速に進化する領域か、または入門的な教科書に焦点をあてた簡潔な本のシリーズ。
現在(10月10日の時点)で発行済みの書籍は、““Semiconductors”と“Renewables”の2冊である。
この2冊の本は無料で配布している。IOP ebooksサイトよりWeb(HTML)、PDF、EPUBの形式ですべてをダウンロードすることができる。“Semiconductors”には数式が大量に使われている。EPUB版の中を確認すると数式はMathMLで表している。そしてMathJaxのJavaScriptをEPUBの中にMathJaxのプログラムを同梱している。JavaScriptを表示できるEPUBリーダーであれば数式を正しく表示できることになる。
eBookを新しく作って無料配布ではビジネスにならないだろうと思い、ブースにいた営業担当の人に聞いたところ、無償にするのはこの2タイトルだけとのこと。
2014年の発刊計画が公開されているが、それを見ると、Expanding Physicsが8タイトル、Concise Physicsが15タイトルの合計23タイトルになっている。このコレクションを、図書館や教育機関などの組織に対してまとめ売りをするとのこと。個人で買う人はあまり想定していないようだ。2014年コレクションのまとめ売り価格は3,337スターリング・ポンドで、コレクションを購入すると永久のアクセス権が付与される。
2015年の発刊計画は合計50タイトルで、2015年の価格は未定だそうです。
営業のことを考えると1タイトル単位で販売するよりも、コレクションとして販売するほうがやり易いと思いますが、果たして成功するかどうか?
ここフランクフルトブックフェアの会場では、デジタル時代に関わらず、紙の本を大量に陳列しているブースが多いが、IOPのブースは、紙の本は一切なく、期間中来場者にアルコールを振舞っていたのに注目した。