昨日の「WebKitの数式(MathML)でSafariはボランティアの努力を採用し、数式を表示できる。Chromeは同じものを不採用として批判を浴びる。」の最後で、「WebKitもGeckoもMathMLレンダリングエンジンの開発は、ボランティア任せで専任の担当者はチェックしかしていないようです。」と書きましたが、その点についてもう少し掘り下げてみます。
WebKitのMathML関係のバグは、2013年4年1日~2014年3月8日までに、解決済みとなったものが52個あります。そのうち重複(DUPLICATE)が6件、終了(FIXED)が、46件となっています[1]。バグの内容を詳しく確認してないのですが、着実に進んでいるといえます。
FIXED46件の中では、fred.wang@free.frにアサインが22件、*@appleにアサインが14件、その他10件となっています。
WebKitについてはこの1年弱で、MathMLバグの大半がFrédéric Wang氏により、残りの多くをアップルの関係者が解決しているとみて良いでしょう。
Mozillaの方も同様で、同じ期間にFIXEDになったバグ40件の中で17件がFrédéric Wang氏によるものです。
Frédéric Wang氏のブログ[2]を見ますと、この人はフランス人のエンジニアで、現在、アメリカ数学会(American Mathematical Society)のMathJaxプロジェクトの外部契約エンジニアとしてMathJaxの改良に携わっているとあります。
Frédéric Wang氏はWebKitとGeckoのMathMLレンダリングの改良にもっと時間を割くため、2013年の11月19日からクラウドファンディングを利用して資金を集めました[3]。募集期間は終了していますが、3ヶ月程度はフルタイムで働く資金が集まったようです。
ボランティアの手によって、WebKitとGeckoという二つのレンダリングエンジンではMathMLの改良が少しずつ進んでいます。これから、バグ修正したレンダリングエンジンが、SafariやFireFoxに反映されるのが楽しみです。
Microsoft、Google、Appleという巨大な企業が、MathMLにあまり関心を持たずにボランティアが草の根的に改良しているという現状は、TeXにも似ているような気がします。それにしても、科学の根源である数学に対して、大ブラウザベンダーがあまりにも冷淡な・・・
[1] WebKit Bugzillaを、bug_status=RESOLVED、resolution=FIXED&resolution=DUPLICATE、chfieldfrom=2013-04-01&chfieldto=2014-03-08で検索した結果。
[2] Blog de Frédéric:About Me
[3] Funding MathML Developments in Gecko and WebKit (part 2)