なぜ、「英数字正立論」が必要なのか?

昨日、「縦組みにおける英数字正立論」第0.40版を公開して、久しぶりにfacebookで紹介したところ、「著者、出版社にとって具体的にどのようなメリット、デメリットがあるか」を説明して欲しいというコメントがありました。

「縦組みにおける英数字正立論」はこちらから配布しています。→CAS-UBで制作した無償配布の出版物

考えて見ますと、「縦組みにおける英数字正立論」はMVOとの対比のことを強調しすぎていて、一般の方にはわかり難くなっているようです。そこで、次に「縦組みにおける英数字正立論」の必要性を少し説明します。

現在、日本語テキスト中のラテンアルファベットとアラビア数字(まとめて英数字と言います)を縦組みで表示するとリーダーによって文字の向きがばらばらになります。これを典型的に示しているのは次の二つの画像です。

●例1:青空文庫のさまざまなリーダによるラテンアルファベット混じりテキストの表示([*1])

●例2:青空文庫のさまざまなリーダによるアラビア数字混じりテキストの表示([*2])

上の2つの画像で見るとおり、日本語のテキストを縦組みで表示したとき英数字の方向はばらばらです。このようになってしまうのは、テキスト(この場合、英数字)を画面に表示するときの方向についての標準的な仕様が存在しないためです。従って、青空文庫のリーダの表示はどれも間違いとは言えません。

一方、市販の新聞や書籍では英数字の方向は概ねきちんと統一されています。
詳細に見ますと、新聞と書籍は異なります。また書籍には、伝統方式と現代方式があることは、「縦組みにおける英数字正立論」に書きました。但し、書籍により、iPhone、Twitterとか、CSN&Yのような文字列は立てたり寝かしたりと方向がばらばらです。さらに、1冊の書籍でも統一されていないこともあります。ですから、あくまで概ね統一ということですが。

では、上に述べた、青空文庫と市販書籍の落差がなぜ生じるのでしょうか?

それは、市販の書籍は編集者・制作者が介在して文字の方向を整理しているからです。また、制作者はDTPソフトを使って簡単に文字の画面上の向き(字形)を変更できます。そして出来上がった版面をPDF化すると、PDFは紙と同じで2次元座標がきちんと指定されますので、文字の方向が変わることはありません。つまり、印刷物では制作者に文字の方向決定が委ねられており、制作者の熟練によって文字の方向が統一されているのです。

現在、Webの縦書きの標準化が進んでいます。この先、数年で縦書きの標準化が完成し、Webブラウザで縦組みが自由にできるようになります。いままではWebやブログでは縦書きが少なかったのですが、今後は、Web、ブログで縦書きが増えると予想されます。

Web、ブログ、EPUB(Webと同じ方法)、ではテキスト文字列を配布します。テキスト文字列は文字コードで表したもの(符号化文字と言います)なのですが、符号化文字の仕様(JIS、Unicode)には英数字の方向については規定がありません[*3]。そこで何も指定しないときWebなどの縦組み表示は例1のようにばらばらになるでしょう。

そこで文字の向きに関して、何らかの標準が必要なことがわかります。この標準を決めようというのが、UnicodeのUTR#50という仕様案です。UTR#50では、MVO方式とSVO方式の二つの方式案があります。

現在、MVO方式が優勢ですが、MVO方式の中では文字毎に方向を決めようとしているため、意見が割れていてなかなか妥協点に達しません。

SVO方式は少数派でしたが、最近、だんだんと賛同者が増えてきているようです。

私の意見は、SVOをベースにするほうが良いということであり、「縦組みにおける英数字正立論」はそれを日本語組版の仕様や実際の書籍を調査して証明しようとしているものです。なぜSVOの方が優れているかは、本論を読んでいただきたいのですが。

[*1]原典は、twitter @POKEPEEK2011氏によるもので次に公開されています。
https://twitter.com/#!/POKEPEEK2011/media/slideshow?url=http%3A%2F%2Ftwitpic.com%2Fa180ys

[*2]原典は、twitter @POKEPEEK2011氏によるもので次に公開されています。
https://twitter.com/#!/POKEPEEK2011/media/slideshow?url=http%3A%2F%2Ftwitpic.com%2F9yvsif

[*3]JIS X0213では括弧類などについて縦書き字形が提示されています。しかし、英数字の縦書き字形というものはありません。UnicodeのEast Asian Width(EAW)という参考資料には英数字の方向について説明があります。但し、EAWは参考資料であり、また、内容的に不適切な説明が多いと思います。詳細はUAX#11 East Asian Width の紹介

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