縦組みにおける記号の扱い―JIS X4051を検討して見えるもの

「英数字正立論」[1]は現在0.5版ですが、現時点で欠けているのが記号類の扱いです。

これまでで、英数字についての考え方は大体整理できましたので、現在は記号類に取り組んでいます。最初に、記号類についての基本的な考え方を整理しなければなりません。そのため日本語組版に関するJIS規格であるJIS X4051を見てみましょう。

1. 組版上特殊な役割をもつ記号

JIS X 4051では文字をクラス[2]に分けており、記号類の多くは一般の和字(文字クラス表では(1)~(12)以外の和字)または欧字に含まれています。しかし、記号類は文章を区切ったり、あるいは単位として扱うため特殊な役割を負っており、特別文字クラスに分類されているものが多数あります。特別な文字クラスの大半は記号類です。

各クラスに分類されている文字(記号以外には小書きのカタカナなどを含む)は横書きのときの文字種を基準にして、縦書きで異なるものを付属書1の別表2~13に記載しています。別表の文字について縦書きと横書きでの相違・類似は表の通りで次のように整理できます。

1) 横書きと縦書きで字形が異なるもの:87文字
うち、①回転するもの41文字、②回転以外46文字。但し回転以外のうち41文字はこがきのかなとカタカナです。
2) 横書き専用:9文字
3) 縦書き専用:4文字

文字クラス 付属書1 文字数 横書きと縦書きで字形を変える 横書き専用 縦書き専用 縦横同形
小計 回転する 回転以外
(1) 始め括弧類 表2 16 15 14 1 1 0 0
(2) 終わり括弧類 表3 18 16 14 2 2 0 0
(3) 行頭禁則文字 表4 47 41 0 41 0 1 5
(4) ハイフン類 表5 4 3 2 1 1 0 0
(5) 区切り約物 表6 6 0 0 0 0 0 6
(6) 中点類 表7 3 2 2 0 1 0 0
(7) 句点類 表8 2 1 0 1 1 0 0
(8) 分離禁止文字 表9 6 3 3 0 0 3 0
(9) 前置省略記号 表10 6 0 0 0 0 0 6
(10) 後置省略記号 表11 9 0 0 0 3 0 6
(20) 割注始め括弧類 表12 3 3 3 0 0 0 0
(21) 割注終わり括弧類 表13 3 3 3 0 0 0 0
合計 123 87 41 46 9 4 23

2. 一般の文字

一般の和字と欧文用欧字の中にも記号類が多数ありますが、JIS X4051には横書きと縦書きの字形の相違の記載がありません。これについてはJIS X0213 の付属書4に記載がありますが、縦書きと横書きで字形が異なる例として掲載されているのは、全角ミリ(U+3349:㍉)などの16文字のみです[3]。これは一般の和字に分類されます。

欧文用文字には、コンマ、ピリオド、コロン、セミコロンなど欧文組版で使う記号類も分類されています。またアラビア数字も欧文用文字の中に含まれます。こうしてみますと、欧文用空白(20)と欧文用文字(21)だけを使って欧文組版が実現できますので、JIS X4051では欧文の世界を、別世界と考えていることになります。

3.まとめ

(1) JIS X4051では和文と欧文を分類しており、和文の中で特別な役目をもつ記号類などをクラスにまとめています。 特別な役目をもつ記号で縦書きと横書きで字形が異なるものは87文字です。

(2) 欧文用の記号類だけでなくアラビア数字も欧文用文字に分類しています。欧文用文字に分類されている文字種はそれだけで欧文組版ができます。欧文には縦組みという概念はないので縦組みと横組みで方向や形が変わるのは、和字の記号だけと考えるのが良いようです。

[1] 「英数字正立論」
[2] JIS x4051のクラスに属する文字は既定値であり、システムで追加できる。
[3] Unicodeにはこの種の文字がもっと沢山規定されていますが、JIS X0213では数が少ない。

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