縦組みリフロー書籍のKindle PaperwhiteとiPad版での見え方の相違(メモ)

CA-UBで制作した縦組み書籍(mobi形式)がAmazon Kindle ストアで発売されました。

「転職の法律があなたを守る ―転職の法律36か条―」(Amazon Kindle版)(360円)

そこで、早速、自分で購入して、Paperwhite(以下、Kindle PW版)と、iOS版のKindleアプリ(Kindle for iPad V3.4 [2]。以下、Kindle iOS版)で見え方を比較してみました。Kindle PW版は縦組みリーダとして安定しています。一方、Kindle iOS版は不具合があり、電子書籍のリーダとしてまだ不安定という印象があります。こういった問題はいずれ解決されるでしょうから、あまり気にしなくても良いとは思いますが。

1.Kindle iOS版での縦組み

Mobi形式の電子書籍を、Send-to-KindleやUSB経由でコピーした電子書籍はKindle iOS版では縦組みになりません。しかし、AmazonのKindle Storeから正規に購入した本は問題なく縦組みになります。

2.目次

本書では、HTML目次をSpineの先頭に登録するとともにGuideに登録し、また別途EPUB版NCX目次を設定しています。[1]

(1) Kindle PW版でのナビゲーションは、HTML目次と移動メニューになります。移動メニューは次のように表示されます。

(2) Kindle iOS版では、HTML目次は表示されますが、NCXは表示されません。「移動」メニューには、HTML目次へのリンクが設定されています。

ちなみに Kindle iOS版では、HTML目次はつぎのように表示されます。

3.文字の位置

Kindle iOS版では文字種によって、行の中央に配置されない文字があります。本書で出てくる文字種はかなり少ないのですが、次のような文字に問題があります。

①丸付き数字

丸付き数字が行の右側に寄って、行間が広がっています。Kindle PW版は問題ありません。

②丸記号

丸記号(○)が行の右側に寄って、行間が広がっています。Kindle PW版は問題ありません。

③三点リーダ

三点リーダが行の左側に寄っています。Kindle PW版は中央になり、問題ありません。

4.縦中横について

索引語が2箇所以上出てくるときアラビア数字で順番を設定しています。このアラビア数字を正立させるため縦中横を指定しています。この縦中横指定した数字の表示が、Kindle PW版では正しいですが、Kindle iOS版は文字が小さく、しかも右によっています。次の図では(1)、(2)の中の1、2に縦中横を指定しています。

○マークアップ
<a href="0032.html#_30032_2e_2e1">(<span class="tcy">2</span>)</a>

○CSS
span.tcy {
-webkit-text-combine: horizontal;
-epub-text-combine: horizontal;
-moz-text-combine: horizontal;
-ms-text-combine: horizontal;
-o-text-combine: horizontal;
text-combine: horizontal;

}

(1)Kindle PW版

(2)Kindle iOS版

5.CSSのレイアウト

(1)Kindle iOS版では行の左右の空きがなくなるケースがあります。これはスクロールの仕方によっては右側の空きが現れるケースもあり、やや不安定です。

上のように行の右空きがなくなりますが、同一の箇所が、スクロールの仕方によって下のように表示されることがあります。

Kindle PW版は常に次の図のようになります。PW版は安定しています。

(2)同じような例ですが、次のようなケースもあります。マークアップやスタイルシートの指定は同じなので、不安定という印象を持ちます。

Kindle iOS版で角丸め・右空きがなくなるケース、同表示されるケース

Kindle PW版は常に次の図のようになります。

[1] Kindle mobi形式サンプルとKindle 専用のEPUBと一般のEPUBの相違点(リフロー型の場合)
[2] iPadはiOS6.0.1です。

縦組み書籍における縦中横の使い方(調査報告)

これまで縦組み書籍の英数字、記号類の方向について調べて本ブログで紹介してきました。前月末から、少し焦点を移して、主に縦中横の使い方を中心に調べています。

縦中横とは、縦組みの行幅に2文字ないし数文字を横組みで収める方式です。最も多いのはアラビア数字2桁の組み合わせです。伝統的な書籍では数字はほとんど漢数字でしたが、最近の縦組みの書籍では、数値や年号に原則として漢数字を使う場合でも、各種の番号にはアラビア数字を使うことが多いので、縦中横の頻度が非常に多くなっています。

いままでに調べた書籍は13冊で総ページ数は3000ページ強になります。中間報告として、いままでにわかったことを簡単に整理してみます。13冊の中で、数字を原則として漢数字としている書籍が9冊、原則アラビア数字が4冊です。すべての書籍が縦中横を使用しており、縦中横が出現しない本はありませんでした。

1.2桁のアラビア数字はほとんどすべて縦中横になります。但し次の例外があります。

(1)数値の小数部は1文字ずつ正立します。たとえば、1ドル=76.25円を縦組みにするとき、「76」は縦中横ですが、「25」は1文字ずつ正立です。数値の少数部が2桁の例は2冊ありましたが、いずれも、1文字ずつ正立させています。この場合、縦中横の整数部は数値の位取り表記といえます。縦中横は数値の位取り表記と解釈できるのでしょうか?なお縦組みでは、「.」は「・」になります。

(2)日付で3.11を縦組みにするとき、「11」を縦中横にしているケースが(1冊)ありました。ところが、2.26事件の26を1文字ずつ正立しているケースも(1冊)あります。おそらく11を「ジュウイチ」と読むときは縦中横、2.26を「ニイテンニイロク」と読むとき1文字ずつ正立と予想しますが、この両方とも各1冊なので、もう少しケースを増やさないとはっきりしたことは言えないでしょう。

2.本文中では、一般には3桁のアラビア数字は1文字ずつ正立です。3桁のアラビア数字を縦中横としている書籍は1冊のみです。なお、目次のページ番号は3桁のアラビア数字も常に縦中横です。

3.数字を原則漢数字としている書籍でも、アラビア数字は珍しくありません。次のような使い方があります。
・章番号、節番号とその参照
・箇条書き項目番号、文中の項目番号、およびその番号参照
・図番号、表番号の参照
・商品名、製品名などの固有名詞(艦艇名、飛行機型名など)
・フォントサイズなど(フォントサイズは漢数字の書籍も多く不統一です)
・ほかの書籍、新聞などのテキスト引用
・慣用句(A4など)
以上のケースで2桁のアラビア数字が使われる場合もすべて縦中横です。

4.括弧類や記号とアラビア数字の組み合わせ
(1)()付のアラビア数字は()を数字の上下に配置するケースが主流です。但し、()を含めて縦中横にしているケースがあります。これはU+2474(⑴)~を使っているのではないかと思います。
(2)記号とアラビア数字の2文字以上の組み合わせを縦中横にした例は少ないですが、「1′を○囲み」(合成文字)、「’04年から」(3文字)が見つかりました。

5.ラテンアルファベットは2文字が連続しても縦中横にするケースは少ないようです。
(1)大文字2文字が連続するとき、1文字ずつ正立が原則です。大文字2文字を組み合わせた縦中横は、今のところ下記の「VS」のみです。
(2)ラテンアルファベット小文字同士の組み合わせは頻度が少ないですが、次のような例があります。
・(bb) ―()は文字の上下、箇条書きの項目番号として使用。
・VS、v.s.、vs、vs. ― 「vs」は異色です。4冊の書籍で4パターンあり、うち2つは「.」と組み合わせですが、すべて縦中横になっています。
・or、if ― orの縦中横がありました。「歴史にifはない」が2つの書籍に出てきましたが、1冊は横倒し、1冊は縦中横です。
・kg、cmなどの単位-これはおそらくUnicodeに1文字で登録されている単位記号でしょう。

6.ラテンアルファベットと記号を組み合わせた縦中横はまれですが、次のようなケースがあります。
・~A(~チルダの全角形とAを組み合わせ) ― ~を否定に使用する例として
・A′(Aプライム)― このパターンは、2冊見かけました。
・i* ― 式中の項目として使用
・(a)、(b) ― これはUnicodeのU+249c~に1文字で登録されているものでしょう。そうでない場合は、()を文字の上下につけるようです。
・“a”を3文字で縦中横にしている例がありました。
・顔文字を縦中横にしている例がありました。この場合、()を含めて5文字以上になります。

7.ラテンアルファベットとアラビア数字の組み合わせは次のようになります。
(1) 一般にはラテンアルファベット1文字とアラビア数字1文字とが連続する場合1文字ずつ正立です。
・A4(用紙サイズ)、8F(フロア)、G8(主要8カ国)などは1文字ずつ正立します。
(2) G10(主要10カ国)、AKB48、BS11(放送)は、アルファベットは1文字ずつ正立ですが、数字は縦中横です。
(3) ラテンアルファベットとアラビア数字を組み合わせて縦中横にするケースは、極めてまれです。
・13冊の中でM2(通貨供給量)のみが見つかりました。

○詳細については、『FormatterClub定例会「文字組版の最先端」』で報告する予定です。

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