『出版社社長兼編集者兼作家の購書術 本には買い方があった!』(中川右介著、小学館新書、2015年2月発行)
新書判、208頁、720円+税
いまは、「本は本屋で売っている」ことを知らない人が多い(はじめに)という衝撃的な文章を読み、本当なんだろうか? と早速購入した。
本を買うための指南書というふれこみであるが、読んでみると、書かれている内容は業界人から見た書籍の流通に関する説明の量が多い、と感じる。
著者が、出版社の経営者であり、また編集者でもあるので当たり前ではあるが、しかし、タイトルと内容にずれがあるのではないだろうか。その分、中途半端なのが惜しまれる。
実際のところ、解説の内容は出版社側の観点からの、次のような話が多い。
・本の初版印刷部数について。新書・文庫は最初にする部数は1万部前後がほとんど。単行本は四六判が最も多く、定価2000円以下で大手の版元だと5000部~1万部が一般的。中小・零細版元の本は3000部が上限。版元の規模と最初の刷り部数は比例する。大手版元はコストが大きいので5000部でないと会社がやっていけないのがその理由である。(p.31)大手では分業体制になっているのでコストが大きくなるとのことだ。
・発売直後の売れ行きを初速という。売れた本か、売れなかった本かは発売直後の数週刊で決まってしまう。(p.47)
・本の値段の決め方は、内容ではなくて製造原価が大きな要因になっている。(p.169)
・印税の話(pp.172-178)
著者自身がかなり大量の本を買っており、その体験に基づく本の買い方についての説明ももちろんある。人によっては参考になるかもしれないが、東京に住んでいて、ある意味業界人としての観点の説明が多いのでかなり異端のように感じる。
今の出版界の稼ぎ頭は、パートワークなのだそうだ。(p.89)
・パートワークとは、「分冊百科」ともいう。など、定期購読もの
・隔週でCDやDVDが付いたもの
・自動車や戦車の模型がついたもの
・全部集めると帆船が組み立てられる
・十数頁の小冊子がおまけについているが、建前は冊子が本体になっている
この他、出版販売は、書籍を取次、書店経由で売るだけでなく、外商、コンビニ、オンライン書店など多様化している実情も説明されている。
やはり、これは業界もののような気がする。