CAS-UBによる本の制作工程: ECMJ流!  巻末に出典記事のリストを作成する例のご紹介 

ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則を編集中です。

昨年の10月頃から初めて4巻までは既にリリース済み[1]。昨日までに5巻目が大方できました。現在、著者に幾つか不明点を問い合わせていますのでそれが決着すれば完成です。

5巻目は、人財育成とか仕事の仕方とかに関係する記事を整理しています。記事を各巻にどのように割り当てるか、どのように章建てするかとか、節の並び順の整理とか、用語の統一、言い回しの統一など細かいことを直すのに、文章を平均すると3回くらいは読んでいます。内容に感心することが多い!

5冊目はあまりEコマースのテクニカルな話が出てこなくて考え方に関する内容です。著者の石田麻琴さんは1980年生まれですので、まだお若いのに、考え方には私が師と仰ぐ稲盛 和夫(盛和塾)塾長とかなり通じるところがあります。つまり哲学があるということなのですが。第5巻はお勧めです。

さて、前置きが長くなりましたが、第5巻の本文を編集し終わり、索引を作ろうという段階で、はたと困りました。この巻は考え方に関する記事が多いので索引の作りようがないような気がします。もちろん無理して用語を拾って索引を作ることはできますが、そもそも記事を丸ごと読まないとあまり意味がありません。用語単位で拾う索引はそれほど意味がないような気がします。

本書の章建ては次のようになっています。
20170117-mokuji

第1章は次のように24本のブログ記事から構成されています。
20170117

そうしますと記事単位で読み直したいときに、目次からその記事を簡単には探せません。CAS-UBでは目次の生成時に、章だけにするか、節までにするかなどのレベルを設定できます。仮に、節まで目次に出しますと次の図のようになります。

20170117-mokuji-2

これでは、目次の項目が多すぎて全体像をつかみにくくなります。

そこで、参考文献の形式で元記事(出典ブログ)のリストを作ることにしました。

次のようにします。
1)参考文献を用意します。これは、新規記事作成で、「記事の種類」に参考文献を指定します。

20170117-reference

2)参考文献にブログの一覧をテキストで入力します。
これは元のエクセル表からでも良いですし、節まで出力した目次からテキストをコピーして貼り付けても出来ます。

3)各項目に箇条書きに指定します。次の図の行頭「*」が箇条書きのマークアップです[2]

4)参考文献の項目から本文の節へのID参照を設定します。
・CAS-UBでは各記事、見出し、キャプションには自動的にIDがふられます。
・ID参照メニューで、そのIDの一覧を表示します。
・参照元にID参照を設定します。ID参照設定は図のアンダーラインです。

20170117-id

5)ブラウザで内容表示しますと次のようになります。

20170117-preview
収録ブログ一覧の各記事から節へのリンクが張られていることが確認できます。

6)PDF生成時に、このリンクをどのように表示するかは、「PDFレイアウト詳細設定」の参照先表示方法で選択できます。ここでは参照先をページ番号だけにします。

20170117-ref-disp

7)PDF生成をしますと次のようになります。

20170117-final
参照先のページ番号が自動的に設定されます。デジタルデータとして使うときのためにPDFのリンクも設定されています。

本書は本文が二段組みですので、参考文献も二段組みにする方が良いかもしれません。

(1/31追記)
最終版では、参考文献を二段組みとしました。

1月31日にPODの本が届きました[3]ので、早速、写真にしてみました。次のようになっています。

20170117

[1] ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ
[2] 参考文献では箇条書きが独自形式(固定)になっています。番号なし箇条書きの行頭の記号はなくて各行がハンギングインデントとなります。
[3] ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則シリーズ第5弾 『Eコマース”売れる”チームづくりのポイント! ~着実に成長するための考え方、取り組み方~ 』発売になりました。
[4] アンテナハウス書籍・総合目録

CAS-UBによる本の制作工程: ECMJ流!  編集・制作作業の中途ふりかえり 

本企画の概要
目的
CAS電子出版の「ECMJ流!Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ」[1]は、ECマーケティング人財育成の石田社長が毎日書いているECMJブログ[2]を整理してプリントオンデマンド(POD)で本として出版するプロジェクトです。元のブログは2013年8月8日スタートから毎日更新されており、2016年6月18日に1000本に到達しています。POD本にする企画は2016年10月頃に決まり、現在は9月までの約1,100本を書籍の形式にすることに取り組んでいます。

Webページとして提供されているブログを原則として内容には手を加えずに、紙・電子書籍の形でも提供します。Webページは端末のディスプレイで読まれるものですので、POD本として紙にレイアウトした本とすることでディスプレイで読むよりは理解度が高まるでしょう。また、ブログの中で、飛び飛びに書かれている文章を一続きに整理することにも意味があると考えています。

ECMJ流! シリーズの構成

2016年9月までの1100本の記事はECMJサイトで大きくカテゴリーに分かれています(なお、このカテゴリーは2016年12月時点で刷新されましたので、現在は、当時とは異なっています。以下のカテゴリーは2016年11月時点のものです)。

編集・制作の工程
本書の編集・制作の流れは次のようになっています。

1.ブログ記事を仮に整理してPDFとして読む

(1) カテゴリーをベースにしてボリューム(巻)構成と章構成を仮に決めました。
(2) CAS-UBでは巻を1つの出版物として作成します。
(3) 各巻の章建てに従って、元のブログから記事毎にコピーして、CAS-UBにペーストして取り込みます[3]。元のブログ記事とCAS-UBの記事は1対1対応です。
(4) 各巻を仮に組版してPDFを作成、PDFをプリントアウトして目を通します。記事毎に何を言いたいかのポイントをEXCELに記入します。

2.ボリュームと章建ての見直し

前項のEXCEL表を見直し、記事の巻と章への割振を見直し、改めて各巻の章建てを決めました。

3. CAS-UBで、章建て-節建てを編集する

CAS-UBのアウトライン編集機能を使って、巻に章や節の追加をしたり、章や節の順番の入れ替えを行いました[4]。なお、巻の間の記事の入れ替えもあります。このときは、CAS-UBで2つの出版物を開いて行います。

20170113-outline

4. 各節の文章の編集

(1) ブログ特有の記述を書籍向けの記述に変更します。特に連載ものでは、ブログには「次回は」とか「前回はこちら」などのナビゲーション用リンクがあります。本にするときは続きものを連続して配置しています。本をページ順に読み進めてもらえば上述のナビゲーションは必要ありません。紙の本として違和感を感じないように、ブログ特有の書き方に関する部分はできるだけ無くします。
(2) 用字・用語の統一をします。用字用語は主に講談社発行『日本語の正しい表記と用語の辞典』を参考にしながら独自の規則も作成してエクセル表にまとめて処理しました。
(3) そのほか、各社のサービスの名前などを確認して正式表記に変更するなどの編集を行います。

5.POD本の本体版面

アマゾンのPODはページ当たりの印刷コストが2.5円であり、インクでの印刷と比べて高いため、ページ数の増加が販売単価アップに直結します。そこで、ページ数を減らすために判型を大きくしたいのですが、大きいと手にとってみたりするとき扱いにくくなります。扱い易さを考えると判型はB5判が上限ではないでしょうか。

小さくてハンディな判型とする方が持ち運びやすくて親しみ易いでしょう。しかし、小さくすると総ページ数が増えます。

本シリーズはそのバランスを考えて、1つ下のA5判に設定ししました。

縦組か横組かは迷うところです。一般に日本語の文章は縦組の方が読み易いでしょう、しかし、ブログ原文にはアラビア数字やアルファベットがかなり出てきます。また内容的にもビジネス書ということで横組としました。

PDFの版面は最終的に次のようになりました。なお、この版面レイアウトは一番最初に決めました。

・B5判
・横組二段組。章見出しは段抜き
・文字のサイズ 本文9ポイント。行送り15ポイント
・1行の文字数38。段間2文字(段内文字数:18文字/行)
・1頁の行数:33文字(1188文字/頁)

さらに1ページに出来るだけ多くの文字数を収録することができるように、文字サイズを9ポイントを小さめにします。二段組としたのは文字が小さめで、1行の文字数が多いので読み手が文字を追いかけるのに負担を感じないようにしたためです。

このレイアウトでは本文の先頭ページは次のようになります。

ecmj-books-5-0107_007

6.索引作り

本書の成り立ちはブログのため、同じようなテーマの文章が随所に現れます。本文を読み進める過程で、あとで振り返って確認したい用語などが出てくることがあります。そこで索引から内容を見つけられるようにする、ということが重要です。索引作りにつきましては、ブログで紹介しています。本書の索引作りについては、別途、紹介しました[5]

7. タイトル・副題の決定、ISBN

・書名(タイトル)、副題、ISBNなど書誌情報を決定して設定します。
・著者名、著者のプロフィール、発行元情報などはシリーズ共通です。
・CAS-UBでは共通項は新しい出版物作成のときに、著者名、著者プロフィール、版面レイアウト設定などは、既存の出版物の設定をコピーできますので新しく入力する必要はありません。最初の出版物で共通項を決めておくと効率が上がります。

8.タイトルページ・前書・目次・奥付

・タイトルページはカバーを開いたときの最初のページです。ノンブルは振られませんが総ページ数にはカウントします。タイトルページはCAS-UBで自動的に作成できますが、PODに出すPDFはタイトルページをデザインしたものに差し替えています。なお、タイトルページは必須ではありませんが、タイトルページがないと表紙を捲ると前書になりますのであった方が良いでしょう。
・前書は目次の前に配置します[6]
・目次は本文の章タイトルのみから作成します。章と節を目次にすることもできますが、本シリーズはブログの1記事を節にしているため節も目次項目とすると、目次の項目数が多くなりすぎます。
・章の番号は自動的に設定します。
・総ページ数が奇数になった場合、改丁を改ページに変更し、偶数にする調整を行います(必須ではありませんが、奇数ページでは無駄な空白ページが追加されるのでこれを避けるため)[6]

9. POD用PDFの生成

POD用PDFは5項のPDFの生成設定を元に「POD用PDF」ボタンで設定を作って保存するだけです。

10. カバーの完成

POD本では表ー背-裏に跨がって包むカバーが必要です。これは別途PDFを作成します。

次は第4巻のカバーの例です。
20170113-cover

11. POD登録データの作成

POD取次に提出する登録データ(エクセル表)を作成します。
特に重要なのは、次のことです。
・販売価格
・宣伝文

12.POD登録

POD取次に本体PDF、カバーのPDF、POD登録データ(エクセル表)を提出します。

13.EPUB生成

CAS-UBではEPUB生成のホタンがあり、そこでEPUB生成の設定を指定してEPUBを生成します。Kindleのmobi形式を作ることもできます。これも最初の出版物で決めておけば2冊目から同じ設定でEPUBを作れます。

14.Kindle登録

できあがったEPUBまたはmobiをAmazon KDPに登録します。
KDPでは、セレクト(Kindle独占、ロイヤリィティ70%)を選択するか、非独占(35%)にするかを選択します。
セレクトを選択すると自動的にKindleアンリミテッドの対象となります。
セレクトの期間は3ヶ月間でその間は変更できません。デフォルト(既定値)では自動延長になっていますので注意してください。

まとめ

振り返ってみますと、CAS-UBを使えば、ECMJ流!シリーズのような簡単なレイアウトであれば、POD用PDFの生成と、Kindle用EPUBまたはmobiの作成はほとんど手間がかかりません。

生産性を上げるとしますと1~4項となります。これは結構労働集約的なので、今後、ソフトウェアによる支援を検討しないといけない工程です。

参考資料
[1] ECMJ流! Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズ
[2] 株式会社ECマーケティング人財育成
[3] 取り込みの様子例を説明する動画を作りました:
ブログの記事を出版物の記事にする(タイトル、本文をコピー、本文に見出し)
ブログの記事を出版物にコピペ。見出し・箇条書きのマークアップ。段落先頭の空白を削除)
[4] アウトラインの編集例を説明する動画を作りました:
章の最後に、新しい記事で節を追加し、節の位置を移動する
節の直後に新しい節(3本)を挿入、ブログの記事をコピー&ペーストする
[5] 索引作りの説明
索引論再訪ー索引の目的とは。索引をどうやってつくるか?
索引の作り方を考える。一歩進んで、本文に出てこない索引語や、索引語の階層化の試み。
[6] 前書をWordで作って追加する例を説明する動画を作りました:本文と目次の前に前書を追加。Word文書で作成した「前書」を追加する
[7] 索引を改丁から改ページに変更する例の動画を作りました:PDFの総ページ数が奇数となった。索引が改丁で開始・前に空白頁があるので、索引の開始を改丁から改頁に変更する