デジタル時代の本の再定義。 EPUBはPOD書籍普及のブレーク・スルーになるだろうか?

身近なドキュメントの領域の変化を振り返ってみますと、20年ほど前に弊社が一番関係深かったワープロ専用機は、ワープロソフトによって置き換えられてほんの20年ほどでなくなってしまいました。次に関係深かった写植機はDTPによって置き換えられてなくなりました。また銀塩写真はデジカメに置き換えられて姿を消しました。

こうした歴史を踏まえて、紙の本がデジタル時代にどう変質するのかを考えてみます。

2010年に(何回目かの)電子書籍元年となりましたが、その後5年目のいま、商業用電子書籍ではEPUB3がデファクト・スタンダードになったと言って良いでしょう。一時は、EPUB3などの電子書籍によって紙の本が置き換えられるのではないかということも言われました。しかし、現在のところ、当分の間は紙の本が電子書籍に置き換えられることはなさそうです。

むしろ、紙と電子デバイス(画面)という媒体の特性の違いを考えますと、電子書籍と紙の書籍は代替関係よりも両立関係になると言う方が適切そうです。

さて、現在のところ、書籍の印刷と製本は全体としてみますと、まだアナログ技術が優勢な部分と思います。では、デジタル時代の書籍がどうなるのでしょうか?

印刷ではデジタル印刷技術がどんどん進歩しています。すでにPDFで入稿されれば、デジタルプリンタで一冊から本を印刷できる、プリント・オン・デマンド(POD)が実用になっています・

今後、PODによる本作りの時代がすぐそこにやってきそうです。PODによる本作りはまだかなり割高ですが、これを割安にするには、規格化し、コンピュータ処理にするのがポイントになりそうです。

現実は、書籍は規格化されていないものの筆頭にあげられそうです。なにしろひとつひとつの書籍の内容は全部異なり、レイアウトは1点毎ばらばらです。書店で売られている本の判型は四六判、新書版、文庫本などある程度のパターンにわけられます。しかし、同じ判型であっても、製本の仕方、扉の付け方などには結構いろいろな種類があります。

私が読んだ本の中から約100冊をとりだして調べてみました(この写真)が、詳しく見ますとひとつとして同じものはありません。

DigitalBook

PODを規格化された廉価サービスとして提供しようとしますと、そのシステムにはかなり大きな投資が必要です。従って、投資を回収するには膨大な量の注文を処理しなければならないでしょう。

そのためには、書籍のコンテンツが沢山必要です。しかし、実態として本のサイズはかなりばらばらです。そして、紙の本は絶対寸法をもっていますのでリサイズはほとんどできません。コンテンツの種類を増やすには判型を多様にせざるを得ないわけです。

つまり、既存書籍の版を使った規格化は無理という壁に行きあたってしまいます。

ひとつの解決策として、既にかなり揃ってきたEPUBリフローコンテンツを使って規格化する、という方法があります。こう考えますと、EPUBをプリントオンデマンド用のPDFに変換するツール『EPUBtoPDF』が、書籍の未来を拓くブレークスルーになるかもしれません。

『EPUBtoPDF』紹介スライド

EPUBをアマゾンPOD用PDFに変換するツール、EPUB vs PDFの相違点など

アンテナハウスはEPUBをアマゾンPOD用のPDFに変換するツールを開発しました。

■製品Webページ:『EPUB校正用、プリントオンデマンド用PDF出力 EPUB to PDF 変換ツール』

このツールはEPUBを入力とし、EPUBのコンテンツ(XHTML)を自動組版してPDFを出力します。

PDFのレイアウトは、EPUBに指定されているレイアウト指定(CSS)情報を生かして行います。しかし、EPUBに指定されているCSSだけでは印刷物を作るには情報が足りません。そこで足りない項目は外部からパラメータを指定して、CSSの指定に追加したり上書きしたりできます。詳しくは、後述のツールの概要を参照のこと。

EPUBをお持ちの場合、ツールをお求めいただければドウイットユアセルフ(DIT)でEPUBをPDFに変換できます。また、テスト変換もございます。最初からDITは無理かな? という向きには弊社でEPUBをPDF化するサービスも承ります。EPUBをお持ちで、アマゾンプリントオンデマンド(POD)で販売することを検討中の出版社の方は、cas-info@antenna.co.jp までお気軽にご連絡ください。

1.本ツールの概要

1.1 動作環境
ツールにはグラフィカル・ユーザーインターフェイスは付いていません。コマンドラインで操作します。Windows、Linux、MacOS/Xなどでお使いいただくことができます。

コマンドラインでは、変換元のEPUB、パラメータ、出力先PDF(名)などを指定します。

1.2 扱えるEPUB
リフロー型、固定レイアウト型EPUBを両方とも扱えます。

但し、変換元のEPUBを本ツールで解凍して中のコンテンツを自動的にPDFに変換しますので、DRMが付いているEPUBは扱えません

その他詳細はお問い合わせください。

1.3パラメータの説明
PDFを作るのに必要で、EPUBには無いレイアウト指定情報などをパラメータで追加します。
(1)PDFのバージョン(PDF/Xなども可)
(2)判型(必要に応じて塗足しの有無と塗足しの寸法)
(3)マージン(小口、のど、天、地)
(4)デフォルト・フォントサイズ 
(5)デフォルト・フォントファミリー
(6)デフォルト行の高さ
(7)柱のテキスト、柱の位置
(8)ノンブルを付けるかどうか、ノンブルの位置
(9)その他項目を、多数、設定ができます

1.4 目次の扱い
EPUBにはEPUBリーダー用の目次(論理目次)と、本文と同じ扱いの目次(本文目次)があるのが一般です。本ツールは本文目次をPDFの目次にします。

1.4.1 目次頁(XHTML)の識別
EPUBの中の本文目次頁を(できるだけ)識別します。次のように指定もできます。
(1)目次ファイル名を指定
(2)目次頁の先頭テキストを指定(デフォルト:目次)
※指定がないときはデフォルトを使います。

1.4.2 目次項目の識別とページ番号の付加
EPUBの目次項目には、本文の該当章などへのリンクが設定されているのみです。本ツールでは目次頁の目次項目を識別して、その項目にページ番号を付加します。

目次項目にクラス名が付いているとき、そのクラス名を指定して該当項目を目次項目にします。

1.5 表紙
表紙画像をもとにアマゾンPOD入稿仕様に準拠した表紙のPDFを作ります。
背表紙の画像または文字列を指定したとき、(本文の100頁超のとき)背表紙に入るように自動調整します。

2. EPUBとPDFの相違点
EPUBとPDFでは本質的な相違があります。次に主な相違点を述べます。

2.1 寸法
EPUBでは相対寸法が基本ですが、PDFでは絶対寸法になります。例えば、EPUB(リフロー)では本文のデフォルト・フォントサイズは一般には指定しないで、読者がEPUBリーダーで変更できます。それに対してPDFではデフォルト・フォントサイズを、xxpt(単位はいろいろ)のような寸法で指定します。

2.2 フォント・ファミリー
EPUBでは、普通、本文全体のフォントファミリー名はserif、sans-serifなどのジェネリック名を指定します。しかし、PDFでは本文全体に適用するデフォルト・フォントとして具体的なファミリー名を指定します。

2.3 画像
画像の大きさは、アマゾンPODでは300dpi以上でなければなりません(それ以下だとエラーにされます)。本ツールでは、画像を300dpiに強制する機能がありますので、これを使えばとアマゾンの必要条件はクリアできます。

3.注意点
現在のEPUBは、EPUBリーダー(Kindleを含む)を想定して作られており、そのまま印刷物にするにはレイアウト情報が不足しています。本ツールでは不足しているレイアウト情報をパラメータで補います。ただし、必ずしも十分なコントロールはできません。例えば改頁、改丁処理などは自由に指定できません。また、書籍では章の見出しを柱の内容にすることが多いのですが、章を自動的に識別して柱にするにはどの見出しが章であるかを識別しなければなりません。それは、現在、未対応です。

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