手持ちのEPUBをプリントオンデマンド用PDFに変換。 ツールと変換サービスを提供開始!

アンテナハウス株式会社は、2015年1月28日より『EPUB to PDF 変換ツール』(本ツール)を発売します。

本ツールは、出版社や制作会社が持つEPUB形式の電子書籍をPDFに自動変換します。

電子書籍ストアやアマゾンのKindleで販売されている電子書籍のタイトルが増えてきました。電子書籍のタイトルの中にはWebページやブログから制作されたもののように、電子版はあっても紙版がないタイトルが多くあります。

一方、読者の間には電子版だけではなく紙でも欲しいというニーズもあり、こうしたニーズに応えるためEPUBからPDFを作ってプリントオンデマンドで紙の書籍で販売する形態に注目が集まっています。

本ツールをお使いいただければ、出版社・制作会社の社内で簡単にEPUBをプリントオンデマンド用PDFに変換できます。

EPUB to PDF 変換ツールの特長

  • DRMのかかっていないEPUBから、プリントオンデマンドに対応する高品質なPDFを出力できます。
  • 縦書き・横書きを自動で判別し、各組み方に対応したPDFを出力します。
  • フロー型EPUB、固定型EPUBに対応できます。
  • 印刷用ページレイアウト(できあがりサイズ、版面、フォント指定など)を、パラメータで柔軟に設定できます。
  • 目次にページ番号を自動付与(※)します。
  • アマゾンPOCガイドに準拠した表紙PDFを自動生成できます。

この他、社内で変換する体制を作るのはまだ早いとお考えの出版社向けにアンテナハウスで本ツールを使って変換サービスも承っております。

※EPUB内の目次ページが画像であったり、目次テキストが画像になっているとページ番号は付与されません。

動作環境

下記のクライアントOSに対応しています。

・Linux、Macintosh(OS X~)、Windows
・perl

本ツールは、コマンドラインからの操作変換になります。

お問い合わせ先

アンテナハウス・電子出版サービスグループ
 Eメール:cas-info@antenna.co.jp

詳細

本製品の詳細は次の Web ページをご覧ください。
 → http://www.antenna.co.jp/epub/epubtopdf.html

デジタル時代の本の再定義。 EPUBはPOD書籍普及のブレーク・スルーになるだろうか?

身近なドキュメントの領域の変化を振り返ってみますと、20年ほど前に弊社が一番関係深かったワープロ専用機は、ワープロソフトによって置き換えられてほんの20年ほどでなくなってしまいました。次に関係深かった写植機はDTPによって置き換えられてなくなりました。また銀塩写真はデジカメに置き換えられて姿を消しました。

こうした歴史を踏まえて、紙の本がデジタル時代にどう変質するのかを考えてみます。

2010年に(何回目かの)電子書籍元年となりましたが、その後5年目のいま、商業用電子書籍ではEPUB3がデファクト・スタンダードになったと言って良いでしょう。一時は、EPUB3などの電子書籍によって紙の本が置き換えられるのではないかということも言われました。しかし、現在のところ、当分の間は紙の本が電子書籍に置き換えられることはなさそうです。

むしろ、紙と電子デバイス(画面)という媒体の特性の違いを考えますと、電子書籍と紙の書籍は代替関係よりも両立関係になると言う方が適切そうです。

さて、現在のところ、書籍の印刷と製本は全体としてみますと、まだアナログ技術が優勢な部分と思います。では、デジタル時代の書籍がどうなるのでしょうか?

印刷ではデジタル印刷技術がどんどん進歩しています。すでにPDFで入稿されれば、デジタルプリンタで一冊から本を印刷できる、プリント・オン・デマンド(POD)が実用になっています・

今後、PODによる本作りの時代がすぐそこにやってきそうです。PODによる本作りはまだかなり割高ですが、これを割安にするには、規格化し、コンピュータ処理にするのがポイントになりそうです。

現実は、書籍は規格化されていないものの筆頭にあげられそうです。なにしろひとつひとつの書籍の内容は全部異なり、レイアウトは1点毎ばらばらです。書店で売られている本の判型は四六判、新書版、文庫本などある程度のパターンにわけられます。しかし、同じ判型であっても、製本の仕方、扉の付け方などには結構いろいろな種類があります。

私が読んだ本の中から約100冊をとりだして調べてみました(この写真)が、詳しく見ますとひとつとして同じものはありません。

DigitalBook

PODを規格化された廉価サービスとして提供しようとしますと、そのシステムにはかなり大きな投資が必要です。従って、投資を回収するには膨大な量の注文を処理しなければならないでしょう。

そのためには、書籍のコンテンツが沢山必要です。しかし、実態として本のサイズはかなりばらばらです。そして、紙の本は絶対寸法をもっていますのでリサイズはほとんどできません。コンテンツの種類を増やすには判型を多様にせざるを得ないわけです。

つまり、既存書籍の版を使った規格化は無理という壁に行きあたってしまいます。

ひとつの解決策として、既にかなり揃ってきたEPUBリフローコンテンツを使って規格化する、という方法があります。こう考えますと、EPUBをプリントオンデマンド用のPDFに変換するツール『EPUBtoPDF』が、書籍の未来を拓くブレークスルーになるかもしれません。

『EPUBtoPDF』紹介スライド

(予告)CAS-UB V2.3 を近々リリース予定です。操作性のアップ、PDFレイアウトの強化、多言語対応などが強化ポイントです。

アンテナハウスは、クラウド上で書籍を編集しEPUBやPDFを作成するサービスCAS-UBの機能を強化し、V2.3にするべく開発を行っております。

CAS-UB V2.3では、ブラウザから簡単に間違いなく使えるようにすること、PDFのレイアウト機能強化などを主な目標としています。ここに開発中の項目をご紹介します。

1.用語の見直し:出版物名を出版物識別名に変更。
2.ヒント機能:いきなり使い始めてもとまどうことが無いよう、ヒントを表示する機能を追加します。
3.自動保存:設定変更して保存のし忘れなどでやり直し、ということが無いよう設定変更などを自動保存します。
4.ボタンの変更:重要なボタンを一見してわかるように大きくカラー表示。ログイン、編集画面の保存、生成設定など。
5.ログイン中にブラウザの画面を閉じて、再びブラウザでアクセスしたときホーム画面に戻るように(従来は、ログイン画面に戻っていました)。
6.ホームメニューのレイアウト変更と一部メッセージ変更。
7.新規作成設定で、ひな形の複製を廃止。
8.構成編集画面のレイアウトを変更してシンプルにし判りやすく。
9.出版物の種類を日本語と英語のみ選択に簡素化。
10.内容表示のときのテーマ選択メニューを「スタイルシート」画面に移動。
11.システムフォントの追加:中国語繁体字、中国語簡体字などをシステムフォントに追加。中国語を含む多言語PDF作成を可能に。
12.ユーザーフォントをPDF生成にも使えるように。従来は、EPUBへの埋め込みのみ。
13.EPUBへのフォント埋め込みのとき、サブセット化ができるように。
14.CSSテーマの整理(廃止予定のテーマを削除)
15.出版物の種類で選べるPDFレイアウトの違いをなくしました。従来は書籍では書籍のレイアウト、ノートではノートのレイアウトなど出版物の種類とレイアウトが連動していました。
16.PDFの基本版面の設定を従来よりも柔軟にした新しいテーマを追加。
17.PDFレイアウトで書籍でも2段組みを設定可能に。文字飾りなども指定可能になど機能強化。
18.個別ユーザー向けにパラメータを調整したPDF用スタイルシートを使えるように。(EPUBは従来より可能)。
19.EPUB生成で、表のキャプション位置を表の下から上に変更。
20.その他細かい調整。

12月中に主な機能をクラウドサービスで利用可能にする予定です。但し、一部の機能は2015年1月になります。

また、1月以降になりますが、Wordインポート機能の強化を予定しております。
Wordインポートでこんな機能が欲しいといったご要望がございましたら、ご連絡いただければと存じます。

お蔭さまで、今年度もCAS-UBのユーザーは順調に増えております。また今年はBOD(プリントオンデマンドによる本の作成)が注目されており、それに応じて今回PDF関係を中心に機能の強化を行っております。

CAS-UBは、商業出版でも使える高品質のPDF/EPUBを簡単にだれでも利用できるようにすることを目指して今後も開発を継続致します。ぜひ皆様のご利用をお待ちいたします。

『マニュアルEPUB化ハンドブック2014年版(EPUBマニュアル研究会報告書)』POD版ができました。

昨日は、ビジネスプラットフォーム革新協議会(BPIA)の第71回 目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会がありました。

BPIA目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会 

第71回は、「EPUBで広がる業務マニュアル・操作マニュアルの世界」と題してEPUBマニュアル研究会・座長の木村修三氏より、研究会の2013年成果を踏まえての報告がありました。

先日、ブログで紹介しましたとおり、研究会報告書は、アマゾンKDPにてKindle版として販売しています。

『マニュアルEPUB化ハンドブック2014』(EPUBマニュアル研究会報告書)が発売になりました。

CAS-UBの特徴は、PDFも同時に作ることができるということです。そこで、研究会に間に合うように急いでプリント・オン・デマンドで紙の本を作りました。

こんな感じです。
epubmanual-front
図1 表紙

EPUBManula-toc
図2 目次

EPUBManula-cont図3 本文

EPUBManula-index
図4 索引

epubmanual-back
図5 裏表紙 (アマゾンe宅で本を売るにはバーコードが必要です)

紙の本も11/28にアマゾンe宅販売で登録し、販売開始しました。画像はまだ表示されていません。POD本はアマゾンの入庫依頼がないと送付できないので、現時点では、在庫切れになっています。社内には在庫はあるのですが・・・

20131128

作成方法を紹介します。

本書は、著者の皆さんに原稿をWordで用意していただきました。Word文書はスタイルを使って変換しやすいように作られています。原稿をCAS-UBにインポートして、簡易マークアップ付けします。
簡易マークアップの状態で、若干の編集作業を行ないました。具体的には、リンクの設定、注の設定、索引の作成などです。
最後に、PDF(印刷用)、PDF(表示用)、EPUB、Kindle(mobi)を作っています。
内部では簡易マークアップ→XML(ほぼXHTML)→(自動組版)→PDF、XMLからEPUBなどという処理です。

日程は、Wordの原稿が完成したのは11月18日。18日~19日にWordからCAS-UBに変換し、編集と索引の作成を行ないました。19日夜に著者に最終確認していただき、20日に少し修正。Kindleは21日11時にKDPにアップ完了。21日18時ころKindleで販売開始ということになっています。Kindle版は、発売後2回マイナーな改訂を行なっており、現在は1.02版です。KindleのKDPで出版物を改訂してリリースするプロセスはかなり速く回ることがわかりました。1サイクル6,7時間です。アマゾンはサービスがすばらしいですね。

POD版は、20日18時にPOD業者にPDF引渡し、26日納品でセミナー会場に持参しました。

EPUBManualFlow

Wordで原稿を書く際に、アウトラインスタイルなどをきちんとつけていれば、10日位で本まで作ることができます。アンテナハウスでは、今後こうしたサービスをモデル化して紹介していきたいと考えています。

関連情報:『マニュアルEPUB化ハンドブック2014年版  EPUBマニュアル研究会報告書』

プリント・オン・デマンド(POD)の衝撃ーーインプレスR&D 「Next Publishingメソッド」セミナーの感想

1月22日のJEPA EPUBセミナー「インプレスR&D 『Next Publishingメソッド』紹介」はショックでした。

○セミナー資料は注を参照

『Next Publishingメソッド』の、プリント・オン・デマンド(POD)による冊子版とEPUBによる電子書籍を同時に作って販売するというハイブリッド出版のコンセプトは、2010年スタート時のCAS-UB開発の狙いそのもの[1]。インプレスR&Dの井芹社長のコンセプトとCAS-UBのコンセプトは、制作システムの開発コンセプトという観点ではまったく同じと言って良いほどです。

後述のようにCAS-UBはWebサービスとして、むしろ、インプレスR&D の「Next Publishing Tool」よりもだいぶ先行していると言っても過言ではありません。そういう意味で、本セミナーもテクニカルな、システムという観点では新味を感じることはありませんでした。しかし、ビジネスとしての展開という点では、インプレスR&Dが既に一定のビジネスモデルの段階に達しているのに、CAS-UBはまだ新しいビジネスモデルを提案できていません。

インプレスR&Dの井芹社長のまとめによりますと、ハイブリッド出版では、「Amazonの販売のケースで、電子は紙の25%(Kindle登場前は5%)」だそうです。つまり、Kindle Storeが開店した今の時点でも、紙の方が3倍売れているということになります。従って、EPUB版だけではなく同時に紙版を出すのは必須です。

トラディショナルな出版では、最初に印刷で大部数を刷ってしまうために様々な理由でハイリスクとなります。そこにPODを採用する妙味があります。

CAS-UBの開発スタート時のコンセプトは、大よそ、そうなるだろうと予想した上で、これを簡単に実現する出版制作の仕組みを提供する、ということです。

これを実際に、出版のビジネスとして実行して、数値で実証的に示し、ビジネスモデルとして提示したということが『Next Publishingメソッド』の衝撃です。

『Next Publishingメソッド』が、Word文書をEPUB化するのに使っている「Next Publishing Tool」のデモンストレーションを拝見したのは今回が初めてです。そして、このデモを拝見して、「Next Publishing Tool」の弱点がどこかも直ぐに分かりました。おそらくEPUBを作るシステムとしては、CAS-UBの方が優れていると思います。

また、プリント・オン・デマンド用のPDFを作る仕組みも、手前味噌ですがCAS-UBの方が優れていると思います[2]。

CAS-UBで、実際にPODによる冊子本とEPUB/Kindleの電子書籍を制作・販売したひとつの例を次に紹介しています。

「転職の法律があなたを守る」プリント版ができあがりました

この「転職の法律があなたを守る」の冊子版のできばえは、出版社の方も「うそだろ」といった、というほどです。EPUB版は楽天Kobo ストアで販売しています。また、Kindle版はアマゾンのKindleストアから販売しています。

「転職の法律があなたを守る」EPUB版(楽天Koboストア)
「転職の法律があなたを守る」Kindle版(Kindle Store)

このように書籍を作るシステムとしては、『Next Publishingメソッド』とCAS-UBはおなじことができます。また、CAS-UBはWebサービスとして開発していますので、その分、自社の社内ツールと思われる「Next Publishing Tool」よりも汎用的です。

しかし、残念ながら、現在のところ、CAS-UBは、お客さんの視点からはEPUBを作るサービスとしてしか見られていないように思います。

アンテナハウスでは、CAS-UBのトレーニング・セミナーを開催しています[3]が、このセミナーに見えるお客さんはほとんどがWordからEPUBを制作する、ということに惹かれているようです。

このように残念ながら、CAS-UBはPODのツールとしてはほとんど注目されていません。

この理由はPODが単に本を作るための方法論として捉えられてしまっているためだろうと思います。本を作るための方法論として考えれば、PODを行なうにしても、InDesignで版下を作れば十分です。PODだけの目的でCAS-UBを使う理由はそれほどありません。

しかし、PODとEPUBをデジタルファーストの手段として、もっと広義には新しい出版ビジネスのモデル構築手段として捉えなければならない、ということだろうと思います。

つまり、CAS-UBを新しいビジネスモデルとして提示する、ということをしなければいけないのです。これができていない、ということを痛烈に反省しました。

[0] セミナー資料:EPUB 第20回 インプレスR&D 「Next Publishingメソッド」紹介
[1] ハイブリッド出版という言葉は、2010年末のプレゼンで既に使いました。また、2011年2月のWebでも使っています。その後、あまりにもダサいと考えて削除してしまいましたが。当時のニュース・リリース:ニュース・リリース
[2] 本当はその理由を具体的に説明しないと公平ではないと思いますが、このブログではシステムの優劣を論じるのが目的ではないので、とりあえず省略します。
[3] CAS-UBのトレーニング・セミナー