先日もお話しましたが、現在、CAS電子出版第2弾として「魔性のプレゼンテーション」をCAS-UBで制作しています。
このテキストの著者原稿はMicrosoft Wordで書いたものなのですが、文脈上重要な箇所をボールド(太字)にして表現しています。このデータをCAS-UBに移すとき、ボールドの箇所に次のマークアップをします。
○重要な箇所(強い強調)を**マークで囲みます。
例)
**見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない**。これがスライド作りの鉄則です。
すると、内部では次のようになります。(エンドユーザは内部のことを意識する必要はありませんので、HTMLをご存知でない方は以下の内部の話はあまり気にしなくても結構です。CAS-UBではHTMLのことをまったく知らなくても問題ありません。)
<p><strong>見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない</strong>。これがスライド作りの鉄則です。</p>
ブラウザではstrong要素の内容はボールドで表すのが一般的で、EPUBやPDFでは本文フォントのボールドになります。
ところが、ボールドは低解像度の表示環境では本文と区別がつきにくいことがありますので、なにかもっと良い方法はないかと考えました。そうしますと、EPUB3やPDFでは圏点を使うことができます。圏点の方が見やすくて良いのではないでしょうか?
圏点はHTMLには対応する要素はありません。属性として指定することになります。すると圏点を付ける範囲をどの要素であらわすかということを決めないといけません。候補としては次の3つが考えられます。
1.意味的には中立の範囲をあらわす要素(span)に圏点属性を付ける
2.強調の意味を表す要素(em)に圏点属性を付ける
3.重要の意味を表す強い強調(strong)に圏点属性を付ける
また、圏点を表す属性はどうしたら良いでしょうか。圏点には種類がありますので、それをどうするかという問題がありますが、そのことはおいておいて、とりあえず圏点をemarkとすることにしました。そうすると上の例は、CAS-UBで、それぞれ次のようにマークアップをすることになります。
○範囲を使うとき
[[[:emark 見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない]]]。これがスライド作りの鉄則です。
内部では次のようになります。
<p><span class=”emark”>見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない</span>。これがスライド作りの鉄則です。</p>
○強調を使う時
//:emark 見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない//。これがスライド作りの鉄則です。
内部では次のようになります。
<p><em class=”emark”>見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない</em>。これがスライド作りの鉄則です。</p>
○重要(強い強調)を使う時
**:emark 見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない**。これがスライド作りの鉄則です。
すると、内部では次のようになります。
<p><strong class=”emark”>見せるべきものだけを見せ、無用なものは見せない</strong>。これがスライド作りの鉄則です。</p>
EPUBにしたときの利害を考えて見ます。
1.spanを使うとEPUB3のスタイルシートは簡単になりますが、EPUB2ではなにもしないとまったく強調表示されないことになりますが、emark属性のついた部分を圏点の代わりにEPUB2で使える飾りをつけるCSSを作ることはできます。
2.emはラテン文字は斜体かイタリック体で表示することが多いので、EPUB3 のスタイルシートではそれを打ち消してCSS3の圏点(text-emphasis-style)を指定します。EPUB2では(多くの場合)なにもしなくても斜体かイタリックになります。但し、和文のフォントにはイタリック体がないことがほとんどですのでEPUBリーダがフォントを加工して斜体にして表示しますが、Adobe Digital Editionsでは和文にemを指定すると文字化けするという問題があります。
※EPUBをAdobe Digital Editionsで表示したときの文字化けと対応策
3.strong は太字にするのが一般的です。EPUB3 のスタイルシートではそれを打ち消してCSS3の圏点(text-emphasis-mark)を指定する必要があります。EPUB2では(多くの場合)なにもしなくても太字になります。
emやstrongのデフォルト表示はリーダのデフォルト処理に依存します。何も指定しないとリーダにより異なることがあるでしょう。ということでどれも一長一短があります。どうしましょうか。ということで、CAS-UBでは、3種類のマークアップに圏点を指定できるようにしようかと考えています。
つまり、
[[[:emark … ]]]
**:emark … **
//:emark … //
いずれもEPUB3とPDFでは圏点、EPUB2ではそれぞれ装飾なし、斜体、ボールドになります。
《ご注意》圏点機能はまだ実装していません。確定・実装した段階で利用ガイドとチュートリアルに盛り込まれます。