JBasic08を一読。JBasicのテンプレートは不要ではないでしょうか。

11月24日にイーストからJBasic08が公開されました。

http://www.epubcafe.jp/jbasic

JBasic08については、既にFacebookのグループでも活発な議論が行なわれています。

http://www.facebook.com/groups/jbasic/

ざっと一読しました。なかなかの力作です。まず、本資料を作成した著者に敬意を表したいと思います。お疲れさまでした。

さて、JBasic08についての最大の疑問はこの文書は配布形式のEPUB3について記述することを意図しているのか、制作用の形式を意図しているのかということです。

JBasic08のドキュメントに編集用のテンプレートが付いていることから見ますと、制作用の形式として採用されることを意図しているのではないかと思います。テンプレートは明らかに制作のために使うものだからです。

制作形式と配布形式では目的や要件がかなり異なるのですが、JBasic08の記述内容は、後述のように配布形式としての説明の色彩が強いと見られます。

以下に、XMLドキュメントシステムを作っている立場からこのことを少し考えて見ます。

◎制作形式としての要件のポイントは次のことがあるでしょう。

1.ドキュメント制作の生産性を高める。
・入力・編集をすばやく行うことができる。
・同じ内容を2回入力しなくても良い。
・章・節等順序の入れ替え、挿入・追加編集操作がすばやくできる。
・図の追加、挿入などを簡単に行なうことができる。

2.コンテンツホルダーにとっての資産性を高める。
・ドキュメントの再利用が容易。このためには出力の順番・位置などを配布形式とは独立にしておきたい。
・簡単な操作で様々な配布形式に展開することができる。

3.ドキュメント処理を想定した設計
・ドキュメント間の参照、ドキュメント内の参照、自動生成コンテンツなどは制作形式から配布形式への変換時に作ることが望ましい。
・制作形式の設計においては、様々な配布形式への展開を自動的に処理できるように配慮されていなければならない。

◎一方、配布形式としての要件は異なります。大きなポイントは次のことになると思います。

1.リーディング・システムの機能を最大限に活用できる形式が良い。
2.リーディング・システムが違っても一貫したレイアウト・見え方が保証される。このためには自動生成コンテンツをリーディング・システムに委ねるのは最小にしたい。
3.アクセシビリティに配慮されていること。
4.当然ですがEPUB3を出力するに当たってはEPUB3の仕様、EPUB3が参照しているXHTML5に準拠していること。

特に上記1と2は相反する場合が多いでしょう。だからこそ配布形式はターゲット毎に自動生成できるようにしておくことが必要となるのです。

さて、以上のように制作形式の要件と配布形式の要件は両立しない場合があります。例えば、JBasic08で説明している内容から次のことを取り上げて考えてみましょう。

1.出版物の内容の区分とHTMLファイル化

JBasic08では、EPUB3を構成するHTMLファイルはすべて兄弟でなければならない、と考えているようです。

特にp.29の説明図で大きな内容を分割するときは、section要素の終了タグと開始タグを補って、分割する部分を兄弟にしてから、別ファイルに分割するとあります。

しかし、section要素をこのように分割することは、ドキュメントの構造
を変えてしまうことになります。そうすると例えば、ルートの下のsectionを章と見立てて、sectionの数によって章番号をつけるような処理は破綻します。(別の仕組みを考えて解決することは可能)。

また、このような構造変更を行なって保存したものは、もとに戻すには自動的にはできません。手作業でするか、別の仕組みを導入して解決する必要があります。

2.注の種類と配置

pp.45からpp.53にかけて、注に関するマークアップの説明があります。これは大変参考になります。しかし、注をどのように配置するかは配布形式やリーディング・システムに強く依存します。

EPUB3では、割注、行間注、脚注、傍注を紙やPDFで制作した書籍と同じように表示はできません。しかし、やり方によってはポップアップして出したり、ウインドウの下に脚注に近い表示をするなどの方法ができるはずです。つまり、リーディング・システムの進化に応じて表示方法は変わりうると思います。

こういうことを考えると、制作形式では、注の種類は見栄えよりもコンテキスト、すなわち注の目的にそって分類しておき、配布形式にするときにリーディング・システムに適合させたレイアウトを考えて変換するという考え方が将来への展開に繋がるだろうと思います。

しかし、JBasic08は最終的にどういう見栄えにするかという観点で記述されています。

このようにJBasic08の記述内容は配布形式としての意味・色彩が強いと判断します。しかし、テンプレートは明らかに配布形式でありません。

EPUB3を作るとき、配布形式を直接編集する方法は、決してコンテンツ制作の生産性を高めたり、コンテンツ・ホルダーにとっての資産価値を高めることにならないでしょう。

そういう観点からはテンプレートを用意するということは必ずしも良いことではないように思うのですが。EPUB3をどのように生成するのが良いか、その説明とサンプルを提供する、ということに徹する方が良いのではないでしょうか。

CAS-UBの開発中機能について(ご紹介)

CAS-UBは、現在、多数の機能を開発しています。その中の一部の機能は既に、アルファ版としてクラウド上のサービスでご利用いただくことができます。

これらの機能はアルファ版ですので、今後、機能仕様を予告無しに変更する可能性があります。また、仕様が変更された場合にもコンバージョンなどの機能は提供されませんのでご注意ください。

次の項目はアルファ版機能です。

1.数式編集
CAS-UBでは数式を入力することができます。テキストを$$~$$でサンドイッチするとその範囲が数式モードとなります。数式モードではAMS-LaTeXのコマンドで数式を入力します。数式中でCAS記法は使えません。数式をプレビュー、PDFとEPUB3に出力することができます。

2.EPUB3とCSS3機能
(1)EPUB生成メニューにはEPUB3出力があります。
EPUB3をどのように出力すべきかはまだ検討中です。今後仕様が変わります。

EPUB3出力

(2)CSS3テーマ
CSS3を採用した試作テーマの縦書き版と横書き版を使うことができます。
このCSS3スタイルシートを指定してEPUB2を生成することもできますが、この場合、EPUB2としては正しくなくなります。(EPUB2でCSS3を使うことはできないため。)

CSS3

(3)PDFレイアウトV2
PDFレイアウト機能の強化版をV2として公開しました。

PDFV2

PDFレイアウトV2の詳細は先日ご紹介済みです。
CAS-UBのPDFレイアウトV2(アルファ版)を公開しました

CAS-UBに関心をお持ちの方は30日間の期限付きで評価利用していただくことができます。詳しくは次のWebページをどうぞ。
CAS-UBは「トレーニング・セミナー」

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