『XSL-FOの基礎 第2版』は全文をWebでも公開。CAS-UBでプリントオンデマンド用PDFを作り、Web生成機能でWebページもワンタッチで完成。

『XSL-FOの基礎 第2版』では、プリントオンデマンド(POD)版、電子書籍(Kindle、EPUB)版で販売すると同時に、新たにWebページで全文をお読みいただけるようにしました。

本書の目的は、XSL-FOについてもっと多くの人に知ってもらうことです。そこで、PODで売るだけではなくWebページを通じてお読みいただけるようにするのが良いと考えました。こう考えたもう一つの理由は、CAS-UBのマニュアルのWeb版です。CAS-UB V4からマニュアルをPDF版とWeb版で公開しています。

CAS-UBサポート&ガイド一覧

公開してから約半年経過しまして自らの使い方を振り替えってみました。マークアップ(CAS記法)であそこはどうだったかな? というところを見ようとしますと、このオンラインWebページは大変便利です。結局、この半年間PDF版はほとんど利用しなくて、大抵Web版で済ませていることに気が付いてしまいました。これは少々ショックなのですが、やはりマニュアルのようなものはWeb版がPDF版より遙かに便利なことは認めざるを得ません。

Web版はCAS-UBでPDF版の原稿からワンソースで作成できます。

CAS-UBではWeb版の形式として(1)目次と本文を別のWindowに分割した形式と(2)目次を通常のWindowに表示する形式の2種類があります。


図1 目次と本文を別のWindowに分割した形式


図2 目次を通常のWindowに表示する形式

目次と本文を別のWindowに分割した形式は、AH Formatterのページで公開しています。☞『XSL-FOの基礎 第2版』の内容を読む

ちなみに、同じワンソースから作ったPOD版用PDFを表示しますと次の通りです。PDFのナビゲーションもしおりを使えばそんなに悪くないと思うのですが。やはり、Webではワンタッチで表示できるのに、PDFは全文をダウンロードして、別アプリを起動して表示しなければならないという点が煩わしいように思います。

WebにPDFを統合する方法をもう少し考えると良いんでしょうか?

何にしましても、ワンソース・マルチユースで出版物を制作できるCAS-UB、これからはWeb生成機能についても強力アピールして行きたいと考えております。よろしくお願い致します。

【追記】
目次を通常のWindowに表示する形式は、当初公開していましたが、Googleにインデックスされないため削除しました。もしかすると重複コンテンツと見做されているのかもしれません。

OOXMLとは (JEPA EbookPediaの原稿ドラフト)

JepaのEbookpediaは3月13日公開されました:

OOXML

最後に互換性について追加しています。
本ブログにいただいたコメントを元にしています。

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JEPA EbookPedia今月はOOXMLの解説を書こうと思っています。

そこで、ドラフトを以下に公開します。ご不明点などのコメントをいただけるとありがたいです。

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OOXMLとは

 OOXML(Office Open XML)はマイクロソフトOfficeの文書形式をXMLに準拠して規定したファイル形式仕様の名前である。Office 2007のファイル形式が初めて全面的にOOXMLで規定されて現在に至っている。

もっと詳しく
Officeの文書形式は2003まで独自のバイナリー形式であった。マイクロソフトWordでは独自のバイナリー形式とRTFという交換形式が規定されていた。Word 2003で初めて、WordProcessing MLというXML形式が規定された。

Office 2007では、Word、Excel、PowerPointの三つのアプリケーションの文書形式がOffice Open XML というXML形式で規定された。これをOOXMLという。

Office 2007のOOXML形式は2006年12月にECMA-376第1版として出版された。その後2008年12月にECMA-376第2版が出版され、第2版を元にISO/IEC 29500:2008仕様となった。ECMA-376とISO/IEC 29500はOfficeのバージョンアップと並行して改訂されている。最新のOffice 2016の文書形式はECMA-376第5版、ISO/IEC 29500:2016である。

国際標準化競争
マイクロソフトがOfficeの文書形式をOOXMLという形で国際標準化を進めたのは、当時の競合であるサン・マイクロシステムズのオープンソースのオフィスアプリケーションOpen Officeが大きな影響を与えている。Open Officeの文書形式はOpenDocument Format (ODF)というXML形式で策定され、2005年にOASIS標準、次いで2006年にISO/IEC 26300:2006となった。

国際標準化により、政府・地方公共団体などでOpen Officeを採用し、マイクロソフトOfficeを閉め出す動きが見られた。こういった動きに対処するためにマイクロソフトはECMAを通じてOOXMLの国際標準化を急いだのである。

XML形式のメリット
マイクロソフトOfficeの文書形式がバイナリーの時代には、Officeの文書を他のアプリケーションで読むにはマイクロソフトから仕様書を入手すると共にOffice文書を解析しなければならなかった。XML化されてからは比較的簡単にOffice文書の内容を読んで再利用することができるようになった。また、他のアプリケーションでOffice文書と互換のファイルを簡単に出力できるようになった。

マイクロソフトWordの文書はRTFという拡張テキストとして保存して交換することが
できたが、それもすでにWordProcessing MLで置き換えられている。このようにXML技術によってOffice文書の交換方式は一新された。

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参考資料

[1] Office Open XML(OOXML)仕様とMicrosoft Officeのバージョンの関係
[2] WordML(Office2003)

もう少し整理してWebページを作ってみました。

サーバベース・コンバーター Office Open XML (OOXML) とは? 概要、メリットと活用アプリケーション

Office Open XML(OOXML)仕様とMicrosoft Officeのバージョンの関係

Microsoft OfficeのXML形式の仕様書はOffice Open XML(OOXML)として規定されている。当初はECMA-376標準として規定され、それを元にしてISO/IEC 29500として標準化された。

Microsoft Officeのバージョンアップにより、OOXMLの仕様も少しずつ改訂されている。特に、ISO/IEC 29500仕様書には移行版(Transitional)と厳密版(Strict)が規定されている[1]。移行版はECMA-376のEdition 1とほぼ同じである。厳密版はECMA-376のEdition 2と同じである。

ECMA-376のEdition 1、ISO/IEC 29500の移行版はMicrosoft Office 2007が読み書きできる。これらの仕様書は概ねMicrosoft Officeのバージョンアップに対応して拡張されている。

Ecma
バージョン番号 リリース ISO
Office 2007 2007年1月30日 ECMA-376 Edition 1
Office 2008 (mac版) 2007年1月30日 ECMA-376 Edition 2 ISO/IEC 29500:2008[2]
Office 2010 2010年6月17日 ECMA-376 Edition 3 ISO/IEC 29500:2011
Office 2013 2013年2月7日 ECMA-376 Edition 4 ISO/IEC 29500:2012
Office 2016 2015年9月23日 ECMA-376 Edition 5 ISO/IEC 29500-1:2016, ISO/IEC 29500-3:2015, ISO/IEC 29500-4:2016

※リリースはパッケージ版

ISOのカタログに記載されているISO/IEC 29500の仕様書一覧[3]を見るとパートによって最新の改訂年度が異なっている。パート2(ISO/IEC 29500-2)は2012年版が最新である。

ISO/IEC 29500-1:2016
Information technology — Document description and processing languages — Office Open XML File Formats — Part 1: Fundamentals and Markup Language Reference
(2008年版、2012年版は撤退)

ISO/IEC 29500-2:2012
Information technology — Document description and processing languages — Office Open XML File Formats — Part 2: Open Packaging Conventions
(2008年版は撤退)

ISO/IEC 29500-3:2015
Information technology — Document description and processing languages — Office Open XML File Formats — Part 3: Markup Compatibility and Extensibility
(2012年版は撤退)

ISO/IEC 29500-4:2008/Cor 1:2010

ISO/IEC 29500-4:2016
Information technology — Document description and processing languages — Office Open XML File Formats — Part 4: Transitional Migration Features

[1] Office Open XML と ECMA-376 仕様(Office 10)
[2] Publication of ISO/IEC 29500:2008, Information technology – Document description and processing languages – Office Open XML file formatsによるとISO/IEC 29500:2008はOffice 2008アプリケーションに基づいている、とされている。
[3] https://www.iso.org/ics/35.060/x/
[4] Office 2010のOOXMLはISO標準に準拠してない!? – 仕様サポート巡って議論

サーバベース・コンバーター Office Open XML (OOXML) とは? 概要、メリットと活用アプリケーション

CAS-UBの編集デモ動画 新ファイル : 見出しを付ける

ブログの記事をコピーして、節の記事とする例のデモ動画を追加しました。

【シナリオ】
1.CAS-UBの記事の構成は章-節となっている
2.ブログのタイトルをコピーして節のタイトルに貼り付ける
3.ブログの本文をコピーして節の本文に貼り付ける
4.記事の本文の*を見出しのマークアップ’=’にする
5.CAS-UBは見出しと段落には一行を空ける
6.PDFを生成する

※PDFの生成設定は本文二段組みとなっている。

【デモ動画】
ブログの記事をコピーして、節の記事とする例(mp4動画です)

【デモ動画一覧】(それぞれMP4ファイルを表示します)
(1)新出版物を作り『蕎麦の味と食い方問題』(青空文庫)をコピーする
(2)ルビ、縦中横、リンクをマークアップする
(3)Wordからの外部入力の操作例
(4)PDF生成の基本設定
(5)PDF生成のレイアウト調整
(6)PDFの後書きのページ内配置と見出しの指定変更
(7)『XSL-FOの基礎』サンプルレイアウト改善の例

CAS-UB V4紹介ブログ
1. CAS-UB V4.0の公開予定についてのご案内(予告)
2. CAS-UB V4の編集画面を垣間見る。V3では構成編集と編集画面が別でしたが、統合しました。
3. CAS-UB V4.0 デジタルファーストへ向けて、CAS記法の強化
4. CAS-UB のWebサービスV4.0をリリースしました
5.10月24日 CAS-UB 五周年記念セミナーのスライドと動画をアップしました。
6. CAS-UBの編集デモファイル 見出しを付ける

Kindle Unlimited問題とKENPの関係について(続き)

先日のブログ「ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて」[1]の、最後で出した鈴木みそさんのコミックが1KENP 0.50銭と私の『PDFインフラストラクチャ解説』の1KENP 0.83銭についてどう考えたら良いんでしょうか?の続きです。自問自答ですが。

前回のブログではあまりはっきり書いてなかったのですが、『PDFインフラストラクチャ解説』をKindle Selectに登録していたのは1月~7月です。それ以降はSelectを解除して他の電子ブックストアにも出したのです。この本の販売実績は次のようになっています。

20161027a

20161027b

この間、8月にKindle Unlimitedが開始されているのですが、関連情報をぐぐっていたら、こんな記事がありました。

「Kindle Unlimited で生じた本の売れ方の変化と Amazon の狙い?」[2]

この記事によると、「Kindle Unlimited リリース以前はだいたい 1 KENP = ¥0.8 だった。 それが、リリース後の 8 月では 1 KENP = ¥0.5 ほどに落ちたみたいだ。」とあります。

ということは、1KENP 0.50銭と私の『PDFインフラストラクチャ解説』の1KENP 0.83銭は、ジャンルの差によるものではなくて、Kindle Unlimitedの開始で総KENP数が増えたためのデフレのようです。

Kindle Unlimitedの支払いは、基金から行われると書いてありますので、このように総KENPが増えると単価が変動するんだろうとは、予想していたのですが。やはりそうなんだ。

いまのところ出版社との間で「1割読んだら1部の売上に相当する支払いをする」という特約のために、アマゾンの予算超過になっていろいろ騒がれる問題がでているようですが。本来、Kindle Unlimitedの著者や出版社への支払いは、総基金からなされるらしいから、アマゾンの予算を超過するはずはないと思っていたのですが。やはりKENPのデフレになるんだ。

[1] ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて
[2] Kindle Unlimited で生じた本の売れ方の変化と Amazon の狙い?

★ページに関連するブログ記事の一覧
[1] ページってどういう意味? 紙のページ、Webページ (memo)
[2] ページってどういう意味? 続編 Kindleの紙の本の長さと、KENPについて(上の[1]と重複しています。)
[3] Kindle Unlimited問題とKENPの関係について(続き)
[4] Amazonでは本のページの数え方が三つある。Kindle Unlimitedは第三のKENPで著者への支払いが行われ、KENP相場が基準になる。
[5] ページっていったい、どういう意味なんだろう? ――Webページ
[6] ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係、「ページ」と「頁」の関係、ブラウザと電子書籍の未来

WYSIWYGの呪縛、無意味なレイアウトに時間を費やす

ある学会誌に3名で投稿することになり、原稿を他の著者の方お二人と3人で共同で用意しました。記事を掲載した学会誌が出るのは数ヶ月先ですので内容は今のところ非公開なのですが。

学会誌の記事を連名で書いて投稿するのは初めての経験で、新鮮でしたが、少々無駄な作業に気がつきました。投稿ワークフローを見直しする方が良いのではないかと思いました。

それは原稿のレイアウトです。

原稿を執筆したのはWordです。最初にどんな風にして書いたのか、その経緯を簡単に紹介します。

一番最初に私の担当分をざっと項目を並べてWord文書として出ました。次に別の著者の方が、ご自分の担当分の原稿をすばやく追加をされました。同時に私の担当分について、要望をいただいたので、それに添って自分自身の文章をある程度完成させて提出しました。それを3番目の著者の方が全体を通して校閲されました。その後、Wordの文書を何回かやりとりしてテキストをだいたい完成させました。ここまではスムーズにできましたし、作業のフローに問題は感じませんでした。3人程度であれば、Word文章を共有する方式が便利です。

次は図版です。テキストが固まった段階で、私の担当分の図版の原稿を別に作って幾つかを提出しました。それを別の著者の方に、選択とWordに張り込んでいただきました。

この結果、テキストと図版を貼り込んだものは、学会誌の版面に近い状態にレイアウトされました。つまり本文二段組です。

ここで問題を一つ感じました。Wordのレイアウト結果は、学会誌の版面に近いといっても、学会誌はDTPソフトで組版されていますので、組版結果はWordのレイアウトとは改行位置がかなり違ってくると見込まれます。Wordの組版の仕方とDTPの組版の仕方はかなり違うからです。このため、せっかく、版面を似せても、できあがりのページ数が判断できないのです。そうしますと図版を貼り込んで最終版面に近い状態にするのに掛かった工数にどの位の意味があるのでしょうか。ページ数を見込むのにもっと適切な仕組が欲しいものです。

第二の問題ですが、Wordで二段組した結果は、本文の流れと二段組された表示上のテキストの位置関係がおかしくなってしまいした。次の図に示すように、本文のテキストの流れから判断するとレイアウトは左のようになって欲しいのに、Wordのページレイアウトは右のようになってしまったのです。

Article2

こうなってしまうと、なかなか正しいレイアウトに戻すことができません。ちなみにSBC[1]でPDFに変換しても同じようになりました。Word文書の内容を解析してみれば分かると思いますが、恐らくWord文書の中に、本来はあってはならない改段に関連する情報が入り込んでしまったのでしょう。あるいはWordのバグかもしれませんが、WordのバグならばSBCで同じ現象はでないでしょう。

これを修正するのに著者の方が結構苦労されていました。しかし、翻って考えますと、実はせっかく苦労して二段組にしても、上述の通り、レイアウトはDTPで組版すると変わってしまうのです。Wordで二段組のレイアウトにする、という投稿の方式(ワークフローの組み方)は見直す方が良いのではなかろうか、という印象をもちました。

[1] サーバーベースコンバータ

10月24日(月)バージョンアップ内容についてご案内するセミナーを予定しています。お申し込みはこちらからどうぞ:
http://www.cas-ub.com/user/seminar.html

『XSL-FOの基礎- XML を組版するためのレイアウト仕様』

XSL-FO本書は、主として XSL-FOドキュメントを印刷するソフトである XSL-FOプロセサ(弊社『AH Formatter』やアパッチの FOP など)を利用する人向けの解説書です。解説は、標準の仕様書の範囲内ですので、FOP などのオープンソース XSL-FOプロセサでも共通であり、『AH Formatter』のユーザでない方でも活用いただけます。詳しい情報

新ICTシステム展開に対する日米の空港における保守的態度、革新的態度の対照性を体験

書籍制作Webサービス『CAS-UB』のブログとしてはオフ・トピックですが、先週、米国に出張した際、空港でのICTシステム導入展開に関して、興味深い事例に遭遇しましたので紹介します。2つの事例を目撃しただけですが、なんとなく革新的システムの展開に対する日米の取り組みに、文化の対照性を感じました。

1.航空会社のチェックイン・システム

最初の例は、航空会社のチェックイン・カウンターでの新システム配置の相違です。海外旅行に行かれる方は、既にご存知の通り、航空会社のチェックイン・システムは自動化が進んでいます。しかし、同じ航空会社の日米の空港チェックイン・カウンターで配備の仕方が対照的になっている例がありました。

a.成田空港

次の写真は、成田空港におけるアメリカン航空のチェックイン・カウンターです。各受付カウンターに、セルフチェックインのための装置が配備されています。すべてのカウンターには、従来通りのチェックイン受付担当者も配置されています。旅客は待ち行列に並びます。チェックインは空いたカウンターの担当者が行列の先頭から順番に一人ずつ呼んで処理します。セルフチェックイン装置のディスプレイ画面には、受付のための挨拶文が表示されているにも関わらず、誰もセルフチェックインの装置を使っていません。係員は、列を作ってチェックインを待っている人達に、セルフチェックインを案内しようともしていません。ここでは、折角のセルフチェックイン装置は全く実用に供されていません。

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成田空港のアメリカン航空チェックイン・カウンターの様子

b.米国・フィラデルフィア空港

次の写真は、同じアメリカン航空のフィラデルフィア空港のチェックイン・カウンターです。セルフチェックイン装置だけの島があり、そこで(エコノミー客)全員がセルフチェックイン装置でチェックインするようになっています。セルフチェックイン装置をうまく使えない人もいるのですが、そういう人をアシストする係の人がいて、忙しく使い方を教えています。アシスト係りがあまりにも急いでいるので間違えそうで心配な位です。セルフチェックイン装置からは搭乗チケットだけでなく、預ける荷物につけるタグまでがプリントアウトされます。旅客は自分で荷物にタグまでつけてカウンターに出します。カウンターでは旅客の手荷物を受け入れるだけです。

20150314a
フィラデルフィア空港のアメリカン航空チェックイン・カウンターの様子

《日米比較》
成田空港では、従来の方式と新ICTシステムを並行して動かしています。しかし、実際にはだれも新ICTシステムを使わず、新ICTシステムはほとんど飾りとなっているようです[1]。フィラデルフィア空港では全員が新ICTシステムを使います。

2.入国審査システム

次の例は、入国審査システムです。どうやら、日米でICTを使った自動化入国管理システムが展開されようとしているようです。このシステムの展開の仕方にも日米でやり方が対照的になっていました。(入国審査のエリアはおそらく撮影禁止と理解していて、写真を撮らなかったのが残念です。)

a.米国ダラス・フォートワース空港

米国は、毎年2回程度訪問しています。昨年はロスアンジェルス空港とワシントン・レーガン空港を利用しました。米国入国の際は、最初の到着空港で入国審査があります。これまではいつも長い審査待ち行列にうんざりしていました。

ところが、今回、ダラス・フォートワース空港に到着して、入国審査に向かって驚きました。ここではESTA登録者全員に対して自動化した入国審査を通るように誘導されていました。そこに並んでいるのは、航空会社のセルフチェックイン装置に似た端末です。旅客自身が空いている端末を見つけます。入国審査官の面接カウンターはまったくありません。

従来は、審査官が顔写真を撮影していました。しかし、今回の新システムはセルフ審査情報入力端末(勝手に命名しています)に向かってすべて自分で入力します(誰も面倒見てくれませんでした)。顔写真の撮影、指紋の採取も機械の指示によります。左右の指を画面に置くと採取ができたかどうか端末に表示されます。さらに、従来であれば、入国審査の後、荷物を取って、手書きで記入した関税申告用紙を提出していました。新システムでは、審査情報に加えて、関税申告書に手書きで記入する内容もディスプレイにタッチして入力します。すべての入力が終わるとレシートをプリントアウトします。

この効果はテキメンで、今回は審査待ち行列に並ぶ時間はほとんどなく、入国審査の所要時間はずっと早くなりました。ただし、ディスプレイの質問が全部英語でちゃんと英語の説明文を読んで回答しないとスムーズに通過できません。「例えば、果物を所有していますか?」という質問の回答は、Yesがデフォルトですが、しかし、(実際に、もっていないときは)Noを選択しないといけません。英語がわからないか、間違って、デフォルトのままYesで押してしまうと、すんなり通過できないようです。英語が読めないと要注意です。そのうち、質問が多言語化されればかなり効率が良くなりそうです。

入国審査のエリアを抜けて、荷物受取エリアに進むゲートに係官がいてセルフ審査情報入力端末からプリントアウトされたレシートをチェックしています。レシートでOKの人だけ次のエリアに進みます。NGの人は、別の審査窓口(たぶん面接係官のいる窓口)に回されます。みていると、かなり多くの人が別の窓口に振り分けられていました。別の窓口でどういうやり取りがなされているかは不明です。

b.成田空港

成田空港にも自動入国審査システムが配備されています。ここでは自動入国審査システムは審査官による審査のカウンター列の端の方に数台配置されています。これを使おうとして近寄ってみますと「利用するには事前に登録が必要です」と張り紙があります。残念ながら使えません。

私が見ていた5分程度で自動入国審査システムを使っているのは一人だけでした。残りのほとんどすべての人は従来通り、審査官のカウンターで入国手続きを済ませていました。

《日米比較》
日本では、従来の方式を優先し、新端末はお飾りになっています。米国ではすべての人にいきなり新端末を使わせています。習うより慣れろという感じです。

3.結論
この2つの事例には共通項があります。日本の空港でも米国の空港でも同じような新ICTシステムが配備されているにも関わらず:

・日本の空港では、新ICTシステムは従来の人によるカウンターの隣に補助的に用意されています。しかし、ほとんど実用に供されていません。

・米国の空港では、全員が新ICTシステムを使うように誘導されています。もちろん、上手く使えない人がいるわけですが、そういう人は、アシストする役割の人が配置されていて面倒を見てくれます。米国のやり方は、という方針になっているように思いました。

ここに、新システム展開に対する、日本の保守的態度、米国の革新態度の対照性を見たように感じます。e文書法などの導入が、岩盤規制で阻まれて、10年たってもほとんど進まないのと同様に、日本では、折角新ICTシステムを開発しても、現場ではお飾りとして棚上げしてしまい、従来の方法を変えようしていない、と言ったら言い過ぎでしょうか。

[1] もしかしたら、まだ新ICTシステムはまだ稼働していないのか、あるいは私がチェックインしたときは故障していたのかもしれませんが。しかし、電源の入っていない装置には使えない旨の張り紙がありましたので、他の装置は動いていたと思うのですが。

本の折り方と書籍の総ページ数-今の本は8ページ単位で折っているものも結構多いようです

Page2015の会場(3階)では、キャノンマーケティングジャパン(CMJ)とホリゾンが隣で、デジタルプリンタで本を印刷し、自動製本機で製本する実演をおこなっていています。本が実際にできる工程を見るのは楽しいものです。

ホリゾンのブースでは実演している本をもらうことができますので、無線製本して断裁前の本をもらってきました(下の写真)。

20150206

CMJのデジタルプリンタの実演では面付けして印刷したものを配っていますが、このデモの本は1枚のA3サイズのカット紙に表4頁分・裏4頁分(合計8面)が印刷されています。

製本する工程では表裏に印刷した1枚の刷本から紙を折るのですが、「折りは16ページ折りが基準で」(『本作りの常識・非常識(第二版)』、野村 保惠、印刷学会出版部、p.203)とあり、16ページ折が多いのかと思っていました。

しかし、最近の本の総ページ数を調べてみますと、必ずしも16の倍数が多いということでもないようです。

手元にある101冊の本の総ページ数を調べてみた結果は次の図の通りです[1]。8の倍数が30点、16の倍数が26点、32の倍数が40点あります。8の倍数でないものも5点あります。結構、いろいろな折りの数があるようです。

20150206b

[1]手元にある本なので代表性は保証できません。2000年以降に出版されたものが中心です。総ページ数というときは、カバー(表1~表4)やボディと別の紙に印刷されたページ(化粧扉など)は含みません。しかし、ボディと同じ紙に印刷された書名扉(本扉)は含みます。

オープンソース収益化のモデル(メモ) 続き

8月11日オープンソース収益化のモデル(メモ)の続きです。

サービスモデルについて、アンテナハウスでは、DITA OTのプラグインとしてPDF5をオープンソースで提供しています[1]

8月11日の投稿でサービスモデルのことを書きましたが、PDF5についての弊社の経験ではサービスモデルはあまり有効ではないように感じます。

最近のDITAの案件をみていますと、PDF5を皆が使えるようになって競争相手が増えるという結果になっていると判断できます。つまり、もし、本当にビジネス上の大きなメリットをもたらすツールができるのなら、これはオープンソースにしないで秘匿して差別化のための武器として使うのが有効なビジネス戦略といえそうです。

弊社でも例えばEC Cubeのようなオープンソースを初めとして、もう数えきれないくらい沢山のオープンソースを活用しています。しかし、考えてみますと、少なくとも弊社からオープンソース開発者に対する支払いは皆無です。

サービスモデルってほとんど有効に働かないのではないだろうか? と考えるこの頃です。

PDF5についていうと、AH XSL Formatterの売上増には有効です。つまり補完モデルはビジネスモデルとして働くのは実感しています。

[1] DITAをPDFにするには