紙と電子書籍の同時発売の実現のための制作課題を整理する

「12月18日JEPAセミナー「電子書籍実務者は見た!」。泥臭い話の中から見える今後の方向」の続きです。

このセミナーの趣旨は、「現在の電子書籍(EPUB)の制作と流通向けのリリースは、紙の制作のワークフローの上に、EPUBの制作のワークフローが載っているので、大変効率が悪い。」そのことについて声を上げるとのことです。

もう一つ現実の問題として、現在、「紙とEPUBの同時発売が求められている」が、EPUBが発売されないか、EPUBの方が遅れがち、ということが切実になっているようです。この二つは必ずしも、同じ問題ではありません。ワークフロー以外に権利者や版元の考え方があるのは周知のことです。

ここでは、とりあえず、紙とEPUBの同時発売をどのように実現するか考えます。紙と電子の同時発売を実現するために解決すべき課題には、EPUB制作のワークフローの効率化と共通の項目が沢山ありそうですから。

さて、紙とEPUB同時発売を実現するための制作方法に関するアプローチには二つあります。

第一は、現在のワークフローを前提にしてEPUBの制作期間を短縮するというアプローチです。

梅屋氏(SBクリエイティブ)の報告では、現在のワークフローはDTPで紙の本を作り、それを底本として電子書籍を作るという方法です。現在は1ヶ月程度かかっているとのお話がありました。

この方法だと紙とEPUBを同時発売するには、EPUBの制作期間(開始から完成までの期間)を少なくとも1週間程度につめていく必要があるでしょう。現在のワークフローを前提にして、これを実現するためには、①DTPで紙の本を作るときにスタイル指定、グリフの指定方法、などDTPの機能の使い方に制約をかけて、②DTPから自動的にEPUBに変換できるようにし、極力自動処理でEPUBを作るということが解決策となります。

DTPの機能に制約をかけるには、DTP制作者のためのガイドラインを完備した上で、制作者を訓練する必要があります。

厄介なのは、現時点では紙の方が表現力が高く、EPUBの表現力は相対的に低いということです。表現力の異なる媒体のレイアウトを同時に指定するにはかなりのノウハウが必要です。場合によっては、紙のレイアウトで多少の妥協をすることも必要だからです。

従って、紙を制作する部門を上流におき、下流にEPUBを作る組織を置く組織作りではだめだということです。ひとつの部署が両方の制作に責任をもつ、つまり、紙の本とEPUBの本を同時に編集・制作するための組織・体制作りが必要です。

第一のアプローチは、堅実であり、版元と制作会社の経営陣がそういう方向を示せば、十分実現可能でしょう。

但し、このアプローチは、紙の本の出版点数の方がEPUBの出版点数よりも多い、という暗黙の前提があります。EPUBの方が出版点数が多い場合や、EPUBしか出さない(電子版のみの)場合は、このアプローチは意味を持ちません。

第二は、ワークフローを変えて、ワンソース・マルチユース方式をとるアプローチです。

第一のアプローチは従来の延長線上にあるのに対して、第二のアプローチは、従来のワークフローをガラッと変える革新となります。従って、第一のアプローチよりも課題は多く、しかも難しくなります。大雑把には次のような課題をあげることができます。

  • ソースとなるテキストをどのように完成するか? (原稿の整理、校正、校閲)
  • マルチユースでは、XHTMLがハブ形式になります。そのXHTMLハブ形式の仕様をどうするか? そして、原稿をどのようにマークアップするか? 原稿の完成とマークアップは、時には並行処理も必要なので厄介です。
  • レイアウトをどうやって、誰が指定するか? レイアウトを変更するには?
    • 特に紙の本のレイアウトをどのように指定するか? DTPに依存しないレイアウト方法を考える。
  • その他、コンテンツの管理方法など

上の2番目の課題、XHTMLをマークアップとオーサリングする方法には次のような選択肢がありそうです。

  • XML エディタやWebページのエディタを使って、人手でXHTMLをコピー&ペーストと範囲指定でタグ付けなどでマークアップする。DTPとは異なる技術的なスキルが必要です。こうしたスキルをもつ人材を社内に配置すると、従来よりコストアップになる可能性が大きくなります。
  • XHTMLを専門の会社に発注して作ることも考えられます。そうすると制作指示をしたり、納品物の検収する体制が必要となります。
  • テキストに簡易マークアップを施し、システムを使ってXHTMLを生成する方法もあります。現在、簡易マークアップに注目が集まっているのは、この一環でしょう。
  • 原稿をWordなどで執筆し完成原稿とした上で、変換によってXHTMLを作り出す。

上の3番目の課題、XHTMLから紙の本を組版する方法についてをもう少し詳しくいうと次のようになります。

XHTMLができているとき、紙の本のレイアウト制作については自動組版が第一候補になります。自動組版の選択肢には、XSL-FO、CSS、TeX、InDesignなどDTPを使う方法があります。自動組版はコンピュータで行なうものですので、社内で行なうにはXHTMLのマークアップと同様、スキルを持つ人材の確保の問題が出てきます。

第二のアプローチをとったとき、大雑把に言えば、従来のように人間のスキル中心の手作りを採用するか、コンピュータ中心の制作システムを採用するかという選択肢があります。そして、どちらを選択するべきかはそれぞれの要件を鑑みて決めることになるのでしょう。

同じような章立て構成、同じようなレイアウトの、型にはまった書籍を多数作るのであればシステムによる処理が有利になります。例えば、文字主体の新書はシステムで制作できます。

一方、ひとつひとつ書籍が章立て構成もレイアウトもまったく異なるのであれば手作りの方が有利になるはずです。一品生産ものを自在に作るためのシステム投資はあまり現実的ではありません。

ちなみにCAS-UBは、第二のアプローチで、かつ、人手は減らしてシステムで解決するという考え方をとっています。→機能の紹介

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デジタル出版物の制作方法 特にコンテンツの入力・編集の方法について

12月18日JEPAセミナー「電子書籍実務者は見た!」。泥臭い話の中から見える今後の方向

昨日のJEPAセミナー「電子書籍実務者は見た!」[1]は、電子書籍2.0を目指すために、現状を把握するという趣旨で捕らえると、大変に示唆に富む話が多くありました。やはり、現場をよく見て、問題点を把握し、その問題に応じて解決策を考えるということが重要です。ブログで、問題点や解決策までは踏み込むことは無理なのですが、とりあえず、セミナーの内容で感じたことをかいつまんでメモしておきます。

1.電子化

林氏の話。紙の出版のプロセスの中でデジタル化されている部分とデジタル化されていない部分が混在しています。その上に電子書籍のプロセスを載せると紙にくっつけた電子のプロセスになります。そうするとコストが2重にかかる部分が多く、却って生産性が落ちる部分があります。特に、校正の問題が大きいようです。

2.プリントファーストな組織

梅屋氏(SBクリエイティブ)は、年間480タイトル(月40タイトル)を電子版でリリースしているとのことです。SBクリエイティブの全体の組織の中での位置づけは、紙の本を電子化する担当です。底本とDTPデータが入力で、出力は、配信を受け持っているわけです。そうしますと、梅屋氏の立場では、入力と出力の間を効率化するかということが役割になっています。

3.クオリティの維持

梅屋氏は「単なる流し込みではクオリティが下がる。底本を参考にしつつ、できないことは省略して底本を再現したい。」と述べます。つまり紙と電子ではかなりクオリティの要求水準が異なるということです。

このほか、テキスト・リフローでは文字を追っていかないとクオリティが維持できず、複数の端末で確認することが大きな負担のようです。特に、テキスト・リフローのEPUBリーダーの表現力が不足しているとのことです。

4.ツールの使い方で解決する?

田嶋氏の話は、InDesignのDTPデータから電書を作るときに発生しやすい問題のことでした。

いろいろな具体例がありましたが、『InDesignでは印刷した誌面では見分けがつかないが、データの作り方には様々なバリエーションがあり、EPUBを作ろうとすると最後は眼で見て判断するしかない。InDesignはなんでも許す形で発展してきているので、いまから簡単に方向転換はできないだろう。』という趣旨の発言がありました。

そこで、これはInDesignで作業を始めるときに電子化をにらんで、予め注意しておくべきこととなるでしょう。印刷会社の中で閉じている場合は良いが、出来上がってしまったもの、誰が作ったのかわからないものを、広い範囲から受け入れる場合は難しいということになります。

5.EPUBのチェック

大江氏の話は、緊デジでリフロー型の電子書籍の受け入れチェックの話でした。

メタ情報の不整合があることが多いということが印象に残りました。

あとは、文字の範囲のチェックを行なって結果を可視化するのは面白いです。

単純作業に属するチェックを人間の手で行なうのはなく、チェックをワンストップで行なう機能をシステムに組み込むのは意味があります。

6.産業出版との相違点

安井氏の報告は、比較的小規模な産業出版での話しです。大規模な産業出版では、手作業では効率が悪すぎるということでDITAのような仕組みを使う方向で進んでいます。

産業出版と書籍出版との相違点は、産業出版は組織として推進し、権利が組織に帰属するのにたいして、書籍出版では個人の著者・編集者が主役となることでしょう。

ところで、安井氏のプレゼンで冒頭に、CAS-UBブログで紹介した画像[2]が投影されたのはちょっとびっくりしました。ブログの趣旨とは少々異なっていますが、これに関してFacebookでのコメント[3]がありましたので紹介します。

本セミナーは、プロ向けソリューションを提供するベンダーの立場としても大変参考になりました。最後に講師の皆様にお礼を申し上げます。

続編:紙と電子書籍の同時発売の実現への課題(メモ)

[1] http://www.epubcafe.jp/egls/epubseminar34
[2] 縦組みにおける章・節・項番号、図表番号、箇条書き番号の付け方について珍しい例
[3] 山本さんの感想ポスト (閲読者限定)
[3] 鎌田 幸雄さんの感想ポスト (閲読者限定)

デジタル出版物の制作方法 特にコンテンツの入力・編集の方法について

デジタル出版物(EPUB、PDF)をワンソースマルチユースで制作するワークフローについて考えて見ます。

先日Facebookで(https://www.facebook.com/kotaro.soryu/posts/580833075321422)で大変参考になる議論がありました。次に、Facebookの意見を参考にしながらもう少し考えてみました。

「ワンソースマルチユースの進化が遅い」(高木さん)というコメントがありました。確かに、そのとおりと思います。ワークフローを実際に動かすには関係者の学習が必要であり、また、システム化するとシステム構築のコストがかかるため、なかなか簡単には切り替えることができません。WYSIWYGがかなり急速に普及したのと比べると、ワンソースマルチユースの進化が遅いのは、システムコストの側面と、利用者の慣れ・学習の側面があるように思います。

「学習コストは別としてTeXはやっぱりシステム自体は完成されている」(山本さん)というコメントがありましたが、確かにTeXは、スタイルセットがいろいろ用意されているなど完成度の高い仕組みができています。

ワンソースマルチユースのワークフローでは、コンテンツとレイアウトの関係を再定義する必要があります。そこで上流から下流を、①ソースコンテンツの制作、②中間コンテンツの編集、③配布コンテンツの生成に分けてみると良いのではないかと考えています。

①ソースコンテンツとは、伝えたい言語内容を表現する文字(テキスト)、画像、数式、場合によっては動画などの表現したい内容の素材です。
②中間コンテンツとは、ソースコンテンツを配布形式にする過程で、ソースコンテンツを統合して作業する対象です。InDesignを使う場合は、InDesignのファイル形式であり、HTMLでオーサリングするのであればHTML形式が中間コンテンツとなります。XML形式のこともあります。中間コンテンツは、オーサリングの対象となりますので、オーサリングの仕組みと対で考える必要があります。
③配布コンテンツとは、デジタルコンテンツの配布形式です。現在では、PDF, EPUB, Web, などが主流です。配布コンテンツはPDFのようにレイアウト処理済みの形式と、WebやEPUBのようにレイアウト処理を、可視化時に行なうものがあります。いづれにしてもレイアウト指定が重要なポイントとなります。

ワークフローを考える第一のポイントは、ソースコンテンツから中間コンテンツを作る方法です。第二のポイントは、中間コンテンツから配布コンテンツへの変換の方法です。

TeXは大変に優れたシステムですが欠点もあります。第一に、ソースコンテンツにTeXの命令を埋め込みます。そこで、制作者がTeXの命令の使い方を学習する必要があります。つまり学習コストが大きいのです。第二に、TeXは紙への印刷やPDFの生成ではシステムとして完成しています。しかし、Webコンテンツに変換しようとすると、留意しないといけない側面もあります。つまり、TeXの命令は、ドキュメント処理用の命令、文字の表現、数式の記述の命令、システムやユーザーのマクロ命令など、役割の異なる命令が不可分に混在しています。また、TeXが開発されたのは、8ビットCPUの時代です。このためTeXは、現在ならUnicodeで表すことのできる文字をコマンドを使って表すなど少々時代遅れです。また、数式の中にテキストの記述が混在しています。MathMLでは、数式の中にテキストの配置を記述することができないため、数式をMathMLのようなマークアップに変換するのは極めて困難です。TeXドキュメントの中にユーザーの作ったマクロ命令が入っていたら汎用のコンバータではWeb形式に変換できないでしょう。

最近、人気をあつめているマークダウンは、ソースコンテンツに簡単なテキスト記法でマークをつけて、それをマークダウン処理ソフトで、中間コンテンツであるHTMLに変換する方法です。マークダウンの長所は、テキストのソースを簡単に記述できることですが、欠点はコンテンツの形式が極シンプルなものなら良いのですが、少し複雑なものは非常に難しくなります。マークダウンを採用して、今年、人気をあつめたサービスに「でんでんコンバータ」[1]があります。この記法の説明を読むと、HTMLで頻繁に使うクラス属性やID属性をつけるのが難しいことがわかります。「でんでんコンバータ」は簡単なEPUBを作るには良いですが、PDFは作れません。

CAS-UBは、Wiki記法を拡張したCAS記法を使ってソースコンテンツにマークアップします。CAS記法では、クラス属性やID属性などを簡単に付けることができるようにしています。CAS記法の方がマークダウンよりは考え方としては進化しています。CAS-UBでは、生成処理でEPUBとPDFを両方とも作れます。

CAS記法にしても、マークダウンにしても、独自の記法を覚えなければなりません。この記法によるマークアップは、プログラム作成と比較するととても簡単ですし、HTMLを直接記述するのと比べてもかなり楽です。従って、IT系では受け入れられやすいようです。しかし、どうも、一般の著者・編集者・制作者には敷居が高いようです。

結論として、一般の著者・編集・制作者にとってもっとも敷居の低い方法は、WordなどのWYSIWYGのワープロで原稿を用意して、そこから自動的に中間コンテンツに変換する方法のようです。しかし、Wordはもともと紙に印刷する想定でレイアウトを指定します。そして、一般のユーザーはレイアウトを優先して編集することに慣れています。ところが、レイアウト優先の文書は中間コンテンツにうまく変換できません[2]。うまく変換するには、Wordのスタイルを使って構造を統制した文書を作らねばなりません。CAS-UBによるワンソースマルチユースを普及させるために、今後は、Wordによるスタイル編集の普及・啓蒙活動に取り組みたいと考えています。

現在、配布コンテンツの形式が紙のみからEPUBやWebまで多様化していることから、ワンソースマルチユースの重要度が高まっています。ワンソースマルチユースでは中間コンテンツからマルチ配布形式を生成するため、中間コンテンツはレイアウトを分離しておき、生成時にレイアウト指定処理を行なうのが良いと考えます。このメリットを生かすにはレイアウト指定をパターン化・テーマ化し、そのテーマを増やすことが課題です。

[1] 電書ちゃんのでんでんコンバーター – でんでんコンバーター
[2] 『マニュアルEPUB化ハンドブック2014年版  EPUBマニュアル研究会報告書』(第3章参照)

CSSによる本作りの未来を占う―HTMLBookとはどのようなものか? 果たして普及するだろうか? 

最近、HTMLとCSSによる書籍制作が話題になっている。この話題を整理するとともに、この動きが大きな潮流になるかどうかを検討してみたい。未来がどうなるかを予測するのはなかなか難しいところだが、できるだけ論理的に考えてみよう。

まず、O’Reilly Mediaが提唱するHTMLBookを見てみよう。

1.HTMLを利用した書籍形式:HTMLBook

HTMLBookの仕様は次に公開されている。

HTMLBook

トップに「Let’s write books in HTML!」というスローガンがあるので名前のとおりHTMLで本を書いてみようということらしい。HTMLBookについて次のことを検討してみよう。

(1) HTMLBookとはどのようなものか? どうやってオーサリングするのだろうか?
(2) HTMLBookとほかのXMLドキュメント仕様との関係は?
(3) HTMLBookはPDFやEPUBとはどのような関係になるだろうか?
(4) HTMLBookはどのような分野で、どのように使われるだろうか? HTMLBookは普及するか?

2.HTMLBookとはどのようなものか? どうやってオーサリングするのだろうか?

2.1 HTMLBookの仕様

HTMLBookの仕様は現時点では作業ドラフトとされている。最新版は2013年8月付けである。

(1) HTMLBookは、HTML5のサブセットである。
(2) 技術書と参考書に使われる複雑な内容を含め、書籍の構造をあらわすように作られている。

HTMLBookの仕様

2013年8月版では次の要素が説明されている。HTML5をベースとするが、本を構成する部品はsectionを単位とし、部品の種類をdata-type属性で規定するのが特徴である。

(1)本を構成する部品
・Book 本 <body data-type="book">
・Chapter 章 <section data-type="chapter">
・Appendix 付録 <section data-type="appendix"> ほかに"afterword"がある。
・Bibliography 文献 <section data-type="bibliography">
・Glossary 用語 <section data-type="glossary">
・Preface 前書き <section data-type="preface"> ほかに"foreword", "introduction"がある。
・Frontmatter 前付け <section data-type="titlepage"> ほかに、"halftitlepage", "copyright-page", "dedication"がある。
・Backmatter 後付け <section data-type="colophon"> ほかに"acknowledgments", "afterword", "conclusion"がある。
・Part 部 <div data-type="part"> (章の親)
・Table of Contents 目次 <nav data-type="toc"> EPUB3のナビゲーション文書に準拠する。
・Index 索引 <section data-type="index"> EPUBの索引仕様準拠を推奨する。
・Sections 節 <section data-type="sect1"> "sect2", "sect3", "sect4", "sect5" は順に階層構造をなす。

(2)ブロック要素
・Paragraph 段落 <p>
・Sidebar サイドバー <aside data-type="sidebar">
・Admonitions 警告<div data-type="note"> ほかに、"warning"がある。
・Tables 表 <table>-<caption>-<colgroup>-<thead><tbody><tfoot>-<tr>-<th><td>
・Figure 図 <figure>-<figcaption>-<img>
・Examples 例 <div data-type="example">
・Code listings コードリスト <pre data-type="programlisting">
・Ordered lists 番号付きリスト <ol>-<li>
・Itemized lists 番号なしリスト <ul>-<li>
・Definition lists 定義リスト <dl>-<dt>
・Blockquote ブロック引用 <blockquote data-type="epigraph">
・Headings 見出し <h1>, <h2>, <h3>, <h4>, <h5>, <h6>
・Equation 数式 <div data-type="equation"> (MathMLを埋め込むことができる)

(3)インライン要素
・Emphasis 強調 <em>
・Strong 強い強調 <strong>
・Literal リテラル(インラインの整形済み) <code>
・汎用範囲指定 <span>
・Footnote, endnote 脚注・後注 <span data-type="footnote">
・Cross-references 参照 <a data-type="xref" href="#html5">
・Index Term 索引語 data-type="indexterm"; data-primary, data-secondary, data-tertiary; data-see, data-seealso; data-primary-sortas, data-secondary-sortas, data-tertiary-sortas
・Superscripts 上付き <sup>
・Subscripts 下付き <sub>

(4)対話
・Video ビデオ <video>
・Audio オーディオ <audio>
・Canvas キャンバス <canvas>

(5)メタデータ
・Metadata points メタデータ項目 <meta>: name, content

2.2 HTMLBookはAsciidocで記述できる

HTMLBookはどのようにオーサリングするのだろうか? HTMLBookはXSDスキーマが公開されているのでスキーマをサポートするXMLエディタを使えば、オーサリングは可能だろう。しかし、XMLエディタは一般の著者にはハードルが高い。

O’ReillyはAtlasという書籍編集制作サービスを運用している。Atlasでは当初Asciidocというテキスト形式で書籍をオーサリングするようになっていた。AsciidocとHTMLBookは一体どのような関係なのか?

Asciidocでは、コンテンツをテキストで執筆する。Asciidocはプレーンテキストに加えて、Wiki記法に似た簡易テキストマークアップ記法を使って、コンテンツにマークアップができる。画像やマルチメディアの埋め込みもできる。

Asciidocで1冊の本を執筆するときは、章などの単位でファイルを分けておき、ビルド用のファイル(book.asciidocなど)にinclude::[]マクロを記述することで1冊に統合する。

AscciidocをHTMLBookに変換するためのスクリプトが提供されている。こうしてみると、オーサリングは、Asciidocで行い、そこから変換することによってHTMLBookを生成するという想定のようだ。

asciidoctor-htmlbook

3.HTMLBookとほかのXMLドキュメント仕様の関係は?

3.1 DocBookをHTMLBookに変換できる

O’Reillyは、DocBookのサポートで有名であり、同社の書籍の多くはDocBookを利用して作成されていたようだ。GitHubには、DocBookをHTMLBookに変換するツールが公開されている。DocBookを使ってソースを編集した場合には、それをHTMLBookに変換することができる。

docbook2htmlbook

4.HTMLBookとPDF, EPUB, HTMLの関係は?

・HTMLBookのためのCSSテーマとして、“atlas_tech1c_theme” 、“atlas_trade_theme”が提供されている。CSSテーマは、EPUB、HTML、mobi、PDFの4種類がセットになっている。HTMLBookを、4つの媒体でできるだけ同じような見栄えで表示できるようなCSSが作成されている。

5.HTMLBookはどのような分野で使われるだろうか? 普及するだろうか?

以上から、HTMLBookは、本を直接オーサリングするというよりもむしろEPUB、mobi、HTML、PDFの形式で配布するための一種のハブ形式になっていると言ってよいだろう。原稿自体は、DocBookやAsciidocで記述して、それをHTMLBookを経由して配布形式にするという使い方が多いのではないだろうか。

・O’Reillyの説明にもあるとおり、HTMLBookは技術的な参考書を表現することをかなり意識している。しかし、書籍にはさまざまな種類がある。その中でどの程度の種類コンテンツを記述できるかは未知数である。このあたりは実際に使ってみないとわからないだろう。

・一般に、XMLなどのマークアップ言語を使ってドキュメントを執筆すると必ず出てくるのが、自分が書きたい・表現したいコンテンツをうまく表現できないということである。どうしても満足できない場合は、スキーマを独自拡張することになる。独自拡張はあまり望ましくないが、現実の問題としては、普及すればかならず独自拡張のニーズが生まれるものだ。HTMLBookが広く普及するには拡張を行なうための手続きやメカニズムが提供されている必要があるだろう。そしてユーザーによる拡張を標準に取り込むプロセスも欲しいところだ。

・HTMLBookが普及するかどうかは、周辺のツールやテーマの種類が増えるかどうか。また、それを利用する人たちのコミュニティが形成されるかどうか、が鍵になるだろう。まずは、O’Reilly以外に、これを採用するユーザーが出現するかどうか、に注目したい。

『DITA CCMS調査レポート2013』BOD(Book on Demand)版ができました。

先週『DITA CCMS調査レポート2013』を発売しました。本レポートはCAS-UBで制作し、EPUB(Kindle mobi)形式の電子書籍版とBook on Demandによる製本版を作成しています。

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図1 表紙

このところ、EPUB3の登場で、電子書籍が盛り上がっていますが、製本版とEPUB版の両方を比較してみますと、やはり紙版も捨てがたい魅力があります。

紙版の判型はB5ですが、B5に10ポイントの文字で印刷しますとゆったりとして読みやすく感じます。

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図2 本文(第2章の先頭)

表は本文よりも文字サイズを小さくするほうが良いかもしれません。

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図3 本文(表)

EPUB版にも索引はありますが、索引は少し小さめな文字で2段組にすると引きやすくなります(EPUBリーダーで2段組を表示できるものはまだないだろうと思います)。CAS-UBでは、階層化した索引:図4ではCCMSなど、2重(親子関係を逆転)の索引:図4ではBOM―製品データ、製品データ―BOMなど、も作ることができます。

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図4 索引

『DITA CMS調査報告2013』の詳細ご案内

『DITA CCMS調査レポート 2013』を発刊。プリント版、EPUB版、Kindle(mobi形式)版を同時に発売します。

本日より3日間、DITA Festa 2013 Autumnの開催です。今回のDITA Festaは、午前中に啓蒙的なセミナーを実施、午後は会員等によるプレゼンテーションになります。

DITA Festa 2013 Autumn(本日より開催)

アンテナハウスでは、DITA Festa開催のタイミングにあわせて、『DITA CCMS調査レポート 2013』を発刊します。

DITAの制作は、コンテンツをトピックという小さな単位(コンポーネント)毎に編集します。そしてひとつの出版物は大量のトピック(XML形式)や画像などのバイナリーのデータから構成することになります。従ってDITAにおいては、膨大な数のコンポーネントを管理するためにCCMS(コンポーネント・コンテンツ管理システム)を導入するのが一般的です。

また、DITAで制作したコンテンツを多言語に翻訳することになりますが、CCMSは翻訳管理の機能を受け持つこともあります。

欧米では、DITAの市場が拡大するに従い、多数のCCMSが登場しました。また、日本製のCCMSも登場しています。このようにユーザー企業のDITA CCMS選択肢が増えています。しかし、日本に支店・代理店をもたない海外企業の製品も多いことなどから、ユーザー企業がDITA CCMSの網羅的な情報収集するのは時間とコストがかかります。

そこで、アンテナハウスは、矢内テクニカルサービスと共同でDITA CCMSの製品調査を実施しました。その調査報告書ができあがりました。

○書誌情報
・書 名:『DITA CCMS調査レポート 2013』
・発行日:2013年10月
・著 者:矢内英彦
・発行所:アンテナハウス株式会社CAS電子出版

○ISBN
印刷版(B5判 126頁) ISBN 978-4-900552-10-4
EPUB3形式、Kindle(mobi)形式 ISBN 978-4-900552-11-1

○価格
印刷版:52,500円(税込み)
電子版:36,750円(税込み) 

☆電子版はDRMフリーですが、著作権者または発行者の許可なく複製を禁止しています。

○Webページ
『DITA CCMS 調査レポート2013』

○販売方法
当面の間、アンテナハウスの直販のみとなります。
こちらの申込書でお申し込みください。
申込書(PDF)

○ちらし
20131023
(ご注意:Kindleストア、iBookstoreからは、現時点では配信しておりません。)

CAS電子出版第1号『魔性のプレゼンテーション』をiBookstoreで販売開始。

CAS-UBで制作したEPUB版電子書籍第1号『魔性のプレゼンテーション』がiBookstoreで販売開始になりました。

ibooksStore

本書は、CAS-UBで最初に販売用の本として2011年9月に制作したものです。その頃は、EPUBを販売するストアがなかなか見つからないためDLマーケットで発売しました。

その後、2012年にはアマゾンのKindleストア、楽天Koboストアでも販売ができるようになり、Kindleストア、Koboストアでも発売しています。

で最後に、アップルのiBookstoreでこの程発売しました。

CAS-UBは、本を制作するサービスなので、いまのところ本の販売を積極的に行なっているわけではありません。『魔性のプレゼンテーション』の販売は、CAS-UBで制作したEPUBをiBookstoreでも販売できることを示す意味もあります。

ところで、販売ストアとしてはiBookstoreはあまり親切ではありませんね。

まず、ストアで販売するにはiTunes Producerが必要なのですが、iTunes ProducerはMacOSでしか動かないので、結局、Macを買う必要があります。このために15年ぶり位にMacを買ってしまいました。

次に、iTunes Connect, iTunes Producerのメニューとメッセージは英語のままです。英語が読めないと電子書籍の販売開始もできません。

さらに、EPUBをアップロードしてから、2週間も何の連絡もなく放置されます。で、忘れかけた頃に発売開始されましたが、発売開始されても何の連絡もありません。ちなみに、この本は一部SVGを使っていますが、ノーエラーで発売になりました。

こうしたところを見ますと、アップルはまじめに商売をやろうと思ってはいないのだろうという印象を持ってしまいます。

『PDFインフラストラクチャ解説』の0.35版を公開しています。PDFにおけるJavaScriptの節が追加になっています。

報告が遅くなりましたが、『PDFインフラストラクチャ解説』は、8月2日に14.3節 PDFにおけるJavaScriptの項目に内容が入りました。

7月は2回更新です。

『PDFインフラストラクチャ解説』は、仕事柄PDFを使いこなすことが必要となる専門家、技術者を対象としてPDFを使うこなすためのできるだけ正確な知識を提供することを目標としています。

PDFは、紙に印刷する内容をデジタルで完全に表すことができる、という点で20世紀最大の発明と思います。

それだけではなくて、JavaScriptによって動的なアクションも定義されるなど、紙を超える機能もあります。

本書も広範なPDFの機能を、まだ紹介しきれていない状態なので、がんばって改訂を続けて、早く公刊にこぎつけたいものです。

PDF版とEPUB版を公開しており、無料でダウンロードしていただくことができます。
ダウンロードへは次の画像をクリックして進むことができます。

cover-thums

【追記:2016/1/21】
2016年1月に本書発売となり、無償配布を終了させていただきました。(『PDFインフラストラクチャ解説』POD版とKDP版が揃い踏みとなりました
【追記:ここまで】

「消費税・相続税 早わかりセミナー」     ~~ 制度変更への対応 ~~

消費税率引上げまであと半年余りとなってきました。
消費税の仕組み、その原則と特例、経過措置について「簡単解説20ヶ条 消費税率アップ」 の著者である小林秀男がお話します。

そして平成27年からは相続税の課税範囲拡大が既に決まっています。
いま注目の消費税と相続税について専門の税理士がわかりやすく解説いたしますので会社務めをしている方、個人事情主の方に大いに役立つ内容。

参加された方全員に 『簡単解説20ヶ条 消費税アップ ―その原則・特例と経過措置―』[1]
(2013年6月発行) の印刷版を贈呈します。

開催日時
2013年8月23日(金) 18時30分~20時50分(21時終了)
受講料3,000円(税込)

開催場所
市ヶ谷健保会館 E 会議室(定員35名)
東京都新宿区市谷仲之町4-39 
市ヶ谷健保会館   

第1部
簡単解説 消費税率アップ
・新税率適用の原則と経過措置
・いま対応すべきこと  (ディード経営税務事務所代表 税理士 小林秀男)

第2部
簡単解説 相続税制改正への対応
・基礎控除の引下げ
・土地や株式の評価のあらまし
・いま考えられる対応       (ハンドメイドAC代表 税理士 村上光)

参加ご希望の方は事前予約お申し込みください。
定員35名(事前予約制)
お申込みはこちらから 
エクスイズムのWebページ

セミナー案内(PDF)ダウンロード
 

簡単解説 「消費税・相続税 早わかりセミナー」についてのお問い合わせは
株式会社エクスイズム 営業部まで
お問い合わせ
→ https://www.exism.co.jp/contact/form/forminq.html
→ exsales@exism.co.jp
→ 03-5229-8761

[1] 『簡単解説20ヶ条 消費税率アップ』プリント版できました。

「国際電子出版EXPO」終了。EPUBは市民権を得た。

2013年の国際電子出版EXPOが昨日で終了しました。昔のデジタルパブリッシュングフェアの時代から通算すると随分と長いこと、この展示会に出ています。

イーブックス1

昔はAH Formatter[1]という自動組版ソフトを中心に展示していました。AH Formatterは専門的でニッチな製品で、展示会としてはちょっとずれているかな、という感がありました。AH FormatterはXML自動組版なので、XMLドキュメントに関する展示会が本当は向いているのですが、そういう専門的な展示会は残念ながら日本にはないようです。でちょっとずれていると思いながら、出展していたのです。

2011年から2013年までの3年程は、CAS-UBを中心に展示しています。CAS-UBは電子書籍を中心とするデジタルファースト方式の出版物制作ツールという位置づけですので、国際電子出版EXPOでブースにお出でいただいた方の反応がひとつのメルクマールになります。

CAS-UBの製品側としては、システムの改良を重ねて、この1年間で随分と実践的になってきたと思います。CAS出版として制作した数もそう多くないですが実績になり始めています。また、実際に、アマゾンKindleや楽天Koboで販売している出版物の点数も増えていますし、CAS-UBで制作するお客さんも増えつつあります。

来場される方のほうも、当初はEPUBについてまったくご存じないかたが多かったのですが、今年は、「EPUBってなに?」という質問をいただくことはなくなりました。
仕事でEPUBを作っている方も多く見かけるようになり、EPUBが確実に市民権を得たという印象があります。

さて、現在のところ、出版物のEPUBの制作は、印刷会社が行なうケースが多いようです。で、印刷会社で制作を担当している方々は、現在のEPUBの作り方は効率が悪いということで、何かもっと良い方法がないものかと模索しておられるようです。

ただし、商業出版物制作の最上流は版元になります。版元の方からこれでやってほしいと言われると受注業態としてはなかなかそれをひっくり返せないということになります。

現在、CAS-UBを使っていただいているユーザー層の中心は、制作会社側ではなくむしろ版元側が多いのですが、そうなっている理由はこんなことからも理解できます。

今年は、CAS-UBで電子書籍を作るだけではなくて、印刷の本もできるということを認識していただくため『簡単解説20ヶ条 消費税率アップ ~その原則・特例と経過措置』という本を制作してプリント版を配布しました。

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これについては手にとっていただいただいた方々から、「おもったより綺麗にできている!」という感想を沢山いただけました。CAS-UBは紙の本の制作というレガシーな部分ももっと追求していきたいと考えていますので、このあたりはもくろみ通りでした。次回も新しいねたで企画してみたいものです。

さて、CAS-UB、次の展示会は10月初旬のフランクフルト・ブックフェアです。いよいよ、海外で売り込み開始ということで、これから約3ヶ月英語版の完成度を高める作業に注力です。

[1] AH Formatter
[2] 『簡単解説20ヶ条 消費税率アップ ~その原則・特例と経過措置』