『本を作るための新しい仕組みの登場』(EPUB本)アルファ版

以前にブログなどに書いた記事を少しまとめて、『本を作るための新しい仕組みの登場』というEPUB版(アルファ版)にしました。

考え方をもう少し整理してみたいと思っていますが、関心をお持ちの方にお読みいただいて批判をいただけると幸甚です。

http://www.cas-ub.com/project/publications/book-production.epub

『PDFインフラストラクチャ解説』を0.32版に改訂。PDF/Aの解説を改訂し、PDF/Aの作り方の節を追加しました。

6月2日『PDFインフラストラクチャ解説』を0.32版に改訂しました。

平成25年4月1日より、学位規則(昭和28年文部省令第9号)が新しくなり、国会図書館で収集する博士論文の電子データの形式がPDF/A推奨となります。

◎国会図書館
国内博士論文の収集について3. 博士論文の電子データの形式を参照

これにあわせて『PDFインフラストラクチャ解説』でもPDF/Aの仕様解説を詳しくするとともに、PDFの作り方の解説の項を追加しました。

■『PDFインフラストラクチャ解説』はCAS-UBで編集し、EPUB3版とPDF版を作成して、無料で配布しています。

資料はこちらからダウンロードしていただくことができます。2016年1月本書を正式発売しましたので、無償配布を終了いたしました。詳細は、下の【広告】をご参照ください。

◎CAS電子出版の紹介
無償配布している出版物

■第0.32版の改訂内容

0.32版では、次の改訂を行ないました。

(1) 0.31版「第24章PDFの国際標準」の章を「第2章PDFの国際標準」に移動する。

(2) 「2.5 PDF/UA(ISO 14289)」(PDFのアクセシビリティ)の節を追加。

(3) PDF/X関連の節を、「第17章 印刷ワークフローにおけるPDF」の章17.2~17.7に移動。

(4) PDF/A関連の節を、「第22章 PDFの長期保存」の22.1~22.4に移動。

(5) 「22.2 PDF/A-1」 に関する説明を改訂してより詳しくした。

(6) 「22.5 PDF/Aの作り方」の節を追加

CAS-UBとO’Reilly Atlasの機能を比較してみた。

米国のO’Reilly Media社は、5月2日、非常に成功した出版関係のカンファレンスであるTools of Change for Publishingを終了して、出版のプラットフォーム事業を進めると発表した[1]。

そして、そのプラットフォーム事業の中核エンジンとしてAtlasを開発している[2]。Atlasはまだベータ版であるが、コンファレンスなどを通じて積極的なPR活動にのりだしている。

Atlasは、Webベースで本格的な書籍を執筆し、PDFとEPUB・mobiなどのマルチ形式で配布物を生成する機能をもっている。特に著者や編集者自身に執筆・編集してもらおうと考えているようである。このあたりのコンセプトは、CAS-UBとまったく同じである。

そこで、CAS-UBとAtlasの機能を比較して、概要を次表にまとめてみた[3]。

Atlasは記述形式の中核にAsciiDocを採用している。プログラムコードなどはAsciiDocをバイパスしてDocBookに直接取り込むことができる。AsciiDocは書籍構造をビルドインしている。これは簡単な英語版書籍の制作に向いている。こうした点で、書籍の編集と配布物の生成機能全般としては、現状ではおそらくCAS-UBの方が優れているように思うが、特にソーシャル連携などはAtlasにはCAS-UBが用意していない機能もある。

O’Reillyは、Atlasを出版事業の拡大の手段たるプラットフォームとして位置づけている。これに対し、CAS-UBは情報提供者へのサービスとして位置づけている。このように、現状ではAtlasとCAS-UBはポジショニングが異なり、直接競合するものではないが、今後、Atlasの良いところを研究してCAS-UBに取り込んでいきたいと考えている。

○CAS-UB vs Atlas

項目 CAS-UB Atlas
書籍フォーマット 出版物の種類&記事の種類を設定する。出版物の種類は、書籍1(日本語、英語)、書籍2(日本語)、ノート1(日本語、英語)、マニュアル1(日本語、英語)。 AsciiDocが基本。AsciiDocには一つの出版物種類(CAS-UBの「書籍1英語」に相当する)と記事の種類がビルドインされている。
マークアップ 各記事の内容はCAS記法で記述する。CAS記法はCreoleWiki標準を基本にして独自に拡張した簡易マークアップ記法である。 コンテンツのマークアップはWikiを拡張した簡易マークアップである。Markdownに近い。
バージョン管理 SVN。出版物を切り替える毎にSVNに保存してバージョン管理する。記事を保存する毎ではない。 Git。AsciiDocファイルをWikiインターフェイスで保存する毎にGitに記録してバージョン管理する。Gitに直接git push, git commitコマンドで登録もできる。
変更の追跡 更新ログ一覧と履歴メニュー 変更画面に変更点を表示する
配布物生成 生成メニューで対話的に条件設定して生成 配布物生成時に含めるファイル(AsciiDocテキスト)を指定する。
中間形式 独自XML(XHTMLに若干の属性を追加したもの) DocBook XML 4.5。生成時にAsciiDocからDocBookに変換する。なお、XMLマークアップしたフラグメントをDocBookに直接渡すこともできる。
出力フォーマット PDF, リフロー型EPUB2/3, 同mobi, Web, HTMLHelp PDF, リフロー型EPUB3, リフロー型mobi, Webブック
PDF生成エンジン AH Formatter V6.0 XSL-FO組版機能 AH Formatter V6.0 CSS組版機能
debug エラーメッセージベース。 toolを提供(?)。エラーログベース。
アカウントの開設 試用ライセンス(無償)と正式ライセンス(有償) O’Reillyか他の著者からの招待でアカウントを開設する
共同編集 出版物のオーナーが協力者を登録して共同編集できる。編集権限の設定ができる。 プロジェクトオーナーが協力者を招待して登録する。Atlasでプロジェクトを開始したら、直ぐに協力者を招待できる。編集権限の設定ができる。
執筆環境 CAS-UB上でブラウザで編集する。出版物の構成編集と記事編集の機能をもつ。構成編集は独自のインターフェイス。記事編集はフォーム上でテキストをCAS記法マークアップ入力である。 Atlas上のWiki編集インターフェイスまたはローカルPCで編集する。
ローカル編集 機能なし ローカル編集をするにはローカルPCにGitをインストールして、git cloneでAtlasからクローンを作成する必要がある。ローカル編集ではAsciiDocをテキスト・エディタで編集する。共同編集ではGitのコマンドを使って他の著者のデータとの調整を行なう。
図版挿入 編集画面で挿入位置にアップロードまたは図版を予めアップロードしておきリストから選択する。 図版をアップロードしておきイメージマネージャでサムネイルを選択する。
図版形式 SVG, PNG, GIF, JPEG 説明なし
コード記述 <pre>を使う。 コードのインライン書式記述機能やDocBookへのコードの直接取り込みなどがある。
数式 LaTeX, MathML, SVG(MathML, SVGはV2.2より) LaTeX
索引 CAS記法で単独索引、入れ子の索引、相互入れ子の索引を指定できる AsciiDocを独自拡張して索引機能を強化している。
メタデータ 出版物情報編集でDBに登録する。その中から指定した情報をPDFの奥付け、EPUBのメタデータなどに記録する。 オプションでbook-docinfo.xmlファイルを別途用意して追加する。copyrightページに記録する。
データインポート テキスト、Microsoft Word文書、PDF、WordPressのエクスポート(WXR)形式 説明なし
フィードバック cas-supportへのメールなど。FacebookにCAS-Clubを開設している。 GitHubとの親和性が高い。GitHub上にフォーラムがある。
読者からのフィードバック 機能なし Web版の本を公開できるChimeraサイトで読者からのフィードバックを得ることができる。コメント・調査・投票、Google Analyticsの利用ができる。
ソーシャル連携 機能なし ソーシャルサイドバーでChimeraのコメントの表示などができる。

[1] http://toc.oreilly.com/
[2] http://atlas.labs.oreilly.com/
[3] Atlasの機能は、O’Reilly Media「Getting Started with Atlas」Ninth Release 2013/5/29による。