CAS-UBに、プリントオンデマンド販売用PDF設定用ボタンを追加しました

既にご案内のとおり、アンテナハウスではCAS-UBで制作したPDFを、アマゾン、三省堂、他のオンラインストア経由で出版するサービスを開始しました。

本サービスについてのご案内ページ:本の制作室 プリントオンデマンド出版サービス

プリントオンデマンド(POD)用PDFは次のような制約条件があります。

・PDFのバージョンは1.3
・断ち切り3mmを周囲につける。トンボはつけない。
・表紙(cover)はなし。 (クルミの表紙を別途用意する)
・判型は新書サイズ~A4まで
・透明効果は不可(PDF1.3では透明を使えない)
・マージン(仕上がりサイズに対して):天地、小口は6.35mm、ノドはページ数による
 24~150 ページ 9.53mm
 151~300 ページ 12.7mm
 301~500 ページ 15.88
 501~700 ページ 19.05mm
 701~828 ページ 22.23mm
・奧付に印刷、製本、価格情報を載せない
・総ページ数は偶数

PDF設定のメニューで、上の条件指定できます。しかし、ばらばらに指定するのは面倒で、忘れてしまいがちです。そこでCAS-UBの12月3日定期メンテナンスで、POD用PDFをワンボタンで設定する「POD版設定」を用意しました。
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「POD版設定」を押すと、通常のPDFレイアウト設定をコピーした上で、POD版の要求を満たすように変更した設定を作ります。この設定を名前を付けて保存できます。これにより、通常のPDF出力設定と、POD版PDF出力設定を切り替えて使えます。
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お知らせ: CAS-UBで作ったPDFを、アマゾンなどから紙の本として出版するサービスを始めます。

アンテナハウスは、近く、CAS-UBで制作したPDF本をアマゾンなどからプリント・オンデマンド(POD)方式で紙の本として出版・販売するサービスを始めます。

本を事前に印刷して在庫を持つ負担がありません。著者に負担していただく出版・販売のための初期コストはわずか3,888円(税込み)のみです。印刷した在庫の負担はなく、売れた場合は売上に応じた印税を手にしていただけます。

概要

出版可能な書籍

CAS-UBを使用して本文PDFを制作した本

販売できるストア

アマゾン、三省堂書店、ウェブの書斎、honto.jp、楽天ブックス

本の形態

並製本、本文はモノクロ、本文24ページ~746ページ、判型は新書判~A4判

カラーについての詳細はしばらくお待ちください。

出版の条件

出版元

アンテナハウスCAS電子出版

出版条件

著者とアンテナハウス間で一点毎に非独占の出版契約を締結します。その際に内容を確認させていただき、公序良俗に反すると判断した本は出版をお断りします。また、著者には第三者の著作権を侵害していないことに関して責任を持っていただきます。内容について、原則としてそれ以外の条件はございません。

奧付

POD用PDF専用の奧付が必要です。アンテナハウスが管理するISBN番号と出版元名を記載します。

著者に用意していただくもの

本文はCAS-UBの出版物としてご用意ください。
表紙はPDF形式をご自分でご用意ください。表紙はカラーも使えます。ご要望に応じてアンテナハウスで表紙制作を承ります。
書誌情報は著者がEXCEL形式でご用意ください。
詳細な項目は出版契約時にお知らせします。

著者に負担していただく一時費用

初回出版契約締結時

3,600円+消費税(税込み:3,888円)

同一書籍2回目以降

(出版物の改訂などでPDFまたは書誌を差し替えるとき)毎回2,600円+消費税(税込み:2,808円)

定価・売上・収入

一部売れる毎に本をPODで印刷・製本する費用が発生します。
・POD費用=本文ページ数×2.5円+180円 (税別)

ストアや取次のコストは38%です。これを引いた定価の62%からPOD費用が差し引かれます。このため収入額は次になります。

・一部あたり収入額=定価×62%-POD費用

販売定価は一部あたりの収入額が赤字にならない範囲で自由に設定していただけます。
但し、上限を制限させていただく場合があります。

一部あたり収入額が赤字にならないためには次の条件が必要です。

定価≧POD費用÷0.62=(ページ数×2.5円+180円)÷0.62(税別)

例)本文200ページのとき、定価は1,097円(税別)以上としなければなりません。

総収入

一部あたり収入額に販売部数を掛けた数字が総収入となります。
総収入の累積額が1,500円(税別)を超えた場合、著者に印税をお支払いします。

収入がないように定価を設定しても問題ございません。その場合、印税の支払いはなく、一時費用以外の費用はかかりません。

著者へのお支払い

以下は、総収入があるとき該当します。
著者への印税のお支払い頻度を次のいずれかでお選びいただきます。
① 年1回(毎年11月末に締める)
② 年2回(5月末と11月末に締める)
③ 年4回(2月末、5月末、8月末、11月末の4回締める)

支払の有無判定

締め日の時点で総収入の累積未払い残高が1,500円(税別)を超えたときに支払います。(未払い残高はゼロとなります)。
未払金は繰り越します。各締め日に累積残高が1,500円(税別)に達しなかったとき、未払金は次の締め日に繰り越します。

支払い手数料と源泉税

支払い時には支払い手数料として支払い1回毎に1,000円(税別)を累積未払い残高から控除させていただきます。

支払額=累積未払い残高 ― 支払い手数料(1,000円) (税別)

支払額より源泉徴収(10.21%)を致します。銀行振り込み手数料はアンテナハウスの負担となります。源泉徴収分については税金として納付し、毎年末に年間の支払い報告書を発行します。

実際の振込み額

実際の振込額には消費税が加算されますので次の計算になります。

振込み額=支払額(税別)-支払額(税別)の10.21%+支払額にかかる消費税 

計算例

本文200頁、定価2,000円(税別)の本を10部販売したとき著者への振込額は、4,498円となり印税22.5%に相当します(印税率は定価や販売部数により変わります)。

一部あたりPOD費用(税別)=200×2.5円+180円=680円
一部当たり収入額(税別)=2,000円×62%-680円=1,240円-680円=560円
累積未払い残高(税別)=560円×10部=5,600円

支払手数料(税別):1,000円
課税対象額(税別):5,600円-1,000円=4,600円
源泉税:4,600円×10.21%=470円(減算)
消費税:4,600円×8%=368円(加算)
著者への振込金額:4,600円-470円+368円=4,498円

振込みにあたって

・初回支払前に銀行口座とお名前(本名)、ご住所の登録が必要です。
・年間支払額が5万円を超える場合、法定調書を税務署に提出するためマイナンバーをお知らせいただく必要があります。

電子書籍は

・POD版出版契約は非独占ですので、電子書籍は著者ご自身がKDPなどのセルフ出版サービスをご利用されることもできます。
・KDP登録が面倒とお考えの方は、アンテナハウスで登録代行(有償)致します。
・ご希望により「アンテナハウスCAS電子出版」としてKDPにより販売もできます。

お問い合わせ先

さらに詳しい情報につきましては、下記までお問い合わせください。
アンテナハウス株式会社:CAS電子出版担当
eメール:cas-info@antenna.co.jp
電話:03-5829-9021

その他:源泉税、消費税、マイナンバー等の扱いは法令に基づくものですので、法令が変更になったときは取り扱いが変更になります。予めご了承ください。
参考:プリントオンデマンド(PODとは)

◎改訂内容
2015年11月27日 取次の手数料が2%下がり、38%となりましたので数字を変更しました。

本のかたちを考える:四六判・基本版面の推奨値を検討する(案)

縦組書籍の判型の代表例は新書判と四六判です。今日はこの中の四六判の基本版面の推奨値を考えてみます。なお、今回は2段組を除外し、また脚注・頭注がある本も除きます。

前回[1]にも書きましたが、日本語組版における基本版面のパラメータは①文字のサイズ、②1行の文字数、③1頁の行数、④行間の4つです。

最近の四六判の基本版面の分布は以前に本ブログで紹介しました[2]。その後、追加調査した本を含めて四六判64冊の実態を整理してみます。

1.文字のサイズ
最小:8.8ポイント、最大:10.9ポイント、平均:9.4ポイント
文字サイズが9ポイント未満の本は珍しい存在ですが、今の時代では文字が小さすぎるとみられるのではないでしょうか。
10ポイント超も珍しい存在です。一般読者向けとしては、文字が大きすぎるでしょう。
推奨値としては9.0ポイント~10.0ポイントとします。

2.1行の文字数(字詰め)
最小:35文字、最大:46.0文字、平均:43.1文字
1行文字数は文字の大きさと余白の関係で決まりますが、9.0ポイント~10.0ポイントでは、40字~45文字が推奨となります。

3.1頁の行数
最小:15行、最大:21行、平均:17.8行
1頁15行の本はやや文字の並びが疎な印象があります。また、9.0ポイント以上では21行の本は無理があります。
16行~20行が推奨範囲となります。

4.行間(文字サイズに対する割合)
最小:50%、最大:92%、平均:67%
行間50%ですとルビがあるとき、ルビと左右の行がくっついてしまいます。
行間比率80%超の本はややスカスカな印象となります。
行間は55%~80%を推奨します。

5.1頁の文字数
1頁の文字数は、1行の文字数(字詰め)と1頁の行数の掛算となります。
実態としては最小:525文字、最大:900文字、平均:770.4文字です。
上の1~4の推奨値を組み合わせますと、
最小:40文字/行×16行=640文字
最大:45文字/行×20行=900文字
を推奨します。

基本版面としては次の5つを推奨パターンとします。

(1) 最小
640文字 40文字/行×16行 文字サイズ 9.8ポイント 行間比率70% 行間6.9ポイント(行送り16.7ポイント)
(2) 少なめ
714文字 42文字/行×17行 文字サイズ 9.6ポイント 行間比率68% 行間6.5ポイント(行送り16.1ポイント)
(3) 平均
774文字 43文字/行×18行 文字サイズ 9.4ポイント 行間比率66% 行間6.2ポイント(行送り15.6ポイント)
(4) 多め
836文字 44文字/行×19行 文字サイズ 9.2ポイント 行間比率64% 行間5.9ポイント(行送り15.1ポイント)
(5) 最大
900文字 45文字/行×20行 文字サイズ 9.0ポイント 行間比率62% 行間5.6ポイント(行送り14.6ポイント)

次に5つの推奨パターンによる組版例を示します。上から順に、最少、少なめ、平均、多め、最大です。
minimum
smalleraveragelargermax

実際にこの基本版面の設定で本を試作してみたいと思います。試作結果により最終的に決定します。

[1] 本のかたちを考える:基本版面のパラメータ設定の考え方を整理してみました
[2] 本のかたちを考える:(縦組・四六判)基本版面の分布実態、読み易い版面は?

プリントオンデマンドの用語解説(草稿) 

JEPAの「いまさら聞けない電子書籍のABC ~ebookpedia~」の下書きです。最終版は、JEPAのページをご参照ください。

プリントオンデマンドとは

プリントオンデマンド(POD、 Print on Demand)の語義は「要求がありしだいすぐに印刷する」である。印刷ビジネスとしてはデジタル印刷機をつかって、小ロットの印刷物を短納期で製作する形態を意味する。出版が対象とする書籍(本)や雑誌では、印刷だけではなく製本や流通までを含む意味で使われることが多い。本の場合は、ブックオンデマンドという用語をあてる方が適切だろうが、今はプリントオンデマンドという言葉を使うのが主流である。ここではブックオンデマンドの同義語としてのプリントオンデマンドを中心に考える。

歴史
プリントオンデマンドは、1990年代後半から登場したデジタル印刷技術と、糊などの材料を含む製本技術の進歩によって支えられている。

印刷技術の進歩
現在主流になっているオフセット印刷は、印刷機にセットする版を制作し、印刷機によって版に転写したインクを紙に転写するアナログ方式である。版の製作、印刷機を動かして刷り出しを見ながらインクの量を調整するなどの準備工程が必要であるため、小ロット・短納期の印刷物には向いていない。これに対し、デジタル印刷機は複写機やプリンタのように印刷物を作るので、ロットの大きさでコストが変わることがない。印刷開始までの時間も短いので、小ロット・短納期が要求される印刷物に向いている。

印刷コストは、部数が少ないとデジタル印刷機の方が安いが、部数が多くなるとオフセット印刷の方が安くなる。オフセット印刷では版代や印刷の立ち上げコストなど初期費用がかかるが、刷り始めるとページあたりのコストが安い。デジタル印刷機では、ページあたりのコストは部数にあまり関係なく一定であるためである。両者のコストがクロスするのはモノクロで数百部といわれている。

製本技術の進歩
ちらしなどと違い、本をつくるには製本が必要である。製本は丁合・折り・綴じ・糊付け・表紙の取り付け・断裁など複雑な工程からなる。綴じにもさまざまな方式があり、即乾性の糊の登場など進歩が速く、製本専門の会社が工夫を重ねて製本技術が進歩してきた。単行本の製本は印刷会社とは別の製本専門会社が担当することが多い。雑誌は発行日が決まっているので、部数が多い雑誌の製本では、発行日に間に合わせるため、専用のラインを使って高速に製本することが求められる。現在の単行本や雑誌の製本工程は一度に大量の部数を、専門化したラインでバッチ処理することで、高い生産性を実現し、結果として製本コストが安くなっている。

最先端のプリントオンデマンド・システムではデジタル印刷機と自動製本装置を連動する一貫システムで、ほとんど人手を掛けずに製本ができる。このようなシステムは日本では数システムが導入されているといわれる。自動製本システムは、専門会社の製本ラインほどの高い生産性を挙げることができない。こうして、現在のところ、最先端の製本システムを使ってもバッチ処理のシステムより一部あたり製本コストが高くなるようだ。

流通
プリントオンデマンドのコストの仕組みは電子書籍に似ているが、決定的に異なるのは形があるモノを作ることだ。このため、一般の読者に本を届けるには新しい物流の仕組みを構築する必要がある。

その一つはデジタル印刷機と製本を一体化したエスプレッソマシンである。アメリカでは大学などのテキストを組み合わせてその場で製作して学生に渡すのにつかわれているといわれる。日本でも、一時、神田の三省堂本店に導入され、お客の要望で本を作る試みがなされた。このように出版物を読者の手元で作るのにつかえる。

アマゾン(日本)は2011年4月よりプリントオンデマンドを導入した。当初は洋書から開始したが、現在は、国内出版社の本も対象にしている。電子書籍のKDP (Kindle Direct Publishing)は個人の出版者が参加できるが、PODサービスでは取次を通す必要がある。このほか、楽天ブックス、hontoのようなオンライン書店が次々とプリントオンデマンドの本を扱い始めている。こうしたオンライン書店のプリントオンデマンドサービスは、読者からみると従来のアナログの本作りと同じである。

出版活動の経済面とプリントオンデマンド
印刷・製本の両面からみてプリントオンデマンドでコスト・メリットがあるのは小部数の出版物である。プリントオンデマンドでは部数が多くなっても単価が下がらないので、千部以上ともなればアナログの印刷とバッチ製本の組み合わせで製作する方が安い。商業出版社の本では企画・編集・制作のコストが最初にかかるが、千部以下でそのコストを回収するのは難しい。プリントオンデマンドが有利になるような部数の本はそもそも出版できないのであり、商業出版社にとっては初版にプリントオンデマンドを採用する意味はない。むしろ増刷の際やシリーズものの欠品を回避するために採用されている。

出版活動には、自己の思想や考え方を広める出版、学術研究成果を社会に還元する専門出版、企業のPR本などの利益を目指さない分野がある。こうした商業出版以外の領域では初版部数を気にする必要がない。むしろ少ない部数から出版できて、コストの総額を小さくできるプリントオンデマンドを採用することで、出版できる本の種類が増える。

経済面からみるとプリントオンデマンドは電子書籍に似ている。電子書籍とともに、出版活動の敷居を下げ、その活発化を担う両輪となることが期待される。

[1] https://www.facebook.com/tokushige.kobayashi/posts/1057419407676505

本のかたちを考える:基本版面のパラメータ設定の考え方を整理してみました

紙の書籍で本文を配置する領域を基本版面[1]と言います。

基本版面の設定の考え方は次のようになります。

制約条件としては判型があります。判型により出来あがりの1頁の縦・横の寸法が決まります。

基本版面を設定するとき変更できるパラメータは、1段組では、①文字のサイズ、②1行の文字数、③1頁の行数、④行間の4つです。多段組を指定する場合は段数と段間の空きがパラメータに追加になります。

基本版面の設定値が適切かどうかを評価する尺度としては、編集者や制作者の立場では1頁に入る文字数が重要でしょう。読者の立場から見ますと読み易さが大事です。

1頁の文字数は尺度としては明快です。そして、例えば、1頁に入る文字数を多くするには、判型を大きくし、文字を小さくし、1行の文字数を多くし、行数を増やします。

一方、読み易さはやや曖昧です。読み易さを決める要因は、文字の大きさ、周囲の空きの量と、行間の空きの量が大事なように思います。周囲の余白が狭いと窮屈な感じになります。また、行間が狭いと、ルビや注の合印が行間に入らなかったり、あるいは重なったりします。

以上は、一見簡単そうですが、このパラメータの組み合わせは、無数になります。そしてこれらのパラメータのどれをどういう優先度で動かすべきかということが難しい問題です。

1頁の文字数を決める項目はすべて読み易さに影響を与えます。

たぶん総体的には次のような関係になるのでしょう。

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この図は大雑把なものですので、今後、もう少し詰めていきたいと考えています。続きは「本のかたちを考える:四六判・基本版面の推奨値を検討する(案)」

[1] http://www.w3.org/TR/jlreq/ja/#elements_of_kihonhanmen
[2] 本のかたちを考える:縦書・新書判と四六判の版面パラメータの比較

本のかたちを考える:PDFからプリントオンデマンドで本を作る。2015年版は『暗号舞踏人の謎』

今週は、7月1日からいよいよ国際電子出版EXPOです([1]を参照)。

毎年、展示見本用としてCAS-UBで制作したPDFからプリントオンデマンドの本を作っています。

今年は、縦組の機能強化をテーマにしていますので、シャーロックホームズの『暗号舞踏人の謎』(踊る人形というタイトルの方が有名かもしれません)を本にしてみました。

1.PODサービスで作成した紙の本

判型は新書サイズ。文字の大きさは9ポイントで行間を6ポイントに設定。1行42文字、1頁16行にしてみましたところ、表紙別で58頁です。本の構造はシンプルで、PDFを作るのはとても簡単でした。青空文庫のテキストファイルと画像を使って約1日の作業でできました。

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問題としては青空文庫のままですと2倍ダッシュの間が空いてしまいます。青空文庫のテキストはダッシュに「ホリゾンタルバー」(U+2015)を使っていますが、IPAex明朝ではホリゾンタルバーを二つ使うと間が空いてしまうためです。そこで、「ホリゾンタルバー」を「全角ダッシュ」(U+2015)に置換しました([2]を参照)。

2.画像の配置例

画像の配置の見本として、いくつか独自イラストを用意して、ページの中に配置してみました。
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3.ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込む

『暗号舞踏人の謎』の肝は人形のかたちで表した暗号文です。ファンの手で、人形のかたちをアウトラインフォント化した「GL-DancingMen font」が提供されています。CAS-UB V2.3からユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込めるようになりました([3]を参照)。次の図はGL-DancingMen fontを利用した頁の見本です。
20150629e

本書は電子出版EXPOに出展致しますので、お手にとってご覧いただければと思います。

なお、PDF、EPUB、mobi版はこちらからダウンロードしていただくことができます。

[1] 電子出版EXPO出展のご案内
[2] CAS-UBの使い方:PDFで2倍ダッシュを繋げるには、全角ダッシュ(U+2014)を使いましょう。
[3] ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込むためのCAS-UBの操作方法

CAS-UBの使い方:PDFとEPUBにユーザーがアップロードしたフォントを埋め込む

国際電子出版EXPOでの展示見本用に、青空文庫のシャーロックホームズ・シリーズ『暗号舞踏人の謎』をPOD本にしています。

『暗号舞踏人の謎』(青空文庫)

折角PODで本にするのに間違いがあってはいけないと考え、内容をチェックしてみました。なんと暗号文の画像に間違いがあるのを見つけてしまいました。

下の2か所はNEVERと言う単語ですが、Rの文字が間違っています。
fig45340_04b

正しくは次でなければなりません。
fig45340_04

そんなことをfacebookに書いたところ、この絵文字はアウトラインフォントがあることを教えていただきました。

GL-DancingMen font

おお! これは良い。さすがに人気長寿作品だけのことはあります。

CAS-UBは、ユーザー独自のフォントをアップロードして、PDFとEPUBに埋め込むことができます。フォント埋め込みを使えば、特殊な文字の形をEPUBやPDFで表示できます。

暗号文を画像で表す代わりにフォントを使うとどうなるか早速試してみました。フォント埋め込みの使い方は次の通りです。

まず、CAS-UBの「フォント」メニューでGL-DancingMen fontフォントをアップロードします。
20150623

CAS-UBはフォントにクラス名を割り当てます。このフォントのクラス名は「font-GL-Dancingmen」です。
20150623a

編集画面で、タイトルと本文のテキストにフォント・クラスを指定します。次のようにマークアップします。
20160623b

この暗号文では単語の区切りは人形の旗で表します。font-GL-Dancingmenは旗を持った人形を大文字に割り当てています。

【説明】
CAS記法(簡易マークアップ)で[[[:font-GL-Dancingmen テキスト]]]とマークアップしますと、<span class=”font-GL-Dancingmen”>テキスト</span>となります。

「内容表示」でプレビューしてみます。
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PDFを生成します。フォントが埋め込まれて暗号文がフォントで表示されます。
20160623d

EPUBを生成します。EPUBにもフォントが埋め込まれますので、Adobe Digital Editionsでも暗号文が正しく表示されます。
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CAS-UBの使い方:PDFで2倍ダッシュを繋げるには、全角ダッシュ(U+2014)を使いましょう。

1.困った!
CAS-UBで出版物からPDFを生成したとき、2倍ダッシュが繋がらず、次のようになってしまいました。

20150622

2.原因
このテキストは、青空文庫「暗号舞踏人の謎」の一部ですが、2倍ダッシュがホリゾンタルバー(U+2015)で表わされていました。

CAS-UBのPDFでは、デフォルトで本文のフォントはIPAex明朝です。

IPAex明朝ではホリゾンタルバー(U+2015)を2個連続しますと、間が空いてしまいます。

ホリゾンタルバーではなく、全角ダッシュ(U+2014)2つにすると繋がります。

20150622b

3.解決策
CAS-UBの編集メニューの「置換」でホリゾンタルバーを全角ダッシュに全部置換します。

4.説明
2倍ダッシュ(——)は発言の間合いなどでよく使われますが、テキストを入力する時は一つのダッシュ文字(—)を2文字入力するのが一般的です。

ダッシュとして使える文字は幾つかありますが画面に表示したり印刷するとき、全角ダッシュか罫線文字だと二つの文字がつながります。罫線文字は意味合いが違いますので、この場合は、全角ダッシュが良いでしょう。

(1) ソース

=本文ノーマル

・全角ダッシュ U+2014: —— 全角

・ホリゾンタルバー U+2015: ―― 全角

・罫線文字 U+2500: ── 全角

(2) PDF(縦組)

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『Adventures of Huckleberry Finn』英語版POD本をつくりました

来週はいよいよBook Expo America[1]です。今年はCAS-UBをBEAに出展します。CAS-UBでどんなことができるかをアメリカの人たちに理解していただくため、英語版の本をひとつ作成してみました。

素材としてProject Gutenbergの『Adventures of Huckleberry Finn』を使いました。テキストをCAS-UBにコピー&ペーストし、若干編集した上でプリントオンデマンド(POD)で出力、製本しました。

POD本のサイズは150mm×233mm。『An Unfinished Life』というJFKの伝記と同じにしました。ちなみに『Chicago Manual』が150mm×227mmです。幅はA5とほぼ同じですが、高さはA5と比べてかなり高いです。

本文の余白と行数も『An Unfinished Life』と同じにしました。英語の本はこの位のサイズが読み易そうな気がします。

『Adventures of Huckleberry Finn』はイラストが売りのようです。Project Gutenbergではイラストをスキャンした画像が96dpiと150dpi(画像による)で収録されています。

元のdpiのままだと画像が大きく印刷されて、本文が337頁(表紙を含まない総頁数は353頁)となりました。

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CAS-UBは改頁位置で画像による空きが発生しないように、自動的にテキストと画像の順序を入れ替え、文中に無駄な空白がでないようにしています。

このままでは画像が少し荒いので、画像を200dpiに強制的に縮小してみました。

20150522c

画像200dpiでは版面に対して画像が小さくなります。そこで、画像を小口に配置してテキストを回り込み指定しています。

イラストのサイズを変更して作成したPOD本2種類が次の写真です。上2冊は少し薄く、下2冊の方が厚くなっています。

20150522a

このように、CAS-UBでは設定変更のみでいろいろな本ができます。もし、文字が大きめの本を作りたいならば、文字サイズを変更してPDFを作り直すだけでOKです。

なお、POD版と同時にEPUBも制作しました。今回作成した、PDFとEPUBはCAS-UBのweb[2]よりダウンロードしていただけます。関心をお持ちの方は出来栄えをご覧になってみてください。

[1] BEA
[2] 『Adventures of Huckleberry Finn』サンプル本

本の形を考える―製本した本の扉の種類について日本語と英語の本の対応つけについて検討(草稿)

CAS-UBは、プリント・オン・デマンドで制作する本を作る機能を強化しています。

製本した本には一定の構造があります。基本的なところでその基本構造に従いながらも、いろいろな構成の本を簡単に制作できるようにするのが課題のひとつです。

まず、基本的な構造を整理します。本の構造を大きく分けると表紙と内容に分かれます。内容はさらに前付け、本文、後付けに分けられます。前付けは、前書き、献辞、謝辞、目次などの諸要素を含みますが、そのうちで一番ややこしいのが本の書名を記載した扉関係です。なぜかと言いますと書名を記載した扉は表紙を別にしても3つ配置される可能性があるためです。どの扉がどこに配置されるかを整理する必要があります。

さらに、CAS-UBでは日本語と英語の本を制作しますので、日本語の本と英語の本の両方を考慮しなければなりません。実際の本を調べますと日本語の本と英語の本ではかなり違います。日本語の本は扉の付け方がまちまちで不規則になっています。英語の本は規則的に作られているようです。

しかし、そういっては話が成り立ちませんので、英語版と日本語版の比較を含めて、次のように整理しようかと考えています。

日本語の本 英語の本
表紙 Cover
前扉(仮扉) Bastard title(Book half title)
本扉(化粧扉) Title page
目次扉
書名扉(中扉) Half title(Second book half title)

以下に、実際の本での扉の付け方と合わせて説明します。説明の中の各タイプ扉の出現比率は、日本語の本は手元の本102冊(2000年以降発行)を調べた結果、英語の本は19冊(1980年代~2000年代が中心)を調べた結果です。なお、まだ調査した本の数が少ないため、数字は一応の目安とお考えください。

1.表紙、Cover

表紙は表1(表面)、表2(表1の裏面=内側)、表3(裏表紙の内側)表4(裏表紙)があります。このほか背表紙もあります。ここでいう表紙とは表1を指します。

英語でCoverといいますと、ジャケットを示しそうですので他に良い表現があると良いのですが。

2.前扉(仮扉)、Bastard title(Book half title)

カバーの内側で、カバーを捲ったときの本の最初に出てくることがある書名のみを記載した扉です。但し、日本語の本では前扉のないものが大多数です。手元の日本語の本では前扉のある本は1割以下でした。また、日本語の本は、本扉の後に、書名だけを記載した前扉が現れることがあります。この場合、本扉と前扉の前後が逆になります[1]

一方、英語の本は約9割の本に書名のみを記載した扉があります。A History of the Bastard Title[2]にBastard titleの歴史の説明があります。昔は、印刷した本は製本しない状態で販売し、本を購入した人が自分で製本したそうです。印刷した本を積み上げて販売する際に本扉が傷まないよう、本扉の前に書名だけ印刷した紙を一番上に置いたようです。すべての本が製本して販売されている現代ではBastard titleは不要で、本の盲腸といえるかもしれません。なお、Bastard titleとHalf titleは同じものと考える人もいて、あまり統一されてはいないようです。

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図1 Bastard Titleの例

3.本扉、Title page

書名(タイトル)、副題、著者、発行元などを記載した扉。これが正式な本の扉と言えるようです。日本語の本では本文とは別の用紙に印刷することも多くあります。本扉、Title pageはすべての本にあります。英語の本では、Title pageの裏面には権利関係などの表示があります。

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図2 Title Pageの例(この例では、Bastard Titleの裏頁(左頁)に、著者の書籍リストが紹介されています。)

4.目次扉

日本語の本では、目次の前に「書名」+「目次」と印刷した扉が配置されることがあります。手元の本では約4割強の本に目次扉がありました。英語の本では目次扉に相当する扉は見当たりません。

5.書名扉(中扉)、Half title(Second book half title)

本の前書きや目次などを前付けと言いますが、前付けと本文の間に、書名のみを記載した扉を挟む場合があります。これを英語ではHalf title[3]と言うようです。書名扉がある本はどちらかというと少数派で、日本語の本は2割強、英語の本は4割程度です。

なお、日本語の本では、書名扉と本文の間に、献辞、クレジットなどの前付けの一部が置かれることがあります。このため書名扉が前付けなのか本文なのか曖昧です。英語の本ではHalf titleに一葉を使う(裏白)のことが多く、Half titleは本文の開始になっています。またHalf titleを本文頁番号の開始位置にする本と本文頁番号には含めないケースがあります。

「Modern Methods of Book Composition」という20世紀初頭に書かれた本[4]の130項の注には、Bastard TitleとHalf Titleを混同してはいけないと書いてあります。しかし、前述のようにBastard TitleとHalf Titleを区別していないで同じとしているケースもあります[5]。このあたりには本の歴史のとらえ方も関係しているかもしれません。どちらが妥当かはまだ分かりませんが、Bastard TitleとHalf Titleを両方もつ本もありますのでとりあえず別として考えておきます。

[1]日本語の本では、本の書名などをデザインして本文と別の用紙に印刷する(化粧扉と呼ぶらしい)ことが一般的(調査した本の4割強)に行われています。そのとき次に本扉を置くことがあります。このときは化粧扉+本扉の組になります。英語の本はそのようなものが少ないようです。このあたりはもっと調べてみる必要があります。
[2]http://blog.bookstellyouwhy.com/history-of-the-bastard-title
[3]http://en.wikipedia.org/wiki/Half_title
[4]http://archive.org/details/practicetypogra11vinngoog
[5]http://andreareider.com/2011/01/23/the-basics-of-book-design/
[6] ()内の仮扉、中扉、Book half title、Second book half titleは、「書籍編集制作」(中島 正純著、あっぷる出版社、 2014年3月)pp.44-45による。(2016年6月14日追記)

参考)本の形を考えるシリーズ
1.本の折り方と書籍の総ページ数-今の本は8ページ単位で折っているものも結構多いようです