ワンソースマルチユースの課題:HTMLソースのオーサリング問題を改めて考えてみようと。

2017年になってから久しぶりにWebページを自分で編集・更新をし始めています。XHTML形式のWebページをoXygenというXMLエディタ[1]で編集しているのですが、このところ毎日Webページ制作の生産性の低さに辟易しています。

少し遡っての個人的な経験ですが、私は2000年頃からドキュメントの多くをXML(XHTML)で作成するようになり、Webページなども簡単なHTMLタグの組み合わせで作成していました。それらのWebページはXHTMLタグでマークアップして簡単なCSSでレイアウトを施したものです。今から見ますと原始的なものですが、この頃のマークアップ編集はAntenna House XMLエディタという自社開発のXMLエディタを使っていました。この間、Antenna House XMLエディタは、開発があまり進まず、時代の流れに遅れてしまい、結局、販売も断念してしまいました。

その間、HTMLのタグを直接編集するのはどうも生産性が低いのでなんとかうまい解決策がないものかと考えていました。そうした経験からWiki記法のような簡易マークアップを使ってHTMLを書くことで、HTML制作の生産性を高めることができるだろう、と考えました。それが、2010年にCAS-UBの開発を開始した一つの理由です。CAS-UBはWiki記法を拡張したCAS記法をつかってHTML文書を記述します[2]。これは檜山正幸さんという天才的なアーキテクトに設計していただいたものです。自分で言うのもなんですが、いつも良く出来ていると感じます。CAS記法をなかなか普及させられないのは、偏に私のマーケティング力が足りないからだと反省します。

もう一つの理由は、出版の世界は一品生産のため、DITAマニュアルの制作システムのように大きな投資が必要なシステムを作るのは難しいので、PDFとEPUBを作る仕組をWebサービスとして提供するのが向いているのではないかと考えたことです。CAS-UBは出版物を作る仕組としてうまく機能するようになっています。まだまだ改善が必要ですが。

そうしたことで、2011年頃から、業務上の文書はOffice、簡単なWebページはブログ、出版物にするときはCAS-UB、といった使い分をしていました。そんなことで、個人的には問題も感じなくなり、もうワンソースマルチユースには課題はないだろうなどと考え始めていたのです。そして、ワンソースマルチユースの大きな課題であるソースドキュメント編集の問題について、やや忘れかけていました。

で、久しぶりにWebページ(HTML)をXMLエディタ(oXygen)で編集し始めて、HTML直接編集の生産性がさらに低下しているのに辟易しています。ずっと、HTMLの生産性が低い理由は、コンテンツ(原稿)とタグ(マークアップ)の二つを同時に考えるためと思っていました。しかし、今回、久しぶりにWebページを編集してみて、レイアウトのための余計なクラス属性や余計な階層構造が、さらに生産性を下げる原因になっている、と痛感しています。

ちなみに、今『CSS設計の教科書』(谷 拓樹著、インプレス発行、2016年2月第1版第4刷)を読んでいます。この本を見ますとCSSのセレクタには要素ではなく、クラス属性を指定する方を推奨しています。要素のセマンティクスにはあまり依存しないで、div要素に多数のクラスを設定し、CSSではクラスのセレクタを使って部品化し組み合わせる方法などがあります(pp.45-52 OOCSS)。こうなってきますと、今度はコンテンツの編集の際に、レイアウトのためのクラスの設定を適切に行わなければならなくなります。結局、HTMLの編集において、テキストや画像コンテンツ、セマンティクスとしてのHTMLタグ、さらにCSSレイアウトのためのクラス属性の設定、という三つを同時に考慮しなければなりません。これはちょっと? です。

見栄えの良いWebページを作るために、CSSが複雑になりメンテナンスしにくいのでクラス属性を組み合わせ、今度は内容を書くのが大変になる! って本末転倒しているように感じます。どうしたら良いんでしょうかね。

また、最近、2回ほど学術情報XML推進協議会のセミナーに参加して、皆さんの意見も伺い、久しぶりにコンテンツ制作の問題がまだ課題なんだな、と痛感している次第です。ということで、HTMLのオーサリングについて、改めて整理し直そうと考えているところです。

[1] oXygen
[2] CAS記法リファレンス
[3] 次回 HTMLを手軽に作る方法を再検討します。手軽といえば、まずWordでHTMLを作ることが思いつきます。

■シリーズ
(1) ワンソースマルチユースの課題:HTMLソースのオーサリング問題を改めて考えてみようと。
(2) HTMLを手軽に作る方法を再検討します。手軽といえば、まずWordでHTMLを作ることが思いつきます。
(3) Word2013のWord文書をHTML形式で保存を試してみる。その問題点は?

CAS-UB 操作紹介ミニ動画が20本になりました。

CAS-UBはデジタル技術を活用して本を作るWebサービスです。その特徴は、次のような点にあります。

(1)小説のようなほぼ文字だけの本ではなく、図版や表などを多用する専門書も編集・制作できること
(2)EPUBだけではなく、プリントオンデマンドのためのPDFを簡単なパラメータ設定のみで作ることができること

特に紙の本は、できあがったものを見ますと、一見簡単にできていそうに見えます。しかし、実際に本を作ってみますと、まず本の編集・制作作業はかなり複雑です。紙の本には長い歴史があり、表紙・扉・前書・目次・本文・後書・索引などの多くの構成要素があります。さらに日本語の本は横組・縦組があり、綴じ方(開き方)が反対になります。他にどんな点が難しいかは下記の参考資料(本のワンソースマルチユース制作〜その理論・実践・未来)をご覧ください。本の制作にあたっては、このような諸要素を予め配慮する必要があります。

こうしたことから、商業出版社では、専門的な知識をもつDTP制作者や制作会社に制作作業を外注していることが多いようです。しかし、本の制作を外注して行うと日程や費用が掛かってしまいます。さらに、DTPで制作するとPDFに特化してしまうため、EPUBなどの電子書籍にするのに別途の日にちがかかります。

CAS-UBは、コンピュータを使って、本の編集・制作作業をできるだけ自動的に行い、知識の伝搬・技術・産業の発展に欠かせない専門的な本の生産性を高めるのが目標です。

やや複雑なCAS-UBの編集操作やPDFの作成を、直感的に理解していただくために、次のミニ動画を用意しています。それぞれ1~2分ですので、ぜひご覧ください。なお、この中の動画の多くは、ECMJ石田社長のブログを、ECMJ流Eコマースを勝ち抜く原理原則 シリーズという本にする過程を録画したものです。

CAS-UB紹介動画一覧

新しい出版物の作成
編集機能について
図版と画像の扱い
本の構成を編集する
PDF生成

なお、動画の内容は随時追加・改訂していく予定です。

参考資料
本のワンソースマルチユース制作〜その理論・実践・未来
CAS-UB Webページ
ミニ動画作成のきっかけになった10月24日セミナーのプレゼンテーション

瞬簡PDFシリーズのマニュアルのWeb公開と冊子の販売

今年の新しいテーマとして、製品マニュアルを、PDF、Web、POD販売とマルチ展開を推進中です。もちろん、CAS-UBを使っています。

デスクトップ製品(パッケージ版)のマニュアルは、だいぶ前にインストール部分の説明だけ紙にして、あとはPDF同梱としていたのですが、ときどき、紙のマニュアルが欲しいという問い合わせを頂いていました。そこで、初めて製品マニュアルをプリントオンデマンドで販売してみました。予想以上に売れて(全然売れないのではないかと思っていましたので、予想が少ないのですが)少々驚きました。電子書籍(EPUB/Kindle)版はありません。ご要望をいただければすぐできますが。さすがにPDFデスクトップ製品のマニュアルをKindleで売るのはどうでしょうか? 

Webマニュアルの公開

瞬簡PDFシリーズ製品では、ユーザーズマニュアルやヘルプを、PDF形式やWindowsヘルプ形式でご利用いただけますが、いずれも製品をインストールした後に表示できるようになっています。

ご購入前や製品をインストールしていないパソコン、スマホなどから、簡単にマニュアルを確認する方法がこれまでありませんでした。

そこで、Webから手軽にマニュアル(ユーザーズマニュアル)をご覧いただけるよう準備を進めており、現在、下記の3製品を公開しております。

瞬簡PDF 書けまっせ 6 ユーザーズマニュアル
http://www.antenna.co.jp/kpd/pdfwritemanual_web/index.html

瞬簡PDF 作成 7 ユーザーズマニュアル
http://www.antenna.co.jp/SPD/skpdf7_webpage/index.html

瞬簡PDF 編集 6 ユーザーズマニュアル
http://www.antenna.co.jp/pdfedit/manual/index.html

Webマニュアルは、すでに『AH Formatter』や『AH PDF Tools API』などシステム製品などでも公開しており、こちらも順次拡大予定です。

紙のマニュアルも販売中

瞬簡PDF 作成 7 ユーザーズマニュアル

紙のマニュアルを読みたいというご希望も多くいただいております。
そこで、『瞬簡PDF 作成 7』のユーザーズマニュアルを冊子(紙の本)でお求めいただけるようになりました。

AmazonのPOD(プリントオンデマンド)サービス
『瞬簡PDF 作成 7 ユーザーズマニュアル オンデマンド(ペーパーバック)』
https://www.amazon.co.jp/dp/4900552240/

製品インストール後に利用できるPDFマニュアルはA4の用紙にプリンターで印刷することを想定しています。
POD版のマニュアルは、冊子用に最適化した版面、誌面レイアウトになっています。
現在は『瞬簡PDF 作成 7』だけですが、ご要望に応じてこちらも順次拡大予定です。

なお、この『瞬簡PDF 作成 7 ユーザーズマニュアル オンデマンド(ペーパーバック)』は、弊社の書籍編集・制作Webサービス『CAS-UB』で執筆し、AmazonのPOD用に出力したものです。PDFマニュアル版、POD版をひとつの原稿から生成できます。

※【ご注意】『瞬簡PDF 作成 7 ユーザーズマニュアル オンデマンド(ペーパーバック)』には、PDF変換ドライバ『Antenna House PDF Driver』の操作方法や設定方法についての記載はございませんので、ご注意ください。Webマニュアルはこちら(PDF Driver 利用ガイド)をご覧ください。

『PDFインフラストラクチャ解説』 出版記念特別講演会の資料公開

去る2月16日に市ヶ谷健保会館で開催しました『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念 特別講演会の資料一式のご案内です。

1.スライドの内容とビデオ

第一部 だれでも本を出版できるPOD出版時代を迎えて
~『PDFインフラストラクチャ解説』の制作過程~
アンテナハウス代表取締役社長/小林 徳滋
PDF規格化の動向
第二部 ~ 印刷関連(TC130)を中心として~
画像電子学会フェロー/松木 眞 氏
PDF/Xなどの派生規格やISO32000の最新動向について解説します。

『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念特別講演会の資料公開

2.寄稿記事
第一部のテーマのうち、ワンソースマルチユースでプリントオンデマンド本を作ることについてもう少し整理してまとめました。テキストをマガジン航に寄稿しました。

本のワンソースマルチユース制作〜その理論・実践・未来

★参考資料
[1] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?
[2] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい
[3] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (3) 電子テキストは印刷ではなく、音声の暗喩と見る方が良い
[4] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (4) 『PDFインフラストラクチャ解説』の実践例より
[5] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (5) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売
[6] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (6) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (6) 紙のページと電子の画面の違い

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたいの最後で「ページという概念の紙と電子(画面)での違いは、本質的です。」と書きました。

今日は、紙のページと電子の画面の違いについて考えてみます。

相違点1.紙の判型と電子の画面で寸法の考え方が違う

紙の本には判型(物理的なサイズをもつ)があり、判型の上に版面(本文をレイアウトする領域、基本版面)があります。紙では絶対寸法で表される大きさをもつ版面が必然であり、紙の制約条件とも言えます。版面の上に配置されるオブジェクトも絶対寸法をもち、一旦印刷されると拡大、縮小ができません。

電子では画面の大きさがあります、画面の大きさも物理的な制約なのですが、画面の上に配置されるオブジェクト(テキスト、図版、表など)は、絶対的な寸法を持ちません。拡大、縮小が自由です。

相違点2.裏表

紙には裏表があります。電子には裏表がありません。

本で裏表を考えて配置されるものに、扉があります。
扉の表に印刷される内容と裏に印刷される内容は役割が違います。例えば、本のタイトルを印刷するのは扉の表であり、扉の裏面ではありません。

電子の画面には裏表がありません。あるのは表示の順番だけです。

例えば、紙の本で書名扉の裏を空白ページにするのは珍しくありません。しかし、画面で空白のページを配置してもあまり意味がないように思います。

また、ページ番号は紙では奇数が表、偶数が裏になります。横組でも縦組でも奇数ページの方が表になり、開始位置として重要度が高くなります。偶数ページは裏になり、続きという意味合いになります。

相違点3.製本と見開き

紙の本は両面に印刷した紙を製本して作ります。すると、見開きページができます。

見開きのページは、片面に印刷して、片方を綴じたレポートのような印刷・製本では存在しません。従って、印刷・製本の仕方によるものです。

電子の画面で見開きのような表示はできますが、紙の本の見開きとは本質的な相違があります。

これを理解しやすい例として、縦組における脚注の配置を示します。
脚注をページ毎に示すと、次の画面のようになります。電子の画面でみるときは1画面=1ページ毎脚注を示すべきでしょう。
20160306
図1 1ページ毎に脚注を配置(注[1]

しかし、縦組の紙の本では、脚注を1ページ毎に配置するのはあまり行われません。次のように見開きの左ページに脚注を置くのが一般的です。
20160306d
図2 見開き毎に脚注を配置(注[2]

相違点4.ページを読み進める(開く、表示する)方向

製本した紙の本は紙のページを開く(捲る)操作と読み進める操作が分れています。画面ではページを順番に表示します。

この相違が一番問題になるのは、たとえば、本文が縦組で、索引が横組で、これが一冊の本として製本されているときです。

紙では本文は、本文の先頭ページから順に2ぺージづつ紙を捲りながら、右から左に読み進めていきます。索引を読む時は、索引の先頭頁を開いて、そこから左から右に読み進めます。

同じことは電子は実現するのは難しいと思います。

本文が縦組で、索引が横組のPDFを作成し、PDFをAdobe readerを使ってWindows PCのウインドウ上で表示してみます。PDF表示ではPDFファイルの中に物理的に登録されているページ順に表示するだけです。結果として索引のページは後ろのページから逆順に表示してしまいます。索引の先頭ページにしおりを設定してジャンプはできますが、そこから読み進めるには逆順にページを表示します。

Adobe Readerでは紙を捲るのと同じ操作は実現できていないようです。

[1] 『PDFインフラストラクチャ解説』をCAS-UBで縦組でPDF化。脚注をページ単位に配置するオプションを選択。
[2] 『PDFインフラストラクチャ解説』をCAS-UBで縦組でPDF化。脚注を奇数ページに配置するオプションを選択。
[3] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?
[4] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい
[5] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (3) 電子テキストは印刷ではなく、音声の暗喩と見る方が良い
[6] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (4) 『PDFインフラストラクチャ解説』の実践例より
[7] 『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (5) 『PDFインフラストラクチャ解説』のプリントオンデマンド制作と販売

PDFのアクセシビリティ。ワンソースマルチユースのもう一つの応用。

PDFへのアクセシビリティとはPDFの形式で表された情報や知識の利用しやすさである。

1.PDF形式で表される情報の主な種類

・PDFは紙への印刷物をデジタル化したものであるが、最近は、印刷物ではない3D画像や動画を埋め込んだり添付することもできるようになっている。
・印刷物として表された知識は文字(テキスト)が中心であるが、写真や絵画のようにテキストで表せないものもある。
・テキストの一部にイラストのような図版、写真、表を含むことも多い。
・書物のような冊子を表すPDFについては、目次・索引・リンクなど必要な情報を探し、そこにたどり着くための仕組みもある。
・PDFはJavaScriptプログラムを使ってアクションを設定できる。

2.PDFのアクセシビリティについて定めた規格

PDFのアクセシビリティについて定めた規格には、PDF/UAとWCAGをベースとする規格の二つがある。

(1) PDF/UA(ISO 14289-1:2014)
ISO 32000-1:2008 をベースとして、アクセシブルなPDFのための要求項目を決めている。2008年に初版、2012年に改訂、2014年に再び改訂された。主な内容は、次の通り。
・ファイルの識別方法(5節)
・要求項目まとめ(6節)
・ファイル形式への要求項目(7節)
・準拠リーダーへの要求項目(8節)
・準拠支援技術への要求項目(9節)

7節のファイル形式への要求項目が中心である。1.で簡単に紹介したようにPDF中には多様な情報を含んでおり、要求項目は多岐に渡る。見出しだけを挙げると次のとおりである。
・一般(7.1)
・テキスト(7.2)
・グラフィックス(7.3)
・見出し(7.4)
・表(7.5)
・箇条書き(7.6)
・数式(7.7)
・ページのヘッダー・フッター(7.8)
・注釈と参照(7.9)
・オプショナル・コンテント(7.10)
・埋め込みファイル(7.11)
・アーティクル・スレッド(7.12)
・電子署名(7.13)
・非対話フォーム(7.14)
・XFA(7.15)
・セキュリティ(7.16)
・ナビゲーション(7.17)
・注釈(7.18)
・アクション(7.19)
・XObject(7.20)
・フォント(7.21)

PDF/UAは、まずタグ付きPDFでなければならない。特に本文については、7.2から7.9できめ細かくタグを付けることが要求されている。例えば、見出しはH1タグをルートとし、H2H3…と順を追って階層化した見出しタグを付けなければならない。図にはFigureタグを付け、図のキャプションにはCaptionタグを付けなければならない。

(2) Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0(ISO/IEC 40500:2012)
  日本語版JIS X8341-3:2010
Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0(原文)
WCAG 2.0 ガイドライン(日本語訳)

Webコンテンツ一般のガイドラインであり、PDFもその一種として対象としている。WCAG2.0は高レベル(抽象度の高い)ガイドである。

具体的なテクニック解説文としてPDFの作り方に関する説明がある。
Techniques for WCAG 2.0(原文)
WCAG 2.0 実装方法集(日本語訳)
PDF Techniques for WCAG 2.0(原文)

「WCAG 2.0 実装方法集」は、準拠基準ではなく実装の解説である。

例えば、文書をスキャンして画像化したPDFはPDF/UA準拠ではない。PDF/UA準拠にするには機械可読としてタグを付ける。WCAG 2.0 実装方法集にはその例が記載されている、という関係である。

3.ワンソースマルチユースの応用としてのアクセシブルPDF生成

全体として、PDF仕様の複雑さと、アクセシビリティ要求の難しさを考慮すると、アクセシブルレベルの高いPDFを手作業で制作するのはかなり難易度が高い。PDF/UA準拠にするために、できあがったPDFに後から手作業でタグ追加するのは効率を考えると良い方法といえない。オーサリングの段階で文書を構造化しておき、タグをPDFに自動的に埋め込む必要がある。

アクセシブルなPDFを自動的に作れないと製作コストが許容できないほど高くなってしまうだろう。このようにコンテンツから印刷用PDFと共にアクセシブルなPDFを自動生成することは、ワンソースマルチユースのもう一つの応用になるであろう。

[1] アクセシビリティとは(草稿)
[2] アクセシビリティという言葉がどのように使われているか
[3] PDFのアクセシビリティ。ワンソースマルチユースのもう一つの応用。
[4] EPUB3.0のアクセシビリティを高めるためのガイドライン

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい

『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?の続きです。前回は紙の本と電子の本を同時に作りだすのが目的とお話しました。

紙の本と電子の本を、コンピュータで作るならば、コンテンツを1回作成したら両方の形式を自動的に作りたいと考えるのは自然です。つまりワンソースマルチユースの実現が課題となります。

ワンソースマルチユースについて考えてみます。主に、CAS-UBや電子出版の関連プロジェクトに5年ほど取り組んだ経験から、最近は、次のように考えています。

紙の本と電子の本には本質的な相違がある (そんなのはあたりまえだろ! って?)

紙の本と電子の本を完全にワンソースで作るのは不可能です。可能なことを示すには、実際にやってみる必要がありますが、不可能なことを示すのはできない例を示せばよいので簡単です。

できない例を幾つか示してみます。簡単で判りやすい例から行きます。

1.まず、表紙についてはどうでしょうか。

紙の本は、本文を綴じたうえに包みのカバーをかけます。カバーは表表紙、裏表紙、背表紙から構成します。しかし、電子の本には背表紙はありえません。なにしろ厚さがないのですから。紙の本の表紙は、飾りだけではなく、本文の紙を保護したり、手にもって開いたり読んだりするために有用です。その点、紙の本には裏表紙は欠かせませんが、また、電子の本に裏表紙を付けることは意味がないでしょう。

表表紙も違います。紙の本では表1、表2(通常は白)があります。電子の本では、表1だけは紙の本と類似にする意味があります。表2はあまり意味がありません。

2.紙の本は、表紙以外にも伝統的な構成、つまり、本扉、前付、本文、後付という大構成、さらに細分化すると、前付は前書、目次、献辞、権利(英語の本)といった構成があります。

この構成について、電子の本を紙の本と同じ構成にするかどうか? このあたりはまだあまり議論がなされていないように思います。もし、構成を変える方が良いということになりますと、ワンソースではできないことになります。

最近、『PDFインフラストラクチャ解説』という本をCAS-UBでプリントオンデマンドとKindleで発売しました[1]。この本のKindle版には図表一覧があります。しかし、POD版は図表一覧は省略しました。販売価格を抑えるためページ数を減らして、コストを抑えたのです。

紙の本はページ数に応じてコストが増えるのですが、電子の本はその心配がありません。このように紙と電子ではコスト構造が違いますので、電子の本で一部を省略したり、入れ替えることは十分合理的です。

3.レイアウト依存の内容があります。ひとつの例は、見開きのページでしょう。

見開きページは、紙という固定サイズをもつ用紙を左右の中央で綴じたメディアで意味があります[2]。電子の画面に見開きという概念は存在しないのではないでしょうか。見開きは単に大きな画面ではないでしょう。

本文がすべて見開き単位でレイアウトされているのであれば、紙の見開きページを電子の1画面に対応つけることになるでしょう。こうしたときは関係はシンプルです。

リフロー形式の本で、大きな画像ページが見開きになっているときは、紙のページと電子の画面では、テキストと画像の位置対応関係が難しくなります。テキストの流れの中の画像の位置と、紙にレイアウトして見開画像のページを挟んだときとでは、テキストの流れと画像の位置の相対関係が変わります。

こうしたとき、ワンソースで紙と電子で最適な本を自動的に作りだすのは、それなりのアルゴリズムが必要です。

4.3項と前後しますが、ページという概念の紙と電子(画面)での違いは、本質的です。

次回は、この点をもう少し、考えてみたいと思います。(「『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (6) 紙のページと電子の画面の違い」をご参照ください。)

[2]上下で綴じた場合も見開きというのかどうかは、まだ調べていません。

JEPA 第22回 EPUBセミナーでの「新しい発想の書籍制作ツールCAS-UBのご紹介」スライドなど

3月1日 日本電子出版協会で「マニュアル、ビジネス文書でのEPUB活用」についてのセミナーを行ないました。メインテーマは、BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)の「EPUBマニュアル研究会」の話ですが、研究会は始まったばかりでまだ報告する内容があまりありません。

研究会の話だけでは、与えられた時間枠のセミナーを構成できないために、第二部にCAS-UBについて自由に語る枠を置きました。いつもセミナーでは、時間とテーマが先に与えられて、それにあわせてセミナーの内容を構成するためなかなか自由にCAS-UBについて語ることができません。しかし、今回はかなり自由にテーマを設定して語らせていただきました。

それが却って良かったのか、CAS-UBの基本的考え方を整理してお話しできたように思います。

スライドや映像はepubcafeの次のページに公開されています。

EPUB 第22回 マニュアル、ビジネス文書でのEPUB活用

CAS-UBの映像は3つ目で約40分弱になります。なお、スライドはこちらからもダウンロードしていただくことができます。

「新しい発想の書籍制作ツールCAS-UBのご紹介」(3/1JEPAの第22回EPUBセミナー)