『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる?

最近、プリントオンデマンド(POD)が流行っているようです。流行っているといっても全国的な流行なのか、私の周りだけの流行なのか、いまのところ、まだはっきりとは見極めがつきませんが。

CAS-UBの目標は、紙の本と電子の本の両方を同時に作りだすことです。

さて、そうしますと、紙の本と電子の本があります。で、この両者について『本をコンピュータで作る』ということをもう少しブレークダウンして考えてみます。

紙の本を作るには、印刷と製本の工程が欠かせません。しかし、これをCAS-UBで完結するのは無理です。そこで、1冊から印刷・製本ができるPODの普及を期待し、また、その使いこなし術を会得したいところです。

一つの論点=課題として、PODに使えるデータをコンピュータで作れるかどうか? があります。ここをもう少し、ブレークダウンすると次の3項目になるでしょう。
・本文のPDF
・包みの表紙のPDF
・POD用のメタデータ(表形式が多い)

電子の本は、現在、EPUB3.0がデファクトスタンダードになっています。

と言ってしまうと話が終わりそうです。しかし、もう少し現実に戻りますと、最近、弊社の電子出版サービスにEPUBを作ってもらえないかという引き合いが増えてきています。その内容を聞いてみますと、EPUB3.0ではなく、電書協ガイドだったり、別のガイドだったりします。EPUB2をベースにした独自仕様もあります。そうそう、Kindleも独自仕様だったりします。

EPUB3.1の標準化が進みつつあります。EPUB3.1ができても、それで終わりではなく、今後も変化するでしょう。

そうしますと、電子の本についての論点=課題の一つは多様なフォーマットにどう対応できるか? ということになるのでしょうか。

まだ、タイトル課題への回答にはなっていませんが、今日は、この辺で。

続きは:『本をコンピュータで作る』のは、いま、どこまでできる? (2)紙の本と電子の本をワンソースで作りたい

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流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)

『PDFインフラストラクチャ解説』POD版とKDP版が揃い踏みとなりました

『PDFインフラストラクチャ解説』ですが、1月21日にPOD版が発売となり、紙(POD)版+電子(KDP)版が揃いました。

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アマゾン 
POD版の紹介ページ
KDP版の紹介ページ

POD版は1月6日にストアに納品されていますので、発売まで2週間かかっています。どうやら新年営業開始直後で本が溜まっていたために遅れたようです。

KDP版は1月14日に登録したところ、15日に「お客様が提出されたKDPコンテンツを調査させていただいたところ、ウェブ上で無料公開されているコンテンツが含まれていることが判明しました。(略)」の連絡が来ました。どうやら、無料配布版(未完成版)が引っかかったようです。そこで、無料配布版を削除して、再登録し1月16日発売となりました。

このあたりのスピード感は、自動化度の度合ではないかと想像します。本をPODで作るのは完全な自動になっていない(できない)?

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流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)

近日発売!『PDFインフラストラクチャ解説』出版記念 特別講演会のお知らせ

アンテナハウス株式会社(本社:東京都中央区、資本金:4,000万円、社長:小林 徳滋)は、2016年2月16日16時から、東京市ヶ谷にて『PDFインフラストラクチャ解説』出版を記念した記念講演会を開催いたします。

『PDFインフラストラクチャ解説』は紙に代わって情報化社会を支えるインフラとなったPDFについて、システム開発者などの理解を促進することを目的としています。アンテナハウスのブログで2005年10月から2008年7月にかけて1000日間にわたって連載された「PDF 千夜一夜」の記事に、オリジナルの内容を加えてPDFや関連領域を網羅的にカバーしています。10年以上の歳月にわたって制作され、2016年1月に出版の予定です。

記念講演会では、本書編著者の小林 徳滋より書籍Web制作サービスCAS-UBを使ってPDFを制作し、ブックオンデマンドで本を作り、またAmazonのKindleストアなどで販売するに至った過程と、新しい出版の方法を分かりやすく解説します。

さらに、メインゲストとして、PDFの国際規格ISO32000やPDF/Xなどの派生規格の作成に参加されている画像電子学会フェローの松木眞氏をお招きして、PDFのこれからについてご講演いただきます。

講演会の後、懇親会の開催も予定しています。(詳細は、別途ご案内します)

本講演会は無事終了しました(2016・3・18追記)。
講演会の内容スライド&ビデオ:『PDFインフラストラクチャ解説』 出版記念特別講演会の資料公開 (2016年2月16日 in 市ヶ谷健保会館)

セミナーの概要・タイムテーブル

16:00~16:10 主催者挨拶
16:10~17:00 だれでも本を出版できるPOD出版時代を迎えて
『PDFインフラストラクチャ解説』の制作過程
アンテナハウス代表取締役社長/小林 徳滋
17:00~18:00 ISO32000: PDFの国際規格の現状とこれから(仮題)
画像電子学会フェロー/松木 眞 氏
18:00~18:10 参加者質疑応答
休憩
18:30~20:30 記念懇親会

開催概要・お申し込み

開催日時 2016年2月16日(水)16時00分~18時10分
開催場所 市ヶ谷健保会館 E会議室
住所・アクセス 東京都新宿区市谷仲之町4-39
都営新宿線曙橋駅下車徒歩8分
都営大江戸線牛込柳町駅下車徒歩8分
参加費 講演会のみ:1,000円(税込)
懇親会は講演会にお申込みいただいた方に、別途ご案内致します。
定員 30名(事前予約制)
お申し込み 次のページからお申し込みをお願いします:
http://peatix.com/event/138690

■PDF参考情報
流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)

本のかたちを考える:PDFからプリントオンデマンドで本を作る。2015年版は『暗号舞踏人の謎』

今週は、7月1日からいよいよ国際電子出版EXPOです([1]を参照)。

毎年、展示見本用としてCAS-UBで制作したPDFからプリントオンデマンドの本を作っています。

今年は、縦組の機能強化をテーマにしていますので、シャーロックホームズの『暗号舞踏人の謎』(踊る人形というタイトルの方が有名かもしれません)を本にしてみました。

1.PODサービスで作成した紙の本

判型は新書サイズ。文字の大きさは9ポイントで行間を6ポイントに設定。1行42文字、1頁16行にしてみましたところ、表紙別で58頁です。本の構造はシンプルで、PDFを作るのはとても簡単でした。青空文庫のテキストファイルと画像を使って約1日の作業でできました。

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問題としては青空文庫のままですと2倍ダッシュの間が空いてしまいます。青空文庫のテキストはダッシュに「ホリゾンタルバー」(U+2015)を使っていますが、IPAex明朝ではホリゾンタルバーを二つ使うと間が空いてしまうためです。そこで、「ホリゾンタルバー」を「全角ダッシュ」(U+2015)に置換しました([2]を参照)。

2.画像の配置例

画像の配置の見本として、いくつか独自イラストを用意して、ページの中に配置してみました。
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3.ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込む

『暗号舞踏人の謎』の肝は人形のかたちで表した暗号文です。ファンの手で、人形のかたちをアウトラインフォント化した「GL-DancingMen font」が提供されています。CAS-UB V2.3からユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込めるようになりました([3]を参照)。次の図はGL-DancingMen fontを利用した頁の見本です。
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本書は電子出版EXPOに出展致しますので、お手にとってご覧いただければと思います。

なお、PDF、EPUB、mobi版はこちらからダウンロードしていただくことができます。

[1] 電子出版EXPO出展のご案内
[2] CAS-UBの使い方:PDFで2倍ダッシュを繋げるには、全角ダッシュ(U+2014)を使いましょう。
[3] ユーザーがアップロードしたアウトラインフォントをPDFに埋め込むためのCAS-UBの操作方法

『Adventures of Huckleberry Finn』英語版POD本をつくりました

来週はいよいよBook Expo America[1]です。今年はCAS-UBをBEAに出展します。CAS-UBでどんなことができるかをアメリカの人たちに理解していただくため、英語版の本をひとつ作成してみました。

素材としてProject Gutenbergの『Adventures of Huckleberry Finn』を使いました。テキストをCAS-UBにコピー&ペーストし、若干編集した上でプリントオンデマンド(POD)で出力、製本しました。

POD本のサイズは150mm×233mm。『An Unfinished Life』というJFKの伝記と同じにしました。ちなみに『Chicago Manual』が150mm×227mmです。幅はA5とほぼ同じですが、高さはA5と比べてかなり高いです。

本文の余白と行数も『An Unfinished Life』と同じにしました。英語の本はこの位のサイズが読み易そうな気がします。

『Adventures of Huckleberry Finn』はイラストが売りのようです。Project Gutenbergではイラストをスキャンした画像が96dpiと150dpi(画像による)で収録されています。

元のdpiのままだと画像が大きく印刷されて、本文が337頁(表紙を含まない総頁数は353頁)となりました。

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CAS-UBは改頁位置で画像による空きが発生しないように、自動的にテキストと画像の順序を入れ替え、文中に無駄な空白がでないようにしています。

このままでは画像が少し荒いので、画像を200dpiに強制的に縮小してみました。

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画像200dpiでは版面に対して画像が小さくなります。そこで、画像を小口に配置してテキストを回り込み指定しています。

イラストのサイズを変更して作成したPOD本2種類が次の写真です。上2冊は少し薄く、下2冊の方が厚くなっています。

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このように、CAS-UBでは設定変更のみでいろいろな本ができます。もし、文字が大きめの本を作りたいならば、文字サイズを変更してPDFを作り直すだけでOKです。

なお、POD版と同時にEPUBも制作しました。今回作成した、PDFとEPUBはCAS-UBのweb[2]よりダウンロードしていただけます。関心をお持ちの方は出来栄えをご覧になってみてください。

[1] BEA
[2] 『Adventures of Huckleberry Finn』サンプル本

本の折り方と書籍の総ページ数-今の本は8ページ単位で折っているものも結構多いようです

Page2015の会場(3階)では、キャノンマーケティングジャパン(CMJ)とホリゾンが隣で、デジタルプリンタで本を印刷し、自動製本機で製本する実演をおこなっていています。本が実際にできる工程を見るのは楽しいものです。

ホリゾンのブースでは実演している本をもらうことができますので、無線製本して断裁前の本をもらってきました(下の写真)。

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CMJのデジタルプリンタの実演では面付けして印刷したものを配っていますが、このデモの本は1枚のA3サイズのカット紙に表4頁分・裏4頁分(合計8面)が印刷されています。

製本する工程では表裏に印刷した1枚の刷本から紙を折るのですが、「折りは16ページ折りが基準で」(『本作りの常識・非常識(第二版)』、野村 保惠、印刷学会出版部、p.203)とあり、16ページ折が多いのかと思っていました。

しかし、最近の本の総ページ数を調べてみますと、必ずしも16の倍数が多いということでもないようです。

手元にある101冊の本の総ページ数を調べてみた結果は次の図の通りです[1]。8の倍数が30点、16の倍数が26点、32の倍数が40点あります。8の倍数でないものも5点あります。結構、いろいろな折りの数があるようです。

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[1]手元にある本なので代表性は保証できません。2000年以降に出版されたものが中心です。総ページ数というときは、カバー(表1~表4)やボディと別の紙に印刷されたページ(化粧扉など)は含みません。しかし、ボディと同じ紙に印刷された書名扉(本扉)は含みます。

デジタル時代の本の再定義。 EPUBはPOD書籍普及のブレーク・スルーになるだろうか?

身近なドキュメントの領域の変化を振り返ってみますと、20年ほど前に弊社が一番関係深かったワープロ専用機は、ワープロソフトによって置き換えられてほんの20年ほどでなくなってしまいました。次に関係深かった写植機はDTPによって置き換えられてなくなりました。また銀塩写真はデジカメに置き換えられて姿を消しました。

こうした歴史を踏まえて、紙の本がデジタル時代にどう変質するのかを考えてみます。

2010年に(何回目かの)電子書籍元年となりましたが、その後5年目のいま、商業用電子書籍ではEPUB3がデファクト・スタンダードになったと言って良いでしょう。一時は、EPUB3などの電子書籍によって紙の本が置き換えられるのではないかということも言われました。しかし、現在のところ、当分の間は紙の本が電子書籍に置き換えられることはなさそうです。

むしろ、紙と電子デバイス(画面)という媒体の特性の違いを考えますと、電子書籍と紙の書籍は代替関係よりも両立関係になると言う方が適切そうです。

さて、現在のところ、書籍の印刷と製本は全体としてみますと、まだアナログ技術が優勢な部分と思います。では、デジタル時代の書籍がどうなるのでしょうか?

印刷ではデジタル印刷技術がどんどん進歩しています。すでにPDFで入稿されれば、デジタルプリンタで一冊から本を印刷できる、プリント・オン・デマンド(POD)が実用になっています・

今後、PODによる本作りの時代がすぐそこにやってきそうです。PODによる本作りはまだかなり割高ですが、これを割安にするには、規格化し、コンピュータ処理にするのがポイントになりそうです。

現実は、書籍は規格化されていないものの筆頭にあげられそうです。なにしろひとつひとつの書籍の内容は全部異なり、レイアウトは1点毎ばらばらです。書店で売られている本の判型は四六判、新書版、文庫本などある程度のパターンにわけられます。しかし、同じ判型であっても、製本の仕方、扉の付け方などには結構いろいろな種類があります。

私が読んだ本の中から約100冊をとりだして調べてみました(この写真)が、詳しく見ますとひとつとして同じものはありません。

DigitalBook

PODを規格化された廉価サービスとして提供しようとしますと、そのシステムにはかなり大きな投資が必要です。従って、投資を回収するには膨大な量の注文を処理しなければならないでしょう。

そのためには、書籍のコンテンツが沢山必要です。しかし、実態として本のサイズはかなりばらばらです。そして、紙の本は絶対寸法をもっていますのでリサイズはほとんどできません。コンテンツの種類を増やすには判型を多様にせざるを得ないわけです。

つまり、既存書籍の版を使った規格化は無理という壁に行きあたってしまいます。

ひとつの解決策として、既にかなり揃ってきたEPUBリフローコンテンツを使って規格化する、という方法があります。こう考えますと、EPUBをプリントオンデマンド用のPDFに変換するツール『EPUBtoPDF』が、書籍の未来を拓くブレークスルーになるかもしれません。

『EPUBtoPDF』紹介スライド

EPUBをプリントオンデマンド用のPDFに変換するツール「EPUBtoPDF」のご紹介(スライド)

スライド1

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スライド11

・関連記事1:EPUBをアマゾンPOD用PDFに変換するツール、EPUB vs PDFの相違点など
・関連記事2:EPUBtoPDF変換ツール+CAS-UB V2.3のちらしができました

EPUBをアマゾンPOD用PDFに変換するツール、EPUB vs PDFの相違点など

アンテナハウスはEPUBをアマゾンPOD用のPDFに変換するツールを開発しました。

■製品Webページ:『EPUB校正用、プリントオンデマンド用PDF出力 EPUB to PDF 変換ツール』

このツールはEPUBを入力とし、EPUBのコンテンツ(XHTML)を自動組版してPDFを出力します。

PDFのレイアウトは、EPUBに指定されているレイアウト指定(CSS)情報を生かして行います。しかし、EPUBに指定されているCSSだけでは印刷物を作るには情報が足りません。そこで足りない項目は外部からパラメータを指定して、CSSの指定に追加したり上書きしたりできます。詳しくは、後述のツールの概要を参照のこと。

EPUBをお持ちの場合、ツールをお求めいただければドウイットユアセルフ(DIT)でEPUBをPDFに変換できます。また、テスト変換もございます。最初からDITは無理かな? という向きには弊社でEPUBをPDF化するサービスも承ります。EPUBをお持ちで、アマゾンプリントオンデマンド(POD)で販売することを検討中の出版社の方は、cas-info@antenna.co.jp までお気軽にご連絡ください。

1.本ツールの概要

1.1 動作環境
ツールにはグラフィカル・ユーザーインターフェイスは付いていません。コマンドラインで操作します。Windows、Linux、MacOS/Xなどでお使いいただくことができます。

コマンドラインでは、変換元のEPUB、パラメータ、出力先PDF(名)などを指定します。

1.2 扱えるEPUB
リフロー型、固定レイアウト型EPUBを両方とも扱えます。

但し、変換元のEPUBを本ツールで解凍して中のコンテンツを自動的にPDFに変換しますので、DRMが付いているEPUBは扱えません

その他詳細はお問い合わせください。

1.3パラメータの説明
PDFを作るのに必要で、EPUBには無いレイアウト指定情報などをパラメータで追加します。
(1)PDFのバージョン(PDF/Xなども可)
(2)判型(必要に応じて塗足しの有無と塗足しの寸法)
(3)マージン(小口、のど、天、地)
(4)デフォルト・フォントサイズ 
(5)デフォルト・フォントファミリー
(6)デフォルト行の高さ
(7)柱のテキスト、柱の位置
(8)ノンブルを付けるかどうか、ノンブルの位置
(9)その他項目を、多数、設定ができます

1.4 目次の扱い
EPUBにはEPUBリーダー用の目次(論理目次)と、本文と同じ扱いの目次(本文目次)があるのが一般です。本ツールは本文目次をPDFの目次にします。

1.4.1 目次頁(XHTML)の識別
EPUBの中の本文目次頁を(できるだけ)識別します。次のように指定もできます。
(1)目次ファイル名を指定
(2)目次頁の先頭テキストを指定(デフォルト:目次)
※指定がないときはデフォルトを使います。

1.4.2 目次項目の識別とページ番号の付加
EPUBの目次項目には、本文の該当章などへのリンクが設定されているのみです。本ツールでは目次頁の目次項目を識別して、その項目にページ番号を付加します。

目次項目にクラス名が付いているとき、そのクラス名を指定して該当項目を目次項目にします。

1.5 表紙
表紙画像をもとにアマゾンPOD入稿仕様に準拠した表紙のPDFを作ります。
背表紙の画像または文字列を指定したとき、(本文の100頁超のとき)背表紙に入るように自動調整します。

2. EPUBとPDFの相違点
EPUBとPDFでは本質的な相違があります。次に主な相違点を述べます。

2.1 寸法
EPUBでは相対寸法が基本ですが、PDFでは絶対寸法になります。例えば、EPUB(リフロー)では本文のデフォルト・フォントサイズは一般には指定しないで、読者がEPUBリーダーで変更できます。それに対してPDFではデフォルト・フォントサイズを、xxpt(単位はいろいろ)のような寸法で指定します。

2.2 フォント・ファミリー
EPUBでは、普通、本文全体のフォントファミリー名はserif、sans-serifなどのジェネリック名を指定します。しかし、PDFでは本文全体に適用するデフォルト・フォントとして具体的なファミリー名を指定します。

2.3 画像
画像の大きさは、アマゾンPODでは300dpi以上でなければなりません(それ以下だとエラーにされます)。本ツールでは、画像を300dpiに強制する機能がありますので、これを使えばとアマゾンの必要条件はクリアできます。

3.注意点
現在のEPUBは、EPUBリーダー(Kindleを含む)を想定して作られており、そのまま印刷物にするにはレイアウト情報が不足しています。本ツールでは不足しているレイアウト情報をパラメータで補います。ただし、必ずしも十分なコントロールはできません。例えば改頁、改丁処理などは自由に指定できません。また、書籍では章の見出しを柱の内容にすることが多いのですが、章を自動的に識別して柱にするにはどの見出しが章であるかを識別しなければなりません。それは、現在、未対応です。

関連記事1:EPUBをプリントオンデマンド用のPDFに変換するツール「EPUBtoPDF」のご紹介(スライド)
関連記事2:EPUBtoPDF変換ツール+CAS-UB V2.3のちらしができました
関連記事3:EPUB校正用、プリントオンデマンド用PDF出力 EPUB to PDF 変換ツール
関連記事4:流通によるプリントオンデマンドでの出版が現実のものとなった今、その活用の課題を考える。(2017年1月時点)
関連記事5:アンテナハウス 電子出版サービス

『PDFインフラストラクチャ解説』をプリントオンデマンドで本にしてみました

CAS-UBで製作中の『PDFインフラストラクチャ解説』をプリントオンデマンドで紙の本にしてみました。表紙と本文のページは次のような感じになります。

○表紙

○本文

本書はCAS-UBのPDFレイアウトをプリントオンデマンドで本にして組版を評価する目的で用意したものです。ですので内容はまだ未完成でかなりスカスカです。また、イメージ画像の大きさなども未調整です。

しかし、PDFで見たときと紙に印刷してみた時では、余白・行間などの印象がまったく異なります。CAS-UBのPDFレイアウトはやはり本の形にしてみて評価ながら修正しないといけないようです。

それにしてもブックオンデマンドによる本作りはなかなかコスト面が厳しそうです。今回作ったのはB5版で10部、内訳はモノクロページとして目次:10ページ、本文:246ページ、表紙と裏表紙はカラーです。それで10部で18,000円弱(1部1,800円弱)となりました。

希望小売価格を2,500円程度に設定すれば赤字にはならないでしょうが、利益はでないでしょう。

次の図はAmazonのPOD価格をもとにページ数別に本の印刷と製本コストを計算したものです。参考のためWebで公開されている某POD本つくりのサイトの価格も比較してみました。こうしてみますと、今回作った本は、Amazonのプリントオンデマンド価格と比べると倍以上割高です。某社のサイトと比べると判型が異なりますが、なんとなく某社よりも高いような・・・

このままだと、販売価格は1頁あたり10円近くに設定しなければなりません。販売する本をプリントオンデマンドで作って、それを商売にするには印刷・製本コストをもう少し下げることが条件になりそうです。このあたりもう少し整理して、3月4日の次のセミナーでお話したいと考えています。

3月4日のセミナー:デジタルファーストの時代 売れる本の書き方を教えます~アマゾンで売れる本を作るには~

○『PDFインフラストラクチャ解説』(EPUB版、PDF版)は無料でダウンロードしていただくことができます。→CAS電子出版の紹介

2016年1月にPOD版とKDPで本書を発売しました。これに際し、無料ダウンロードは終了いたしました。